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緊急時に役立つ災害アプリの最新トレンドとは!?震災対策技術展 横浜レポート

2017年2月2日〜3日、「震災対策技術展 横浜」がパシフィコ横浜で開催されました。横浜会場では21回目を迎えたこのイベント。今年は6月に大阪、8月に東北でも開催されます。

免震装置や救命シェルター、非常食にいたるまで、多種多様な防災技術が集まる中でひときわ高い注目を集めていたのが、特設コーナーとして会場中央に設置された災害アプリ体験コーナーです。

このコーナーが特設された背景には、企業の防災の主軸はモバイル端末に移っているという事実も挙げられるでしょう。それは、社用モバイル端末に対応した安否確認サービスが各社から配信されていることからも明らかです。

今回、「みんなのBCP」編集部はその災害アプリ体験コーナーに潜入。18の企業・団体の中から厳選した、6つの災害アプリを紹介します。

インフォテリア「Handbook」

防災アプリ自体が抱える大きな悩みは、非常時だけ導入しても、十分な機能を使いこなすことができないということ。安否確認だけの簡単な機能ならば大丈夫でしょう。しかし、もし大災害が起きて事業を再開するまでの間、情報共有ツールとしてどうでしょうか?使い慣れないアプリ・機器では十分に使いこなすことができないかもしれません。

その点、株式会社インフォテリアが提供している「Handbook」は、もともと通常業務での使用を想定されているもの。会議のペーパーレス化や営業現場でのタブレット、あるいは電子マニュアルとしての用途で使われるタブレット端末に使われるほか、震災時の情報共有ツールとしても利用できます。

実際に、情報共有ツールとして使われたのが、熊本県小国町役場です。昨年4月、Handbookの導入を進める最中、熊本地震を受けた小国町役場では、編成情報や行動マニュアルを共有するために使われたとのこと。Handbook自体が導入段階ということもあり、フル活用というわけではありませんでしたが、インターネットがつながらないときや業務用のPCを開けないときでもスムーズにBCPマニュアルなどの資料を参照できたと言います。

BCPマニュアルのオンライン共有を考えている方は、このようにタブレット端末にPDFとして入れることも視野に入れてみてはいかがでしょう。

あっとクリエーション「カンタンマップ for kintone」「カンタンマップ for iPad」

2017年1月、阪神淡路大震災から22年が経ちました。しかし、未だに多くの人の心に、この震災の記憶が残っています。あっとクリエーション代表の黒木紀男さんもそのひとり。

彼が震災で感じた、「被災後の街の状況がすぐに把握できるアプリがあったらいいのに」という想い。それが具現化したのが、iPhoneやiPad、kintoneにインストールして利用する「カンタンマップ」です。

この「カンタンマップ」では、Googleマップと連動した高精度の地図に、ユーザーは自由に“ピン”を立てて情報を編集することができます。例えば、崩落しかけているビルを見つけた場合、その場所にピンを置き、状態や写真を記録。災害時に現状把握を急ぐ施設管理や不動産の事業者には願ってもない機能です。

また、この「カンタンマップ」は、災害時や現地調査時にのみ使えるものではありません。事業者がすでに使っているデータ……例えば下水道台帳の図面や住宅の顧客情報と合わせ、事業者ごとに最適化された地図を作ることもできるのです。実際、官公庁から新聞社、葬儀屋に至るまで、様々な業種の企業に活用されているこのアプリ。被災後の復旧にとどまらない活躍が期待されます。

災害アプリとしてだけではなく普段からも活用できることが、これからの災害アプリの主流となるかもしれません。

ポケットシェルター株式会社「ポケットシェルター」

被災時にまず気になるのが、どこに行けば安全なのか、自分は今どこにいるのかという“位置情報”。しかし、職場や住居の近くならまだしも、馴染みのない地域だった場合、マップアプリを起動したとしても、自分がどこを向いているかもわからず間違った方向に進んでしまうかもしれません。

そんな課題を真摯に受け止め、現在リリースに向けて動いているアプリが「ポケットシェルター」。ポケットシェルター株式会社が開発中のこのアプリは、自分が移動した道筋を記録する「足跡機能」を実装しているため、間違った方向に進んでいればすぐにわかります。この「足跡機能」は、現在特許出願中とのことです。

国土交通省観光庁「Safety tips」

国土交通省観光庁が年々増加する訪日観光客に向けて発信しているアプリ、「Safety tips」。日・英・中(繁体字/簡体字)・韓の5言語に対応し、緊急地震速報や津波警報などの災害情報をプッシュ情報で知らせます。災害時に役立つフレーズ集も用意されており、日本語のわからない外国人観光客でも安心。

現状の課題は、認知度の低さ。担当者によると、大使館のHPなどに徐々に掲載しているものの、まだまだ訪日観光客に浸透しているとは言えないとのこと。

「もし、2020年東京オリンピックの時期に大災害が起こったら……」と考えると、このアプリの潜在的な需要は高く、さらなる認知拡大が望まれます。

株式会社AXSEED「SPPM Biz Message & Anpi」

スマートフォン/タブレットを企業が活用するうえで必須とも言える、MDM(モバイルデバイス管理)ツールをご存知ですか?MDNツールとは、従業員のモバイル端末を管理し、情報漏えいや不正利用を防ぐツールのことを指します。リスク対策の一環として、近年導入する企業が増えています。

そんなMDMツールと連動する安否確認サービスが、「SPPM Biz Message & Anpi」。このアプリをモバイルデバイスに入れると、緊急時、画面に「◯ 大丈夫」「× 要支援」という安否確認を確認するボタンが表示されます。このボタンによって従業員の安否をいち早く確認し、「要支援」や「反応なし」の従業員の位置を割り出すこともできるというわけです。

また、そのほかにもアンケート機能や位置情報取得機能も実装。1ユーザー月額100円から利用できるので、従業員が数人のベンチャー企業などでも活用されているとのことです。これぐらいの値段だったら、 防災アプリのコストが気になる方でも検討の余地があるのではないでしょうか。

港区防災危機管理室防災課「港区防災アプリ」

区民や区の事業者のために防災アプリを開発する市区町村は少なくありません。その中でも、今回のアプリ体験コーナーでひときわ新技術の導入という点で目新しかったのは、AR(拡張現実)技術を導入した港区です。

「港区防災アプリ」は、防災マップや避難所の位置表示などの防災アプリとしての基本的な機能に加えて、空間にかざすことで浸水のイメージがわかる「津波浸水深表示」をAR技術で実現しています。これは、モバイル端末のGPS機能とカメラ機能を組み合わせたものです。

このように港区は地理空間情報(Geotechnology)を防災に活用する“Minato G-Hazard”という方針を掲げており、今後も地域に密着した防災対策の取り組みに期待が持てます。

機能よりも大事なのは、普段から使うこと

防災アプリを普段から従業員のモバイル端末に入れることは“コスト”だと思われるかもしれません。しかし、何の対策もとらずに、いざ被災したときに後悔しても遅いのです。

アプリに限らず、防災対策のツールは「転ばぬ先のつえ」。短期的な成果ではなく、長期的な安心を買ってみてはいかがでしょうか。

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