安否確認システムは、高齢者とそのご家族にも活用できるサービスです。
この記事では、高齢者に安否確認システムがおすすめな理由や、高齢者向け安否確認システムの種類などをご紹介します。
監修者:木村 玲欧(きむら れお)
兵庫県立大学 環境人間学部・大学院環境人間学研究科 教授
早稲田大学卒業、京都大学大学院修了 博士(情報学)(京都大学)。名古屋大学大学院環境学研究科助手・助教等を経て現職。主な研究として、災害時の人間心理・行動、復旧・復興過程、歴史災害教訓、効果的な被災者支援、防災教育・地域防災力向上手法など「安全・安心な社会環境を実現するための心理・行動、社会システム研究」を行っている。
著書に『災害・防災の心理学-教訓を未来につなぐ防災教育の最前線』(北樹出版)、『超巨大地震がやってきた スマトラ沖地震津波に学べ』(時事通信社)、『戦争に隠された「震度7」-1944東南海地震・1945三河地震』(吉川弘文館)などがある。
目次
高齢者の安否確認システムとは
安否確認システムとは、文字どおり安否を確認するシステムのことです。高齢者向けの安否確認システムは、見守りサービスとも呼ばれています。
高齢の家族と離れて暮らしていて、高齢者の見守りが難しい家族におすすめのサービスです。安否確認システムを利用すると、大きなケガをしたり病気で倒れてしまったりしてもいち早く気づいて対応できます。
高齢者に安否確認システムがおすすめな理由
ここでは、高齢者に安否確認システムがおすすめな理由を8つご紹介します。安否確認システムの利用を検討する際に、参考にしてください。
高齢化が一層進んでいるため
高齢化の進行は、高齢者の安否確認システムをおすすめする理由の1つです。
65歳以上の人口割合は2017年時点で27.7%にのぼり、2036年には推計33.3%になるとされています。今の日本は「超高齢化社会」です。さらに、高齢者の割合は年々増加の一途を辿っているうえ、核家族化が進んで高齢者の1人暮らしも増加しています。高齢者のみが地方に住み、親族は高齢者と離れて生活しているケースも多数です。
安否確認システムは、高齢者が増え続ける社会に役立つサービスであるといえます。
独居の高齢者が増えているため
65歳以上で1人暮らしをしている人の割合は、年々増加しています。2015年時点で1人暮らしをする人のうち、男性は13.3%が65歳以上、女性は21.1%が65歳以上でした。2040年には男性で20.8%、女性で24.5%に増加すると推計されています。
核家族化に伴い、自ら独居を選択する高齢者も多く存在します。緊急事態時の発見が遅れたり災害時に支援者がいなかったりと、1人暮らしには多くのリスクが付きまといます。
病気やケガのリスクがあるため
高齢者は、身体機能の低下によって病気やケガを抱えるリスクが増加します。
特に、1人暮らしの場合、健康管理は本人任せになるケースがほとんどです。食生活も乱れやすく、病気やケガのリスクはより高まります。いまの時点で慢性的な病気やケガを抱えていなくても、ある日突然、ヒートショックや熱中症で突然倒れてしまう危険性もあります。
1人暮らしでは家族が健康状態の変化に気づきにくくなりますが、安否確認システムがあれば、健康状態の観察が可能です。
認知症のリスクがあるため
高齢者が認知症を患うリスクがあることも、安否確認システムをおすすめする理由の1つです。
2025年には、65歳以上の認知症患者が700万人になると見込まれ、65歳以上の5人に1人が認知症を患う時代が来るとされています。病気と同様に、高齢者と離れて暮らしていると認知症の発見や対応が遅れます。
他にも認知症によって起こりうるリスクとして、周辺を徘徊することで事故に巻き込まれることがあります。また、高齢者の徘徊は、近隣トラブルの原因になるケースもあります。
孤独死のリスクがあるため
1人暮らしの高齢者には、孤独死をするリスクが伴います。
国土交通省が発表しているデータによると、孤独死をした人のうち、およそ7割が高齢者です。また、1人暮らしをする高齢者の半数以上が孤独死を意識しているとのデータもあります。
社会的孤立が孤独死のリスクを高めるといわれていて、近隣住民との付き合いや社会参加をすすめることで、孤独死のリスク軽減が可能です。安否確認システムがあれば、定期的でこまめなやりとりを通じて生活状況の変化に気づき、孤独死を予防できる可能性が高まります。
空き巣や強盗のリスクがあるため
1人暮らしの高齢者は、空き巣や強盗の被害に遭うリスクもあります。
空き巣や強盗に関して、1人暮らしの高齢者を狙った事件は多数あります。セキュリティ意識が昔のままで、現代のセキュリティ意識に追いついていない高齢者が少なくないことも、被害に遭いやすくなる原因の1つです。日々決まったパターンで生活していると、自宅にいない時間帯が分かってしまい、空き巣のリスクが高まります。
訪問型の安否確認サービスを利用していれば、人の出入りがあることがわかり、空き巣や強盗の標的になるリスクを抑えることにもつながります。
犯罪に巻き込まれるリスクがあるため
空き巣や強盗以外にも、犯罪に巻き込まれるリスクがあります。
高齢者を狙った犯罪には、オレオレ詐欺や架空請求、押し売り営業などが挙げられます。判断力が低下してくると、詐欺や架空請求を信じてしまう可能性が高くなります。
また、1人暮らしの高齢者は他者にすぐ相談できる環境が少ないケースもあり、被害に遭ってしまうおそれがあります。安否確認システムを利用すると異常に気づきやすく、犯罪に巻き込まれるリスクを抑えられます。
災害発生のリスクがあるため
高齢者は災害発生時、身に危険の及ぶ可能性が高いといえます。
災害時に避難する必要があっても、身体機能の低下から避難に時間がかかったり、1人での避難が困難であったりする危険性があります。近隣との関わりがないケースでは、近隣からの情報や呼びかけが入ってこない情報弱者になり、これも避難が遅れる原因の1つになります。
高齢者が1人でも災害に対応するには、自ら情報収集をするために、スマートフォンやインターネットに慣れておく必要があります。災害には事前にの備えが重要で、、安否確認システムは重要な災害への備えになります。
高齢者施設にも安否確認システムは有効
高齢者のいる一般家庭だけでなく、高齢者施設においても安否確認システムは有効です。
2024年以降、介護業界ではBCP(事業継続計画)策定が義務化されます。
BCPとは、Business Continuity Planの略で、日本語では「事業継続計画」などと訳されます。自然災害やテロ、感染症などに対して、被害を最小に抑えるとともに、たとえ被害・影響が出てしまったとしても、適切な対応で速やかに事業活動を復旧・継続させることを目的とした計画です。
危険な状況におかれた際、身の安全を確保する必要があることと、安否の状況を把握することは、入居者に対してだけでなく職員に対しても同様です。安否確認サービスを利用すれば、施設に入居している高齢者に限らず、施設の職員やその家族まで安否確認ができます。
BCPの中核的対応の1つである安否確認を迅速・正確に行うために、安否確認システムの導入をご検討ください。
高齢者の安否確認システムの種類
高齢者向けの安否確認システムには、いくつかの種類があります。
ここでは、高齢者を守るために利用できる安否確認システムを5種類ご紹介します。安否確認システムの種類を知り、高齢者のおかれている状況に適した安否確認システムを利用しましょう。
センサー型
センサー型は、人の動きを感知して通知する安否確認システムです。不在が続いている、長時間動かないなどのトラブルの予兆に対応できます。
カメラのように写真や映像を撮影せずに済み、プライバシーを保ちながらの見守りが可能です。ただ、動きの感知のみでは詳細な状況が分からず、緊急時の対応が困難です。
また、設置して使うシステムで、外出時のトラブルには対応が難しいといえます。そのためほかの安否確認システムと併用することを検討してもよいでしょう。
カメラ型
カメラ型は、カメラを屋内に設置して利用者の状況を見守る安否確認システムです。カメラを通じていつでも様子を確認できます。
カメラ型の安否確認システムには、簡単な会話が可能なものもあります。カメラ型であれば写真や映像で状況が分かり、緊急時にも速やかに対応できます。一方で、プライバシーが守られにくい点には配慮が必要です。高齢者が監視されているような不快感を抱くおそれがあり、理解を得たうえでの利用をおすすめします。
訪問型
訪問型は、お弁当を配達する配食会社や郵便局のスタッフが訪問して、安否を確認できるシステムです。人の目で直接安否を確認できる点がメリットといえます。
高齢者の利用が多い配送サービスには、安否確認がサービスに含まれているケースが多数あります。また、電気・ガス・水道などの会社が安否確認サービスを提供している場合もあります。そのほか、介護や食事の知識を有するスタッフが定期的に訪問して安否確認ができるサービスもあります。
アプリ型
アプリ型は、スマートフォンのアプリを利用して安否が確認できるシステムです。利用するアプリによって幅広い機能があります。多くは、1人でも日常生活を送れる元気な高齢者向けの機能です。
高齢者によってはスマートフォンを使いこなすことが困難なため、システムの有効な利用が難しいケースもあるでしょう。スマートフォンを使いこなせる高齢者におすすめの安否確認システムであるといえます。
家電型
家電型は、炊飯器・洗濯機・エアコンなど、家電製品の使用状況を通して利用者の安否を確認できるシステムです。家電を使用すると、使用したことが家族に通知されます。
家電型を採用する際には、毎日欠かさず使用する家電を選択するとよいでしょう。日常生活で使う頻度が高い家電に設置しておくと、異変を感知できる可能性が高まります。時期によって使用しない家電製品もあるため、複数の家電製品で安否確認システムを利用することもおすすめです。
おすすめの安否確認システム
ここからは、高齢者におすすめの安否確認システムを3つご紹介します。
安否確認システムのサービス内容はさまざまです。利用する高齢者や家族に適した安否確認システムを利用しましょう。
インタープロ みまもりステーションlite
『みまもりステーションlite』は、インタープロから提供されている安否確認システムです。使用しなくなったスマートフォンやタブレット端末にインストールし、住居に置いておくだけで簡単に安否確認ができるアプリです。
アプリ内にある在宅ボタン・外出ボタンを押すと、家族にメールが送られます。内蔵のカメラで人の動きを感知したり、緊急ボタンを押してメールを送信したりできる機能もあります。機能が充実しており、高齢者だけでなく子どもの見守りにも活用が可能です。
システムアドバンス ラクホン
システムアドバンスが提供している『ラクホン』は、誰でも簡単に操作ができるように開発された安否確認のアプリです。高頻度でダイヤルする相手を電話帳に事前登録しておけば、簡単に電話の発信ができます。
また、緊急ボタンを押すだけで、事前に設定したアドレスにメールの送信や警察・消防への電話が可能です。スマートフォンが一定時間操作されなかったときにも、緊急メールの送信や緊急ブザーの発動で知らせます。
LINEエンリッチ見守りサービス
『LINEエンリッチ見守りサービス』は、メッセージアプリのLINEを用いて安否確認ができるサービスです。サービスのアカウントを友達に追加するだけで利用できます。
設定した頻度で安否確認通知が送られ、安否確認画面のOKボタンをタップするだけで安否の確認が可能です。「OK」の返答がなかったときは、24時間後に再度安否確認通知が送信されます。再送信から3時間経過後も返答がなければ、サービス会社が高齢者に直接電話をして安否を確認する仕組みです。
個人・企業も活用できる安否確認システムを導入しよう
1人暮らしの高齢者は、病気・災害・犯罪などのさまざまなリスクを抱えています。離れて暮らしていても高齢者の身を守るためには、安否確認が重要です。
高齢者の生活や家族の状況に適した安否確認システムを導入し、緊急時や災害時は速やかに対応できる環境を整えておきましょう。
監修者:木村 玲欧(きむら れお)
兵庫県立大学 環境人間学部・大学院環境人間学研究科 教授
早稲田大学卒業、京都大学大学院修了 博士(情報学)(京都大学)。名古屋大学大学院環境学研究科助手・助教等を経て現職。主な研究として、災害時の人間心理・行動、復旧・復興過程、歴史災害教訓、効果的な被災者支援、防災教育・地域防災力向上手法など「安全・安心な社会環境を実現するための心理・行動、社会システム研究」を行っている。
著書に『災害・防災の心理学-教訓を未来につなぐ防災教育の最前線』(北樹出版)、『超巨大地震がやってきた スマトラ沖地震津波に学べ』(時事通信社)、『戦争に隠された「震度7」-1944東南海地震・1945三河地震』(吉川弘文館)などがある。