安否確認システムのメール機能と運用のポイントを解説

遠藤 香大(えんどう こうだい)
安否確認システムには複数の機能がありますが、なかでもメールによる安否確認が多く採用されています。災害時にメールで安否確認することで企業は正確な情報の収集や集計が行え、BCPのための素早い対応が可能です。
この記事では、安否確認システムのメール機能と運用のポイントを解説します。
目次
安否確認システムにおけるメール機能
災害や事故発生の際には、企業の事業継続と安全確保が重要です。その第一歩として、企業から従業員に対して迅速に連絡する必要があります。安否確認システムを用いることで、従業員数が多くても瞬時に大量のメールを送信可能です。さらに回答を元に見やすいように集計し、安否情報を一元的に管理します。
メールでの回答は、受け取った従業員が短時間で迷わず返信できる手段が望ましいでしょう。例として、メールにアンケートURLを表示してクリックすることで回答可能なものや、文字入力せず簡単に回答できる選択式などがあります。
一般のメールによる安否確認との違い
一般的なメールと安否確認システムのメールの違いは、自動送信やアンケートの集計機能があるかないかです。災害発生時に手動でメールを社員全員へ送信することは、困難な場合が想定されるため、自動送信・自動集計などの機能が必要になります。
安否確認システムを導入しない場合は、以下のような内容をすべて企業がすべて管理する必要があります。
- 安全確認のための業務フロー
- メールアドレス一覧と確実に連絡の取れるようにするアップデート
- アンケートから得られた安否情報など
安否確認システム導入の費用はかかりませんが、非常時に多くの情報を管理しようとすると情報漏洩のおそれもあります。
メールによる安否確認のメリット
災害時には、電話で確認を取る方法はつながりにくいケースがあります。安否確認システムは通信状況の悪化を見込んでネットワークを強化しているため、災害時でも通信できる可能性が高く、一度に多くの従業員にメールの送付が可能です。また、安否確認システムは自動で発信や集計を行うため、管理や運用する担当者にかかる負担は少なくなります。
セキュリティが強化されているため、個人のメールアドレスを取り扱っても個人情報の流出の恐れもありません。
メールによる安否確認のデメリット
安否確認システムのメール送付機能に、大きなデメリットはありません。
ただし、安否確認を個人のメールアドレス宛に送付する場合、各従業員のメール設定によっては安否確認システムからのメールが拒否される危険性があります。
いざというときにメールが不達にならないように、定期的にメール一斉送信機能のテストを行う必要があります。
避難訓練などと組みあわせて、従業員の防災意識を高めておきましょう。
安否確認システムの基本的なメール機能
安否確認システムは、担当者個人では不可能な対応が可能です。
ここからは、安否確認メールで可能なさまざまな機能について解説します。
一斉送信
企業が災害時に的確で素早い初動対応を取るためには、状況の把握が欠かせません。状況把握のなかでもっとも重要であり、かつ最初の対応として求められるのが従業員の安否の確認です。
担当者が災害後直ぐに、従業員全員に安否確認目的のメールを送信をすることは大変な時間と労力がかかります。また、担当者自身が被災者となった場合には、対応できないことも考えられます。安否確認システムであれば、担当者が指示1つで安否確認メールが全社員へ一斉送信できるのです。
また、安否確認システムのメール機能は普段からの連絡手段として使え、緊急時以外にも使用してシステムに慣れていれば、災害時に使い方が分からないなどの不安がありません。
自動一斉送信
安否確認システムによるメールの一斉送信は非常に便利な機能ですが、送信の指示を出す人間にトラブルがあった場合は機能しません。担当者が災害に巻き込まれて安否確認システムを起動させられず、従業員の安否確認ができないのでは本末転倒です。
こういった状況に対応するため、設定した以上の災害が発生すると安否確認メールを全社員へ自動で一斉送信することもできます。夜間や早朝で発生した災害にも対応可能です。
自動一斉送信を行う災害は、企業の規模や地域などにあわせて設定できます。具体例としては、自然災害、火災などの人為災害、感染症などです。
返信や回答
安否確認システムは一斉送信する安否確認メールの内容や、返信や回答方法の設定ができます。
「メールに回答方法(URL記載)を指示」「Webページへのログイン」「専用アプリからの回答」「フォームURLから回答」など、さまざまな回答方法があります。
安否確認を行う連絡手段は、メール以外に専用アプリにすることもできます。アプリの場合、時間を取らず回答できるボタンへのチェックなどを回答方法にすると負担が少なく済みます。
自動集計
安否確認システムは、送信されたメールに対する回答をシステム側で自動集計することもできます。担当者は安否確認システムにアクセスするだけで、回答状況や未回答件数などの集計結果確認が可能です。未回答者へ個別に連絡するよう指示することや、状況に応じた初動対応ができるでしょう。
表や数字だけでなく円グラフにすると、よりひと目で結果が分かりやすくなります。集計結果をExcelデータにダウンロード可能なシステムであれば、情報の共有がより容易に行えるでしょう。
安否確認システムにおけるメールの運用対象
安否確認システムからメールの自動一斉送信する対象の災害は、以下が挙げられます。
- 自然災害:地震、津波、台風、特別警報、土砂災害、噴火など
- 人為災害、事故:火災、停電、社内システムのダウン、交通トラブルなど
- 感染症:新型コロナウイルス、未知ウイルスの拡大懸念など
自然災害が多くを占めますが、人為災害・事故や感染症でも対応できるシステムもあります。会社が所在する地域や社員数など、自社に合った対象を設定可能です。
安否確認システムにおけるメール運用のステップ
安否確認システムを用いたメール運用を、ステップごとに解説します。
各ステップごとに必要な作業と確認する項目について、災害に備えましょう。
1. 準備
安否確認システムを導入する際には、まずシステム管理者を決めましょう。システム管理者が安否確認システムの運営方針を決めたら、メール送信用のメールテンプレートを作成します。
メールの一斉送信には、従業員情報の登録と管理が必要になります。安否確認システムの重要性を詳しく説明し、従業員に理解を求めましょう。
安否確認システムが確実に機能を発揮できるように、登録したメールへの発信や受信テストも忘れずに行いましょう。定期的な訓練を行うことで、メールでの状況確認や操作への慣れを促せます。
2. 災害時の対応
自動一斉送信を利用する場合は、設定した以上の災害が起こったときにシステムから自動送信するよう設定をあらかじめ行います。従業員がメールを返信すると安否が確認できるように、返信の方式や回答を設定しておきましょう。
全従業員で集計された安否情報を共有し、管理者や経営者が今後の行動を決定したのち従業員へ連絡します。
安否確認システムにおけるメール作成のポイント
安否確認システムがあるからと安心していると、思わぬ落とし穴にはまってしまうこともあります。
災害時の混乱を避けるためにも、送信するメールの作成ポイントは事前に押さえておきましょう。
事前準備|メールが届かない状況を避ける
安否確認メールを一斉送信しても、メールが届かない状況に陥ることがあります。メールが届かない原因は、以下のことが考えられます。
- 安否確認システム側で間違ったメールアドレスを登録している
- 従業員が迷惑メール対策でドメイン指定受信やURL付きメール受信拒否などの設定をしている
とくに、Webメールアドレス(GmailやOutlook.comなど)を携帯電話で受信しようとすると、迷惑メールと判断されてしまうケースが見られます。
送信時|有事でも混乱しないような配慮が求められる
災害発生時に送信する安否確認メールの内容は、不安や心配のなか、余計なことを考えなくてもよいように心掛けましょう。
- 安否確認の内容だけにする
- 受信者が答えやすいよう明快かつ簡潔な文章にする
災害発生直後に発信することで、通信回線の混乱も避けられる場合があります。
安否確認は、会社の事業継続と早期復旧を目的としますが、従業員へ寄り添う気持ちも伝え配慮し、返信を急がせないような内容にすることで安心感と信頼を得られます。
安否確認システムにおけるメール内容・例文
確認項目は、発生した災害によって内容が異なります。
たとえば、地震の場合には、「本人の状況」「家族の状況」「出社可否」「出社可の場合、交通手段」「自宅の状況」などを確認します。どのような文面になるか、例文を紹介します。
件名:【重要】安否状況確認
本文:各位
こちらは、安全管理係です。
震度〇以上の地震が発生しました。まずは自身とご家族の安全確保を目的に行動してください。
状況が落ち着き次第、URLから安否状況の登録をお願いします。
↓
(回答ページ)
クリック先の回答用ページ:
該当項目にチェックしてください。
- 本人の状況 〇無事 〇軽症 〇重症
- 家族の状況 〇無事 〇軽症 〇重症 〇未確認
- 出社可否 〇可 〇不可
- 出社可能な場合の交通手段 〇電車 〇バス 〇車 〇自転車 〇徒歩
- 自宅の状況 〇住める 〇住めない 〇未確認
- 連絡事項
従業員の状況が分からないため、簡単に答えられる選択式にすると回答がしやすいでしょう。
安否確認メールの例文については、こちらの記事で詳しく解説しています。
安否確認システムの導入方法
安否確認システムはとても便利ですが、会社の規模や目的に合ったシステムでなければメリットを活かせません。
また、システムを緊急時のみに使うと使い慣れないことでミスや遅延の発生してしまうおそれがあります。平常時から使用して、操作に慣れることが大切です。
必要な機能と使いやすいシステムかどうか、平常時に導入してみることでテストできます。
メール機能が充実した安否確認システム4選
安否確認システムのなかでも、メール機能に特化した4つのシステムを紹介します。
システム導入後に企業に合わないことが分かり変更することは、費用面でも従業員の事務手続き面でも負担が大きくなってしまいます。システムの内容をよく吟味し比較したうえで、導入を検討してください。
安否確認サービス2
トヨクモの『安否確認サービス2』は、4,000社以上の導入実績がある安否確認システムです。誰でも簡単な操作性を備えており、データサーバーを国際分散するなどで安定性を高めています。
契約会社に対して全国一斉訓練を実施し、操作方法が理解されているか、システムは安定して動作するかの確認を行っています。管理・運用が簡単にでき、災害時だけでなく日常でも情報共有が可能です。
ライトコース | プレミアコース | ファミリーコース | エンタープライズコース | |
---|---|---|---|---|
月額料金 | 7400円 | 9680円 | 11880円 | 16280円 |
※50ユーザーまでの月額料金。
セコム安否確認サービス

▲出典:セコムトラストシステムズ株式会社HP
セコムトラストシステムズが提供する、『セコム安否確認サービス』は導入実績が国内No.1の安否確認システムです。
専任スタッフが24時間365日災害を確認するシステムを持ち、約8900社で利用されています。
セコム安否確認サービス スマートコース | セコム安否確認サービスコース | |
---|---|---|
月額従量料金 | ~11000円50ユーザーまで | 別途ご相談 |
※セコム安否確認サービススマートコースは、300人までの利用。
初期費用は0円、コース別の機能の違いやユーザー数での料金の違いなどはHPよりご確認ください。
エマージェンシーコール

▲出典:インフォコム株式会社HP
インフォコムの『エマージェンシーコール』は、阪神淡路大震災がきっかけになって誕生した安否確認システムです。
回答回収率100%にこだわっており、社員1人に最大10個の連絡先が登録できたり、繰り返し発信は最大100回まで行えたりなどの特長があります。自動音声通話での回答機能もあり、ガイダンスにしたがって回答可能です。
ライトコース | スタンダードコース | |
---|---|---|
月額料金 | 11000円300ユーザーまで | 別途ご相談301ユーザー~ |
初期費用は0円、コース別の機能の違いや料金の違いなどはHPよりご確認ください。
Biz安否確認/一斉通報

▲出典:NTTコミュニケーションズ株式会社HP
NTTコミュニケーションズ提供の『Biz安否確認』は、NTTコミュニケーションズが持つ高い品質で、一貫して管理する安否確認システムです。
震度7にも耐える、安定稼働を実現できるサービスと台風情報などの注意喚起や日常のアンケートが特徴です。
ライトコース | スマホコース | 通常コース | |
---|---|---|---|
月額料金 | 11000円 | 440円~ | 11440円~ |
初期費用 | 0円 | 0円 | 220000円 |
使用ユーザー数 | 1人~1000人 | 10人~990人 | 10人~10000人 |
コース別の機能の違いや料金の違いなどは、HPよりご確認ください。
ポイントを理解し、適切に運用を
メールを使った安否確認は緊急連絡網の電話よりも正確な情報を、全員に素早く伝えられる方法です。安否確認システムを利用することで、情報発信から集計や共有までが自動で行えます。
安否確認システムの内容や活用方法など詳しい情報は、こちらを参照ください。