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ポケモンGOだけがARじゃない!「ARハザードスコープ」で見る、新宿周辺の災害リスク

ポケモンGO」で世界中が沸き立っています。現実の空間にポケモンが現れる、その未来がやって来たようなワクワク感。それをもたらしている要素のひとつ、AR(拡張現実)技術ですが、このテクノロジーは何もポケモンではじめて使われたわけではなく、様々なゲームやアプリに活用されています。そのアプリのひとつに、防災に特化したものがあるのです。

それがこの「ARハザードスコープ」。東京23区のハザードマップを、AR機能を使って可視化されるというアプリ。

このアプリを使うことで、自分の馴染みのある街の、どの地区が危険なのかどうかを、一発で可視化できます。つまり、ARハザードスコープは、今いる場所のハザードマップに記載されている「活動困難度」「倒壊危険度」「火災危険度」を、そして近くにある避難場所を、それぞれAR上で見ることができるのです。

災害というのは、実際に体験しないことには、なかなか自分ごと化しづらいものです。ハザードマップを見たとしても、地図上に色で記された危険度に現実味を持つことは難しいでしょう。しかし、そうした災害に対する危険度を可視化できたら? それができるのがARハザードスコープなのです。

危険度の低い地区と高い地区にどんな違いがあるのか、危険度の高い地区はどんな場所なのか、ハザードマップを見たときに抱く、こうした疑問の答えを確かめるべく、ARハザードスコープを使って、渋谷から出発し、新宿、高円寺までを実際に歩いてみました。

災害に強い街“渋谷”


渋谷の街を歩く前に、ハザードマップの危険度の種類について知っておきましょう。

火災危険度とは、地震が起きた際の出火の危険性と延焼の危険性を掛けあわせて算出した、総合的な火災による被害の度合いのこと。また、倒壊危険度とは、建物の耐震性や、建築年数、棟数、土地の揺れの大きさ、液状化の度合いなどから算出される、建物倒壊の危険性の度合いのことです。1から5の5段階で相対的に評価され、5に近づくほど、そのリスクは増大します。

今回は主に、火災危険度倒壊危険度を見ていきます。

スクランブル交差点


まず、渋谷の象徴・スクランブル交差点から道玄坂の一帯をハザードマップで見てみると、火災危険度2となっています。1よりも高くなっているのは、飲食店が多く、雑居ビルが立ち並んでいるためでしょうか。

実際にスマートフォンに表示される画面も、ここで見てみましょう。上にカメラで表示される現実にVRで記された災害情報が、下に地図上に災害情報が表示されます。

SHIBUYA109前


109前もご覧の通り、火災危険度2の区域に入っています。109の裏には、やはり飲食店が立ち並んでいます。

円山町


ラブホテル街やライブハウスやクラブが立ち並ぶ場所としても知られる円山町。ここも小さな建物が密集した場所ではありますが、倒壊危険度は2ではあるものの、火災危険度は1となっていました。

神泉


“大人の渋谷”である神泉駅の付近は、雰囲気のある飲食店が立ち並びます。この一帯も火災危険度2。個人で営んでいるような小さな飲食店や古い建物が多いく、足を踏み入れてみると、道幅も狭い。一見すると、危険性があるようにも見えますが、数字を見ると、さほど高くはないようです。

渋谷は地震が起きても安全?

☆ARハザードスコープを使って渋谷を歩いてみましたが、特に危険度が高い地区でも火災も倒壊も危険度2。このことからわかることは、渋谷は比較的災害に強いということです。

渋谷は多くの飲食店が立ち並び、雑居ビルが所狭しと立ち並んでいるような場所も数多くあります。そうした場所でも危険度は2なのです。危険度3以上の地区とはどんな場所なのでしょうか。ARハザードスコープで危険度3以上になっている場所を目指し、新宿へと向かいました。

過去に火災事件も。“新宿・歌舞伎町”に潜む火災のリスク

新宿歌舞伎町、日本最大の歓楽街であるこの街には、雑居ビルが立ち並んでおり、飲食店からキャバクラ、風俗店など様々な業態の店がひしめいています。

ARハザードスコープを見てみると、建物崩壊の危険度は1ではあるものの、火災危険度は3

火災の危険度は渋谷よりも上がっています。このことを裏付けるかのように、2001年に雑居ビル火災により、44名が死亡した歌舞伎町ビル火災が発生しています。この事故で44名もの死亡者が出たのは、防災扉を塞いでいて、避難できなかったために死亡したものが主な被害で、その原因はビルとテナントのオーナーの消防法違反にありました。雑居ビルでは多くのテナントが入居しているため、このような“人災”が起こるリスクがあるのです。

そのほか、2016年にも歌舞伎町で火災が発生しており、ゴールデン街にある4棟がほぼ全焼という大きな被害となっています。

実際に歌舞伎町やゴールデン街を見ると、非常に狭い区画に、小さな店舗が無数に入っていることがわかります。多くの人が足を踏み入れたことがあるであろう歌舞伎町が、これほど火災の危険度が高いとなると、少なからずショックを受ける方もいるのではないでしょうか。

これだけでも十分に火災が拡がるリスクがあるように思えますが、それを上回る、危険度4や5はどんな場所なのでしょうか。ARハザードスコープを見ると、新宿からほど近い、高円寺にその危険がありました。

“高円寺”は火災に注意? 火災危険度MAX5の地区とは

純情商店街近辺

高円寺純情商店街近辺は、狭い場所に小さい飲食店が立ち並び、老朽化した建物が多い地区です。

この地区の火災危険度はなんと4

「庚申通り商店街」にて

「庚申通り商店街」にて

火災が起きた際に、火が拡がりやすい地区ということを意味します。これまでに大規模な火災は起きてはいないものの、2013年に4人の死亡者が出ている火災が起きています。また、ボヤ騒ぎもよく起こっているようで、火災の危険と隣合わせです。

実際に足を踏み入れてみると、純情商店街は歩道の幅も広く、火災の危険があるように見えません。すぐ隣の路地に入ったところにある庚申通り商店街には、小さなお店が立ち並んでいますが、渋谷のセンター街などと比べても、特別、火災の危険があるようには見えませんでした。

しかしやはり、こじんまりとした飲食店が所狭しと並んでいるような地区には、火災が拡がるリスクが潜んでいることがわかります。また、高円寺という土地柄、古い建物が多いことや、商店街の裏には住宅も立ち並んでいることが、火災が拡がる危険性へとつながっているのかもしれません。

高円寺〜中野の中間にある住宅地


そして、純情商店街を抜けて大通りに出て、しばらく中野側に進むと、なんと火災危険度5の地区に行き着きます。

ここは住宅地となっていて、多くのマンションやアパートが立ち並ぶ地区となっています。

この地区の物件を見てみると、築年数の古いアパートも少なくなく、消防車が入れないような狭い路地も多いため、火事が起きた場合、大事になりやすいように思えました。実際にこの地区の活動困難度は4で、消防士の救出活動が困難なことがわかります。倒壊危険度は3ですが、大地震が起きたときを考えると、安心はできないでしょう。

ARハザードスコープを見ると、高円寺や中野には、火災危険度4、倒壊危険度3の地区が多いことがわかります。この場所は、どこも住宅地で古いアパートが狭い土地に密集している地区。災害時に最も危険な地区は、どうやら古いアパートが密集した住宅地ということのようです。

馴染みの街の災害への危険度を要チェック!

渋谷からスタートし、新宿歌舞伎町、高円寺と見てきましたが、火災危険度と倒壊危険度、最もリスクが高いのが古いアパートが密集した地区、次点が小さな飲食店が密集している地区ということがわかりました。

歌舞伎町、高円寺に通い慣れている人にとって、身近な場所が震災や火災時に被害が拡がるリスクがあるということはショッキングなことでしょう。また、この地区に馴染みがなくても、昔からあるような古い飲み屋街が好きという方、古いアパートが立ち並ぶ住宅街に住んでいるという方は、一度、ARハザードスコープを使って危険度を確かめてみた方がいいでしょう。

まずは一度、自分のオフィスがある街や住んでいる街の災害への危険度を確かめてみましょう。ARハザードスコープを使うことで、危険度が高くなるほど、馴染みの街の景色に赤い色が表示され、実感を持てるはず。防災を身近に感じられるひとつのきっかけになるかもしれません。

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