新年度が始まりました。「今年から新人の教育をしなければならないけど、どう接したらいいかわからない……」。そう悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
新人教育は、新人にとってはもちろん、人材の育成という面で企業にとっても重要なこと。しかし、画一的な指導方法では従業員の個性を伸ばすことはできません。そこで、新人教育の「これだけはやってはダメ」という最低限のルールをご紹介します。あなたと新人が、お互いを高め合える良きパートナーとなれるよう、新人教育に力を入れてみませんか。
目次
教えるために「行動の分析」をしよう
みなさんの中には、新人教育をしたことがあり、「いくら教育しても改善されない」「行動や考え方を変えてくれない」と悩んだ経験のある方も多いことでしょう。そのとき、なぜ思い通りに仕事をしてくれないのか、考えてみたことはありますか。
教育の改善をする鍵は、後輩や部下に対して、教え方が上手ではなかったと認識すること。もしかしたら、彼らの性格にあった指導ができていなかったり、悩み事があって仕事どころではなかったりするのかもしれません。指導をするために、まずは自分の今までの教え方を振り返ってみましょう。
教え方には、3つの基本があります。
①新人の行動や考え方を考えてみる
②正しい行動や考え方ができているのであれば、背中を押す
③もし行動や考え方が間違っているのであれば、正しい行動や考え方になるように仕向ける
このように、その人自身の行動、考え方を正すにはどうしたらいいかに着目することで、良い指導ができるようになります。
【間違い①】会社が掲げているビジョンと個人の目標の熱意と方向性は同じ
同じ会社にいると、勘違いしがちなのは「会社が掲げているビジョンと個人の目標の熱意と方向性は同じ」ということ。同じ会社にいるからと言って、会社の目指しているビジョンと、働いている社員が同じ向きを向いて、同じ熱量で働いているとは限りません。
たとえば、働く目的は「給料の増加」だけではありません。家族との時間を大切にしたい、将来独立したいなど、社員の数だけ、目的や価値観が異なります。
仮に、あなたの部下が将来独立を考えていたとします。今の仕事は、いつか独立するための学びの期間として捉えている場合、どのように働きかけることが得策でしょうか。案1、案2のどちらかを選んでみてください。
案2 この仕事を頑張ることで、○○の知識が身につくから、きっと独立したときにも役立つよ
【案1】の場合、その方にとって給料が上がることが第1目標ではないと、あまり効果的とは言えません。しかし、【案2】であれば、その方にとっての目標と、仕事についての目標が合致するため、モチベーションを向上させることができるでしょう。
個人の目的を知り、その目的と仕事との接点を考えて、叱咤激励をする
【間違い②】多くの経験や知識から得た成功談を話す
新入社員にとって、仕事を1から教えてくれる先輩や上司は、たくさんの知識と経験を持っているあこがれの存在。
とはいえ、現在仕事を難なくこなしている方にも、必ずできなかった時期があり、多くの失敗を重ねてきたことでしょう。しかし、新入社員にはその姿はなかなか見えず、自分と先輩や上司と比べてしまい、「なんで自分はこんなにできないんだろう」とモチベーションが低下してしまう人もいるかもしれません。
「先輩はできる人だから、こんな難しいことを要求するんだ」と思われてしまうと、心の壁を閉ざしてしまい、伝えたいことが伝わりにくくなってしまいます。
そこで、あえて成功談ではなく、失敗談を話してみましょう。そうすることで、先輩にも自分と同じく悩んだ時期があったんだ、こうやって乗り越えてきたんだと、新入社員の先輩や上司に対する考え方が変わり、より話に耳を傾けるようになります。
さらに、「実は当時はこんな風に失敗したんだ」と伝えることで、「それなら、こんな方法で試して見るとどうだろうか」と新しい選択肢を考えやすくなります。成功のエピソードばかりを伝えると、ひとつの方法に対して正解を与えてしまうことと同じなので、他のやり方を探すことなく、考える機会を奪ってしまうことにもつながりかねません。
話に耳を傾けてもらうために、あえて失敗談を話そう
【間違い③】任せた仕事が頓挫したとき、部下が悪いと決めつける
部下に対して、正しく、丁寧に仕事を教えたつもりでも、思うような成果が上がらない場合があります。
そのとき、「こんなに教えたのに。やる気がないんじゃないのか」と思う方もいるかもしれません。ですが、この考え方には、大きな誤りが2つあります。
①成果が上がらないのは、気持ちが仕事に向いていないからだ
②仕事をすべて教えたのにできないのは、部下の仕事の方法が悪いんだ
しっかり教えているのに、なぜ成果が上がらないのか。その失敗の原因を分析するときは、どうやって教えたのか、自分の行動を振り返ってみましょう。
たとえば、以下のようなことはありませんか?
・説明が抽象的で、なぜ仕事をするのか、何をするのか、きちんと伝わっていなかった
・教えたレベルが高すぎた。もっと基本的なことを伝えていなかった
・仕事の全体像を伝えていないため、締め切りの設定が甘かった
このなかで、1つでも可能性があった場合は、しっかりとコミュニケーションをとることを意識してみましょう。
指導方法を変えずに、「もっとちゃんと仕事して!」と伝えても、新人にとってはお門違いもいいところ。職場の雰囲気も悪くなり、個人のモチベーションはさらに低下してしまうかもしれません。
仕事ができていなかった場合は、教え方を見直してみる
【間違い④】プライベートの話は一切しない
人は、最初から心を開くことはありません。最初から親しく話せる方であっても、なかなか悩みや考えていることを打ち明けるには、時間がかかるものです。
しかしわかっているものの、職場だから仕事の話ばかりしている……という方はいませんか?実は、新入社員との接し方でよくないのは、「仕事の話をいきなりする」ことです。
新入社員と先輩・上司の双方が、プライベートの話を共有し、お互いに性格や行動の特性がわかるようになると、仕事の話がスムーズにできるようになります。
たとえば、趣味の話や、お昼に何を食べたかをきくのもいいかもしれません。少しずつ会話を重ねていくことで、新入社員は安心し、先輩、上司が安心できる存在だと認識できるようになります。そういう状態の方が、教えたり、教えられたりする行為もスムーズに運びます。
新入社員の育成で大切なのは、上司や先輩であるあなた自身が、新入社員の方の話を聞く習慣を身につけること
【間違い⑤】”社内用語”と”曖昧な言葉”を多用する
普段、仕事をする上で使っている言葉でも、初心者である新入社員にとってはわからない言葉があります。たとえば、「ボトルネック」や「リスケ」、「着地」などです。業界によって使われている言葉は違うかもしれませんが、共通するのは、「プライベートの会話で使わない用語」ということ。新入社員にとって使い慣れていない言葉は、より具体的に、行動を起こせるよう言い換えることが必要です。
なお、よく使いがちな言葉にも、伝わるようで伝わらないものが数多く潜んでいます。
たとえば、「しっかり管理してね」のしっかりって、どんな行動や状態を求めているのでしょうか。「丁寧な対応」の丁寧とは、どこまですることを指すのでしょう。
自分がいつも使っている言葉の癖を考えて、具体的な行動を伝えられるようにすることが、教え上手になる第一歩となるのです。
社内用語は多用していないか?「しっかり」や「丁寧」など、曖昧な言葉を多用していないか?自分の言葉の癖を見直そう
まとめ
新入社員に新しい仕事を教えたり、仕事の進め方や行動、考え方に対して指導を行ったりするときに、大切なのは「行動」に着目することです。
この人はどのように考えて、なぜ行動したのだろう?ということを考えてみてください。成果をあげるために必要な行動が取れている場合は背中を押し、できていない部下には、正しい行動を判断できるようになるまで教えましょう。
また、部下が年上であったり、外国人であったりしても、着目するのは「行動」です。そうすることで、指導する側も悩むことなく、適切な指導をすることができます。
新人の中には、外から見ていた会社と、中に入ったときに感じたギャップで、悩んでいる方もいるかもしれません。そんな状況で、頼む業務が単調な作業になってしまうと、働く意欲を削いでしまうことになりかねません。
そのときは、今回の5つのアドバイスをもとに、適切な指導をすることを心がけましょう。「日々の行動の積み重ねが、会社の売り上げや利益につながり、そのおかげでクライアントや社会へ貢献することができている。ひいては、会社のビジョンの達成につながるんだ」と伝えるだけでも、新入社員の意識はまったく変わってくるかもしれませんよ。