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依然として猛威を振るう新型コロナウイルスに勝つ 感染症を対策したBCPを策定しよう

新型コロナウイルスの感染拡大は、世界中の多くの産業に影響を与えました。
業務停止や廃業に追い込まれた企業も少なくなく、リモートワークや時差出勤など働き方にも新たな工夫が必要となりました。
企業が緊急時に事業を存続させるためのBCP(業務継続計画)は、もはや地震や水害といった自然災害だけでなく、感染症も視野に入れて見直しが求められます。

そこで本記事では、感染症が企業活動に与える影響を再確認し、感染症特有の対策やBCPの策定方法について解説します。
感染症に対する対策強化を図りたい方、BCPの策定・見直しを検討している方は、ぜひ参考にしてください。

感染症が企業活動に与える主な影響

感染症は個人の生活だけでなく、企業活動にも様々な影響を与えます。
従業員の感染により事業が停止したり、社会的な感染拡大により需要が落ち込み、売上が低下したりするケースが考えられます。
以下で、感染症が企業活動に与える主な影響について、詳しく見ていきましょう。

従業員の感染による事業活動の停止

社内の従業員が感染症を患った場合、他の従業員や顧客・取引先への感染拡大を防ぐため、一時的に業務を中断したり、人手不足により事業活動の停止を余儀なくされたりする恐れがあります。

新型コロナウイルスの流行当初は、感染者または感染と疑われる症状がある者が現れた場合、全従業員の出勤が停止となるケースが多く見られました。自宅からのリモートワークでは対応が難しい作業もあり、業務効率が落ちて事業活動に大きなダメージを与えてしまいます。特に、サービス業やエンターテインメント業は、ヒトが重要な資源です。従業員や出演者の感染・体調不良により、多くの店舗が休業したり、公演が中止となったりしました。
また、従業員の感染だけでなく、移動制限や行政からの外出自粛要請により、十分な人員を確保できず、事業活動が滞ってしまう企業も存在しました。

事業活動を停止すれば当然、売上は低下し収支の悪化を招きます。会社の利益が減れば、事業拡大はおろか企業の存続も危うくなり、雇用調整を行わざるを得なくなります。また、社会に与えるイメージやブランディングにも影響する可能性も否めません。

需要の落ち込みによる売上減

感染症の流行拡大は人々の行動傾向も左右し、サービスや商品の需要変動を引き起こします。感染症によって需要が高まるものもあれば、需要が落ち込むものも存在し、売上の低下に繋がります。

新型コロナウイルスの流行では、マスクや非接触型体温計、手指消毒剤などの感染防止対策グッズの需要が高まりました。また、テレワークの普及により、IT関連商品やサービスが続々と登場し、注目を集めています。
一方で、感染症拡大防止のため人の動きが落ち込み、観光業やサービス業、エンターテインメント業は大きな打撃を受けました。ホテルや旅館などの宿泊施設や、航空会社や航空会社、飲食店や劇場、アミューズメント施設などは、利用客の足が遠のき売上が大きく減少しました。行政からの支援制度があったものの、それだけでは事業活動を維持できず、事業停止や廃業に追い込まれた企業も少なくありません。

感染症を防ぐための移動制限や行政からの外出自粛要請により、需要が落ち込んだり、人の往来が途絶えたりすれば、売上が大きく減少し、企業の存続を揺るがす恐れがあります。

物流網の停止

感染症の拡大は物流網にも影響を及ぼします。サプライチェーンが確保されなければ、商品を必要な顧客の元へ届けられず、取引や事業の縮小・中断に繋がってしまいます。また、物流コストの拡大により支出が多くなり、業績悪化も引き起こしかねません。

新型コロナウイルスの感染拡大は、国内外を問わず物流網に大きなダメージを与えました。
海外輸送では港湾混雑・コンテナ船の沖待ちが続き、輸送遅延が発生しました。コンテナ不足により海上運賃・航空運賃は高騰し、荷主は輸送リードタイムが延びたことで、在庫積み増しや緊急輸送により物流コストが増加しています。また、陸上輸送においても各地のロックダウンや移動制限、輸送の人員不足、国境を越える検疫などによって、大幅な遅延が発生しました。必要物資の供給が断絶するリスクが、多くの企業の前に立ちはだかりました。

物流が滞れば事業活動を正常に行えなくなる恐れがあります。
また、物流は生活インフラの一つであり、人々の生命や社会経済活動の維持に欠かせません。しかし、感染症防止対策の徹底は、人の力を必要とする物流機能に根本的に相反するものと言えます。

自然災害とは異なる感染症に求められる対策

日本は地震や台風・津波などの水害、豪雪や火山の噴火といった自然災害が頻繁に起きる国です。そのため、自然災害に対する対策や訓練は、比較的慎重に実施している企業が多いでしょう。
しかし、企業活動に影響を及ぼしうるのは自然災害だけでなく、テロや火災などの人的災害やサイバー攻撃などもあります。特に、新型コロナウイルスの流行が明らかにしたように、感染症は長期的な現象であり、辛抱強く対処しなくてはなりません。そのため、他の非常事態と比べ、特殊な準備が求められます。

以下で、自然災害とは異なり、感染症に求められる対策について見ていきましょう。

正確な情報の入手及びその都度の迅速な判断

自然災害は過去の事例や科学的な予測から、ある程度の影響を想定できる一方、感染症は長期化の傾向が見られ、不確実性が高く予測が困難です。実際に、新型コロナウイルスは流行当初から終息までの目処が立たず、「ウィズコロナ」と呼ばれる感染症とともに暮らす生活が標準化しています。
未来が不透明な状況下でも、従業員や顧客への感染リスク、事業を続ける社会的責任や収入確保などの経済的側面を考慮した上で、事業活動の継続可否や程度を判断していく必要があるのです。
企業活動にとって重要な判断をするためには、正確な情報を入手することが大前提となります。出典不明な不確実な情報に惑わされず、公的機関の発表やデータを元に、その都度迅速かつ適切な判断をしなくてはなりません。

ヒトへの対策を重視

自然災害は施設・設備や社会インフラに甚大な被害を及ぼすのに対し、感染症の主な影響はヒトへの健康被害です。つまり、感染症の流行が拡大すれば、経済社会活動の基本資源であるヒトの動きが機能せず、途絶えてしまう可能性があります。そのため、事業活動を継続させるためには、感染拡大時の従業員確保策や代替策をあらかじめ検討しておかなければなりません。

また、感染拡大時には移動制限や人員不足により、物流網の停止も予想されます。サプライチェーンが確保されなければ、感染予防や事業活動に必要な物資が不足する恐れがあります。万が一の事態に備え、平常時から備蓄を進めておくことが肝心です。

それぞれの施設や事業規模に合った感染対策の徹底

自然災害は被害の影響範囲が地域的かつ局所的であり、代替施設での事業継続や作業の補完が可能です。ただし、兆候がなく突発的に被害が発生するため、あらかじめ被害量を制御することが難しいです。

一方で、感染症は全国的及び全世界的に影響を及ぼすため、代替施設での事業継続や作業の補完ができない可能性があります。ただし、感染症の流行が海外で発生した場合、国内侵入や発生までの間に準備をしたり、データから被害を予測したりできます。また、感染対策を徹底することによって、被害量を制御できる可能性も高いです。

自然災害とは異なり感染症流行下においては、それぞれの施設や事業規模に合った感染対策の徹底が欠かせません。例えば、介護施設においては、レクリエーション時に利用者同士が対面にならないように椅子を配置したり、声を出す機会が少ない内容を検討したりします。また、通勤と職場の服を分けることも有効的な感染対策の一つです。

感染症に対して企業が策定すべきBCP

新型コロナウイルスの感染拡大を機に、感染症の流行が拡大しても、事業活動を継続するためのBCPを策定することが、企業の重要課題となっています。
では、自然災害とは異なる対策が求められる感染症に対して、BCPをどのように策定すべきでしょうか。
以下で、BCP策定のポイントを見ていきましょう。

企業内の役割分担と情報共有体制の構築

感染症が流行した際、従業員の健康被害や事業活動への影響を最小限に抑えるためには、迅速な初動が重要です。BCPではあらかじめ、平常時と緊急時の情報収集や伝達・共有体制を整える必要があります。
そのため、全体の意思決定者と、誰が何を行うのか各業務の担当者の役割分担を明確にしておくことがポイントです。また、各従業員や関係者の連絡先、連絡フローの確認も欠かせません。

感染者が発生した場合の対策の検討

感染症が流行した場合、社内でいつ感染者が発生してもおかしくありません。
いざ感染者が発生した時、他の従業員やその家族、顧客の生活を守るためには、二次感染のリスクを防ぐことが重要です。
感染者や濃厚接触者への自宅待機指示や、賃金の取り決めについて事前に明確化しておくことで、従業員とのトラブルを防いでスムーズに対応できます。
また、接触者リストの作成と健康観察、オフィス内の消毒や業務の一時停止、感染者が発生した旨の公表など、行うべき業務は様々です。誰が何を担当するのかも、取り決めて共有しておく必要があります。

業務の優先順位付け

感染症の流行下では、人員や物資が不足したり、インフラが機能しなかったりする恐れがあります。また、行動制限や行政の自粛要請などにより、人々の行動や需給バランスが変化し、売上に影響を与えるかもしれません。
平常時と状況が異なる場合、限られた条件の中で最善策を選べるかが、企業の未来を左右します。緊急時に中止・縮小・継続させる事業の優先順位付けを、あらかじめ行っておくことがポイントです。

事業の停止・縮小を見据えた運転資金の確保

感染症の流行により、事業の停止や縮小を余儀なくされるケースもあります。業務活動を行えなければ、売り上げが得られず、運転資金が逼迫するリスクも高いです。
感染症による経営状況の悪化を避けるためには、業務の停止や縮小を見据えて、一定の運転資金を確保しておくことが重要です。具体的な金額や資金調達方法まで、計画を練る必要があります。

策定したBCPの従業員への周知・研修

BCPは策定したら終わりではありません。
緊急時に効果を発揮するためには、BCPについて従業員全員が把握し、即座に実行できる力を備えている必要があります。
BCPに関するセミナーや研修、勉強会を定期的に開催し、従業員のリスク管理意識を高めることが肝心です。

感染拡大状況や時勢の変化に応じたアップデート

BCPを策定していても、内容に誤りがあったり、古い情報が残っており現場に正しく対応できなかったりするケースも見られます。
BCPは一度作ったら終わりではなく、感染拡大状況や自制の変化など、最新情報に応じた定期的なアップデートが求められます。

感染症下でも事業活動を止めないためのBCP策定

今回は感染症が企業活動に与える影響や、感染症特有の対策・BCPの策定方法について解説しました。
自然災害とは異なり、感染症の流行拡大は被害範囲や被害量が予測しづらく、不確実なことが多い中で事業活動を続けなければなりません。企業と従業員を守るためには、感染症が与え得る影響について把握し、事前にできることを準備しておく必要があります。いざという時に焦らず対応できるよう、有効なBCPを策定しておきましょう。

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