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BCPにおいて大切な安否確認の方法とは

近年、頻発する災害に悩んでいる企業内の責任者の方々も多いことでしょう。2011年の東日本大震災の時のような大規模な災害では、震源地から離れていても帰宅難民が発生する恐れもあります。2018年の北海道でもブラックアウトと呼ばれる停電で事業が大きな痛手をこうむりました。

災害時における事業継続計画(BCP)において従業員の安否確認は非常に重要です。そこで今回は、災害時の安否確認の方法で押さえておきたいポイントをいくつかご紹介します。

 

災害時に安否確認が重要である理由

企業にとって大切なのは、商品やお金だけではなく、それらを動かす人材であると言えるでしょう。災害時に素早く業務を復旧させるためには、どうしても人材が必要です。

災害時における安否確認は、従業員とその家族が無事であるかどうかだけではなく、従業員が業務に就くことが可能かどうかを確認するためのものでもあります。出社可能な、あるいは業務に携わるのが可能な従業員が確保できれば、事業が滞るのを防ぐことができ、通常業務への復旧も迅速に行えるでしょう。

つまり非常事態であっても事業を続けるためのプランにおいて、ヒト・モノ・カネの3つはどれも欠けてならないポイントであり、災害時における人材確保のために必要なのが安否確認システムなのです。

さらに、緊急時には何が起こるかわからないため、安否確認の方法を、1つだけではなく複数用意しておくことが賢明です。固定電話、携帯電話、PCメール、アプリなど、それぞれに異なった技術で運用されている手段をいくつか用意しておくことで、安否確認の成功率をあげることができます。

参考
北海道のブラックアウト、なぜ起きた?
企業におけるBCP(事業継続計画)の必要性

安否確認の方法の例

それでは、安否確認にはどのような方法があるのでしょうか。1つずつ見ていきましょう。

メールによる安否確認

安否確認にはいろいろな方法がありますが、多くの会社で取り入れられている方法が、メールによる連絡網でしょう。総務などが前もって社員のメールアドレスを一括で管理し、平時には会社全体に対して行う注意喚起などの連絡に使います。緊急時に安否確認を行う際も、普段から利用している連絡手段であれば操作等に迷うことなく迅速な対応ができます。
しかし、災害時などには利用者、利用数ともに爆発的に増えることで、メールサーバーの負担が増えてしまい、通常時のように迅速にメールを送るということができなくなってしまうという弱点があります。

安否確認のためのアプリやサービスによる安否確認

安否確認のためのアプリやサービスも数多く開発されています。災害を想定して作られており、広域災害時も稼働するように設計されています。各社が提供している安否確認のアプリやサービスには以下のようなものがあります。

トヨクモ 安否確認サービス2

トヨクモの安否確認サービス2は初動で必要な安否の確認だけでなく、その後のコミュニケーションにも配慮されています。どのようにすべきかの指示や、怪我の有無を含めた就業に関する状況報告などを掲示板や個別のメッセージ機能を使ってやり取りすることができます。

また、東日本大震災のような大災害も想定し、メインサーバをシンガポールに、バックアップサーバを米国と日本に置いています。このようにサーバを国際的に分散して置くことで、リスクを軽減しています。さらに、アクセスの集中や、災害の発生により、自動的にサーバを拡張するシステムになっています。

セコム 安否確認サービス

セコム安否確認サービスは国内最大級の安否確認サービスです。24時間365日対応してくれるサービスです。災害が発生すると、まずセコムから管理者へ通知が行きます。そして、セコムが管理者の代わりに社員に一斉メール送信し、安否確認を行います。

管理者は、返信のあった社員に対し個別に、「待機」「出社」「別の拠点の支援」など、追加の指示を送ることができます。料金は初期費用が税抜200,000円、月額基本料金が税抜30,000円からとなっています。

NEC 緊急連絡・安否確認システム

NECの安否確認システムの特徴は、選択肢を選びメールまたはスマホアプリで回答するなど、シンプルであることです。災害時にはパニックになりやすいことを考えれば、操作が簡単なのは嬉しいことです。

料金は、社員の人数によって設定されています。社員が100名以下なら月額税抜12,000円、200名以下なら月額税抜14,000円というように100名増えるごとに2,000円ずつ加算されていく方式です。

みんなのBCPでは、契約社数1000社超えの人気システムの比較や、28システムの比較記事も公開しています。

災害時にのみ、通信各社から提供されるサービス

通信各社が用意する緊急時用のサービスは、今までの災害時にも多くの方が利用しており、認知度の高いサービスです。しかし、個人での利用を前提として作られており、安否確認に特化しているので、大勢のスタッフの安否を一度に確認したり、その後の指示や、連絡のやり取りに使うには不向きなシステムです。

NTT災害用伝言ダイヤル

災害用伝言ダイヤル171のことです。災害時にNTTが速やかにこのサービスを始めます。

まず「171」をダイヤルします。録音したい場合、「1」を入力します。被災地の固定電話の番号を入力します。次に「1#」を入力します。自分の名前、居場所、状況を録音します。「9#」で終了となります。

家族や知人が録音したものを再生して聞きたいときは、「171」をダイヤルし、「2」を入力し、被災地の固定電話の番号を入れた後、「1#」で再生します。再生後のメッセージの録音は「3#」です。

料金は、NTT東日本・NTT西日本の加入電話機と、災害時用公衆電話機からは無料、それ以外は各通信社で異なります。

通信会社による伝言掲示板< docomo / au / ソフトバンク / Y!mobile

災害時にのみ使えます。震度6弱以上の地震などの災害時に、docomo、au、ソフトバンク、Y!mobileなどが用意する伝言掲示板で、伝言掲示板にメッセージを残すとインターネットを通して、世界中からその登録情報を確認することができるというものです。

また、平時に登録しておいた宛先に向けて、伝言掲示板にメッセージがあることをお知らせすることもできます。

docomoとauは1つの電話番号につき10件まで、ソフトバンクとY!mobileは1つの電話番号につき80件まで登録でき、規定件数を超えた場合は古いものから順次消去される仕組みとなっています。基本的に利用料は無料ですが、会社によって別途パケット料金などが発生する場合もあります。

連絡用アプリによる安否確認

コミュニケーションの機能に特化したアプリには災害時に利用できるものもあります。プライベートで使っている人も多いアプリのため既にIDを持っていたり、操作に慣れている方の多い連絡手段です。ただ、集計の機能などは備わっていない為、大人数の安否確認には不向きです。

LINE

LINEは、東日本大震災の発生した2011年3月には開発途上でした。この震災を受け、「緊急時にこそホットラインが必要だ」という思いからLINEには既読マークが取り入れられました。LINEの既読マークは相手が被災して返信すらできないときでも、メッセージが伝わったか否かを判断できるようにとつけられた機能なのです。

電話回線がつながっていなくても、インターネット回線がつながっていればトークは可能です。緊急連絡網のグループを設定しておけば、非常時に一斉に安否確認することができます。

大規模災害時には自動で安否確認画面が出るので、そのときの状況を選択し、メッセージを送信することができます。

Skype

インターネット回線での通話を無料ですることができるSkypeも震災時に有効です。電話回線ではなくインターネット回線なので、携帯電話などがつながりにくくなった場合でも、インターネットさえつながれば災害時でも通話がしやすいという特徴があります。

音声の通話だけではなく、LINEと同じように文章でメッセージを個別に送る機能もあるため、落ち着いて通話ができない状況でも文章によるやり取りが可能です。

SNSによる安否確認

SNSによる安否確認という方法もあります。利用者が多く、情報発信をしやすいという特徴がありますが、メッセージを見たかどうかなどの確認がしにくいものが多く、どちらかというと安否確認や、指示などの情報発信をするという対応に向いています。

Twitter

Twitterのつぶやきや、メッセージなどの機能を使うことで安否の確認を行うこともできます。ただし、個別メッセージの送付ややり取りにはお互いのフォローが必要です。会社のアカウント宛に社員にメッセージを入れてもらうという方法も考えられます。緊急時にはメッセージの発信の場として使うこともできます。

また、Twitterもインターネット回線のためつながりやすく、安否確認をするのに良いでしょう。安否確認だけではなく、首相官邸のアカウント(https://twitter.com/kantei_saigai)をフォローするなど、災害時に情報を発信するアカウントをフォローすることで、迅速に情報収集をすることもできます。

facebook

facebookには現在、「災害時情報センター」という機能が付いています。自然災害が発生すると、該当地域のユーザーに、安否確認のメッセージが入ります。それに返信することでグループの皆に安否確認が伝わる仕組みになっています。

企業のBCPにおいて大切なのは、従業員の安否確認だけではなく、その後の災害対策の指示がどの程度伝わるかという点です。安否確認システムでは、自動配信、自動集計だけでなく、社員全員が指示を確認できる掲示板や、責任者クラスなどの一部のグループの間だけで議論できるサービスがあります。

会社の規模やその他さまざまな条件に合わせて、BCPの安否確認の方法を選ぶことをおすすめします。

参考:
らくらく連絡網
非常時の連絡手段Skype
セコム安否確認サービス 法人向けサービス
NEC緊急連絡・安否確認システム
NEC緊急連絡・安否確認システム 利用料金
トヨクモ 安否確認サービス2
NTT東日本 災害用伝言ダイヤル(171)概要とご提供のしくみ
災害時に役立つLINEの活用方法
Twitterの災害時の使い方は?Twitterアラートとは?
Facebookが災害時に安否確認ができる新機能「災害時情報センター」を公開

まとめ

BCPにおいて、なぜ安否確認が重要なのか、そのための方法には何があるのかを紹介しました。

非常事態に業務を迅速に復旧するには、人材の確保が優先です。安否確認の方法としては、メール、各社が提供する安否確認サービス、伝言ダイヤルに伝言掲示板、SNSも有効であることがご理解いただけたと思います。

そして、安否確認の先の、対策に関する指示の伝達の重要性についても触れました。今から、できうる限りの対策をおすすめします。

みんなのBCPでは、BCPの策定から、災害時の安否確認・事業継続計に関する様々な記事を公開しています。

 

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