災害が発生してサーバーが稼働しなくなると、事業活動が中断してしまうことがあります。そのような事態を防ぐ方法として、AWSの活用がおすすめです。AWSは、アマゾンが提供しているクラウドサービスです。
この記事では、BCP対策にAWSが有効な理由や、BCP対策にAWSを活用するメリット・デメリットについて解説します。後半ではAWSでBCP対策を実施する方法と注意点を説明するため、BCP策定を検討している経営者や役員、経営企画、DX担当者は参考にしてください。
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目次
日本企業におけるBCP対策の重要性
BCP(Business Continuity Plan)とは、自然災害などの緊急事態が発生した際に、事業を継続し、早期の復旧を図るための計画です。事業を復旧するまでの期間が長くなるほど、企業の存続は危うくなるため、BCP対策は企業において非常に重要なものとなっています。
BCP対策を実施すると、企業資産への損害を抑えられるだけではなく、ステークホルダーからの信頼獲得にもつながります。BCP対策の実施には手間やコストがかかるものの、できるだけ早く着手することがおすすめです。
BCP対策にAWSが有効な理由
AWSは東京リージョンと大阪リージョンというように、複数のリージョンでサービスを提供しています。自然災害が発生した際には別の場所に置いておいたバックアップから復旧できるため、データを紛失するリスクが低く、BCP対策として効果があるといえます。AWSで自動バックアップサービスを提供している点もBCP対策におすすめの理由のひとつです。
BCP対策にAWSを活用するメリット
ここでは、BCP対策にAWSを活用するメリットについて紹介します。
- 初期投資を抑えられる
- 運用コストを抑えられる
初期投資を抑えられる
AWSを活用すれば、初期投資を抑えられます。災害時のIT、システム、ネットワークインフラなどへの被害を最小限に抑えるDR(ディザスタリカバリ)では、物理サーバーの搬入や設置に多くの費用がかかっていました。
しかし、AWSを活用すると、クラウド上にサーバーを構築できるため、物理サーバーの搬入や設置の必要はなく、初期投資を大幅に抑えられます。
運用コストを抑えられる
AWSは従量課金制を採用しており、サービスを使用する期間のみ費用を支払うシステムです。利用しているサービスの料金を利用期間のみ支払えばよく、物理サーバーを設置する従来のDRよりも、運用コストを抑えられます。
定期的にAWS側がメンテナンスを実施する点も魅力のひとつです。面倒なメンテナンス作業がなく、さらに問題が生じた際にもベンダーが対処するため、担当者にかかる負担を軽減できます。
BCP対策にAWSを活用するデメリット
AWSを活用したBCP対策には、メリットだけではなくデメリットも存在しています。デメリットについてもあわせて理解しておきましょう。
- ネットワーク障害が発生すると利用できない
- カスタマイズの自由度が低い
ネットワーク障害が発生すると利用できない
BCP対策にAWSを活用するデメリットのひとつに、ネットワーク障害が発生すると利用できないことが挙げられます。2019年にAWSの東京リージョンでは、データセンター内のオーバーヒートが原因の障害が発生しました。それにより、多くの事業者が影響を受けました。
ネットワーク障害が発生してAWSを利用できなくなれば、AWS側が復旧作業を完了させるまで待つしかありません。オンプレミスよりもネットワーク障害の影響を受けやすい点は、AWSによるBCP対策のデメリットです。
カスタマイズの自由度が低い
カスタマイズの自由度が低い点も、BCP対策にAWSを活用するデメリットです。オンプレミスよりもカスタマイズの自由度が低く、パフォーマンスが低下する可能性があります。たとえば、AWSで提供しているデータベース「Amazon RDS」は、選択できるデータベースエンジンに制限があります。
オンプレミスでサーバーを管理している場合、自社の具体的なニーズに合わせて細かくカスタマイズすることが可能です。しかし、AWSを活用した場合ではオンプレミスのように細かくカスタマイズができないため、AWSのサービスに合わせて運用を行う必要があります。
AWSを利用したおすすめの安否確認システム
トヨクモが提供している『安否確認サービス2』は、AWSを利用しています。東日本大震災では急にアクセスが集中したことにより、多くの企業で安否確認システムが作動しないという事態が発生しました。しかし、安否確認サービス2ではAWSの堅牢なデータセンターで運用していることにより、災害が発生したときにも安定して稼働します。
また、全国一斉訓練後に訓練レポートが送付され、自社の防災意識を分析できる点もおすすめのポイントです。社内の回答率の時間推移や訓練全体の平均回答時間などがまとめられており、防災意識の変化も確認できます。
AWSでBCP対策を実施する方法
自然災害が発生し、事業推進に必要な基幹システムを使用できなくなることは、経営上のリスクが大きくなります。DRサイトを用意して、BCP対策を実施しておくことが必要です。
AWSにおけるDRサイトの構築方法には以下の4つがあります。
復旧にかかる時間 | 費用 | |
---|---|---|
バックアップ・リストア | ×(もっとも長い) | ◎(もっとも低い) |
パイロットライト | △(ウォームスタンバイの次に短い) | ◯(バックアップ・リストアの次に低い) |
ウォームスタンバイ | ◯(マルチサイトアクティブ/アクティブの次に短い) | △(パイロットライトの次に低い) |
マルチサイトアクティブ/アクティブ | ◎(もっとも短い) | ×(もっとも高い) |
バックアップ・リストア
バックアップ・リストアでは、Amazonの仮想サーバーであるEC2で定期的にバックアップを取り、S3でバックアップしたデータを保管します。そして、障害が発生した際には、S3からEC2にバックアップデータを戻す方法です。
引用:AWS
データをバックアップするだけであり、比較的コストが低い点がメリットです。しかし、本記事で紹介する方法のなかでもっとも復旧に時間がかかるというデメリットがあります。常に使用するシステムには向いていない方法といえます。
パイロットライト
パイロットライトでは、通常時にはデータのみ同期を行い、障害が発生した際に別のリージョンでシステムを立ち上げます。別のリージョンでシステムを立ち上げている間に、元のリージョンの復旧作業を行います。
引用:AWS
バックアップ・リストアよりも短時間で復旧できる点がメリットです。しかし、別のリージョンでシステムを立ち上げる必要があり、バックアップ・リストアよりも費用は高くなります。
ウォームスタンバイ
ウォームスタンバイは、定期的にバックアップを取り、別のリージョンで低スペックのシステムを常に稼働させる方法です。障害発生時には、別のリージョンのシステムに切り替えます。
引用:AWS
障害が発生した際にすぐに復旧できる点がメリットです。しかし、常に別のリージョンでシステムを稼働させるため、パイロットライトよりも高い費用が発生します。
マルチサイトアクティブ/アクティブ
マルチサイトは、異なるリージョンで同様のシステムを常に稼働させる方法です。
引用:AWS
障害が発生した際にはフェイルオーバー機能が働き、すぐに復旧できます。しかし、常に別のリージョンでシステムを稼働させるため、本記事で紹介した方法のなかでもっとも費用がかかる点がデメリットです。
BCP対策にAWSを活用した事例
BCP対策にAWSを活用した事例として、ディップ株式会社の事例を紹介します。ディップ株式会社は、『バイトルドットコム』や『はたらこねっと』などの求人サイトを運営している会社です。
ディップ株式会社の主軸はWebサービスであるため、災害が発生してデータセンターを運用できなくなると、事業の継続が難しくなります。そのような状況を回避するために、DRサイトの構築とバックアップを、AWSを活用してデータセンターとは別拠点であるシンガポールリージョンに置くことにしました。
保有するデータ量と導入のしやすさ、コストという点が高く評価され、AWSが選ばれました。また、AWSはAmazon VPCを基盤としており、災害対策を安全かつリーズナブルに実現できる点も評価されています。
BCP対策にAWSを活用する際の注意点
BCP対策としてAWSの活用は有効ですが、接続している回線がつながらない状況となれば、業務が中断してしまいます。そのため、サーバーだけではなく、回線にもBCP対策を実施しておくことがおすすめです。具体的な方法として、インターネット回線の冗長化が挙げられます。
インターネット回線の冗長化とは、あらかじめ回線を複数用意しておき、障害が発生した際に別の回線に切り替えられるようにしておくことです。メイン回線とは別でバックアップ用の回線を用意する必要があり、回線費用が高くなるものの、回線が原因で業務を中断することを防止できます。
AWSの堅牢なセキュリティでBCP対策を
AWSは東京や大阪など複数のリージョンでサービスを提供しています。東京で災害が発生した際にも大阪リージョンからバックアップしておいたデータを戻せるため、AWSはBCP対策としておすすめです。
BCP対策にAWSを活用するメリットには、初期費用や運用コストを抑えられるというものがあります。ただし、ネットワーク障害が発生した場合に利用できない、カスタマイズの自由度が低いというデメリットもあるため、メリット・デメリットを考慮したうえで導入を検討する必要があります。サーバーにBCP対策を実施しても回線がつながらなければ業務が中断するため、サーバーとあわせて回線にもBCP対策を実施しておきましょう。
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