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【防災士が解説】ChatGPTを活用して介護施設のBCP作成を効率化する方法

【防災士が解説】ChatGPTを活用して介護施設のBCP作成を効率化する方法

2024年4月より介護事業におけるBCP(業務継続計画)の策定が完全義務化されましたが、「何から手をつければいいのか分からない」「時間がない」とお困りの方も多いのではないでしょうか?

そこでおすすめなのが、生成AIチャットサービス「ChatGPT」の活用です。ChatGPTを使えば、短時間で効率的にBCPを作成できます。

この記事では、防災士の視点から、ChatGPTを活用したBCP作成の具体的な手順やプロンプト例、注意点などを分かりやすく解説します。

BCP作成にお悩みの方は、ぜひ本記事を参考にChatGPTを活用してみてください。

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編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。

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ChatGPTで介護施設のBCPを作成するポイント

ChatGPTを活用して介護施設のBCPを作成するときは、以下3つのポイントを押さえておきましょう。

  • 厚生労働省が公開しているガイドラインを活用する
  • 現状把握を徹底する
  • 生成AIの運用ルールを遵守する

それぞれについて説明します。

厚生労働省が公開しているガイドラインを活用する

厚生労働省は、介護施設がBCPをスムーズに作成できるよう、ガイドラインや記入例、ひな形を公開しています。これらの資料には、BCPを作る上での基本的な考え方や手順、注意すべき点が詳しく書かれています。

ChatGPTを使用する際にも、これらの資料が役立ちます。たとえば、GPT-4o※1は無料版のGPT-3.5よりも多くの情報を処理できるため、政府のオープンデータ※2を読み込ませることで、それらの内容を踏まえた回答を得ることができます。

また、「GPTs」というChatGPTをカスタマイズできる機能を使うことで、BCP策定をサポートする簡易的なアプリを作成することも可能です。

※1 GPT-4o…言語や画像などを処理できるマルチモーダルモデルのこと。

※2 オープンデータ…二次利用が可能なルールで公開されているデータのこと。

現状把握を徹底する

ChatGPTは、BCP策定において非常に便利なツールですが、必ずしも正確な情報や最適な解決策を提示するとは限りません。

そのため、ChatGPTに頼りきるのではなく、まずは自施設の現状を正確に把握することが重要です。具体的には、人員数、設備状況、立地条件、過去の災害経験などを詳細に洗い出し、課題やリスクを明確にしておきましょう。

ChatGPTに質問する際は、

当施設は●●県○○市にあり、入居者数は△△人です。過去の災害経験としては、□□がありました。これらの情報を踏まえて、BCP策定のポイントを教えてください。

といったように、質問内容に具体的な情報を加えるようにします。

生成AIの運用ルールを遵守する

ChatGPTなどの生成AIを利用する際には、個人情報や機密情報の入力を避けましょう。入力した内容がAIの学習データとして利用されたり、回答に含まれて第三者に漏えいするリスクがあるためです。

組織内で生成AIの利用ルールが定められている場合は、必ずそれを遵守してください。まだルールがない場合は、速やかに施設内でルールを策定し、職員全員がルールを理解し、適切に利用できるよう周知徹底しましょう。

BCP策定に必要な情報を入力する際の注意点は以下のとおりです。

  • 社内規定やガイドラインに従い、個人情報や機密情報は入力しない。
  • ChatGPTの使用に関して、関係部署や上司の承認を得る。
  • 入力情報は事前に内容を精査し、判断が難しい場合はダミーデータを利用する。
  • オプトアウト※3を設定する。

これらのポイントを押さえ、適切な情報を入力することで、生成AIを効果的に活用し、実効性の高いBCP策定が可能になります。

※3 オプトアウト…ChatGPTに入力した情報を学習させないようにする機能のこと。

ChatGPTで介護施設のBCP策定を効率化するGPTs(アプリ)を作成する手順

ここでは、厚生労働省のガイドラインをひな型をChatGPTに読み込ませ、それに基づいた回答が得られるGPTs(アプリ)を作成していきます。

具体的な手順は以下のとおりです。

  • 厚生労働省のBCP資料をダウンロードする
  • GPTsを作成する
  • プロンプトを入力してテストする
  • GPTsの公開範囲を設定する

それぞれについて説明します。

免責事項:ChatGPTの最新バージョンであるGPT-4o(有料版)を使用しています。ChatGPTの回答は、必ずしも正確であるとは限りません。本記事の内容はあくまで参考情報であり、一切の責任を負いかねます。

1. 厚生労働省のBCP資料をダウンロードする

▲出典:厚生労働省「介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修

厚生労働省「介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修」にアクセスし、必要なガイドライン資料をダウンロードします。本記事では例として、自然災害編のPDF資料をダウンロードして使用します。

2. GPTsを作成する

ChatGPT Plusにログインし、サイドバーにある「GPTを探す」をクリックし、右上の「+作成する」ボタンをクリックしてください。

GPTsの作成画面はデフォルトで英語になっているため、プロンプトの最初に<code>日本語でお願いします。</code>と入力すると、以降のやり取りは日本語で行うことができます。

チャット入力エリアにあるクリップマークをクリックし、先ほどダウンロードしたガイドライン資料(PDF形式)と例示入りのひな型(PDF形式)をアップロードします。

GPTを使用して、自然災害時の業務継続計画(BCP)やガイドラインに関する情報を提供する支援ツールを作成します。次に進むために、最初にこのGPTに適した名前を決めましょう。以下の候補を提案しますが、他の名前を希望される場合はお知らせください。

災害対策サポートGPT

この名前でよろしいでしょうか?

※毎回同じ結果になるとは限りません。

アプリの名前を提案されるので、提案内容で問題なければ

OKです。

などと入力します。変更する場合は、任意のアプリ名を入力してください。

※アプリアイコンの設定も同じ流れで進みます。

次に、このGPTがどのように振る舞うべきか、具体的な役割や目標についてお聞かせください。例えば、「災害発生時の対応方法を案内する」「BCPの作成を支援する」などの指針を教えてください。

※毎回同じ結果になるとは限りません。

GPTsの役割や目標の詳細について聞かれるので、以下のプロンプトを入力してください。

アップロードした介護事業BCPガイドラインとひな形をベースに、以下の機能を持つGPTツールを作成してください。

機能

1.BCP策定の基礎知識の提供:

  • BCPとは何か、なぜ必要なのか、策定のメリットなどを分かりやすく解説する。
  • BCP策定の流れや各ステップで考慮すべきポイントを具体的に説明する。

2.自施設の情報入力フォーム:

  • ガイドラインとひな形に合わせて、自施設の基本情報(事業所名、所在地、職員数など)や事業内容、リスク評価結果などを入力できるフォームを提供する。

3.入力情報に基づいたBCP文書の自動生成:

  • 入力された情報を基に、ガイドラインとひな形に沿ったBCP文書の各項目を自動生成する。
  • とくに、以下の項目については詳細かつ具体的な内容を生成するよう工夫する。
    • 事業継続の優先順位
    • 具体的な対策(人員確保、代替施設の確保、情報伝達手段の確保など)
    • 訓練計画

4.追加情報や修正のサポート:

  • 生成されたBCP文書に対して、ユーザーが追加情報を入力したり、修正を加えたりできる機能を提供する。
  • 必要に応じて、GPTが追加情報や修正に関する提案を行う。

5.用語解説:

  • BCPに関する専門用語を分かりやすく解説する機能を提供する。
  • 分からない用語が出てきた際に、すぐに調べられるようにする。

その他

  • 最新情報への対応: ガイドラインや法令の改正など、最新情報を反映できるよう定期的にアップデートする。
  • ユーザーフィードバックの収集: ユーザーからのフィードバックを収集し、ツールの改善に役立てる。
  • セキュリティ対策: 個人情報や機密情報の取り扱いには十分注意し、適切なセキュリティ対策を講じる。

「基本的な設定が完了しました。」と画面に表示されれば、GPTの作成は完了です。

3. プロンプトを入力してテストする

GPTsの作成画面の右側にはプレビュー画面があり、プロンプトを入力して動作テストすることで、GPTがどのように機能するか確認できます。

プロンプト例:「自然災害ひな形(共通)」の文章を生成したいとき

たとえば、「自然災害ひな形(共通)」の「3.緊急時の対応」を作成したい場合は、以下のプロンプトと併せて、厚生労働省の「自然災害ひな形(共通)」(Excel形式)と、自治体の防災地図やハザードマップなどをアップロードしてみましょう。

有料老人ホーム「グレースコート」は、東京都品川区上大崎3丁目1−1にあり、入居者数は60人です。

「品川区防災地図」(PDF形式)を参考に、「自然災害ひな形(共通)」(Excel形式)の以下項目の入力案を作成してください。

3.緊急時の対応

3.1 BCP発動基準

3.2 行動基準

3.3 対応体制

3.4 対応拠点

注意:上記のプロンプトはあくまで一例です。施設・事業所の情報をより詳細に記載することで、より具体的かつ実用的なBCP策定案が得られます。

すると、以下のような回答が生成されます。

有料老人ホーム「グレースコート」の業務継続計画(BCP)に関する「緊急時の対応」の各項目について、以下のように入力案を作成しました。「品川区防災地図」(PDF形式)および「自然災害ひな形(共通)」(Excel形式)に基づいています。

3.1 BCP発動基準

  • 地震:品川区において震度5強以上の地震が発生した場合。
  • 水害:大雨警報、洪水警報、高潮警報が発令された場合。
  • 台風:施設所在地の東京都に大型台風の接近が予報された場合。


3.2 行動基準

  • 地震時:安全確認後、入居者の避難を優先。必要に応じて建物外の安全な場所(例:高台や避難所)へ移動。
  • 水害時:事前に避難情報を確認し、避難が必要な場合は早めに高台へ避難。施設内の水害対策(防水板設置など)も実施。
  • 台風時:窓や扉の強化、必要に応じて避難所へ移動。


3.3 対応体制

  • 対策本部の設置:施設長を中心に緊急対策本部を設置し、各部門のリーダーを配置する。
  • 役割分担:医療担当、安全確認担当、連絡担当、避難誘導担当など明確に役割を分担する。
  • 代替者:主要な役割には代替者を決めておく。


3.4 対応拠点

  • 地震時:1階の食堂を初期避難場所とし、必要に応じて高台にある近隣の避難所(例:大崎中学校)へ移動。
  • 水害時:2階の会議室を避難場所とし、水害の影響が少ない高台の避難所(例:池田山公園)へ移動。
  • 台風時:風雨の影響が少ない場所(例:2階会議室)に一時避難し、状況に応じて安全な避難所に移動。
  • これらの項目は、具体的な緊急対応を迅速かつ適切に行うための指針として機能します。各対応策について、日常的に職員に周知徹底し、定期的に訓練を行うことで、実際の災害発生時に備えることが重要です。

生成された内容は完璧ではありません。地域や施設の特性を反映した内容になっているか、正確性や網羅性など、必ず確認と修正が必要です。

ただし、厚生労働省のテンプレートを参考に、ある程度具体的な内容が生成されるため、BCP策定の効率化につなげられます。

プロンプト例:職員の安否確認方法を複数検討したいとき

より実効性の高いBCPを策定するには、複数のシナリオを比較・検討することが重要です。ChatGPTを活用することで、さまざまな状況を想定したシナリオを生成できます。

たとえば、以下のようなプロンプトを入力してみましょう。

当施設は、品川区上大崎にある入居者60名の有料老人ホームであり、職員は計22名です。地震、水害、停電などの災害発生時を想定し、以下の条件を踏まえて職員の安否確認方法を複数提案してください。

  • 各方法のメリット・デメリット
  • 必要な準備物
  • 運用上の注意点
  • 安否確認情報を効率的に収集・管理する方法

上記に加え、以下の点も考慮して提案してください。

  • 職員の年齢層やITリテラシー
  • 災害時の通信状況の悪化
  • 施設の規模や構造
  • 既存の連絡手段(携帯電話、メール、安否確認システムなど)の活用

これらの情報を踏まえて、当施設にとって最適な安否確認方法とその運用体制を検討できるよう、具体的な提案をお願いします。

長文のため詳細は割愛しますが、今回は4つの安否確認方法が提案されました。

これらの提案は、厚生労働省のガイドラインをベースにしているため、自施設の状況に合わせて取捨選択したり、内容を調整したりすることで、より実効性の高いBCPを策定できます。

4.GPTsの公開範囲を設定する

テストが終了したら、最後にGPTsの公開範囲を設定します。GPTsはデフォルトで公開になっているので、公開範囲を制限しましょう。

右上の「作成する」ボタンをクリックすると、ポップアップ画面が表示されます。

「私だけ」またはメンバー間で共有したい場合は「リンクを受け取った人」を選択してください。右上のボタンが「作成する」から「更新する」に変わったら、GPTsの運用を開始できます。

BCP策定にはトヨクモ『BCP策定支援サービス(ライト版)』の活用がおすすめ

ChatGPTはBCP策定を効率化できますが、あくまで補助的なツールです。ChatGPTが生成した内容だけで、自施設の状況に合わせた具体的な対策や手順を検討するには限界があります。

また、ChatGPTは介護施設特有の専門知識や法令に関する知識が必ずしも十分ではありません。

そこで、介護施設のBCP策定には、専門家によるサポートを受けられるトヨクモの『BCP策定支援サービス(ライト版)』の活用をおすすめします。

BCPコンサルティングは一般的に数十万円から数百万円かかりますが、本サービスは1ヶ月15万円(税抜)で提供しており、費用を抑えられます。

最短1ヶ月でBCP策定が可能なため、「すぐにBCPを策定して緊急時に備えたい」「リソースが不足している」といった介護事業所にもおすすめです。

「BCPを自社内で策定するのは難しい」とお考えの方は、ぜひトヨクモの「BCP策定支援サービス(ライト版)」をご検討ください!

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BCP策定支援サービス(ライト版)は株式会社大塚商会が代理店として販売しています。

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編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。