BCP(事業継続計画)とは、緊急時に企業への損害を最小限に抑え、事業の早期復旧を可能にする計画です。
災害や不測の事態は企業の存続に大きな影響をもたらします。そのため、迅速な策定が望まれるものの、日本企業のBCP策定率はさほど高くありません。BCPを策定したくても、どのような対策をしたらいいかイメージが沸かない企業も多いでしょう。
そこでこの記事では、企業におけるBCP策定の事例を紹介します。実際にBCPを策定している企業の事例も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
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目次
業種別|企業におけるBCPの策定例
BCP策定が不可欠とはいえ「BCPの具体的なイメージが沸かない」などと感じる方も多いはずです。そのような方に向けて、BCPの策定例を紹介します。
なお、BCPは業種によって具体策が異なるため、策定する際は同業種を参考にするのがおすすめです。今回は、以下の業種の例を解説します。
- 製造業
- サービス業
- 卸売業・小売業
- 情報通信業
- 建設業
- 医療・福祉業
- 輸送業・郵便業
- 金融業
製造業編
製造業は緊急時に製造ラインが停止すると、事業に甚大な被害をもたらす可能性が高いです。そのため、緊急事態が発生したときも製造ラインを止めない方法を模索しつつ、停止した際の代替案を用意する必要があります。また、製造業は原材料の調達や製品の出荷といった数多くの工程があり、それぞれに対処法が必須と言えるでしょう。
製造業における具体的なBCP対策は、主に以下のとおりです。
- 原材料や部品の調達方法の多様化
- 原材料や部品の在庫確保
- 製造ラインの複数確保
- 製品出荷ルートの多様化
- 製造ラインの遠隔操作
- 情報システムのバックアップ
- 取引先の複数確保
なお、製造業は作業中に緊急事態が発生すると、従業員の人命に大きな影響をもたします。そのため、従業員の安全確保を最優先しながらBCPを策定しましょう。
サービス業
サービス業はホテルのスタッフや飲食店など、幅広い職種が該当します。職種によってBCPの細かな内容は異なるものの、お客さまの身の安全も確保しなければいけないのが特徴です。具体的なBCP策定の一例は、以下のとおりです。
- 従業員やお客さまの安全確保
- お客さまの誘導
- 各種データのバックアップ
- 近隣の宿泊施設のピックアップ
勤務時間中に不測の事態が起こった場合、従業員がお客さまを安全な場所まで誘導する必要があります。いつ不測の事態が発生してもいいように、日頃から誘導場所を確認しておくと安心です。なお、従業員やお客様が自宅に帰れないときを想定した準備を行っておくと、スムーズに安全を確保できます。
卸売業・小売業
卸売業・小売業はBCPの必要性を感じにくく、策定そのものをあと回しにしている企業が多い傾向があります。しかしスーパーやコンビニなどの地域に密着した事業形態は、緊急時に必要とされるケースが多く、BCPの策定は欠かせないと言えるでしょう。実際、ヱトーでは取引先やその先の外注先などが影響を受けることを考慮して、BCPの策定に取り組んでいます。
卸売業・小売業における具体的なBCP対策は、主に以下のとおりです。
- 従業員の安全確保
- 店舗や倉庫などの耐震化
- 物流倉庫を複数設置
- オンラインを活用した販売方法の導入
- 顧客管理のシステム化
卸売業・小売業は他の企業と提携していたり、多店舗展開したりするケースが多いため、あらゆる事態を想定したBCPの策定が必要です。
情報通信業
一般的に情報通信業はお客さまに直接サービスを提供する事業であることが多いため、リモートを導入しているところは少なくありません。そのため、出社していない従業員に対する安全確保や安否確認も必要です。災害だけではなく、サイバー攻撃への対策も必須と言えるでしょう。
情報通信業における具体的なBCP対策は、主に以下のとおりです。
- 従業員の安否確認方法の確立
- データのバックアップ方法の構築
- データの復旧方法の策定
- システム停止時の代用案
災害時の対応とサイバー攻撃時の対策は異なる場合が多いです。BCPを策定する場合は、起こり得るリスクに合わせた対策を検討しましょう。
建設業
建設業は災害をはじめとする緊急時に工事が停止すると、損失が大きくなりやすいです。また、災害復旧に携わる可能性があることから、迅速な初動が可能となる体制を構築しておくのが望ましいでしょう。
建設業における具体的なBCP対策は、主に以下のとおりです。
- 工事現場や資材置き場の防災対策
- 柔軟な工期管理
- 協力会社の関係構築
- 従業員の安全教育
建設業は業務中に緊急事態が発生すると、従業員の人命に関わります。そのため、従業員の人命を最優先にしながら、今後の対策を講じる必要があります。
また、建設業は季節雇用の従業員がいるケースもあります。そのため、緊急時にそのとき在籍している従業員すべての安否確認を行うのが難しいでしょう。建設業の上田組では、誰でも操作しやすいトヨクモの『安否確認サービス2』を導入し、全員に漏れなく安否確認ができる体制を整えています。掲示板機能を利用し、普段から熱中症警報や作業時の注意なども全員に連絡しており、従業員の安全を守ることにつながっています。
医療・福祉業
医療・福祉業は治療を受けている方や高齢者、障害者など手厚い支援が必要な方との関わりが深い業界です。そのため、災害をはじめとする緊急時であっても、いち早く支援できる体制を整えておく必要があります。初動が遅くなると人命にも関わることから、BCPの策定は必須といえるでしょう。
医療・福祉業における具体的なBCP対策は、主に以下のとおりです。
- 非常用電源の準備
- 従業員および利用者の安否確認
- 栄養剤をはじめとする備蓄の準備
- 備蓄倉庫の確保
- 近隣施設や地域との連携
緊急時前より治療を受けている方は、迅速に避難することが難しいケースも多いです。そのような事態に備えた避難方法の策定なども考慮しておくといいでしょう。
輸送業・郵便業
輸送業・郵便業は緊急事態の発生によって平常時に使用しているトラックが使用できなくなったり、道路をはじめとするインフラの被災によって輸送機能が低下したりする恐れがあります。そのため、物流を止めない対策を講じておく必要があります。
輸送業・郵便業における具体的なBCP対策は、主に以下のとおりです。
- 輸送車両の現在位置の把握
- 交通インフラの情報収集手段の確保
- 輸送ドライバーとの連絡手段の確保
- 他の物流事業者との関係構築
- 代替輸送手段の確保
- 代替輸送ルートの確保
- 物流センターの代替施設の確保
輸送業・郵便業は輸送ドライバーが各自荷物を運んでいることから、緊急時に移動中の場合が多いです。そのため、どこに誰がいるかを瞬時に把握できる体制を整備しておき、ドライバーの安全を確保しましょう。
また、緊急時に稼働できる従業員の把握が、運送・郵便業では急務となります。たとえば、航空運輸の運搬業務に携わるインテックスでは、コロナ禍で感染により出勤できない従業員が多数出たことをきっかけに、早急にBCPを策定し、感染した従業員の安否をスムーズに確認できるシステムを導入しました。
平時からBCP策定や安否確認システムの導入をしておくことにより、緊急時に慌てず対応できるでしょう。
(参考:安否確認サービス2「株式会社インテックス様 活用事例」)
金融業編
金融業は資金や決済をはじめ、経済活動に欠かせない業界です。したがって、緊急事態の発生によって金融サービスが停止すると、多くの経済的混乱をもたらすことからBCPの策定が必須です。あらゆる緊急事態を想定したうえで、対策を考えておきましょう。
金融業における具体的なBCP対策は、主に以下のとおりです。
- 金融機関や各所にあるATMなどの防災対策
- オンラインサービスの充実
- 金融システムの強化
- 現金の確保
昨今の金融業界はオンラインサービスが充実しています。しかし、そこに注力しすぎるとITシステムが機能しなくなったときに経済的な混乱を起こしやすいです。ITシステムが使えないときの対処法も準備しておき、影響を最小限に抑えられる対策を考えておきましょう。サイバー攻撃への対策と、被害が発生した場合の対処法も重要です。
実際にBCPを策定している企業事例
ここからは、実際にBCP策定を実施している企業事例を紹介します。それぞれの事例を参考にし、自社のBCP策定に役立ててください。
【製造業編】株式会社南光
南光は、金属・非鉄金属加工やセラミックなどの素材加工などを行っている企業です。管理本部と6ヵ所に点在する工場別にBCPを策定する必要があり、1つの対策にまとめるのが困難でした。工場によって製造している部品が違ったり、優先すべき中核事業も異なっていたりしたからです。
この課題を解決するために行ったのが、管理本部と6つの工場それぞれ異なるBCPを策定したことです。その結果、各部門に必要な備えができ、取引先からの信頼が高まりました。また、定期的な避難訓練を実施したり、勉強会を開催したりした結果、受注が拡大し従業員満足度も向上しています。
(参考:株式会社南光)
【物流業編】株式会社ヒサノ
ヒサノは、精密機器や産業用機械の輸送と搬入などをワンストップで行う企業です。同社の社長はもともと自然災害や防災関係への関心が高ったこともあり、2016年の熊本地震や2020年の豪雨の災害を受け、具体的なBCP策定に乗り出しました。
同社は災害発生時に被災者の生活再建に必要な機器を迅速に輸送する必要があり、事業の早期復旧が求められる企業です。そこで災害設備を導入し、災害を想定したうえで新倉庫を設立しました。ほかにも業務データのクラウド化を推進し、業務の迅速な復旧が期待されています。これらのBCP策定により、取引先からの信頼が向上したほか、従業員や近隣住民に安心感を提供しています。
(参考:株式会社ヒサノ)
【金融業編】東京海上日動火災保険株式会社
東京海上日動火災保険は、自動車保険や火災保険などの保険商品を展開する企業です。損害保険を扱う同社は災害発生時においても事業継続が望まれることから、常にBCPの見直しや改善を行っています。
具体的な対策として、関西地区のバックアップ本部の立ち上げがあります。すべての情報を東京に立地する同社の本店で管理していると、本店が被災したら事業を継続しにくいです。早期の事業を復旧するためにも、関西地区にバックアップ本部を立ち上げて緊急事態に備えています。
あらゆる緊急事態に備えたBCPを策定した結果、事業継続推進機構のBCAOアワードで表彰されました。
(参考:東京海上日動火災保険株式会社)
【サービス業編】Sansan株式会社
Sansanは、法人や個人向けの名刺管理サービスを提供している企業です。不正アクセスをはじめとするリスクに備えるため、定期的に内部監査システムによるリスク把握や分析を実施しています。これらの対策によって、リスク発生の未然防止と早期発見につながっています。
また、同社では各部署で緊急事態に対する判断基準や対応手順などをまとめたガイドラインを制定しているのも特徴です。考えられるリスクを洗い出し、対応の優先度と意思決定者をはっきりと決めている点がポイントです。
(参考:Sansan株式会社)
【建設業編】新産住拓株式会社
新産住拓は、注文住宅をはじめとする建築に携わっている企業です。災害発生時には従業員の安全を確保しながら、顧客の被害を迅速に支援することを目標にしています。
当社は所在地が熊本であり、熊本地震では被災をしています。その際、2011年に発生した東日本大震災を経験した工務店の話を事前に聞いていたことが、熊本地震の復興支援に役立てられました。
同社では災害直後の初動を迅速にするために、物件の応急処置に必要な物資を常備しています。さらに、現場の裁量権を拡大することにより、急変する状況に合わせた対応を迅速に行っています。
従業員の安全確保を実施しながら被災物件の補修や顧客対応に尽力した結果「なにか困ったことがあれば新産住拓へ相談しよう」と考える顧客が増えました。
(参考:新産住拓株式会社)
BCP策定における日本企業の現状
日本企業におけるBCP策定率は、2021度時点で大企業が70.8%、中小企業が40.2%です。
▲出典:令和5年版 防災白書「図表1-7-2 大企業と中堅企業のBCP策定状況」
企業規模によってBCP策定には大きな差があります。考えられる理由は主に以下のとおりです。
- 時間がかかる
- 人員が足りない
- BCPに関する知識がない
- 必要な投資ができない
中小企業は予算をはじめとする制約があるため、BCP策定に踏み切れないと想定できます。
しかし、BCPは緊急時にも事業の中断を防ぎ、中断した場合は早期復旧させための準備であるため、事業規模が小さくても企業を存続させるには必ず策定するべきです。さらに、BCPを策定していると取引先から信用を得やすくなったり、安定した雇用を確保しやすくなったりといったメリットがあります。
とくに近年は地震をはじめとする災害が多発しているため、緊急時への備えは不可欠と言えるでしょう。中小企業であっても、危機感を持った対策が必要です。
なお、BCPの策定ができてない企業には、トヨクモが提供している『BCP策定支援サービス(ライト版)』の活用がおすすめです。最短1ヵ月で策定できるほか、他のBCPコンサルティングよりも費用を抑えられることが特徴です。金銭的な負担を軽減しながらスムーズにBCPを策定したい方は、ぜひ利用をご検討ください。
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BCPを策定する際のポイント
BCPを策定する際のポイントは、主に以下のとおりです。
- BCP策定の目的を再確認する
- 優先順位を明らかにする
- 具体的な被害状況を想定する
それぞれについて解説します。
BCP策定の目的を再確認する
BCPを策定するときは、目的を再確認しましょう。BCPは災害をはじめとする緊急事態が発生したときに、事業の早期復旧を目指す際に役立てるものです。つまり、緊急時の倒産や事業縮小を防ぐのが目的とも言えるでしょう。
BCPを作成したからといって緊急事態を避けられるわけではありません。BCP策定の目的を再確認したうえで、自社にとって必要な計画を立てていくことが何より重要です。
優先順位を明らかにする
BCPを策定する際は、優先順位を明らかにしましょう。BCPはあらゆる緊急事態を想定したうえで作成しますが、すべての事態に対応できるわけではありません。緊急事態の種類によって対処方法が異なるからです。
そのため、自社に起こる可能性が高く、被害が大きいと予想される緊急事態を優先してBCPを策定しましょう。
具体的な被害状況を想定する
BCPを策定するときは、具体的な被害状況を想定しましょう。災害をはじめとする緊急時は何が起こるか予測できないことも多いです。とはいえ、自社にとって不十分な備えであれば、緊急事態が発生したときに役に立たないでしょう。
そのため、自社に起こり得るリスクを明らかにしたら「どの程度の被害が予想されるか」や「予想される被害であれば、どのような備えが必要になるか」などを考える必要があります。
具体的には、大規模な地震が発生した際、地域によっては津波への対策が必要です。また、山崩れやがけ崩れへの備えが必要な地域もあるでしょう。あたかじめ具体的な被害状況を想定すると、緊急時に役立つBCPを策定できます。
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BCPの策定には、トヨクモが提供している『BCP策定支援サービス(ライト版)』の活用がおすすめです。BCPは従業員の安全を確保しつつ、事業を早期復旧させるために必要だと分かっていても策定に多くの手間と費用を要することから、なかなか作成できないと感じる企業も珍しくありません。
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費用や手間を抑えつつBCPを策定したい方は、ぜひBCP策定支援サービス(ライト版)を活用してください。
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BCPの策定事例を参考にしよう
BCPは緊急時に備えた事業継続計画のことで、事業の早期復旧を目指すために欠かせない要素です。BCPを策定していれば緊急時に迅速な初動を可能にし、企業の存続にも大きな影響をもたらすでしょう。今回紹介した事例を参考にしながら、ぜひ自社に合ったBCPを策定してください。
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