【専門家が解説】BCP対策にクラウドを活用すべき理由|メリットや注意点をまとめて紹介

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福岡 幸二(ふくおか こうじ)

BCP対策にクラウドを活用すると、災害によるデータ損失を防げるため、事業の早期復旧や継続に好影響を与えます。クラウドサービスを活用すれば災害時に事業継続がしやすくなり、消費者や取引先の信頼も高まるでしょう。

この記事では、BCP&BCMコンサルティングの代表であり、沖縄科学技術大学院大学や九州大学などでBCM(事業継続マネジメント)の策定や研修、リスク管理に携わってきた福岡 幸二が、BCP対策としてのクラウドサービスの導入メリットや注意点を解説します。ポイントを押さえて、実用性の高いサービスを導入・運用しましょう。

クラウド型サービスのBCP対策への活用とは

大規模な災害が頻発する中で、BCPへの関心が高まっています。BCP(事業継続計画)とは、自然災害やシステム障害などの緊急時でも事業を継続するための計画です。

クラウド型サービスを活用することで、BCP対策をさらに強化することが可能です。

たとえば、クラウドストレージを活用することで、重要なデータを安全に保存し、自社のサーバーが被害を受けた場合でも業務に必要なデータにアクセスできます。

また、クラウド上のコミュニケーションツール(例:Microsoft TeamsやSlack)を利用し、リモートワークの環境を整えておけば、パンデミック時やオフィスが被災していてもいくつかの業務は自宅から進めることができます。

さらに、クラウド型の安否確認システムを導入すれば、災害発生時に社員の安全状況を即座に確認でき、管理者が指示を出して必要な対応を進めやすくなります。これにより、社員の安全を確保しつつ、迅速な事業復旧を図ることができます。

このように、クラウドサービスを活用することで、企業はBCP対策を強化し、事業の継続を確実なものにできるのです。

BCP対策の強化にクラウドサービスを活用するメリット

クラウドへの保管によりデータを守れる

クラウド上にデータを保管しておけば、災害でオフィスが使用できなくなってもデータを守れます。事業資産であるデータを災害で失わないために、クラウドは有用なのです。

総務省はクラウドサービスを、インターネット上のサーバやアプリケーションを利用者に提供するサービスと定義しています。クラウドの多くはデータセンターが複数に分散しており、データを保管する仕組みが整備されています。また、データセンター自体も地震、火災、停電などのトラブルに強い構造で設計されているため安心です。

(参考:総務省「国民のためのサイバーセキュリティサイト」)

事業の早期復旧、継続に適している

クラウドサービスは、インターネット回線があれば場所を問わず利用可能です。たとえば災害で社屋が崩壊し、仕事ができない場合であっても、クラウド上のデータにアクセスすると自宅で作業できます。これは事業の早期復旧に寄与するため、BCP対策としても有効です。

BCPとは「事業継続計画」を指します。企業が自然災害、テロ、システム障害などの危機に陥ったとき、損害を最小限に抑え、重要な業務を継続するための計画です。

内閣府事業継続ガイドラインは「重要データと情報システムを被災時でも使えることが重要業務の継続には不可欠」と示唆しています。

(参考:内閣府「事業継続ガイドライン -あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応- 」)

コストが抑えられる

クラウドは利用目的や規模にあわせて、必要最小限の費用で運用できます。必要な分だけライセンスを購入すれば、初期導入費用を抑えられるでしょう。

クラウドは、サービス提供事業者がサーバーや設備の保守とメンテナンスを担当します。これにより、自社の従業員はクラウドへデータを保管したり、バックアップを作成する業務に専念できます。

また、契約後にすぐ利用できるサービスが多く、導入までの期間が短い点もメリットです。

BCP対策にクラウドを活用するデメリット

クラウドのデメリットとしては、ネットワーク障害が起きると使用できない、セキュリティリスクがあるなどが挙げられます。デメリットへの対策を事前に知ると、クラウド導入や運用にあたっての失敗を防げるでしょう。

ネットワーク障害に弱い

クラウドは、インターネットにつながっていれば場所を問わず使える反面、オフライン状態であれば使えないというデメリットがあります。ネットワークが遮断されたときの対策を考えておきましょう。

災害時はネットワーク障害が起こりやすくなります。これは、インターネットに関連する機器や設備がダメージを受けたり、アクセスが集中したりするためです。

大規模な災害が発生した際は、誰でも制約なしに使える『00000JAPAN』が開設されます。通常は契約者のみ使える各社のネットワークが開放され、認証なしに使えます。ただし、これを使う場合は、セキュリティ面でのリスクがあるため注意しましょう。

セキュリティリスクがある

セキュリティ対策が不十分なサービスだと、不正アクセスやサイバー攻撃による情報漏洩とデータ損失の危険性が高まります。

クラウドのセキュリティは、サービスを提供するプロバイダのセキュリティ技術に影響されます。クラウドサービスのセキュリティポリシーやセキュリティ機能を確認し、安全性の高いサービスを選びましょう。

用意できないときは、クラウド運用支援サービスを展開する企業への外注がおすすめです。

クラウドサービスを活用する場合の注意点

クラウドサービスを活用するときはいくつか注意が必要です。バックアップ内容の取捨選択をし、複数の手段でバックアップしましょう。注意点を押さえると、費用を抑えつつデータ消失のリスクも減らせるでしょう。

バックアップ容量とコスト

クラウドはサービス利用量に応じて費用が発生するため、料金が予想より高くなるかもしれません。また、BCP対策のためにクラウドを利用する場合、バックアップで保存するデータ量が多くなりやすい傾向にあります。

不要なデータがストレージを占有しているときは、重複データの削除機能を活用するといいでしょう。保管データやバックアップ範囲を見直す、容量が大きいファイルを圧縮して保管するなど、さまざまな対策が有効です。

リスク分散

データセンターが被災しても業務を継続できるよう、データは複数の手段で保管し、リスクを分散させましょう。

データバックアップの最適な実践方法として「3-2-1ルール」があります。バックアップ管理、復旧、保管を確実にし、データ損失や情報漏洩のリスクを下げるルールです。ルールは次の3つです。

➀3つのコピーを作る

バックアップの元データ(オリジナル)に対して3つのバックアップコピーを作成します。

②異なる2つのストレージメディアに保管する

バックアップのストレージメディアは、外付けハードディスク、USBメモリ、クラウドサービスのうち2つ以上にデータを保管し、機器や媒体の損害に備えることが大切です。

③バックアップコピーのうち1つはオフサイトに保存する

1つは自社施設と物理的に距離のある場所(オフサイト)に保存します。例えばクラウドサービスでバックアップデータを保存し、災害や盗難の被害から保護してください。

BCP対策に適したクラウドサービスの選び方

BCP対策に適したクラウドサービスを選びましょう。次のポイントを満たすクラウドサービスがおすすめです。

①データセンターを複数保有している

異なる電力会社の地域、もしくは海外にデータセンターを複数保有している場合、分散して保管できるため、データの安全性が高まります。

②クラウドバックアップが自動で実施される

1日1回決まった時間に定期バックアップされると、災害時であっても、最新版とのギャップが小さいデータやシステムを利用できるでしょう。

③使いやすい設計やデザインをしている

多機能であっても、使い方が分からなければ非効率です。シンプルで使いやすいクラウドを選びましょう。

④クラウド特有のセキュリティ対策を実装している

一つの指標として、国際的な規格であるISMSクラウドセキュリティ認証(ISO27017)を取得している業者を選びましょう。ISO27017は、国際標準化機構(ISO)が発行する情報セキュリティマネジメントシステムに関する規格です。その他、官公庁や金融機関などさまざまな規模の企業が導入していることも参考になります。

クラウドに保存するデータの選択

BCP対策としてどのようなデータやシステムの保管が適切か検討し、選択しましょう。重要なデータから優先してバックアップするといいでしょう。

クラウドに不要なデータを保管すると、容量は増え、利用料金もかさみます。さらに、情報漏洩時のリスク拡大にもつながるでしょう。

クラウド型の安否確認システムもBCP対策に有効

BCP発動時、従業員の安否確認は非常に重要です。稼働できる人員を迅速に把握し、次の対応を決定する必要があるからです。しかし、従来の電話や手作業による安否確認では、時間がかかり、効率的とは言えません。

そこで、クラウド型の安否確認システムの活用が有効です。

例えば、気象庁の情報と連動する「安否確認サービス2」は、災害発生時に自動で通知を送り、回答をリアルタイムで集計します。さらに、被害状況の把握や指示の伝達をスムーズに行える連絡機能を備えています。

また、サーバーを海外に分散することで、安定した稼働を追求しており、緊急時にも信頼できるサービスです。

BCP対策にはクラウドサービスを活用できる

この記事では、BCP対策にクラウドを活用するメリット、注意点、そしてBCP策定の手順について解説しました。

クラウドを活用することで、災害時のデータ損失リスクを低下させ、事業の迅速な復旧や継続が可能になります。これにより、緊急事態発生時でも消費者や取引先からの信頼を維持しやすくなる点が大きなメリットです。

BCPの策定が初めての場合は、埋めていくだけで完成するBCPマニュアルやテンプレートを活用するのがおすすめです。これにより、基本的なBCPの枠組みを理解しながら、少ない負担で計画を進められます。

詳細な解説については、以下の記事もぜひご覧ください。

一方で、組織の規模が大きい場合や、長期的な運用を見据える場合には、全てを従業員だけで進めるのは非効率的です。そうした場合には、経験豊富な専門家の支援を活用することが効果的です。

組織の状況や目的に応じて最適な方法を選び、確実に機能するBCPを策定・運用し、いざという時に備えましょう。

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