BCP対策にクラウドを活用すると、災害によるデータ損失を防げるため、事業の早期復旧や継続に好影響を与えます。クラウドを活用すれば災害時に事業継続がしやすくなり、消費者や取引先の信頼も高まるでしょう。
今回はBCP対策としてクラウド導入を検討されている方へ、クラウドのメリットや注意点を解説します。導入のポイントを押さえて、実用性の高いクラウドを導入し、運用しましょう。
目次
BCP対策にクラウドを活用する理由
BCP対策にクラウドを活用すると、災害によるデータ損失を防ぎつつ、事業の早期復旧や継続ができます。クラウドは災害時の備えとも言えるのです。ここからは、BCP対策としてクラウドを使用する理由について紹介します。
クラウドへの保管によりデータを守れる
クラウド上にデータを保管しておけば、災害でオフィスが使用できなくなってもデータを守れます。事業資産であるデータを災害で失わないために、クラウドは有用なのです。
総務省はクラウドサービスを、インターネット上のサーバやアプリケーションを利用者に提供するサービスと定義しています。クラウドの多くはデータセンターが複数に分散しており、データを保管する仕組みが整備されています。また、データセンター自体も地震、火災、停電などのトラブルに強い構造で設計されているため安心です。
事業の早期復旧、継続に適している
クラウドは、インターネット回線があれば場所を問わず利用可能です。たとえば災害で社屋が崩壊し、仕事ができない場合であっても、クラウド上のデータにアクセスすると自宅で作業できます。これは事業の早期復旧に寄与するため、BCP対策としても有効です。
BCPとは「事業継続計画」を指します。企業が自然災害、テロ、システム障害などの危機に陥ったとき、損害を最小限に抑え、重要な業務を継続するための計画です。
内閣府事業継続ガイドラインは「重要データと情報システムを被災時でも使えることが重要業務の継続には不可欠」と示唆しています。
(参考:内閣府「事業継続ガイドライン -あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応- 」)
BCP対策にクラウドを活用するメリット
クラウドは利用目的や規模にあわせて、必要最低限の費用で運用できることがメリットです。クラウドのメリットを活用すれば、災害時の事業継続がしやすくなるでしょう。ここからは、メリットを3つ紹介します。
データ消失のリスクが軽減される
クラウド保管でデータをバックアップしておくと、データ消失のリスクを下げられます。これは、クラウドサービスのサーバーが遠隔地やデータセンターに置かれているためです。
社内に置いていたデータサーバーが災害で破損した場合、新しいサーバーの調達やデータ復元には時間がかかります。すると、業務に支障をきたすでしょう。
しかしクラウドを利用すると、クラウドサービスさえ損害を受けていなければ、業務の早期復旧、社内や取引先との情報共有などが可能です。
社外からの運用が可能になる
クラウドは、社内外問わずインターネット経由でデータを使用できるため、事業の停止期間を最小限に抑えられるでしょう。
クラウドはPCやスマートフォンなどさまざまなデバイスで使えます。災害時、公共交通機関の運休により出社できない場合も、クラウドを活用すれば自宅で仕事することが可能です。
コストが抑えられる
クラウドは利用目的や規模にあわせて、必要最小限の費用で運用できます。必要な分だけライセンスを購入すれば、初期導入費用を抑えられるでしょう。
クラウドは、サービス提供事業者がサーバーや設備の保守とメンテナンスを担当します。これにより、自社の従業員はクラウドへデータを保管したり、バックアップを作成する業務に専念できます。
また、契約後にすぐ利用できるサービスが多く、導入までの期間が短い点もメリットです。
BCP対策にクラウドを活用するデメリット
クラウドのデメリットとしては、ネットワーク障害が起きると使用できない、セキュリティリスクがあるなどが挙げられます。デメリットへの対策を事前に知ると、クラウド導入や運用にあたっての失敗を防げるでしょう。
ネットワーク障害に弱い
クラウドは、インターネットにつながっていれば場所を問わず使える反面、オフライン状態であれば使えないというデメリットがあります。ネットワークが遮断されたときの対策を考えておきましょう。
災害時はネットワーク障害が起こりやすくなります。これは、インターネットに関連する機器や設備がダメージを受けたり、アクセスが集中したりするためです。
大規模な災害が発生した際は、誰でも制約なしに使える『00000JAPAN』が開設されます。通常は契約者のみ使える各社のネットワークが開放され、認証なしに使えます。ただし、これを使う場合は、セキュリティ面でのリスクがあるため注意しましょう。
セキュリティリスクがある
セキュリティ対策が不十分なサービスだと、不正アクセスやサイバー攻撃による情報漏洩とデータ損失の危険性が高まります。
クラウドのセキュリティは、サービスを提供するプロバイダのセキュリティ技術に影響されます。クラウドサービスのセキュリティポリシーやセキュリティ機能を確認し、安全性の高いサービスを選びましょう。
専門知識やスキルが求められる
セキュリティに配慮した適切なクラウドの運用や開発には、ITに関する一定の専門知識が求められます。しかし、IT人材の確保には費用や手間がかかるでしょう。
とくに、データだけでなく業務用システムもクラウドに保管する場合、クラウドサービスに熟知したエンジニアが必要です。
自社で人材を用意できないときは、クラウド運用支援サービスを展開する企業への外注がおすすめです。
クラウドを活用する場合の注意点
クラウドを活用するときはいくつか注意が必要です。バックアップ内容の取捨選択をし、複数の手段でバックアップしましょう。注意点を押さえると、費用を抑えつつデータ消失のリスクも減らせるでしょう。
バックアップ容量とコスト
クラウドはサービス利用量に応じて費用が発生するため、料金が予想より高くなるかもしれません。また、BCP対策のためにクラウドを利用する場合、バックアップで保存するデータ量が多くなりやすい傾向にあります。
不要なデータがストレージを占有しているときは、重複データの削除機能を活用するといいでしょう。保管データやバックアップ範囲を見直す、容量が大きいファイルを圧縮して保管するなど、さまざまな対策が有効です。
リスク分散
データセンターが被災しても業務を継続できるよう、データは複数の手段で保管し、リスクを分散させましょう。
データバックアップの最適な実践方法として「3-2-1ルール」があります。バックアップ管理、復旧、保管を確実にし、データ損失や情報漏洩のリスクを下げるルールです。ルールは次の3つです。
➀3つのコピーを作る
最新データと過去のデータは2つに分けて保存し、さらに自社の遠隔地にデータを保存しましょう。
②異なる2つのメディアに保管する
外付けハードディスク、USBメモリ、クラウドサービスのうち2つ以上にデータを保管し、機器や媒体の損害に備えることが大切です。
③コピーのうち1つはオフサイトに保存する
クラウドサービスでデータを保存し、災害や盗難の被害から保護してください。
BCP対策に適したクラウドの選択
BCP対策に適したクラウドサービスを選びましょう。次のポイントを満たすクラウドサービスがおすすめです。
①データセンターを複数保有している
異なる電力会社の地域、もしくは海外にデータセンターを複数保有している場合、分散して保管できるため、データの安全性が高まります。
②クラウドバックアップが自動で実施される
1日1回決まった時間に定期バックアップされると、災害時であっても、最新版とのギャップが小さいデータやシステムを利用できるでしょう。
③使いやすい設計やデザインをしている
多機能であっても、使い方が分からなければ非効率です。シンプルで使いやすいクラウドを選びましょう。
④BCP目的の導入実績が豊富である
官公庁や金融機関などさまざまな規模の企業に導入されているサービスがおすすめです。セキュリティの強固さ、災害時の運用安定が見込めるためです。
クラウドに保存するデータの選択
BCP対策としてどのようなデータやシステムの保管が適切か検討し、選択しましょう。重要なデータから優先してバックアップするといいでしょう。
クラウドに不要なデータを保管すると、容量は増え、利用料金もかさみます。さらに、情報漏洩時のリスク拡大にもつながるでしょう。
クラウドを活用したBCP策定の手順
BCP策定はリスクの洗い出し、ならびに優先順位の決定から始まります。実行計画を作成し、評価と見直しを繰り返しましょう。策定の手順を押さえれば、実効性の高いBCPが策定できます。
被害状況やリスクの想定
BCP策定にあたって、企業独自のリスクを洗い出し、分析することで災害に備えましょう。リスクの深刻度は発生頻度や影響度によって異なるためです。
地震やパンデミックなどの災害リスク、サイバー攻撃や情報漏洩などの情報リスクを把握します。どのような事象をリスクとみなすか共有し、各部署の担当者を集め、リスクを洗い出しましょう。
復旧を優先する事業の決定
洗い出したリスクに優先順位をつけ、優先度の高いリスクからBCPを策定します。想定されるすべてのリスクに対処することは難しいため、災害時の限られた資源を効果的に投入できるようにしましょう。
優先順位を決める基準として「BIA分析(ビジネスインパクト分析)」があります。BIAの目的は、業務やシステムが停止した際、事業へ与える影響度を評価することです。消費者、取引先、社会的信用への影響度に則って優先度を決めます。
事前対策の選定と実行
災害時、迅速にシステムやデータを復旧させるための対策や組織体制、短時間で運用が再開できる環境などを整えましょう。
クラウドサービスの運用方法を事前に決定してください。そのためにも、クラウドサービスについて熟知した管理責任者を配置しましょう。サービス停止時に備え、従業員にクラウドの利用法や注意点を周知し、重要データをバックアップします。
BCPを策定
災害発生時に事業継続するためのBCPを策定します。事業の継続と早期復旧の観点から策定しましょう。
経営陣中心の指揮系統を確立し、外部対応チームやシステム復旧チームなど、緊急事態対応の組織体制を構築します。
こちらの記事では、BCPマニュアルの作り方を紹介しています。中小企業診断士でBCPコンサルタントの竹上将人氏 監修のテンプレートを活用していただくことで、誰でも簡単に作成できます。ぜひ、手順に沿って作成してみてください。
内容の検証と見直し
BCPは定期訓練のタイミングでブラッシュアップします。訓練で見つかった課題は連携し運用、ツール、システムなどの項目に分類するといいでしょう。
複数の課題があるときは優先順位をつけ、重要な課題から見直します。優先順位がつけられたら対策を講じます。担当者や期限を決め、実行計画の作成をしましょう。
変更した内容は次の定期訓練で評価し、検証と見直しを繰り返してください。次第に実用性が高くなります。
クラウドを活用して大切なデータを保護!
今回はBCP対策にクラウドを活用するメリット、注意点、BCP策定の手順について解説しました。
BCP対策にクラウドを活用するメリットは、災害によるデータ損失リスクを低下させられること、事業を迅速に復旧または継続させられることなどです。クラウドを活用すれば、緊急事態発生時にも事業を継続しやすく、消費者や取引先の信頼も高まるでしょう。
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