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BCPは感染症対策に必要?必要な理由や訓練方法を紹介

感染症対策におけるBCPとは?策定するメリットや具体的な手順を解説

2020年1月に日本国内で最初の感染が確認された新型コロナウィルスは、多くの企業に損害を与えました。そのため、感染症対策としてのBCP策定に必要性を感じた企業もあるはずです。

あらかじめ感染対策を講じることは、事業の損害を抑えながら従業員を守ることにつながります。次回の感染症の蔓延に備え、感染症対策に特化したBCPを策定しておきましょう。

この記事では、感染症対策としてのBCP策定のメリットや具体的な策定手順を紹介します。策定する際のポイントも紹介しているので、あわせて参考にしてください。

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監修者:木村 玲欧(きむら れお)

兵庫県立大学 環境人間学部・大学院環境人間学研究科 教授

早稲田大学卒業、京都大学大学院修了 博士(情報学)(京都大学)。名古屋大学大学院環境学研究科助手・助教等を経て現職。主な研究として、災害時の人間心理・行動、復旧・復興過程、歴史災害教訓、効果的な被災者支援、防災教育・地域防災力向上手法など「安全・安心な社会環境を実現するための心理・行動、社会システム研究」を行っている。
著書に『災害・防災の心理学-教訓を未来につなぐ防災教育の最前線』(北樹出版)、『超巨大地震がやってきた スマトラ沖地震津波に学べ』(時事通信社)、『戦争に隠された「震度7」-1944東南海地震・1945三河地震』(吉川弘文館)などがある。

感染症によって起こり得る企業のリスク

感染症の拡大によって起こり得る企業のリスクは、以下のようなものが想定されます。

  • 従業員が感染することで人員を確保できない
  • 感染症拡大によって事業を継続できない
  • 被害の拡大によって物流が停止する
  • 感染拡大の沈静化がいつになるか分からない

感染症が拡大すると従業員個人が罹患するだけではなく、企業の存続にも大きな影響をもたらします。現に、新型コロナウイルスの蔓延によって事業が停滞したり、倒産したりした企業も多く存在しました。

感染症は地震をはじめとする災害とは異なり、いつ収束するか予想しにくいことも問題の一つです。感染症の拡大が長期化すると、企業が直面するリスクも多様化するでしょう。

感染症におけるBCPとは

前述のとおり、感染症によって企業はさまざまなリスクの発生が予想されるため、あらかじめBCPを策定するのがおすすめですBCP(事業継続計画)とは、緊急事態が発生したときの対策や防止策をまとめた計画です。事前にBCPを策定していれば次の行動を起こしやすくなり、事業を継続できる可能性が高まります。

なお、BCPは災害時用として策定している企業は多いです。しかし、感染症対策としてのBCPは災害時と被害の対象や期間などに違いが見られるため、相違点を理解したうえで策定することがポイントです。とくに、以下の3つの点を考慮しながら感染症対策のBCPを策定しましょう。

  • 情報を正確に入手する
  • 人への影響を考慮する
  • 感染症予防を重視する

新種の感染症は不確かなことが多くなると予想されるため、最新情報を確認したうえでの的確な判断が重要となります。

感染症対策としてBCPを策定するメリット

感染症対策としてBCPを策定するメリットは、主に以下のとおりです。

  • 感染症からの被害を最小限に抑えられる
  • 迅速な初動が可能になる
  • 従業員や取引先から信用を得やすい

それぞれについて解説します。

感染症からの被害を最小限に抑えられる

感染症対策としてBCPを策定すると、被害を最小限に抑えられます。

感染症は地震をはじめとする災害時とは異なり、被害の期間や有効な対策などが分からないことも多いです。実際、新型コロナウイルスが蔓延した当初は有効な医薬品やワクチンなどもなく、成す術がないと感じた方もいるでしょう。

また、感染症は収束時期の予測が不可能であり、いつまで被害をもたすか予想できません。現に、新型コロナウイルスが第5類に分類された今もなお猛威を奮って感染拡大は続いています。

感染症対策としてBCPを策定しておけば、ある程度の予測が立てやすくなり、状況に応じた判断を下しやすいです。今優先すべき事柄が明確になっているため、感染症が拡大しているときでも事業を継続しやすいでしょう。

迅速な初動が可能になる

感染症対策としてBCPを策定していると、迅速な初動が可能となります。感染症はいつ拡大するか分からないことから、何も備えをしていなければ事業に与える損害が大きくなり、企業の存続にも影響を与えます。

しかし、あらかじめ感染症対策としてBCPを策定していれば、未曾有の感染症が拡大しても次の一手を打ちやすくなるでしょう。緊急事態が発生したときだからこそ、冷静かつ迅速な判断が必要とされます。

従業員や取引先からの信用を得やすい

感染症対策のBCP策定は、従業員や取引先からの信用獲得につながりやすいです。感染症拡大という緊急事態に備えていれば、従業員や取引先へのフォローも迅速に行えるからです。たとえば、新型コロナウイルスが蔓延したときは、人との接触を最小限に抑えるためにテレワークを導入した企業も多いでしょう。

BCPを策定していると迅速な初動ができ、その結果、従業員や取引先を守りやすくなります。従業員や取引先からの信用を得られると、企業としての価値が向上しやすくなるほか、ビジネスチャンスも掴みやすくなるでしょう。

感染症対策として行うBCPの策定手順

感染症対策として行うBCPの策定手順は、以下のとおりです。

  • リスクの洗い出し
  • リスクに対する予防策の検討
  • 平常時から行える感染症対策の制定
  • 感染症発症時の対応方法の制定
  • 定期的なBCPの見直し

それぞれのステップについて解説します。

1.リスクの洗い出し

まず、企業内で考えられる感染症のリスクを洗い出しましょう。具体的には以下のようなリスクが想定されます。

  • トイレやゴミ置き場などの衛生環境がよくない
  • 従業員の健康状態を把握していない
  • 体調不良時に相談できる体制が構築されていない
  • 感染症予防に必要な備品がない

このような環境があると、感染症が起こったときに企業内で蔓延するリスクがあります。新型コロナウイルスの蔓延を通じて得た知識をもとに、考えられるリスクをすべて書き出しておきましょう。

2.リスクに対する予防策の検討

前述したリスクに対する予防策を検討します。先ほど挙げた例で言えば、以下のような予防策が有効です。

  • 清掃スタッフを採用する
  • 健康診断やストレスチェックなどを行う
  • 産業医を配置する
  • 福利厚生を充実させる
  • 感染症予防に有効とされる備品を蓄えておく

地震をはじめとする災害とは異なり、感染症対策には企業や事業規模に合った対策が必須です。起こり得るリスクに有効な対策を検討し、感染症の蔓延に備えましょう。

3.平常時から行える感染症対策の制定

平常時から行える感染症対策を検討しましょう。感染症対策は平常時の取り組みが重要となるため、普段から実践すべき対策を明確にすることが重要です。たとえば、感染症に関する知識を身につけたり、情報を共有したりするのも有効です。日頃から感染症対策を考えておくと、緊急事態時に迅速な行動が可能となります。

4.感染症発症時の対応方法の制定

実際に感染症が拡大したときの対応方法を検討します。具体的には、以下のポイントを考慮しましょう。

  • 感染症に関する情報を収集する
  • 感染者が出た場合の対応方法を決めておく
  • 従業員や取引先などと情報を共有し合う
  • 事業に起こり得る影響を想定した代替案を考える
  • 従業員の健康管理を徹底的に行える仕組みを作

新型コロナウイルスのように世界的な蔓延が今後も予想されるため、状況に応じた対策が必要となります。たとえば、海外に支社がある場合は、海外の感染状況も定期的に確認しなければいけません。企業や事業規模、業種などを考慮したうえで対策を立てることが大切です。

5.定期的なBCPの見直し

策定したBCPは、定期的に見直しを行いましょう。策定したときは有効だと感じていても、時間の経過とともに改善すべき点が見えてくることもあります。よりよいBCPに仕上げるためには、PDCAサイクルを回し続けることが重要です。

感染症対策としてBCPを策定する際のポイント

感染症対策としてBCPを策定する際のポイントは、以下のとおりです。

  • BCPを発動させるタイミングを明確にしておく
  • 人員の確保を優先させる
  • 継続させるべき事業を明らかにする
  • 運転資金を確保しておく

それぞれについて解説します。

BCPを発動させるタイミングを明確にしておく

感染症対策に対するBCPは、発動させるタイミングを明確にすることが重要です。

災害時であれば災害が発生した時点でBCPを活用するのが一般的ですが、感染症は発動のタイミングが不明瞭なことが多いです。たとえば、新型コロナウイルスは海外で広がり始めたため、BCPの必要性をすぐに感じなかった企業もいるかもしれません。

しかし、感染症に対するBCPの発動タイミングが不明瞭であれば、迅速な初動が難しくなります。従業員の混乱を防ぎながら事業への損害を最小限にするためにも、どのタイミングで発動させるかをあらかじめ決めておきましょう。

人員の確保を優先させる

感染症対策のBCPを策定する際は、人員の確保を重視しましょう。

感染症は地震をはじめとする災害時とは異なり、人への健康被害が中心となります。そのため、従業員に感染が広がれば人員の確保が難しくなり、事業の継続にも大きな影響を及ぼします。したがって、従業員の感染症予防策を実行しながら、人員確保できる術を見つけておくことが大切です。

継続させるべき事業を明らかにする

感染症対策としてのBCPを策定するときは、継続させるべき事業を明らかにしましょう。

BCPを策定していても、人員や物資が不足する可能性は高いです。新型コロナウイルスが蔓延したときのように、行動制限や行政の自粛要請なども想定されます。さらに、感染症の拡大によって需要と供給のバランスが崩れ、平常時のような売上を確保できないこともあるでしょう。

平常時とは違う環境のなかで事業を継続させるためには、優先事項を明らかにして必要な対策を講じるべきです。企業の存続にあまり影響のない事業であれば縮小して、優先すべき事業に注力するのも一つの方法です。企業にとって最善策を模索すれば、企業が存続する確率を高められるでしょう。

運転資金を確保しておく

感染症対策のBCPを策定するときは、運転資金を確保しておくことも大切です。

感染症は災害時よりも被害が長引く可能性があり、事業への影響も多大なものになるかもしれません。感染拡大時の経営状況悪化を未然に防ぐためには、余裕を持った資金を確保しておくといいでしょう。想定されるリスクを考慮したうえで、具体的な金額や資金の活用方法を検討してください。

BCPの策定にはトヨクモの『BCP策定支援サービス(ライト版)』がおすすめ

BCPの策定には、トヨクモが提供する『BCP策定支援サービス(ライト版)』の活用がおすすめです。

通常、BCPコンサルティングは数十〜数百万円ほどかかりますが、BCP策定支援サービス(ライト版)であれば1ヵ月15万円(税抜)で策定できます。

また、最短1ヵ月で策定できることから、迅速に対策を行いたい方も活用しやすいでしょう。金銭的な負担や手間を減らしながらBCPを策定したい場合は、ぜひトヨクモの『BCP策定支援サービス(ライト版)』の導入を検討してください。

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BCPを策定して感染症対策を実施しよう

新型コロナウイルスのような未曾有の感染症に備えるためには、BCPの策定が欠かせません。感染症対策を実施していなければ事業への損害が大きくなり、企業の存続にも悪影響をもたらします。実際、新型コロナウイルスが5類に分類された今もなお、事業に影響が及んでいる企業もあるでしょう。企業として長く生き残るためには、感染症に備えた対策が必須です。

感染症対策としてBCPを策定したい方には、トヨクモの『BCP策定支援サービス(ライト版)』がおすすめです。費用と手間を削減しながら自社に合ったBCPを策定できるため、感染症拡大に備えられます。事前に対策を考えておけば、従業員を守りながらビジネスを展開できます。

BCPを策定できていないなら、トヨクモの『BCP策定支援サービス(ライト版)』の活用をご検討ください!
早ければ1ヵ月でBCP策定ができるため「仕事が忙しくて時間がない」や「策定方法がわからない」といった危機管理担当者にもおすすめです。下記のページから資料をダウンロードして、ぜひご検討ください。

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監修者:木村 玲欧(きむら れお)

兵庫県立大学 環境人間学部・大学院環境人間学研究科 教授

早稲田大学卒業、京都大学大学院修了 博士(情報学)(京都大学)。名古屋大学大学院環境学研究科助手・助教等を経て現職。主な研究として、災害時の人間心理・行動、復旧・復興過程、歴史災害教訓、効果的な被災者支援、防災教育・地域防災力向上手法など「安全・安心な社会環境を実現するための心理・行動、社会システム研究」を行っている。
著書に『災害・防災の心理学-教訓を未来につなぐ防災教育の最前線』(北樹出版)、『超巨大地震がやってきた スマトラ沖地震津波に学べ』(時事通信社)、『戦争に隠された「震度7」-1944東南海地震・1945三河地震』(吉川弘文館)などがある。

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編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。