防災・BCP・リスクマネジメントが分かるメディア

BCPは感染症対策に必要?必要な理由や訓練方法を紹介

2020年、新型コロナウイルス感染症が世界的に蔓延し、多くの企業が大きな被害・影響を受けました。このような世界情勢において感染症対策がより重要視されています。そして、感染症対策の一環として注目されているのがBCP(事業継続計画)です。

今回は、BCPの必要性ならびに感染症対策としてのBCPについてご紹介します。

プロフィール背景画像
プロフィール画像

監修者:木村 玲欧(きむら れお)

兵庫県立大学 環境人間学部・大学院環境人間学研究科 教授

早稲田大学卒業、京都大学大学院修了 博士(情報学)(京都大学)。名古屋大学大学院環境学研究科助手・助教等を経て現職。主な研究として、災害時の人間心理・行動、復旧・復興過程、歴史災害教訓、効果的な被災者支援、防災教育・地域防災力向上手法など「安全・安心な社会環境を実現するための心理・行動、社会システム研究」を行っている。
著書に『災害・防災の心理学-教訓を未来につなぐ防災教育の最前線』(北樹出版)、『超巨大地震がやってきた スマトラ沖地震津波に学べ』(時事通信社)、『戦争に隠された「震度7」-1944東南海地震・1945三河地震』(吉川弘文館)などがある。

BCPとは

そもそもBCPとは「Business Continuity Plan」の頭文字を取った言葉であり、日本語では「事業継続計画」と訳されます。緊急事態発生時、企業が損害を最小限に抑えながら、損害が出てしまった場合にも迅速に復旧し、事業の継続を図るための計画のことです。

緊急事態の発生に備えて事前にBCPを策定し、方針や体制、手順などを明らかにしておきましょう。さらにBCPを全従業員に周知することで、緊急事態発生時の混乱を緩和し、損失を最小限に抑えることができます。

BCPが必要な理由

BCPは自然災害や感染症拡大などの緊急事態において必要とされます。

BCPが必要な理由は以下の通りです。

  • 優先すべき業務を可視化するため
  • 倒産を防止するため
  • 信頼を確保するため
  • 事業を拡大するため

それぞれの理由について詳しく解説していきます。

優先すべき業務を可視化するため

BCPが必要な理由のひとつとして、優先すべき業務を可視化するためという点が挙げられます。

緊急事態下では人手不足や売上低下が長期化し、業務が滞る可能性があります。そのような状況でどの業務を優先すべきか、BCPを策定することで可視化できるのです。

また、優先すべき業務を可視化することで自社の強みと弱みが明確になり、経営戦略の立案・改善に役立つという利点もあります。

倒産を防止するため

BCP策定は、倒産防止のためにも必要です。

新型コロナウイルス感染症の影響による倒産は、2023年9月時点で累計6,761件に上りました。このデータが示す通り、緊急事態により企業は大きな損失を受けるのです。

倒産を防止するためにもBCPは役立ちます。BCPを策定することで、損失を抑え、スムーズに業務を継続することが可能です。ひいては従業員をリスクから守ることにもつながります。

信頼を確保するため

信頼を確保することも、BCPを策定する理由のひとつです。

緊急事態が発生した際、事業を継続しつつ迅速な復旧を実現することができる企業は、顧客や取引先からの信頼を獲得するでしょう。そのためにもBCPを策定し、緊急事態下での体制や対策を事前に構築しておきましょう。

逆にBCP対策が不十分だと、業務の停滞により顧客や取引先が損失を受け、信頼が低下するリスクがあります。

緊急時の早期復旧は、顧客や取引先の信頼を得るために不可欠です。BCPで企業の信頼を守り、顧客や取引先を繋ぎ止めましょう。また、BCPを策定しておくことは従業員の信頼確保と安心感にもつながります。さらに社会全体に対して、企業の姿勢をアピールする機会にもなります。

事業を拡大するため

BCPが必要な理由として事業の拡大という観点もあります。

緊急事態発生時でも安定した経営ができるということは、企業の信頼性向上やイメージアップにつながり、ひいては新規事業における取引先として選択されやすくなります。したがって、新規顧客や取引先の増加や事業の拡大が期待できるのです。

感染症対策としてのBCPのポイント

感染症対策としてBCPを策定する際には、とりわけ以下のポイントを把握しておくことが重要です。

  • BCPの発動基準を明確にする
  • 優先すべき事業を選定する
  • 人員を確保する
  • 運転資金を確保する

それぞれのポイントについて詳しく解説します。

BCPの発動基準を明確にする

BCPを策定する際は、BCPの発動基準を明確にしておきましょう。

感染症拡大時に冷静でいることは難しく、事態に右往左往しているうちに、体制構築や対策の判断が遅れると被害の拡大を招いてしまいます。どのような事態になればBCPを発動するのかを明文化しておくことで、判断の遅れによるリスクを減らせます。

また、BCP発動時の体制や指示系統を明確に定めておくことや、責任者が感染した場合に備えて代理の意思決定者を決めておくことも大切です。

優先すべき事業を選定する

BCP策定時には、優先すべき事業を選定しておきましょう。

感染症拡大時の特徴として、社会状況の変化の速さが挙げられます。その際、優先すべき事業を決めず曖昧にしておくと、社会状況の変化に即した対応ができないのです。

社会状況の変化を事前に段階的に設定し、レベルに応じた対策をすることで、感染症拡大時の事業継続を図りましょう。

人員を確保する

BCPを策定するにあたっては、人員の確保も重要です。

感染症対策と人員確保の両立には、交代勤務や在宅勤務の導入が有効です。

とくに在宅勤務を導入することで、社内での感染症蔓延を防ぎ、通勤時の感染リスクを減らすことができます。また、従業員が複数の業務をこなせるように教育しておくこと(クロストレーニング)も大切です。感染症拡大時は人手が不足するため、BCP策定時には人員の確保策を考えておきましょう。

運転資金を確保する

運転資金を確保しておくことも重要です。感染症が拡大すると、事業の縮小や停止を余儀なくされる場合があるからです。

自然災害と比べて感染症拡大の方が、縮小や停止の期間が長引きやすく収束がなかなか見えない傾向にあります。

その際、運転資金が不足していると企業を維持できず、倒産するおそれがあります。

運転資金を概算し、数ヵ月程度の事業停止を想定して計画を策定することで、倒産のリスクを軽減することが可能です。

感染症対策に関するBCPの訓練・研修方法

BCPは単に策定するだけでなく、定期的に訓練や研修をし、全従業員に理解させておく必要があります。そこで最後に、感染症対策に関するBCPの訓練・研修方法をご紹介します。

緊急事態発生時に適切に対処できるように、定期的に訓練や研修を実施しましょう。

「全従業員にBCPの内容を理解してもらうこと」が目的

BCPの訓練や研修を行う最大の目的は、全従業員にBCPの内容を理解してもらうことです。

BCPを策定しただけでは緊急事態発生時に十分な効果は得られません。BCPを実効性の高いものにするため、感染症流行時の対応や行動に関して訓練・研修を行います。

BCPの訓練・研修では、従業員がそれぞれの役割を明確にし、自分の役割に従って動けるようになることを目標にしましょう。BCPとは何か、なぜ必要なのか、BCPを発動した際にどのような行動をすべきかなど、BCPについて分かりやすく全従業員に伝えましょう。そして訓練・研修の結果をもとにして、よりよいBCPに改善していきましょう。

机上訓練を行う

訓練には複数の種類がありますが、一般的かつ研修実施の手間やコストを省けるのが机上訓練です。

机上訓練とは、具体的なシナリオを作り、参加者に対処方法を話し合ってもらう訓練のことです。まずBCPの概要や必要性を説明し、次にシナリオに沿ってBCPについて話し合います。BCPの知識をインプットするだけでは効果はありません。話し合いの場を設けてアウトプットすることで、理解をより深められます。

感染症対策におけるBCPの机上訓練では、実際に感染者が出た際の流れを想定します。更なる感染を防ぐためにはどうすればいいのか、感染者が増えて人手が足りなくなった場合にはどの業務を優先すべきなのかなどを、参加者同士で話し合いましょう。

ガイドラインを参考にする

厚生労働省のガイドラインを参考にして、BCPの研修を行いましょう。

厚生労働省は、介護施設や事業所向けに「新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン」を公表しており、従業員で感染者が出た時の対策や感染防止に向けた取り組みなどを紹介しています。

ガイドラインを参考にすることで研修の質を上げられるでしょう。

研修動画を参考にする

「研修をどのように実施すればいいか分からない」という場合におすすめするのが、研修動画です。

厚生労働省は、介護施設や事業所向けに「BCP策定に関する研修動画」を配布しています。

たとえば、介護施設向けの「BCP策定に関する研修動画」では、BCPとは何かという総論から、介護施設の共通事項・入所系・通所系・訪問系それぞれの感染症対策におけるBCP策定方法まで詳しく紹介されています。他業種向けにも「BCP策定に関する研修動画」が公表されているため、動画を参考にしながら研修内容を決めることが可能です。

BCP策定において感染症対策は必ず盛り込もう!

感染症はいつ、どこで発生するか分かりません。加えて、感染症が拡大するスピードは非常に速く、収束までには時間がかかるという傾向があります。したがって感染症が拡大すると、人手不足や資金悪化などにより、事業が縮小あるいは停止するリスクが高まります。

感染症による企業の倒産を防ぎ、事業を早期復旧させるために必要なのがBCPです。BCPを策定し、研修・訓練を行うことで、万一の事態に備えましょう。

プロフィール背景画像
プロフィール画像

監修者:木村 玲欧(きむら れお)

兵庫県立大学 環境人間学部・大学院環境人間学研究科 教授

早稲田大学卒業、京都大学大学院修了 博士(情報学)(京都大学)。名古屋大学大学院環境学研究科助手・助教等を経て現職。主な研究として、災害時の人間心理・行動、復旧・復興過程、歴史災害教訓、効果的な被災者支援、防災教育・地域防災力向上手法など「安全・安心な社会環境を実現するための心理・行動、社会システム研究」を行っている。
著書に『災害・防災の心理学-教訓を未来につなぐ防災教育の最前線』(北樹出版)、『超巨大地震がやってきた スマトラ沖地震津波に学べ』(時事通信社)、『戦争に隠された「震度7」-1944東南海地震・1945三河地震』(吉川弘文館)などがある。

プロフィール背景画像
プロフィール画像

編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。