BCPが物流企業に求められる理由|具体的な施策についても解説

遠藤 香大(えんどう こうだい)
BCPとは、自然災害やテロなどの非常事態時に、被害を抑え事業を継続するための計画です。自然災害の多発や新型コロナウイルス感染症の蔓延を背景に、物流企業でのBCP策定が重視されています。なぜ物流企業はBCPが重要と言われているのでしょうか?
この記事では、BCPが物流企業に求められる理由と、具体的な施策内容について解説します。
目次
物流企業はBCPが重視される
地震や台風など、日本は自然災害が多い国です。2011年の東日本大震災でも問題になったように、大災害が発生すると被災地への物流問題が生じます。そのため、物流企業にとってBCPは欠かせない取り組みといえます。
BCPとは
BCPとは「Business Continuity Plan」の略称で、日本語に訳すと「事業継続計画」です。事業継続計画とは、大災害時はもちろん、コロナ禍のようなパンデミックが発生した際に、企業が事業を継続するための計画のことです。
物流企業でBCPが重視される理由
2011年の東日本大震災発生時、交通インフラである道路や鉄道が寸断され、被災地域への援助物資や日用品が供給されなくなりました。その結果、事業が継続できない、再開が遅れるという事案が数多く発生しています。そのほかにも、大型台風が発生した際に商品が消費者の手元に届かないというニュースを耳にしたでしょう。
物流の麻痺は、地域全体の復旧や生活を阻害してしまう要因になります。社会的責任の面から見ても、物流企業のBCP策定は重要です。
物流企業でのBCPの考え方
物流企業におけるBCPへの考え方は、従業員の命を最優先させつつ、可能な限り早く重要業務を復活させるというものです。
BCPが求められるケースとして、地震や台風、火山噴火などの大災害や、新型コロナウイルスに代表される感染症の蔓延があげられます。突然発生する自然災害もあれば、数日前から予測が可能なものもあります。いずれの場合でも、自然災害やパンデミックを想定した平時からの検討が大切です。
物流BCPで想定すべき災害リスク
物流業界のBCPで、想定されるリスクにはどんなものがあるでしょうか?
ここでは大きくサプライチェーン・人員問題・交通インフラ・ネットワークの4つの事象に分けて、具体的なリスクと対策を考えます。
自然災害によるサプライチェーンの停止
地震や台風、大雪などの自然災害発生時は、交通インフラへのダメージが想定されます。例として、道路の寸断や鉄道の運行停止、船舶の接岸不可などが挙げられます。これらが起こると、サプライチェーンが停止してしまうでしょう。
また、自社施設がある地域が自然災害の被害を被る場合も考慮しなければなりません。保有する車両や輸送機器の被害も想定する必要があります。
さまざまな要因で、物流サプライチェーンの機能停止が想定されるでしょう
従業員、ドライバーの不足
非常事態時には人手の確保がままならなくなります。倉庫で荷物を動かす人員、トラックを運転するドライバー、それらを管理する人員など、非常事態時には人員が不足することを想定しておきましょう。
交通インフラの麻痺
自然災害は、交通インフラに影響を与えます。以下のようにさまざまな要因で交通インフラが麻痺することも想定しなければなりません。
- 土砂崩れや地割れなどで道路が寸断されて通行不可になる
- 大雨による浸水や地震による線路の寸断による鉄道の運行停止
- 津波による港湾施設の被害や船舶の損傷
- 滑走路の亀裂による航空機の離発着不可
地震、台風、大雪など自然災害の種類によって、交通網が受けるダメージには違いがあります。災害ごとに対応を検討しておくことが重要です。
ネットワーク、システムの障害
物流における障害ときくと、トラックや鉄道の障害をイメージする人も多いでしょう。しかし、現代において物流インフラを構成するものは、ほかにもあります。
現在の物流はコンピューターネットワークやITシステムに支えられています。非常事態時にこうした情報インフラが麻痺する可能性も想定しておくことが重要です。
2011年の東日本大震災では、地震と津波により多くの通信施設が破壊され、電話やインターネットが使えなくなりました。ネットワークの障害に備えるため、アナログによる対応も求められるでしょう。
物流BCPの要素
物流BCPに求められる要素を確認しましょう。物理的な対応からシステム面の対応まで、事業を継続うえで必要になる要素は多岐にわたります。
ここからは、物流企業のBCPに求められる要素について解説します。
平時からの準備
いざというときになってから対応策を講じようとしても間に合いません。平時からの準備が大切です。
まず、非常事態に備えた食料や飲料の備蓄があげられます。業務時間中に自然災害が発生すると従業員が帰宅困難になる可能性があります。そうなると、職場での食事や宿泊が必要です。同様の理由で救急品や非常用電源なども備えておきましょう。
倉庫を保有している場合、倉庫内の荷崩れ対策や施設自体の強化を行います。また、自社施設が被災するケースを考慮して、同業事業者と非常事態時の連携について申し合わせておきましょう。逆も然りで、他社の支援を行うこともあります。
さらに、通信やシステムの多重化、データのバックアップなどを事前準備として行っておきましょう。
発災直後の措置
非常事態時の措置として、指揮を取る担当者の選定や、指揮系統に関するルールを作っておきましょう。
非常事態時は指示の迷いが命取りになります。指揮を取る人に情報が集約され、避難や安否確認が滞りなく実施できるような仕組み作りが必要です。被害状況の確認や関係先への連絡など、情報把握と具体的な指示が的確に行えるよう体制を整えておきましょう。
従業員の安否確認
従業員の安否確認をスムーズに行える体制を構築しましょう。従業員及び家族の安全確保、事業復旧に必要な人員確保を行うため、非常事態発生後は初動対応として安否確認を行う必要があります。
安否確認を短時間で正確に行うためには、安否確認システムの導入を検討しましょう。システムの導入が難しい場合は、緊急連絡網を作成したり従業員リストを作成してください。
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物流ルートの再構成
BCPの元来の役割は、事業継続性の確保です。物流BCPでは、自然災害発生時の物流ルートの確保を真っ先に検討しましょう。
地震や台風をはじめ大きな自然災害が発生したときは、交通インフラに障害が起きることがあります。その際は、代替輸送や振替輸送、場合によっては同業事業者の力を借りるケースも考えられます。同業者との連携では人材の融通も視野にいれ、関係性を構築しておくといいでしょう。
また、再構成した物流ルートに指示を適切に出せるようなルールづくりも必要です。
システムの復旧
システム、ネットワーク関連の障害も、物流BCPに課せられる大きなテーマです。可能な限り速やかにコンピューターシステムを復旧させる体制を整える必要があります。
システム周りの障害は自然災害発生時に限りません。悪意のあるハッキング攻撃によってもシステムダウン、ネットワーク障害を引き起こします。適切なセキュリティ対策を実施し、システムを不正アクセスやマルウェアなどから保護することが重要です。万が一に備え、データのバックアップも定期的に実施しましょう。
物流BCPにおける具体的な施策
ここからは、物流のBCP施策について具体的に検証します。ものを運ぶという業務を考慮すると、拠点と燃料の2つのポイントが重要になります。自然災害の影響を受けやすい物流ならではの課題を確認しましょう。
リスクの優先順位を定める
業務の特性や拠点の立地など、自社の環境で想定されるリスクを確認して優先順位を決めておきます。優先順位をつけるにあたっては以下の項目を参考にしましょう。
- 売上貢献度
- 利益貢献度
- 社会的貢献度(緊急物資輸送等)
- 地域貢献度
企業戦略と照らし合わせて、BCPに盛り込んでください。
物流拠点の分散
倉庫や運搬機材など、拠点の分散は物流において非常に有効です。自然災害は日本全国で均一に発生することはほぼあり得ません。
地震、台風、大雪など、発生の危険度はある程度地域ごとに予測できます。国土交通省が情報提供している「ハザードマップ」を参考に、拠点の配置を検討しましょう。
燃料の確保
物流においては燃料が不可欠です。
燃料確保のポイントとしては、どれだけ燃料を備蓄できるか、非常事態時に調達が可能か、燃料に見合った配車ができるかなどがあげられます。平時から燃料備蓄量、調達可能量を把握し、非常事態時に計画的な配車ができる体制を整えておきましょう。
業務のアウトソーシング
効率化できる部分はアウトソーシングすることも重要なポイントです。
すべてを自社リソースで賄おうとすると、多くの費用や人的リソースがかかります。効率化のためにもアウトソーシングを検討しましょう。
同業他社や提携先など、普段から付き合いのある会社はアウトソーシング先として有力候補です。人員や機材などのリソースを融通することは、お互いにとって大きなメリットがあります。
安否確認システムの導入
BCPの基本は従業員の安全確保です。
安否確認をスムーズに行うためには、安否確認システムの利用がおすすめです。情報収集から分析、判断まで、トータルで意思決定をサポートしてもらえるため、BCPには欠かせないツールといえるでしょう。
物流施設における重大な事故・トラブルから企業、従業員を守ろう!
ここまで物流企業におけるBCP策定の重要性について解説してきました。
ご紹介した物流BCPの施策や要素を参考に、非常事態時に滞りなく運用できるようなBCPを策定しましょう。
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