製造業を営む企業のなかには、「在庫(原材料)の積み増しはBCP対策として有効?」と気になっている方もいるでしょう。結論から言うと、防災という観点のみで単純に在庫の積み上げを行うことはおすすめしません。
この記事では、製造業で在庫の積み上げをおすすめしない理由や、BCP対策として有効な方法について解説します。企業規模別でBCP対策例も紹介するため、BCP対策を検討している経営者や役員、総務の担当者は参考にしてください。
目次
製造業におけるBCP対策とは
BCP(Business Continuity Plan)とは、災害や緊急事態が発生した際に、企業活動を継続し、早期復旧を図るための計画のことです。事業継続計画とも呼ばれています。
製造業では、サプライヤーから原材料や部品を調達し、加工して販売するというサプライチェーンを形成しています。災害発生で原材料や部品を調達できなくなれば、生産停止による事業中断につながるため、BCP対策で災害発生に備えることが非常に重要です。
製造業におけるBCPを策定した企業の割合
内閣府の「令和5年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」によると、2023年における製造業のBCP策定の割合は、58.3%です。コロナ禍や各地での地震を受けて、年々BCP策定率は上昇しているものの、まだまだ策定していない企業が多いのが現状です。
【BCP策定率】
2017年 | 2019年 | 2021年 | 2025年 | |
---|---|---|---|---|
製造業 | 45.0% | 45.1% | 52.0% | 58.3% |
(参考:「令和5年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」)
なお、すべての企業がBCPを策定するという状態に至っていない理由として、以下の理由が考えられます。
- BCPの必要性を感じない
- BCPの策定方法が分からない
- BCP策定の人手が足りない
(参考:「令和5年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」)
BCPの策定には手間がかかるものの、企業を存続させるためには不可欠です。製造業でも少しずつ導入されているため、中小企業でもBCPを策定しておく必要があります。
BCP対策として在庫の積み上げはおすすめしない
BCP対策として在庫を積み上げることは、一見安心につながるように思えますが、おすすめしません。在庫の積み増しには、以下のようなデメリットが存在します。
- 収益性の低下
- 在庫維持にかかる費用の増加
- キャッシュフローの悪化 など
在庫の積み増しは企業の財務状況に悪影響を与える可能性があります。在庫の積み増しは最終手段と考えておき、どうしても必要な場合には業務を棚卸しして、中核事業の継続に必要なものは何か、どれほど必要なのかを見極めましょう。
なお、日本政策金融公庫の「震災を契機とした中小企業のリスク対策への取り組み【対策編】〜自動車産業における「連携を活用した新たなリスクマネジメント」の可能性〜」によると、在庫量の見直しや積み増しについて、特段の対応を行っていない企業が大半を占めます。多くの企業は在庫圧縮によるコスト削減を基本方針としており、今後もBCP対策として在庫を積み上げる可能性は低いと考えられます。
(参考:「震災を契機とした中小企業のリスク対策への取り組み【対策編】〜自動車産業における「連携を活用した新たなリスクマネジメント」の可能性〜」P41)
製造業にBCP対策には代替方法の確保が有効
サプライヤーから原材料や部品を調達できなくなった場合に備えて、他の企業から調達できるように準備をしておくなど、原材料や部品を調達するための代替方法を確保しておくことがおすすめです。
「震災を契機とした中小企業のリスク対策への取り組み【対策編】〜自動車産業における「連携を活用した新たなリスクマネジメント」の可能性〜」では、震災リスクに対する中小企業の取り組み状況として、以下の対策を実施している企業があると紹介しています。
- 親密企業と代替生産などの協力体制を構築する
- 所属する業種組合単体で相互支援する仕組みを整える
- 国内外の企業と連携して海外に進出する
上記から分かる通り、製造業のBCP対策では他社と協力体制を構築することが重要です。
(参考:「震災を契機とした中小企業のリスク対策への取り組み【対策編】〜自動車産業における「連携を活用した新たなリスクマネジメント」の可能性〜」)
【企業規模別】製造業のBCP対策
製造業におけるBCP対策は、企業の規模によって異なります。大手企業では、多数のサプライヤーから安定して原材料や部品の供給を受けるために、対策を講じます。一方、中小企業では大手企業の供給ルートから外れないように供給を維持する必要があり、異なるBCP対策を実施します。
ここでは、大手企業と中小企業に分けて、製造業のBCP対策について解説します。
大手企業のBCP対策
大手企業では、災害が発生した際にも安定して原材料や部品の供給を受けられるように、調達先の分散や、調達先へのBCP導入指導を行います。
調達先を分散する
特定のサプライヤーに依存していると、そのサプライヤーからの調達が滞った際に事業継続が困難となります。そのような事態を防ぐために、調達先を分散し、特定のサプライヤーへ依存しない体制を整えることが重要です。
調達先を分散する場合、異なる地域から選ぶことがおすすめです。特定のサプライヤーが被災した際に、被害が少ないサプライヤーから原材料や部品の供給を受けられます。
調達先にBCP導入を指導する
BCP対策を実施している中小企業の割合は、大手企業と比べると少ないです。東京商工会議所会議所の「会員企業の災害・リスク対策に関するアンケート2023年調査結果」によると、2023年時点でBCPが策定済みの大企業の割合は71.4%であるのに対し、中小企業の割合は27.6%でした。
災害が発生した際、供給が滞るリスクのある中小企業が多いのが現状です。しかし、大手企業がサプライヤーである中小企業にBCPのノウハウを提供して指導することにより、供給が滞るリスクを低くできます。そのため、調達先にBCP導入を指導することもBCP対策として有効です。
(参考:「会員企業の災害・リスク対策に関するアンケート2023年調査結果」)
中小企業のBCP対策
中小企業では、災害発生時にも安定して部品を供給できるように、労働力の確保や災害時の指揮命令系統の明確化をBCP対策として実施します。
労働力を確保する
製造業を営む中小企業では、日常的に最小限の人員で運営していることが多いです。災害発生時に業務を行えない人が出てくれば、事業を継続できなくなるリスクがあります。そのため、従業員が業務を行えなくなるリスクを想定し、どの程度の労働力を確保しておけば事業を継続できるのか判断することが重要です。
災害発生時に人手不足が予想される場合には、同業他社と相互連携協定を締結し、災害発生時に代替生産などのサポートを行うことも有効です。ただし、相互連携協定には深い信頼関係が必要であり、容易に行えるものではありません。
災害発生時の指揮命令系統を明確化する
先述したとおり、最小限の人員で運営している中小企業が多いため、社長に意思決定権が集中しやすいです。災害発生時に社長と連絡不能となれば、どのように動けばいいのか判断を下す人がいなくなります。
そのため、あらかじめ災害時の指揮命令系統を明確にしておく必要があります。社長と連絡を取れなくなった場合を想定し、さまざまな意思決定プロセスを持つ組織作りを行いましょう。
BCP対策には安否確認システムも有効
安否確認システムは、災害が発生した際に、従業員に安否確認を実施するためのシステムです。安否確認メールの配信や結果の集計を自動化できるため、迅速かつ正確に従業員の状況を把握できます。
災害が発生した際、事業復旧に向けて次のアクションに移るには、緊急対応できる従業員数を把握する必要があります。安否確認に時間をかけると、次のアクションになかなか移れず、事業が中断する期間が長くなります。安否確認システムを活用することにより、迅速に緊急対応できる従業員数を把握できて、次のアクションに移行できるため、事業の中断を最小限に抑えることが可能です。
安否確認システムならトヨクモの「安否確認サービス2」がおすすめ
トヨクモの『安否確認サービス2』は、4,000社以上で導入され、99.8%のサービス利用継続率を誇る安否確認システムです。
「どの程度の災害が、どの地域で発生した際に通知する」という条件を事前に設定しておくと、災害が発生した際に登録したメールアドレスやLINE、専用アプリに自動で通知されます。一斉送信した安否確認の連絡に未回答の人がいる場合、自動で通知が再送信されるため、未回答者の数を最小限に抑えることが可能です。
料金プランが4つ用意されており、目的に合わせてプランを選べます。初期費用や解約費用は0円であり、さらに最低契約期間も設定していないことから、無理なく始められる点もおすすめのポイントです。
SLA(サービス品質保証)を設定しており、これまで保証基準を下回ったことは一度もありません。システムへのアクセスが急増した際にも安定して稼働できるため、安否確認システムの導入を検討している方は、ぜひ「安否確認サービス2」の導入を検討してください。
初期費用・解約費用(税込) | 0円 |
月額費用(税込) | ライト:7,480円プレミア:9,680円ファミリー:11,880円エンタープライズ:16,280円 |
最低利用期間 | なし |
主な機能 | 外部システム連携/通知条件の設定/予行練習/自動一斉送信/回答結果の自動集計/家族の安否確認/災害以外のお知らせ送信ほか |
無料トライアル | あり(30日間の無料お試し) |
BCPの策定手順
BCPの策定手順は、以下のとおりです。
- 基本方針を策定する
- 運用体制を決定する
- 中核事業と復旧目標を設定する
- 財務診断と事前対策を実施する
- 緊急時の対応の流れを決めておく
- 定期的に訓練を行い、ブラッシュアップする
BCPの策定では、まず具体的な目的を設定します。目的が明確でないと、計画が曖昧になり適切な運用が困難になるからです。目的を決定したら、経営層が積極的に関与し、企業の規模に適した運用体制を構築します。
次に、中核事業を特定し、優先的に復旧させる事業を選定します。売上データを基に決定し、中核事業の復旧目標も設定しましょう。そのあと、復旧費用に関する財務診断を行い、必要な資金を確保する体制を整えます。
災害発生時の具体的な対応プロセスを事前に定め、定期的な訓練を行い、訓練結果を基に計画の改善を行うことも重要です。これにより、実際の緊急事態に迅速かつ効果的に対応できるようになります。
以下の記事で、BCPを策定する流れをより詳しく解説しているため、興味がある方はぜひあわせて確認してください。
BCP策定なら「BCP策定支援サービス(ライト版)」がおすすめ
「BCPの策定方法がわからない」「BCP策定の人手が足りない」という理由でBCPを策定できていない場合、トヨクモの『BCP策定支援サービス(ライト版)』の活用がおすすめです。
コンサルタントがヒアリングしたうえでBCPを策定するため、BCP策定の手間を大幅に削減できます。実用的なポケットサイズのマニュアルも作成しており、緊急時に活用しやすいです。
一般的にBCP策定のコンサルティングサービスには、数十万〜数百万円程度かかりますが、BCP策定支援サービス(ライト版)であれば安価で策定できます。コストを抑えてBCPを策定したい方にとくにおすすめです。
以下のリンクからBCP策定支援サービス(ライト版)に関する資料をダウンロードできます。BCPを策定できていない方や、コンサルタントに相談したい方はぜひダウンロードしてください。
BCP策定支援サービス(ライト版)の資料をダウンロードする
※BCP策定支援サービス(ライト版)は株式会社大塚商会が代理店として販売しています。
在庫の積み上げよりも調達先の分散が有効
以下のように、企業の規模によって実施すべきBCP対策は異なります。
大手企業のBCP対策 | 中小企業のBCP対策 |
---|---|
調達先を分散する調達先にBCP導入を指導する | 労働力を確保する災害発生時の指揮命令系統を明確化する |
災害が発生した際にも事業を継続させるために、原材料や部品を調達するための代替方法を確保しておく必要があります。代替方法があれば、特定のサプライヤーからの供給が滞っても、事業を継続することは可能です。在庫の積み上げには、在庫の保管場所の費用や人件費などさまざまなコストがかかるため、最終手段と考えておきましょう。
BCPを策定できていないなら、トヨクモの『BCP策定支援サービス(ライト版)』の活用をご検討ください!
早ければ1ヵ月でBCP策定ができるため「仕事が忙しくて時間がない」や「策定方法がわからない」といった危機管理担当者にもおすすめです。下記のページから資料をダウンロードして、ぜひご検討ください。
BCP策定支援サービス(ライト版)の資料をダウンロードする
※BCP策定支援サービス(ライト版)は株式会社大塚商会が代理店として販売しています。