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オフィスでのBCP対策は?ビル(建物)の観点・環境づくりの観点からそれぞれ解説

自然災害やパンデミックなどの事業存続に関わる重大な事態は、いつどこで起こるか予想できません。万が一に備えて、BCP対策をしておくことは事業存続のために必要不可欠です。今回は、オフィスでできるBCP対策について、BCP策定のステップとともにご紹介します。

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監修者:堀越 昌和(ほりこし まさかず)

福山平成大学 経営学部 教授

東北大学大学院経済学研究科博士課程後期修了 博士(経営学)。中小企業金融公庫(現.日本政策金融公庫)などを経て現職。
関西大学経済・政治研究所委嘱研究員ほか兼務。専門は、中小企業のリスクマネジメント。主に、BCPや事業承継、経営者の健康問題に関する調査研究に取り組んでいる。
著書に『中小企業の事業承継―規模の制約とその克服に向けた課題-』(文眞堂)などがある。

改めて知るBCPとは

企業は、自然災害やパンデミックなどの緊急事態が起こった際に、従業員の安全を守りつつ企業を存続させることが求められます。そのためにはBCPの策定が有効です。そこで最初に、BCPの定義や役割をご紹介します。

BCPとは「Business Continuity Plan(事業継続計画)」の略称で、自然災害やテロなどの緊急事態時に被害を最小限に抑え、事業を継続するための計画のことです。BCPを策定しておけば、有事の際に復旧までの道筋が明確になります。

企業が直面し得る問題は地震・津波・台風・豪雨などの自然災害以外にも、感染症の流行・テロ・情報漏洩・紛争など数多くあります。万が一に備えて、事前のBCP策定が重要です。

オフィスビル(建物)に対してできるBCP対策

オフィスビル(建物)に対しては以下のようなBCP対策が可能です。

  • 耐震性の評価を受ける
  • 管理会社の防災対策を確認する
  • 非常時の電源を確保する
  • 空調性能を見直す
  • ハザードマップを共有する

それぞれのBCP対策について詳しく解説します。

耐震性の評価を受ける

最初に、耐震性の評価を受けましょう。

とくに、1981年6月以降に建てられたビルに関しては、新耐震基準に対応していなければなりません。基準を満たしていることを必ず確認してください。

万が一問題がある場合は補強工事をし、新耐震基準を満たす必要があります。

なお、旧耐震基準は「震度5程度の地震に耐えられる」とされていましたが、新耐震基準は「震度6〜7程度の地震で倒壊しない」とされています。

管理会社の防災対策を確認する

管理会社の防災対策も確認しなければなりません。たとえば、緊急事態発生時にどの程度の食糧や水が確保されているか、防災訓練が実施されているか、ビル内の他社とマニュアルが共有できているかなどが挙げられます。

防災訓練の実施も重要です。防災マニュアルが作成されていても、訓練をしていなければ、いざという時にマニュアルのとおりに動けない可能性があります。

非常時の電源を確保する

非常時に電源を確保することも、BCP対策のひとつです。

最近では、大地震などで電力が止まることを想定し、非常用電源を設置している管理会社も増えています。しかし、ビルが古かったり小さかったりすると、非常用の蓄電池や自家発電施設が設置されていないケースもあります。

非常時に備えた設備がないときは、蓄電池や発電機の導入を交渉すること、必要に応じて自社で導入することなどを検討しましょう。

空調性能を見直す

空調性能も見直しの対象です。近年は、新型コロナウイルス感染症によりテレワークを導入する企業が増えました。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響が減り、オフィスで働く人が増えつつある昨今、感染症対策として換気性の確認が重要です。

今後、インフルエンザや新型コロナウイルス以外の感染症が流行するおそれがあります。万が一に備えて、今のうちに空調性能を見直しておきましょう。

ハザードマップを共有する

ハザードマップの共有も欠かせません。なぜなら自然災害が発生すると、津波や川の氾濫など、二次災害のリスクがあるためです。ハザードマップで周辺環境を確認し、周辺のリスクを理解しておくことは社員の安全を守るうえで不可欠です。

また、ハザードマップは必ず最新のものを確認しましょう。最新版を共有し、避難場所やルートを検討してください。

 

オフィス内でできるBCP対策 

BCP対策は、オフィスビルだけでなくオフィス内に対しても行えます。以下のような対策がオフィス内で可能です。

  • 家具や機器を固定する
  • データを分散して保存する
  • リモート勤務体制を整える
  • 緊急事態時の連絡手段を決める
  • 避難通路を確保する
  • 定期的に防災訓練を実施する

それぞれのBCP対策について詳しく解説します。

家具や機器を固定する

地震が発生した際、家具や機器が転倒しないように固定しましょう。

日本は地震の多い国であり、大小を問わず、さまざまな場所で地震が発生しています。地震によって家具や機器が転倒すると買い直す必要がありますし、転倒した際に従業員が怪我をするおそれもあります。

事業の早急な再開・被害の最小化・従業員の安全確保のためにも家具や機器を固定しておきましょう。

データを分散して保存する

データの分散保存も大切です。なぜなら、データを分散しておくと、機器が破損しても他の機器に保存しているデータで事業を再開できるためです。バックアップ先を分散することでリスクをさらに減らせます。

また、保存方法だけでなく機器が損傷した際の復旧方法についても検討しておきましょう。

リモート勤務体制を整える

リモート勤務体制を整えることもBCP対策のひとつです。リモートワークの環境が整っていれば、有事の際にオフィス以外の場所から業務ができます。

加えて、リモート勤務体制を整えることは感染症対策としても有効です。たとえ空調設備を整えていても、同じ空間に複数人が集まれば感染症のリスクが生じます。リモートワークを導入することで感染症拡大のリスクを抑えられます。

緊急事態時の連絡手段を決める

緊急事態時の連絡手段を決めておきましょう。有事の際には従業員の安否確認が必要不可欠です。

緊急時の連絡手段には電話・メール・SNSなどがありますが、従業員全員の安否確認がスムーズにできるような専門システムの検討をおすすめします。安否確認ツールは、電話やメールのように通信障害の影響を受ける心配がなく、連絡や管理が容易になるツールです。

安否確認ツールは多くあり、それぞれで機能が異なります。必要な機能を洗い出し、機能性・コスト・使いやすさの視点から最適なツールを選びましょう。

避難経路を確保する

避難経路の確保もBCP対策のひとつです。

BCPは、緊急事態発生時に被害を最小限に抑えること、事業を継続することを目的としています。被害を抑えて事業を早急に再開するためには、従業員の安全確保がもっとも重要です。

オフィスの構造を確認し、避難経路があるかどうかはもちろん、レイアウトを工夫して動線や避難経路を確保します。転倒リスクがあるものを把握し、必要に応じて固定をしたり設置方法を変えたりして転倒リスクをなくすことが大切です。

 

定期的に防災訓練を実施する

定期的に防災訓練を実施することも大切です。なぜなら、BCPを策定しただけでは緊急事態発生時に機能しない可能性があるためです。定期的に訓練・修正をすることでBCPの実効性を高められます。

また、従業員の防災意識を高め、動きを定着させることも可能です。たとえBCPが念頭にあっても、緊急事態が発生するとパニックになり、頭が真っ白になることがあります。しかし、日頃から訓練をし、動きを定着させておくことで、万一の際も冷静に対応できます。

BCP策定のステップ

BCPの策定は以下のステップで行います。

①企業理念を軸に方針を決める

②運用体制を決定する

③事業に優先順位をつけ、復旧目標を設定する

④財務診断・事前対策を実施する

⑤発動基準や対応の流れ、指揮系統を含め計画書を作成する

⑥定期的に訓練を行い、ブラッシュアップする

それぞれのステップについて詳しく解説します。

①企業理念を軸に方針を決める

最初に「自社が守りたいものは何か」を軸にBCP策定の目的を決めることが重要です。

BCPには複数の種類があり、目的によって最適なBCPが異なります。また、目的を明確にしておかないとBCP策定がスムーズに進みません。

②運用体制を決定する

企業の規模によって適切な運用体制は異なります。大企業であれば、各部署ごとに担当者を決め、部署間で連携してBCPを推進する必要があります。中小企業の場合は、情報が行き渡りやすいので、部署ごとに担当者を選出する必要はありません。

③事業に優先順位をつけ、復旧目標を設定する

目的を明確にしたら、事業に優先順位をつけます。最優先の事業(中核事業)を決め、優先順位が高い事業に関しては、復旧までの目標復旧時間を設定します。

優先順位を決める基本的な要素は以下の3点です。

  • 会社の売上に最も寄与している事業
  • 作業や事業の停止による損害が大きい事業
  • 市場シェアや会社の評判維持のために重要な事業

複数の事業を展開している場合、全ての事業を同時に復旧させることは困難です。優先順位を決め、会社のダメージを最小限にしましょう。

復旧させる業務にも順位をつけます。予測したリスクが実際に起こった際、どの業務から復旧させるかを検討しましょう。

事業ごとに様々な業務がありますが、業務復旧の優先順位を決めておくことで、企業の重要な事業を守れるのです。

④財務診断・事前対策を実施する

次に復旧に要する費用を予測し、事前に対策を行いましょう。

復旧に必要な費用が会社のキャッシュだけで補えない場合は、資金調達を行う必要があります。その際、資金調達先を明確にしておくことが重要です。

⑤発動基準や対応の流れ、指揮系統を含め計画書を作成する

発動基準や指揮系統を含め、計画書を作成しましょう。

このステップでは、従業員個々の役割や対応の流れを定めます。自分がすべきことを把握できると、緊急事態発生時でもそれぞれが冷静に行動できるでしょう。

対応は次の流れで行います。

①初動対応:従業員とその家族の安否確認、被害状況の確認など

②緊急対応:事業や従業員が被害を受けた場合に緊急で行うべき対応

③復旧対応:事業を復旧させるために行う対応

⑥定期的に訓練を行い、ブラッシュアップする

計画書は作成すればいいわけではなく、緊急事態発生時に実効性が高いものであることが重要です。そのため、定期的に訓練を行い、全体で共有し緊急事態時に必要な動きを定着させておきましょう。また、訓練を行うことでBCPの課題が見えてきます。社会情勢や法改正などの周辺環境によって求められるBPCは変化するため、定期的に更新するようにしましょう。

感染症に対するBCP対策

会社の存続に関わるリスクとして、自然災害だけではなく感染症も挙げられます。

特に最近では、新型コロナウイルス感染症により多くの企業が損失を被りました。感染症はいつ、どこで、どのようなスピードで広がるか分かりません。そのため、感染症に対するBCP対策も必要不可欠です。

以下で対策例を紹介します。

距離を確保する

感染症の拡大を防止するために、従業員同士の距離を確保しましょう。たとえば、座席の間隔を2m以上設けると、同じ空間に従業員がいても感染症拡大のリスクは減少します。十分なスペースが確保できない場合は、パーテーションを設置し、飛沫を予防することが大切です。

非接触環境を整備する

非接触環境を整備することもBCP対策です。非接触環境の整備として、自動扉や顏認証システムの導入が挙げられます。

感染症が拡大する原因は、手指や唾液の飛散です。したがって、非接触環境を整備することで感染症の拡大を防げます。スマホ操作のみで開閉できるアプリやWeb会議の導入も、感染症対策に効果的でしょう。

二酸化炭素密度をモニタリングする

二酸化炭素密度をモニタリングしましょう。二酸化炭素密度をモニタリングすることで、空気の循環を見ることができます。これにより、頻繁な換気を促したり、感染症防止の意識を定着化できたりするのです。

BCP策定でオフィスを守ろう!

自然災害やパンデミックなどの緊急事態が発生した際、BCPは従業員の安全確保と事業の存続に役立ちます。この記事では、オフィス内でできるBCP対策について紹介しました。また、BCPは策定して終わりではなく定期的に訓練を行うことで実効性を保つことができます。定期的にブラッシュアップするようにしましょう。

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監修者:堀越 昌和(ほりこし まさかず)

福山平成大学 経営学部 教授

東北大学大学院経済学研究科博士課程後期修了 博士(経営学)。中小企業金融公庫(現.日本政策金融公庫)などを経て現職。
関西大学経済・政治研究所委嘱研究員ほか兼務。専門は、中小企業のリスクマネジメント。主に、BCPや事業承継、経営者の健康問題に関する調査研究に取り組んでいる。
著書に『中小企業の事業承継―規模の制約とその克服に向けた課題-』(文眞堂)などがある。

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編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。