近年、災害によって通信手段が限定され、事業活動に影響するケースが目立っています。2024年1月1日に発生した能登半島地震では通信インフラが損傷し、多くの地域で通信手段が途絶えました。2022年8月には、大雨によって新潟県などでおよそ1,900戸の停電が発生しています。
日本は地形や地質、気象面で厳しい条件下にあり、自然災害の発生頻度は世界的にも高い国の一つです。事業活動を円滑に復旧させるためにも、災害時の事業継続計画(BCP)における従業員の安否確認は極めて重要です。そこでこの記事では、BCP対策におすすめの安否確認方法を紹介します。
目次
企業の安否確認の目的は生存確認ではない
災害時に企業が安否確認を行う目的は、個人間の生存確認とは異なります。個人間で行う生存確認の目的は、家族や友人などが無事であるか確認することです。それに対し、企業が行う安否確認は、従業員の状況を確認し、素早く業務を復旧させることを目的としています。
災害時における企業の安否確認では、従業員とその家族が無事であるかどうか確認するだけではなく、緊急対応できる従業員数を把握しなければなりません。出社可能な、あるいは業務に携わることが可能な従業員を確保できれば、事業が滞るのを防ぐことができ、通常業務への復旧も迅速に行えます。
なお、以下の記事では企業におけるBCPの必要性について詳しく解説しています。今後30年の大地震の確率についても紹介しているため、興味がある方はぜひあわせてご覧ください。
BCP対策として安否確認の方法を複数用意しておく
安否確認の方法が1つのみの場合、BCP対策としてあまり意味がありません。緊急時には何が起こるか分からないため、安否確認の方法を複数用意しておくことがおすすめです。たとえば、災害時に電話が集中して電話回線が混雑すると、電話がつながりにくくなり、電話で安否確認をおこなえません。また、インターネット回線がつながらない可能性もあります。
このような事態に備えて、安否確認システムと電話というように、安否確認の方法を複数用意しておくと安心です。基本は安否確認システムを使用し、インターネット回線がつながらない場合には電話を使用するというように使いわけることにより、非常時に対応しやすくなります。
企業の安否確認の方法
企業が行う安否確認の方法は、主に以下のとおりです。
- 安否確認システム
- メール
- 災害時にのみ提供される通信各社のサービス
- 連絡用アプリ
- SNS
【BCP対策におすすめ】安否確認システム
安否確認システムとは、緊急時にスムーズに従業員に連絡を取れるサービスです。災害時の使用を想定して設計されており、広域災害時も使用できます。
災害発生時に自動で従業員に通知を送信する機能を備えており、通信トラフィックが増加する前に安否確認を実施できる点がメリットです。また、従業員からの通知への回答も自動で集計するため、防災担当者は緊急対応に集中できます。
企業の安否確認の方法にはさまざまなものがありますが、他の方法では通知の送信や回答の集計を手動で行わなければなりません。防災担当者は安否確認の作業に手を取られてしまい、すぐに緊急対応に着手できないことから、業務が停止する時間が長くなります。そのため、迅速に業務を復旧させたい場合には安否確認システムを選びましょう。
ここでは、おすすめの安否確認システムを2つ紹介します。
トヨクモ 安否確認サービス2
トヨクモの『安否確認サービス2』は初動で必要な安否の確認だけでなく、その後のコミュニケーションにも配慮されています。掲示板や個別のメッセージ機能を活用すると、今後の指示や、怪我の有無、就業に関する状況報告などを従業員とやり取りできます。
東日本大震災のような大災害も想定し、メインサーバをシンガポールに、バックアップサーバを米国と日本に置いています。サーバを国際的に分散して置くことにより、リスクを軽減することが可能です。さらに、アクセスの集中や、災害の発生により、自動的にサーバを拡張するシステムになっています。
セコム 安否確認サービス
セコム安否確認サービスは国内最大級の安否確認システムで、24時間365日対応してくれます。災害が発生すると、まずセコムから管理者へ通知が行きます。そして、セコムが管理者の代わりに社員に一斉メール送信し、安否確認を行う流れです。
管理者は、返信のあった社員に対し個別に、「待機」「出社」「別の拠点の支援」など、追加の指示を送ることができます。料金は初期費用が110,000円(税込)〜、月額基本料金が11,000円(税込)〜です。
メールによる安否確認
メールによる安否確認では、総務などが前もって社員のメールアドレスを一括で管理し、緊急時に一斉にメールを送信します。平時には、会社全体に注意喚起などの連絡を行う際にも使用します。
普段から利用している連絡手段であるため、緊急時に操作等に迷うことなく迅速に対応できる点がメリットです。しかし、災害発生時には利用者、利用数ともに爆発的に増えることにより、メールサーバーの負担が増えてしまい、通常時のように迅速にメールを送れないというデメリットもあります。
災害時に提供される通信各社のサービス
通信各社が用意する緊急時用のサービスは、いままでの災害時にも多くの方が利用しており、認知度の高いサービスです。しかし、個人での利用を前提として作られており、安否確認に特化しているので、大勢のスタッフの安否を一度に確認したり、その後の指示や、連絡のやり取りに使ったりするのには不向きといえます。
災害時に提供される通信各社のサービスは、以下のとおりです。
- NTT災害用伝言ダイヤル(NTT東日本・NTT西日本が提供)
- 伝言掲示板(docomoやauなど通信会社が提供)
NTT東日本とNTT西日本によるNTT災害用伝言ダイヤル
NTT災害用伝言ダイヤルとは、災害時にNTTが速やかに提供を開始するサービスです。音声を録音して登録すると、登録者の電話番号を知っている人は電話番号を入力することにより、音声を再生できます。
NTT災害用伝言ダイヤルを使用するには、まず「171」をダイヤルします。録音したい場合には「1」を入力し、被災地の固定電話の番号を入力します。次に「1#」を入力し、自分の名前、居場所、状況を録音します。「9#」を入力すると、録音は終了です。
家族や知人が録音したものを再生して聞きたいときは、「171」をダイヤルし、「2」を入力します。被災地の固定電話の番号を入れた後、「1#」で再生できます。「3#」を入力すると、再生後にメッセージを録音することも可能です。
料金は、NTT東日本・NTT西日本の加入電話機と、災害時用公衆電話機からは無料、それ以外は各通信社で異なります。
通信会社による伝言掲示板< docomo / au / ソフトバンク / Y!mobile >
震度6弱以上の地震などの災害時に、docomo、au、ソフトバンク、Y!mobileなどが伝言掲示板を用意します。伝言掲示板にメッセージを残すと、インターネットを通して、世界中からその登録情報を確認できるというものです。また、平時に登録しておいた宛先に向けて、伝言掲示板にメッセージがあることをお知らせすることもできます。
docomoとauは1つの電話番号につき10件まで、ソフトバンクとY!mobileは1つの電話番号につき80件まで登録でき、規定件数を超えた場合は古いものから順次消去される仕組みとなっています。基本的に利用料は無料ですが、会社によって別途パケット料金などが発生する場合もあります。
連絡用アプリ
コミュニケーションの機能に特化したアプリには、災害時に利用できるものもあります。プライベートで使っている人も多いため、すでに操作に慣れている点が魅力です。ただ、集計の機能などは備わっていないため、大人数の安否確認には向いていません。
LINE
LINEは、東日本大震災の発生した2011年3月には開発途上でした。この震災を受け、「緊急時にこそホットラインが必要だ」という思いからLINEには既読マークが取り入れられました。LINEの既読マークは相手が被災して返信すらできないときでも、メッセージが伝わったか否かを判断できるようにとつけられた機能なのです。
電話回線がつながっていなくても、インターネット回線がつながっていればトークは可能です。緊急連絡網のグループを設定しておけば、非常時に一斉に安否確認することができます。
大規模災害時には自動で安否確認画面が出るので、そのときの状況を選択し、メッセージを送信することができます。
Microsoft Teams
Microsoft Teamsで「全社チーム」という機能を使用すれば、社内でライセンスを持っている人全員にグループでメッセージを送れます。一人ずつ連絡する必要はなく、一斉に安否確認の連絡を入れられる点はメリットです。
また、グループチャットの人数が20人以下の場合、自身がグループに送信したメッセージを誰が読んだのか確認できます。たとえ返事がなかったとしても、既読を確認できれば、次のアクションを考える際の参考になるでしょう。
SNS
SNSによる安否確認という方法もあります。利用者が多く、情報発信をしやすいという特徴があります。しかし、メッセージを見たかどうかを確認しにくいものが多く、一方的に指示などの情報を発信をする際に向いています。
X(旧Twitter)
X(旧Twitter)の投稿や、メッセージなどの機能を使うことにより、安否確認を行えます。メッセージの発信の場として使うことも可能です。社外の人間にやり取りを見られたくない場合には、会社のアカウント宛に社員にメッセージを入れてもらうとよいでしょう。
インターネット回線を使用したツールであるため、電話回線が混雑している場合でも、安否確認を行いやすいです。首相官邸のアカウント(https://twitter.com/kantei_saigai)など、災害時に情報を発信するアカウントをフォローすることにより、迅速に情報を収集できます。
Facebookには現在、「災害時情報センター」という機能が付いています。自然災害が発生すると、該当地域のユーザーに、安否確認のメッセージが入ります。それに返信することによってグループの皆に安否確認が伝わる仕組みです。
迅速な業務の復旧には安否確認システムの利用がおすすめ
BCPにおいて、なぜ安否確認が重要なのか、そのための方法には何があるのかを紹介しました。
非常事態に業務を迅速に復旧するには、人材の確保が優先です。安否確認の方法としては、メール、各社が提供する安否確認システム、伝言ダイヤルに伝言掲示板、SNSといった方法があります。なかでも、迅速に業務を復旧するなら、安否確認システムの利用がおすすめです。
災害が発生した後にすぐに業務を復旧できるかどうかは、企業の存続に大きく影響します。企業を存続するために、いまからできうる限りのBCP対策に取り組みましょう。
なお、トヨクモが提供している『安否確認サービス2』は、初期費用は0円で、月額料金のみ発生します。最低利用期間は設定していないため、無理なく始められます。30日間の無料お試し期間を設けているため、興味がある方はぜひ一度お試しをご利用ください。