災害発生時や緊急時に被害を最小限に抑え、事業を続けるためのBCP(事業継続計画)。
BCPは策定して終わりではなく、有事の際に機能しなければ意味がありません。
万が一の際に備え、BCPが想定通り機能するかどうか、欠陥の有無を見つけるためにもBCP訓練をしておく必要があります。
そこで本記事では、BCP訓練の重要性や主な流れ、訓練のタイプやポイントなどを解説します。自社でBCPを策定したものの、実際に機能するか確信が持てない総務担当の方、BCP訓練を実施したいものの、何から手をつけるべきか分からない方は、ぜひ参考にしてください。
目次
BCP訓練とはなにか
地震や火災、水害などの自然災害、感染症やサイバー攻撃など、企業の存続を脅かすリスクは常に潜んでいます。緊急事態でも被害を最小限に抑え、事業活動を継続・早期復旧させるために、平常時と緊急時の対処方針や手段を取り決めておく計画が、BCP(事業継続計画)です。
しかし、BCPをあらかじめ定めていても、有事の際に行動に移せなくては効果がありません。実際に緊急事態に遭遇すると、焦りや不安・恐怖から冷静な判断ができず、ミスや誤った行動により、二次災害を引き起こしてしまう可能性もあります。
そこで、平常時にBCPの実効性や、計画内容が十分・適切であるかどうかを判断するために行うものが、BCP訓練です。
訓練を通じ、従業員や経営陣はBCPへの理解が深まり、リスク管理への意識が定着するようになります。また、緊急時対応に必要な知識や技能が身につき、各自の役割分担も明確になるでしょう。机上の議論だけでは見落としてしまう計画の欠陥を発見し、見直しと訓練を繰り返すことで、BCPをさらにブラッシュアップできます。
災害発生時に備えBCP訓練を行うべき理由
日本は地形や地質、気象の面で洪水や土砂災害、地震や火山活動が多い国土です。
近年では、地球温暖化や異常気象により自然災害が頻繁に発生しており、自然災害による被害も増加傾向にあります。特に、過去30年間には1995年の阪神淡路大震災、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震、2017年の九州北部豪雨などと、大きな自然災害が多発し、甚大な被害をもたらしました。
自然災害が発生すると、従業員への健康被害のほか、建物や設備の故障・破損、商材や資源・データの消失、インフラやサプライチェーンの停滞など、事業活動の継続に大きなダメージを与えかねません。自然災害の発生は予測が難しく、いつ発生するか分からない事態に備えて、BCP訓練を行っておく必要があります。
また、事業を続けていくうちに周囲の環境や企業の事情も変化していきます。例えば、新型コロナウイルスの感染拡大を機に、リモートワークが定着しました。従来の紙媒体の書類管理ではなくデジタルデータでのやり取りが増え、電話やFAXではなく外部からアクセス可能なチャットサービスやクラウドなどが主流となりつつあります。
緊急事態に適切にスピーディに対応するためには、現在の企業環境や時代に即したBCPを策定することが肝心です。BCPの内容は定期的に見直し、不十分な点がないか、最新技術やシステムに適応しているかを確認し、修正しなくてはなりません。また、その都度従業員や経営陣に対し、内容を周知し継続的に情報共有する必要があります。
BCP訓練の主な流れ
BCP訓練を行うといっても、何を準備しどう実行すれば良いのでしょうか。
実はBCP訓練にも計画の立案が必要であり、訓練当日だけでなく終了後の検証やBCPの改善・更新作業が特に重要です。
以下で、BCP訓練を行う主な流れと各ステップの内容を見ていきましょう。
訓練の計画・準備
BCP訓練を有意義なものにするためには、訓練の計画・準備段階が肝心です。
まずは、BCP訓練の目標やテーマを明確化し、どのような訓練を行うかを決めます。
BCP訓練の実施目的として、社内外の連携能力強化やツール・システムへの習熟・定着などが挙げられます。訓練を通して参加者に何を身につけて欲しいのか、BCP内容の何を確認したいのかを考えましょう。BCP訓練の実施目的や意義は、参加者に前もって共有することが重要です。
訓練のテーマが決まったら、訓練の運営体制や実施方法、対象者や協力者・オブザーバー、実施日時や場所などの詳細を検討し、必要な人員やシステム・資材などを準備します。
訓練に現実味を持たせるためには、災害地や被害規模・シチュエーションなどを具体的に設定することがポイントです。
災害時に連携が必要な関係者、災害の発生日時、発生場所や被害状況を設定し、時系列に沿って事態がどう変化していくかを示すシナリオを作成しましょう。シナリオ内では、どのタイミングで参加者に情報を提供するかを決め、その内容は状況付与票を作成してまとめます。シナリオがあることで、実際の災害をよりリアルに想像しながら訓練を実施しやすく、効果を高められるでしょう。
また、訓練を行う上では、個々の役割分担を明確にしておくことで、各自の責任感や行動力・判断力を養えます。
訓練の実施
訓練予定日当日、準備に問題がなければ訓練を実施します。
実施前には参加者を全員集めて、オリエンテーションを行いましょう。オリエンテーションでは参加者に対して訓練全体の流れやルール、注意事項などを説明し、不安な点や疑問点がないかを確認します。
オリエンテーションが完了したら訓練の開始を宣言し、シナリオの時系列に沿って進めていきます。参加者には状況付与票を渡し、各自で考え行動するように誘導しましょう。
訓練の様子や参加者の行動は、後の検証やフィードバックで使用できるように記録しておきます。記録方法はテキストや写真、動画など様々です。
訓練後の検証
訓練終了後には参加者や関係者全員が、訓練内容を振り返る時間を設けましょう。
訓練の感想や訓練を通じて気づいた課題などについて、参加者自身が自由に意見を出し合える環境づくりが望ましいです。
また、協力者やオブザーバーによる客観的なフィードバックも、その場で行うことで訓練の効果を高められます。
参加者にはBCP訓練に関するアンケートに答えてもらい、今後の訓練の企画や実行に活かしましょう。
策定したBCPの改善・更新
訓練をBCPの改善・更新に繋げるため、訓練中の参加者の行動が適切であったかどうか、BCPの内容が十分であるかどうかなどを評価します。
訓練内容は対応時間(迅速性)や正確性、行動の柔軟性、期待された行動の達成度などに分けて評価しましょう。その際、定量的に評価できるものは数値で表すことで、データが可視化され、次回以降の指標としやすいです。
また、訓練中にミスや問題が発生した場合は、現時点でのBCPの改善点として捉え、修正・更新を重ねてブラッシュアップしていきましょう。
BCP訓練のタイプとポイント
BCP訓練と一口に言っても、その種類は豊富です。
企業や業務の特徴、訓練の目的などに合わせて、どのような訓練を行うべきかを考える必要があります。
以下で、BCP訓練のタイプとそのポイントを見ていきましょう。
机上訓練
策定されたBCPに記載された手順をなぞり、部署やメンバーごとの役割や行動を確認し、計画の実効性を議論形式で検討するものです。
具体的には、実際に自然災害や緊急事態が発生した際、誰がいつどこで何をどのように行い、報告・連絡・記録するのかといった要素を確認します。
計画書に目を通し、言葉を交わしながら実施するため、メンバー全員のBCPに対する意識を改めて共有して、認識や方向性をすり合わせる機会になります。また、理論上計画に矛盾がないか、優先順位が適切であるかどうかを検討できます。
机上訓練を行う際は、具体的な災害事象を選定し、被害状況を想定して訓練シナリオを作成すること、従業員や経営陣・協力者など関係者全員が意見交換することがポイントです。
代替施設への移動訓練
災害が発生した場合、工場や事務所などの施設がダメージを受け、事業拠点としての機能を失う可能性があります。
BCPの一環として非常時の代替施設を設けている場合、事業や資源を移動させる訓練も必要です。復旧要員の一部を実際に移し、大体拠点での事業復旧が可能かを検証します。
例えば工場の場合、大体施設で設備やシステムを稼働させ、製品の製造や加工作業ができるかどうかを確かめます。
復旧にかかる時間や行動の流れを評価し、非効率な点や課題点があれば改善策を練ります。
バックアップデータの引き出し訓練
災害発生時には電気やインターネットなどのインフラが故障・停止し、正常に機能しなくなる恐れがあります。多くの企業がデジタルデータを利用しているため、BCPの一環としてデータのバックアップを行っていると思われます。
いざ、平常時に稼働しているシステムに障害が発生した際、電気や通信などのインフラ設備の代替手段を瞬時に起動し、バックアップデータを取り出せるかどうかを検証する訓練も不可欠です。データの復旧に問題がないか、バックアップしたデータで事業を継続できるかどうかを確かめます。万が一、電子データが利用できない場合を想定して、紙ベースでの検証を行う訓練もあります。
また、データの引き出し訓練を機に、普段のバックアップ頻度やデータの保存先、管理体制などについて見直すと良いでしょう。
電話連絡網・緊急時通報訓練
緊急事態発生時に、速やかに従業員に連絡が行き渡り、情報を収集できるかどうかを検証する訓練です。
安否確認システムが機能するか、電話連絡網に従って連絡がとれるかを実際に確かめます。全ての従業員と漏れなくコミュニケーションを取れるように、連絡先を最新の情報に更新する必要があります。
また、緊急時の通報ルールや連絡手段を、改めて従業員や関係者に周知することも必要です。
総合的訓練
緊急事態の発生からBCPの発動、事業継続・復旧作業まで一連の流れを時系列に沿って実証する訓練です。特定の災害と被害状況を設定してBCP訓練のシナリオを作成し、机上訓練と実働訓練を組み合わせて行います。
要素別の訓練と異なり、あらゆる場面での柔軟な対応力を養い、各要素同士の連携を強化できます。
トヨクモが提供する『安否確認サービス2』の一斉訓練で有事に備えよう
災害時に有効なBCPツールの一つとして、トヨクモが提供する「安否確認サービス2」があります。安否確認サービス2は、安否確認連絡を一斉送信し、回答結果を自動集計できるサービスです。また、有事の際に従業員の安否を迅速に確認できるだけでなく、一斉訓練を通じて災害に備えられたり、防災意識の醸成ができたりします。
BCPの策定も未実施の方は、安否確認サービス2を導入し、一斉訓練への参加を検討してみてはいかがでしょうか。
一斉訓練
トヨクモの安否確認サービス2をご利用のお客様は、9月1日(防災の日)に開催される一斉訓練に無料でご参加いただけます。
参加組織ごとの回答情報を集計した結果レポートでは、社内ユーザーの回答率の時間推移や、訓練全体の平均回答時間等をご確認可能です。
BCPの活用には定期的な訓練と見直しが必須
今回はBCP訓練の重要性や主な流れ、訓練のタイプやポイントなどを解説しました。
BCPは策定すること自体ではなく、有事の際に正しく機能することが重要です。
そのためには、BCPを実際に活用するための訓練を行い、企業の周辺環境や時代の変化に応じて、BCPを定期的に見直し・修正する必要があります。
BCP訓練が初めてで不安な方は、ぜひトヨクモが提供する「安否確認サービス2」を導入した一斉訓練を検討してみてください。