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BCPを導入しないと仕事を失う!? 企業のBCP策定が必須である4つの理由

BCPの必要性は認識しているけど、利益に繋がるわけではないし、なかなか導入には踏み切れない。そんなことを思っている企業の防災担当者は多いのではないでしょうか?

いつ起きるかわからない大災害に備えて、コストをかけてBCPを導入するというのは、大企業ならまだしも、中小企業にとっては特に難しいことでしょう。

しかし、企業がBCPを導入する理由は、必ずしも大災害への備えというだけではないのです。例えば、BCPを導入しないことによって、企業は災害以上の損失を被るかもしれません。一方で、CSRの観点から考えてBCP導入が企業の評価を高めることさえあります。

今回は防災以外の目的で、企業がBCPを導入しなければならない理由をまとめて紹介します。

1. BCP導入が企業の格を上げる?CSRのためのBCP


今多くの企業、とりわけ大企業では、利潤だけを追求するのではなく、社会に責任を果たすことを求められています。これをCSR(企業の社会的責任)といい、各企業が経営戦略として取り入れています。

CSRは社会の一員である企業が成すべきことです。その中にはリスクに対する備えも含まれており、企業が信頼を得るためには必要不可欠な要素といえます。そして、その中にはBCPの策定も含まれています。今や企業にとって経営戦略にBCPを取り入れることが、一流企業としての評価を得る時代となっているということでしょう。

このように、CSRの一環としてBCPを掲げ、高い評価を得ている企業があります。それがパナソニックです。同社では大地震や新型インフルエンザなどの感染症を想定したBCPに策定し、その取り組みを系列会社に拡大しています。

同社は、BCPを策定することでステークホルダーからの信頼・信用を高め、ブランドイメージや競争力の向上、事業継続能力を高めることで、企業の社会的責任を果たしてきたのです。このような取り組みは、事業継続推進機構(BCAO)から2008年度BCAOアワード優秀実践賞が授与されたほど。同社はさらに、BCPのノウハウをソリューション商品として展開することで、ビジネスにも繋げています。

このようにBCPをCSRとして取り入れることは、企業としての価値を高めるだけではなく、時にはビジネスにも繋がるなど幅広いメリットがあるのです。

2. 取引先からBCP導入を求められる


取引先からBCP策定を求められる場合があります。例えば、メーカーが普段から取引している部品の調達先企業の生産がストップしてしまうと、メーカーは大きな被害を受けることに。そうした事態を回避するために、取引先に対して、BCPの策定を求めるのです。そして今やBCPの策定は、ビジネスパートナーとして良好な関係を築く上でなくてはならないものといえるのです。

このような取引先の要請から始まるBCP策定は、いわば強制力を伴ったもので、ビジネスを続ける上で策定せざるを得ないという側面があります。だから、本当の意味で防災というものとは異なるかもしれません。とはいえ、こうした要請があることで、BCP策定が早く広まるということはあるでしょう。

3. 会社には社員を守る義務がある!「安全配慮義務違反」しないためのBCP


大災害が発生して、社員が怪我を負ってしまったとき、BCPを策定していなかったとしたら、法務・コンプライアンス面で大変な状況に陥る場合があることをご存知ですか?

というのも、企業は従業員に対して「安全配慮義務」を負うことが法律で定められているのです。災害発生時に安全配慮義務違反に問われる状況とは、例えば次のようなことが想定されます。

オフィス内の地震対策が不完全で、家具が転倒して従業員が怪我をした場合や、避難計画が不十分で避難が間に合わず被害が出た場合などです。また、社内の備蓄が不十分でやむなく従業員に帰宅や避難の指示を出して、帰宅中に二次災害に巻き込まれた場合、といった状況もあり得るでしょう。

そうした安全配慮義務違反に問われることを避けるためには、必ずBCPの策定をしておく必要があります。オフィスの家具への転倒防止対策を講じる、避難計画を策定する、社内に最低限の備蓄をしておく、といったことはBCPの中に含まれているのです。

また、そうした対策では、正社員だけではなく、アルバイトやパートタイムの従業員も対象に含めていなければいけません。

4. 東京都条例が求める「帰宅困難者」対策


東京都の条例に「東京都帰宅困難者対策条例」というものがあります。これは東日本大震災の際、発生した膨大な帰宅困難者の問題に対応するために作られた条例です。この条例は企業に対して、社員の安全を守るための対策を取ることを努力義務として求めているのです。

具体的には、災害発生から3日間、従業員を職場に留めておくことが求められています。例えば、3日分の水、食料、トイレを準備する必要があります。

条例で求めているこれらの事項は、努力義務があるだけで、罰則は存在しません。しかし、もし条例に従っていなかった場合、被害者に訴えられる可能性は高く、企業であれば条例に従った対応を行うべきなのです。

災害対策以外にもBCP導入は必須!これを機に取り入れよう

BCPが災害の備えのために必要だとわかっていても、利益にならないBCPを導入することは、売上を上げ続ける責任のある経営者にとって、なかなか難しい決断ではないでしょうか。とりわけ、中小企業の場合、経営において多くの課題が山積みの状態で、もしものときのリスクマネジメントは、どうしても優先順位が下がってしまうのは仕方のないことです。

しかし、今回紹介してきたように、CSRのため、取引先からの要請のため、安全配慮義務を守るため、東京都条例を守るためなど、企業には災害対策以外にもBCPを導入しなければならない理由があるのです。本記事がBCPの導入を考えるきっかけになれば幸いです。

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