防災訓練のシナリオ作りとシナリオに沿った訓練の問題点

防災訓練のシナリオ作りとシナリオに沿った訓練の問題点

地震や台風などの自然災害・テロ攻撃を想定した防災訓練は、企業にとって重要な対策の一つであり、BCP(事業継続計画)の策定・見直しにおいても欠くことのできないものです。

実際に防災訓練を行うために必要なのが「訓練シナリオ」ですが、シナリオ作成に悩める担当者の方も多いのではないでしょうか。今回は防災訓練におけるシナリオの役割と作成のポイント、さらに訓練での問題点についてまとめました。

防災訓練におけるシナリオの役割


通常、防災訓練の準備段階で、訓練のテーマ(目的)、災害の種類と規模、被害状況が設定されます。

訓練のテーマ(目的)とは、たとえば「災害時の対応を学ばせる」「マニュアルやBCPを理解させる」「マニュアルやBCPを検証する」などが挙げられます。準備段階では、ほかにも訓練の形式(机上訓練、ロールプレイング訓練、実動訓練)や参加者、タイムスケジュールなども決めます。

仮に、通常業務を中断して1時間の全従業員参加による避難訓練を計画したとします。テーマは「災害時の対応を学ばせる」とし、災害の種類と規模、被害状況を「勤務時間中にM6程度の地震が発生して社内でも大きな揺れがあり、各所で物が散乱するなどしている」と設定したとします。

この避難訓練の計画を実施するために必要となるのがシナリオです。
シナリオには、設定に基づいて時系列に沿って発生した事象と具体的な被害状況を想定し、訓練の参加者が取るべき対応、あるいは取ってもらいたい対応を盛り込みます。

上記の避難訓練を例にすると、まずは、参加者に向けた館内放送が挙げられます。シナリオには「各自、安全な場所で待機してください」「指示があるまで落ち着いて行動してください」など館内放送の現実的な内容も含めます。これに、考えられうる参加者の対応を記載します。各部所の防災担当者が従業員を一カ所に集めるか、来客と応接スペースにいた社員はどうするか、自席で業務中だった社員はどう対応するかといったことです。

次に、地震の規模や被害に関する情報を確認し、怪我人の有無など社内の被害状況、避難経路の確保などを想定し、これらについての対応を記載します。このようにして、予測される出来事とそれに対する活動項目、担当者などを詳細に書き込むことで、防災訓練を実行可能にするのがシナリオの役割です。また、実際の訓練では時間制限があるため(上記の例では通常業務を中断した1時間)、それぞれの項目の時間配分もシナリオに書き添え、訓練の進行を管理します。

参考:内閣府 防災担当 「企業の事業継続訓練」の考え方
高知県 机上型事業継続訓練マニュアル

シナリオ作成のポイント


シナリオは、防災訓練を円滑に行うためのみならず、参加者が訓練に臨む際の士気、訓練後の達成感にも大きく関わります。ここでは、より効果的なシナリオ作成に役立つと思われるポイントを紹介していきます。

シナリオ作成では、まず想定される被害状況の設定から始めます。
たとえば、災害を地震とするなら、発生の日時、場所、規模を設定した上で、社内の被害状況や公共交通機関、ガス・電気・水道など会社外の状況も設定します。被害状況の設定ができたら、次の3つの要素をシナリオに盛り込みます。

(1)発生している事象の状況。
(2)(1)にともなう想定される被害状況。
(3)訓練参加者に期待する対応。

この3つの要素から訓練の大まかな流れを下書きし、具体的に細部にわたる内容を肉付けするやり方が効率的です。また、訓練を通じて「誰に何を学んでもらうか」を明確にすることもシナリオ作成上で大切です。訓練のテーマから逸れずにシナリオを構築するためです。

たとえば、訓練のテーマが「BCPを理解してもらう」であれば、参加者がBCPで決められたことをきちんとできているかを確認できるシナリオが求められます。上記(3)の訓練参加者に期待する対応は、BCPで決められた事項に限定されます。

訓練のテーマが「BCPが機能しているか検証する」であれば、参加者が必ずしもBCPで決められたことにこだわらない対応を促すシナリオでなければなりません。(3)での対応は限定せず、参加者が選んだ対応の根拠とそのプロセスを考えてもらえるようにします。

シナリオの内容が明確ではないと参加者は混乱しますし、訓練の目的が達成できなくなってしまうので、とことん掘り下げましょう。

現実的なストーリー作りも重要です。設定や展開が突拍子もなかったり、リアリティーを欠いたりしていると、参加者は訓練に入り込めなくなってしまいます。状況設定と被害状況には、実践的で最悪の事態を想定すると、より臨場感ある訓練の実施が可能になります。ただし、複雑過ぎると理解されにくくなりますからバランスが必要です。

自社に被災経験があればそのときのことを反映させたり、過去の災害事例を調べたり、国や自治体が公表している情報を取り入れたりするのも、シナリオにリアリティーを持たせる方法です。また、BCPに関する訓練では、関連会社や取引先とのやり取りをシナリオに盛り込まなければならないはずです。仮想の会社を設定する際には、実在する関連会社や取引先の実態を十分に把握して現実味のあるシナリオに仕上げましょう。

参考:内閣府 防災担当 「企業の事業継続訓練」の考え方
国土交通省 国土技術政策総合研究所 道路管理者における地震防災訓練実施の手引き(案)

シナリオに沿った防災訓練の問題点


防災訓練を実施するにあたり、シナリオに沿った訓練(参加者がシナリオに従って「演技」することから「劇場型訓練」と呼ばれることもあります)を否定的に捉える向きもあります。

あなたの会社でも避難訓練にイベント気分で参加したり、多忙を理由に不参加を決め込む従業員はいませんか。それは、訓練が定期的な恒例行事になり、マンネリ化しているのです。おそらく、参加者はロボットのごとく決められた動きをさせられるだけ、といった訓練になってしまっているのではないでしょうか。

このようなケースでは、訓練を実施する側が「どうせ、やることが決められた訓練だから」と、毎回同じシナリオを使い回しているからかも知れません。シナリオは、前回の訓練の反省点などを踏まえ、必ず毎回見直して改訂することを心がけるべきです。

また、防災訓練を実施する側が、誤った認識で訓練をしてしまう場合もあります。たとえば、訓練を無事に終わらせることを目的とはき違えてしまい、いかにシナリオに沿った訓練を進行しようとしてしまうような場合です。これでは、なんのための訓練か分からなくなってしまいます。

防災訓練は、いざというときスムーズに行動できるようになれるかが課題で、訓練を行うことが目的ではないと肝に銘じましょう。また、防災訓練を実施する際には時間の制限があります。そのため、時間どおりに進行することを優先させるためにシナリオに沿っているかばかりを気にして訓練をしてしまうこともあります。

そういった場合は、訓練がシナリオを再現することに終始し、本来の訓練の目的を見失いがちになってしまいます。それを避けるため、近年ではシナリオを周知させた防災訓練ではなく、参加者にシナリオを非公開で訓練を行う、クローズド型訓練を取り入れている企業も見受けられます。

参考:DiAMONDonline 防災訓練は「シナリオあり」では意味がない
ALSOK 企業がやるべき避難訓練の流れ

まとめ

シナリオは、防災訓練になくてはならないものです。シナリオを参加者に非公開で行うクローズド型の訓練でも、シナリオは作成されます。有益な防災訓練を実現するには、「誰に何を学んでもらうか」のテーマが明確で、リアリティーのあるシナリオが求められます。また、訓練ごとの反省点などを反映させて、毎回シナリオを作成し直すことで、形ばかりの訓練になるのを防ぐことができます。

シナリオ作成で迷いが生じたら、他社事例などを情報収集してみるのも効果的な打ち手でしょう。

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