長時間勤務、セクハラ、知的財産権……法務リスクを未然に防ぐための6つのポイント

長時間勤務、セクハラ、知的財産権……法務リスクを未然に防ぐための6つのポイント

総務の仕事は「ルーティンワークばかりの単調な仕事」と思われがちですが、それは大きな間違い。建物や備品など、ハードの管理から組織の適正化、ソフトの管理まで、さまざまな業務を通じて、組織全体の改良を求められる部署です。

さらに、地震などの災害リスクやテロ・脅迫といった社会リスク、火事・停電・盗難といった事故リスク、そしてセクハラ、過重労働(長時間勤務)などの「法務リスク」に対しても対策を講じなければなりません。

そこで、今回はマスコミに騒がれることの多い「法務リスク」に注目し、リスクを未然に防ぐにはどうすべきか、そしてもし発生してしまった場合どう対処すればいいのか、事例と共にわかりやすくご説明します。

会社の事業継続を担う総務部として、まずは法務リスクを冷静できるようになりましょう。

法務リスクとは

企業が抱えるリスクはさまざまあります。地震などの災害リスクやテロ・脅迫といった社会リスク、火事・停電・盗難といった事故リスク……。そして法務リスクとは、各種法令の遵守を怠ることにより企業が被るリスクです。

たとえば、脱税・申告漏れ・所得隠し、賃金の不払い、食品の産地偽装、建築物の耐震偽装などが法務リスクとして挙げられます。マスコミで取り上げられる機会も増えており、民事責任、刑事責任といった訴訟上の結果だけでなく、社会的な非難、企業イメージの低下、ブランド価値の低下、売上げの低下、商品ボイコットなど多くの影響が生じるでしょう。

法務リスクは、事業の停止や縮小など、従業員や企業に甚大な被害・影響を及ぼします。その結果、企業が「緊急事態」に陥ることも考えられます。そうならないよう、次章で法務リスクの典型例と対策について理解しておきましょう。

知っておくべき法務リスクの典型例と対策

法務リスクは多岐にわたりますが、ここでは典型的な6つの例を紹介しましょう。

【1】製造物責任(PL)

製造物責任とは、製造物の欠陥によって生命、身体または財産に生じた損害について、製造者が負う損害賠償責任です。製造物責任法によって定められており、過失がなくても問われる非常に重い責任です。

製造物責任の事案は「7歳の男児がこんにゃくゼリーを気道に詰まらせ死亡したとして、遺族が和菓子製造業者に対して損害賠償を求めた」が当てはまります。このケースでは、7482万円の損害賠償額をもって和解で終了しました。

最近のニュースでは、カネボウの美白化粧品を使用したため白斑症状がでたとして、各地で集団訴訟が提起され、和解が次々に成立しています。弁護団によると、2万人近くの人に症状が確認され、うち17000人あまりが和解した模様。賠償額は明らかにされていません。

【総務部注目ポイント】
製造物責任が無過失責任であることを認識して、「当該製品が通常有すべき安全性を欠いて」いないか十分注意することが必要です。

【2】知的財産権の侵害および非侵害

知的財産権は技術などに関する産業財産権と、文学などに関する著作権等の大きく2つが存在します。

1、知的財産権
・特許権
新規の発明をした者に対し与えられる権利
・実用新案権
既存の特許発明をより使いやすくするためのアイデアの権利
・意匠権
物の形状や模様、色彩などデザインに関する権利
・商標権
会社名や商品名、ロゴなどについての権利

2、著作権など
・著作権
自分の気持ちや考えを作品で表現したものを「著作物」、著作物を創作した人を「著作者」、そして著作者に対して法律によって与えられる権利のことを「著作権」

これらの権利を侵害すると、損害賠償請求や差し止め請求をされることも。主力商品が他社の特許権を侵害した場合は、その企業にとって致命的な不利益になりかねません。

たとえば、Tシャツなどのデザインに使用されたロックバンド名(ELLE GARDEN)の一部が著名なファッション雑誌(ELLE)に似ているとのことで裁判になり、グッズ販売ができなくなってしまった事例があります。

【総務部注目ポイント】
商品やサービスのネーミング・ロゴを商標登録する際、同一または類似の登録商標が存在しないか、事前に調査しましょう。さらに「実施予定の発明に関する特許権の有無」「実施予定のデザインに関する意匠権の有無」なども忘れずに確認を。

商標登録した後は、模倣品対策を徹底することも必要です。

なお、特許権、実用新案権、意匠権、商標権の基本的な情報は特許情報プラットフォームで検索できます。
※高度な検索や高い付加価値のついた情報へのアクセスについては、民間の特許情報提供事業者が行っている検索が勧められています。

【3】優越的地位の濫用(取引先など不当に不利益を与える行為)

優越的地位の濫用とは、取引の中で優越的地位にある者が、取引先に対して不当に不利益を与えることを指します。これは独占禁止法で禁止されており、公正取引委員会はその独占禁止法を運用するために設置された機関です。当該行為の差止め、契約条項の削除その他必要な措置を命じることや、課徴金の納付を命じることもできます。

たとえば、家電量販店業界2位のエディオンが、納入業者から従業員を派遣させ、無償で店舗を手伝わせたとして、公正取引委員会は再発防止を求める排除命令を出すとともに40億円を超える課徴金納付を命じました。

【総務部注目ポイント】
取引相手に対し、派遣費用を負担せずに、従業員の派遣を要請することは禁止されています。そのことを十分自覚して指導し、たとえ納入業者の商品の売上げ促進につながる行為であっても、事前に対等な立場で誠実に協議をするように指導しましょう。

【4】不適切な景品表示(誤認を与える広告・宣伝など)

消費者は誰もが”より良い商品・より良いサービス”を求めます。ですが、実際よりも良く見せるような過大な景品*類の提供があると「これはいい商品(サービス)だ」とつられて購入してしまい、消費者が不利益を被ってしまうケースがあります。

このような事態にならないよう、一般消費者の利益を保護するための法律を「景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)」と言います。

「景品表示法」は、商品・サービスの品質、内容、価格などを偽って表示することを厳しく規制し、また、過大な景品類の提供を防ぐために景品類の最高額を制限しています。違反した場合、差し止めなどの措置命令が出されます。

たとえば、国産有名ブランド肉であるかのように表示して販売していたものの、実際にはそのブランド肉ではない国産牛肉だったケースも。

また、ダイエット商品の効果を、利用者の体験談やアンケートにより「食事制限することなくやせられる」かのように表示。しかし内容はねつ造されたもので、しかも実証データに根拠がないものだった場合も、不当表示にあたります。

(そのほかの例)
・調査結果などがないのに「リピート率」「満足度」などの数字を挿入
・機械で生産しているのに「手作り」と表記する

【総務部注目ポイント】
広告表示にあたって、担当部門だけの判断でなく、法的問題がないか法務部門などに相談するよう業務フローを徹底し、必要に応じて弁護士などの外部の専門家に確認しましょう。 

【5】過重労働

過重労働は労使間で定めた時間外労働の範囲を大幅に超える状態を指します。月100時間、または2~6カ月継続して月80時間を超えてしまうと、過重労働とみなされます。

過重労働によりうつ病などの病気になり、自殺する例があとを絶ちません。ひとたび問題になれば、企業は安全配慮義務違反による損害賠償責任を負うばかりか、労働基準法違反として刑事罰を受けることにもなります。そのうえ会社の評判がひどく傷つき、ブラックなイメージが世間から持たれることになるでしょう。

長時間労働といえば、電通で起きた、東京大学卒の髙橋まつりさんが自殺した事件は記憶に新しいと思われます。この事件で電通は、遺族に対し謝罪したうえで防止策を講じ、解決金を支払うことなどで合意しました。この事件が引き金となり、平成26年に「過労死等防止対策推進法」が成立・施行されました。なお電通社長は引責辞任しています。

【総務部注目ポイント】
法務の視点としては、長時間労働の実態について経営層に報告するとともに、速やかに改善を図ることが必要です。その実施状況は定期的にフォローをし、対応が不十分な部門には指示監督を強化するなどの対応が必要です。

【6】セクハラ 

セクハラとは、性的いやがらせを意味し、男女を問わず加害者・被害者になりうるハラスメント(いじめ)です。セクハラが起きると、モチベーションが低下して組織としての生産効率が落ちるだけでなく、企業イメージが低下して採用面や人材の定着面でもダメージを受けます。

なお、セクハラがあると認められると、加害者が不法行為による賠償責任を負うだけでなく、会社も使用者責任や安全配慮義務違反の損害賠償責任を負うことになります。

セクハラ裁判では、セクハラ行為の事実を立証できる証拠の有無が重要となる場合が多くあります。また、セクハラ裁判の場合、セクハラ行為を直接証明してくれる証拠(直接証拠)がない場合が多く、間接的にセクハラを証明してくれる証拠(間接証拠)をどれだけ集めることができるかがポイントとなります。

【総務部注目ポイント】
法務の視点としては、セクハラ防止のための禁止事項など具体的に明示し、研修で周知を図ったり、相談窓口制度などをきちんと整備したりする必要があるでしょう。

まとめ

ここまで見てきたとおり、法務リスクは、企業が事業を営む場面のいたるところで姿を現します。どれほど業績が優れ社会的にイメージのよい企業でも、法務リスクに足をすくわれれば、あっという間に名を落とし、立ち直ることが難しくなる危険性さえ抱えています。

だからこそ、社内全体を見わたす立場にある総務部門が、内部から冷静な判断を下せるよう、対策を考えて起きましょう。業界や商品全般についてと同様、法務リスクについても知識を携え、社会を俯瞰しつつ、公平な視点で企業を支え守りたいものです。

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