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防災対応の新スタンダード・多言語対応安否確認システム

企業の防災対策、BCP(事業継続計画)対策として導入が進められている安否確認システム。先の東日本大震災の被害状況を受けて導入に踏み切った企業も多くあります。

様々な側面において経済と労働環境のグローバル化が進むなか、安否確認システムについても多言語化の需要が高まっています。この記事では、安否確認システムの多言語化の必要性、また実際に多言語化を実現しているいくつかの安否確認システムについてご紹介していきます。

多言語安否確認システムの必要性

近年における経済のグローバル化や、科学技術、特に情報通信分野での目覚ましい進展と革新に伴い、人やもの、資産や情報が国境を越えて移動する速度はかつてないほどに高まっています。今や私たちの日常生活は、日本のみならず世界中の動向と切っても切り離せない関係に置かれているのです。それは同時に、私たちの暮らしと世界中の「リスク」とが隣り合わせの距離に存在する時代に入ったことを意味します。この「リスク」にはさまざまなものが存在します。自然災害や異常気象、武力紛争、暴動、テロリズム……。たとえ日本から遠く離れた国や地域での出来事でも、もはやそれを対岸の火事と捉えて安易に見過ごすことはできないのです。

企業の防災対策、BCP対策の側面においても、私たちはこれまで以上に多様な人々のニーズに対応することが求められます。2018年1月26日の厚生労働省発表によれば、2017年10月末の段階で、日本国内の外国人労働者数は127万8670人、外国人を雇用している事業所数は19万4595か所に達し、いずれも過去最高の数字を記録しています。在留外国人数は年々増加傾向にあり、また訪日外国人の数もすでに年間3000万人に迫る勢いです。今後、安否確認システムを含むさまざまな防災に関する対応、それらを実現するツールやシステムの設計において、多言語対応は必須の要件になっていくと考えられます。

去る2011年、日本各地に未曾有の被害をもたらした東日本大震災発生の折には、日本語でのコミュニケーションが困難な外国人労働者が災害に関する十分な情報を得られず、自らの状況を発信・伝達することもままならない「災害弱者」となり、たくさんの困難や不便を強いられる状況が発生しました。この時の教訓も踏まえ、災害発生の際に危機的状況に陥った外国人労働者が、言語の壁に阻まれることなくスムーズに自らの状況を伝達し、企業側が素早く対策のアクションを取れるように、企業で導入する安否確認システムにも多言語化の需要が高まっています。

参考:厚生労働省 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ
日本政府観光局 月別・年別統計データ(訪日外国人・出国日本人)
SYNODOS外国人を災害弱者としないために――多言語災害情報システムについて
グローバル・リスク・ソリューションズ・センター(GRSC)
Caredとは?
大阪大学 Resou 多言語対応・安否確認システムの実用化がスタート

多言語安否確認システムにはどのような特徴があるか

安否確認システムは、災害発生時などに企業が自社の従業員の安否状況を確認し、素早く対応を取るための情報を収集する仕組みです。基本的な流れとしては、多くの場合、システムに登録された従業員のアドレス宛にメールを一斉送信し、それを受信した従業員がメールへの返信、またはメールに記載されたURLリンクからシステムへアクセスし、必要事項の入力などをもって安否状況を企業側に回答する、という仕様になっています。最近ではスマートフォンの普及に伴い、メールの送受信の代わりにスマートフォンアプリのプッシュ通知や位置情報サービスを併用して安否確認を行う製品もあります。このプロセスにおいてメールやWebがよく使われる理由は、音声電話回線などに比べて災害時にも繋がりやすいという特徴があるためです。回答を受け取った企業側は、従業員の安否状況を確認するとともに、集まった情報をもとに避難誘導、救助活動、被災後の事業復旧対応などに向けたアクションを素早く取ることができるのです。

前述の通り、日本国内における外国人労働者や、外国人を雇用している事業所の数が増え続けているなかで、これから安否確認システムを導入する、あるいはすでに導入している企業のいずれにおいても、システムの多言語化需要は高まっています。多言語に対応した安否確認システムでは、一斉送信されるメールの文面やリンク先のWebインターフェース、そのほかのオプション・付帯機能に関わる部分を多言語対応(日本語からの切り替えが可能)の形にし、日本語でのコミュニケーションが困難な外国人労働者でも、スムーズにその内容と操作方法を理解して企業に安否情報を伝達することができるようにカスタマイズされています。

参考:みんなのBCP 安否確認システムとは?28サービスの比較からメリットまで徹底紹介!

多言語安否確認システムの紹介

では、現在多言語に対応している安否確認システムにはどのようなものがあるのでしょうか。ここでいくつか製品例をご紹介します。

トヨクモ

トヨクモが提供する「安否確認サービス2」の特徴は、サーバーが国際分散されているため、国内の災害に特に強いことです。また、ユーザーインターフェースが国内シェアNo,1のグループウェアのデザインを踏襲しており、英語にも対応しているため、誰でも直感的に操作できます。もちろん、設問フォームも英語に対応しているので、日本語が苦手な外国人労働者が在籍している企業でも安心です。メールやメッセージ、掲示板だけでなく、SNSや専用アプリといった多彩な集計方法があり、社員それぞれが最適な方法を選択できるのもポイント。異なる集計方法でも部署や地域ごとに自動でデータをまとめてくれるので、管理者の作業負担も軽減できます。

セコム

警備会社最大手のセコムグループが運営する安否確認サービスです。警備会社として蓄積した防災ノウハウと、全国に広がる拠点ネットワークを駆使して、有事の際の確実かつ迅速な対応を実現しています。管理者用および社員用の各種画面において、日本語と英語の表示切り替えが可能です。さらに英語の運用マニュアルも用意されています。外資系企業や大使館などの導入実績も豊富にあり、採用から導入、運用のあらゆるフェーズで強力な支援が受けられます。

Safetylink24

企業向けの安否確認システムでありながら、ユーザー1人に対して6人までの家族登録が可能なのが特徴です。付属のコミュニケーションツールを利用して、家族間だけで安否確認のやりとりを行うことも可能です。分かりやすいインターフェースで、初めて使う方でも直感的に迷うことなく操作することができます。
さらに、緊急時の安否確認だけではなく、平常時の業務連絡ツールとしても使用することができます。
英語対応オプションではいつでも言語の切り替えが可能で、日本語版に用意されている機能をそのまま利用することができます。また、英語版の簡易操作マニュアルも用意されています。

レスキューナウ

危機管理情報の専門企業であるレスキューナウ社が提供する安否確認サービスです。ASPで提供されるため、導入する側で専用のシステムや設備を用意する必要がなく、低予算での導入が可能です。緊急時の安否確認機能のみならず、天気予報や火災情報、鉄道の遅延情報などといった、普段の生活でも使える「危機管理情報メール」を、全ユーザーが各自の好みに合わせて設定・利用することができます。オプションサービスとして、システムの画面やメッセージを英語で表示する英語対応が用意されています。

インフォコム

スマートフォン、携帯電話(フィーチャーフォン)、メール、固定電話など、各社員の緊急連絡先を1人につき10個まで登録できます。災害の影響で特定の通信インフラが使用できなくなった場合にも、さまざまな代替手段を講じることができます。また、これらの連絡先については、連絡がつくまで(応答があるまで、または返信があるまで)それぞれ最大100回まで自動的に繰り返し発信する設定が可能です。この機能により応答漏れの可能性を減らし、応答率の向上を図ることができます。
ログイン画面でインターフェースを英語に切り替えることができるので、英語話者の外国人従業員も抵抗なく使用することが可能です。

参考:トヨクモ 安否確認サービス2
みんなのBCP 安否確認システムとは?28サービスの比較からメリットまで徹底紹介!
セコム安否確認システム
緊急通報・安否確認システム Safetylink24
レスキューナウ 安否確認サービス
インフォコム エマージェンシーコール

まとめ

ここまで、多言語対応の安否確認システムがこれから必要になってくる背景と理由や、実際の製品例についてご紹介してきました。

地震や大型台風の頻発など、「災害大国」と呼ばれる日本において、増加し続ける外国人労働者にも均等に災害対策サービスを提供していくために、システムの多言語化がこれからの新しいスタンダードとなっていくことは間違いありません。ぜひ、この機会に導入をご検討ください。

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