【策定から周知まで】事業のグローバル化におけるBCPの考え方

【策定から周知まで】事業のグローバル化におけるBCPの考え方

事業のグローバル化といえば「事業の拡大」「事業体制の強化」「新規顧客の開拓」など夢が膨らむ話。ですが、夢を語るだけでは乗り越えられない「グローバル化のリスク」についてしっかり考え、対策できていますか。

事業のグローバル化に伴うリスクとして、言葉の違いや文化の違い、宗教観の違いが浮かんできます。子会社との的確な連携やコミュニケーションの方法についても深く考えることが重要でしょう。

今回はグローバル化にともなう事業継続計画(BCP、Business Continuity Plan)の必要性と策定方法、そして異文化だからこそ重視したい周知方法まで、一連の流れを解説します。グループ企業全体の「危機管理意識」を高め、攻守ともに強化し、他社からも信頼の厚い理想的な企業づくりを実施しましょう。

グローバルBCPの考え方


そもそもBCPとは、災害時の行動計画やその前提となる被害想定などをとりまとめた文書のこと。組織内に周知させてはじめて効果を発揮する点は、グローバルBCPでも同様。ただし、グローバル企業の場合はグループ本社と海外子会社がそれぞれ文書を作成するところに特徴があります。

そしてグローバル企業においては、日本国内に置かれたグループ本社の他、海外にアメリカ、欧州、アジアといった単位で地域統括会社があります。さらに各地域内に製造子会社、販売子会社が立地し、それぞれがサプライチェーンによってつながっています。

グローバルBCP策定に際しては、各子会社の現況に加えこの横断的なチェーンについても考慮することが求められるのです。

アジアのグローバルBCP策定の必要性


「日本国内の人口減少」を考えて事業をグローバル化する企業にとって、人口増加やGDPの成長率が著しいアジア地域(ASEANなど)は魅力的。

ですが、洪水や地震など自然災害の発生率が高いのも事実。新型インフルエンザなどによるパンデミック発生の危険性も高い環境にあります。

2011年に発生したタイの洪水では、多くの日系企業が被害を受けました。当時は3,100社以上の日系企業が進出しており、大手自動車、電気、化学メーカーなどでの被害が報告されています。タイに進出した外資系企業のHDD工場への被害も被害損失。HDD価格の世界的な高騰があり、PCメーカーに大きな打撃を与えました。

これらの事例のように、事業のグローバル化にも様々なリスクが存在します。だからこそ、事業の国際展開を進めるにあたり、海外での緊急事態に備えて、より高い水準のBCP対策をすることが必要なのです。

グローバルBCP策定の現況

グローバルBCPの策定状況*は、国内本社が「実施している」50.3%、「一部実施している」27.1%、国内子会社がそれぞれ30.6%、28.3%に対し、海外統括拠点で11.0%、9.4%、海外子会社で13.8%、23.9%と、低い割合にとどまっています。

*デロイトトーマツ企業リスク研究所が国内上場企業に対して実施した調査(2016年度)より

グローバルBCPを考える上での留意点


海外は日本と異なる文化・宗教・商習慣、労務環境だということは忘れてはなりません。次のことに注意しておきましょう。

1、リスク意識の違い
シンガポール、マレーシア等の一部を除き、多くの新興国においては、文化的な背景や商慣習によりリスク管理の意識が低いのが現状です。

グローバルBCPの策定をすることで、現場の従業員に「リスクは我慢するもの」から「リスクは管理するもの」へと意識転換を図り、リスク意識を高めることが求められます。

2、違いの大きいBCP策定状況
前章の「グローバルBCP策定の方法論」で述べたとおり、海外子会社のBCP策定状況の調査は不可欠。

すでにBCPを「策定済み」としている海外子会社であっても、その精密の程度は日本と異なる可能性があります。たとえば簡単な行動指針やシンプルな指示書をもってBCPと呼んでいるケースもありえるため、注意が必要です。

3、リスク分析の細かさの限界
リスク分析に際しては、自然災害や暴動・テロ攻撃の可能性を検証する必要があります。しかし、特に新興国では、行政圏単位での粗いハザードマップしか存在しないケースがほとんど。詳細なリスク分析は困難です。

天災の発生確率についても十分なデータがなく、正確な数値は算出されていないケースがあります。そのため、「発生しうる」「発生しない」の2択で考えることしかできません。暴動・テロ攻撃についても、その可能性を数字ではじき出すことは困難です。「起きうる」「起きない」といった選択肢でしか分析することはできず、分析の正確さには限界を伴います。

4、国による「リスク」の違い
グループ本社のBCPガイドラインをふまえ、各海外子会社がBCPを策定する段階では「各国固有のリスク」を考えることが必要です。

たとえばPwC(PricewaterhouseCoopers)とMIT(マサチューセッツ工科大学)の共同調査によれば、企業が直面するリスクは上位から順に、原料価格変動、為替価格変動、市場変化となりました。PwCはこの結果について、「ある程度統制可能なリスクである」とコメントしています。これは日本国内の意識と考えてよいでしょう。

しかし一方で、海外の市場を考えた場合、様々なリスクが発生する可能性があります。その一部について紹介します。

アジア諸国全体:
離職率が高く役職の円滑な引き継ぎに不安中国:
政情不安

インドネシア:
交通インフラや電力供給の面で課題
商慣習・風俗・宗教に関するトラブルが多い
(インドネシアでは国民の9割近くがイスラム教徒、日本人には馴染みが薄いため)

フィリピン:
交通インフラや電力供給の面で課題

インド:
感染症*(消化器感染症とデング熱などの蚊が媒介する感染症など)
商慣習・風俗・宗教に関するトラブルが多い
(インドでは8割近くがヒンデュー教徒、日本人には馴染みが薄いため)
*外務省 世界の医療事情 インド」より

ミャンマー:
感染症*(ほとんどが経口感染症,飛沫感染症や蚊等の昆虫に刺されてかかる病気)
*外務省 世界の医療事情 ミャンマー」より

その他にも様々なリスクが存在します。日本とは法制度も環境も異なる国・地域での災害・緊急事態に対しては、どんな備えが必要なのか。以下の関連記事で詳しく確認しておきましょう。

【実践】グローバルBCP策定の方法


グローバルBCP策定は、まずグループ本社と各子会社それぞれの役割を考える必要があります。ここでは日本企業がグループ本社という前提で、グローバルBCPの策定方法を考えます。

1、海外子会社の調査
まずはグループ全体の事業継続力を検証しましょう。海外子会社それぞれのBCP策定状況を調査します。

海外子会社がすでにBCP策定済みと述べた場合、どのような内容を、どの担当部署が策定しているかまで確認します。ここでグループ本社による客観的な調査を行うことで、今後の調査が円滑に進みやすいでしょう。

2、海外子会社の重要性確認とリスク分析
BCP策定が必要、もしくは優先度が高い海外子会社を選定します。

ポイントは、各海外子会社の1日あたりの売上・収益。この売上・収益が高い会社こそ、被災した時の被害が大きいため、BCP策定の必要性が高いものと位置づけます。万一の場合に事業停止が与える影響を定量的・定性的に検討しましょう。

併せてリスク分析を行います。具体的には、当子会社が立地する国の情勢や地理的条件をふまえ、暴動や自然災害など被災の可能性を確認します。

なおこのリスク分析については、(以降、中小機構と略)が中小企業の海外進出をサポートするためのマニュアルを公表しており、その中にある「リスク評価シート」が参考になります。

この分析結果を「1、海外子会社の調査」と照合することで、「リスクが存在するがBCP未策定の子会社」を特定します。

ちなみに、BCP未策定の海外子会社が被災した場合は「本社内に危機管理本部を設置する」など、別途対策を考える必要があります。

3、グローバルBCP策定ガイドラインの作成・配布
グローバルBCPの策定をします。基本的には国内のBCP作成の流れを参考にしましょう。

ただし、細部まで注意を払ったBCPの作成は、環境や文化の違いなどですべての子会社に求められない場合があります。配布するガイドラインの内容は、「最低限おさえるべきこと」「余裕があれば実施すべきこと」に分類して記載しておくとよいでしょう。

グローバルBCP策定ガイドラインの展開をする際、「グループ本社の独断や押しつけじゃないか」と批判されないよう、各地域の統括会社に内容確認を求めるといいでしょう。日本と異なる文化・習慣の有無、表現のわかりづらさなどをチェックしてもらうと相互の理解が深まります。

4、各海外子会社でのBCP策定
ガイドラインの展開まで進んだ後は、各子会社が組織のBCP策定をスタート。

グループ本社は、BCP策定のためのツールを渡して終わり……はやめましょう。可能な限り、実際に現地に出向き、協働でBCP策定作業にあたりましょう。そうすることで災害時にお互いの行動が理解しあえる信頼関係が生まれます。

まとめ

海外子会社が抱えるリスクには日本と同じように天災やテロ・暴動、パンデミックもありますが、文化宗教・商習慣、そして労務環境の日本との違いも含まれます。

グローバルBCPを策定することで「不測の事態でも『信頼の損失』『財政的な損失』を抑えられる」「事業継続が安定する」「既存の業務プロセスの見直し」といったメリットがあります。

常にリスクと正しく向き合い、どのような事態が生じても対応できる体制を追求することが重要といえます。

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