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【災害・事故後に強い企業づくり】本当に使える目標復旧時間の定め方

もしあなたの会社が地震や火事などに巻き込まれ、事業がすべてストップしてしまったら……。どのくらいの時間で、どうやって事業の立て直しをするべきか、考えたことはありますか。

企業が緊急事態に直面した場合、損害を最小限にとどめつつ、事業を継続するためにどんな行動をとるべきかという計画をBCP(事業継続計画、Business Continuity Plan)といいます。
このBCPを実行するときに、考えるべき要素として目標復旧時間(RTO:Recovery Time Objective)があります。

目標復旧時間とは、会社の存続に関わる最も重要な中核事業を見極め、限られた人的リソースをどのように配置し、いつまでに、どの程度まで事業の立て直しをするべきかを示した数値目標のこと。この時間を決めておくことで、復旧戦略の具体的なイメージが湧くようになります。

この記事では、実際に目標復旧時間の設定ができるよう、総務目線で具体的に解説します。紙とペンを用意して、自社の場合について考えながら読み進めてみてください。

目標復旧時間は「いつまでに、どのレベルまで復旧するか」を示す指標


目標復旧時間(RTO:Recovery Time Objective)とは、何らかの理由で事業が中断したとき、「いつまでに、一定のレベルまで事業を復旧するか」という目標時間を表す指標です。「時間」(秒・分・時間・週間・ヶ月・年)単位で設定するのが一般的で、BCP策定にあたり大事な役割を果たします。

なおここで言う「何らかの理由」とは、地震や火災、テロなどによる大規模停電、機械故障によるシステム障害が発生し有効な防止策を打ちづらい大規模な事故・災害を意味します。

【書き出してみよう】たった4STEP!目標復旧時間の定め方


目標復旧時間は次の3ステップにより設定することができます。

■ステップ1 災害の種類と規模を想定する
ステップ1では、災害の種類と規模を想定し、自社への影響を考えます。

理想は、災害や事故、テロなどの脅威に対して、会社が受けるすべての影響を考えることです。しかし、脅威すべての場合を想定するのは、時間がかかるかもしれません。そこで、まずは企業の置かれている環境の中で特にリスクとなりそうな自称を選び、考えてみることをおすすめします。

水害が多い地域や土砂崩れが発生しやすい地域など、会社がおかれている地理的な要因や業務によって、リスクとなる脅威は異なるはずです。

■ステップ2 ボトルネック資源を洗いだそう

脅威を定めたら、次は会社の存続に関わる中核事業を継続するために必要な資源をすべて洗い出します。ヒト・モノ・カネ・情報や電気、水道、ガスなどが生活に必要な資源がなくなった場合を想定してみてください。中核事業を推進するのに必要不可欠な資源(ボトルネック資源)がわかります。

■ステップ3 目標復旧時間を考えよう
もし事業が停止したら、取引先や消費者などのステークホルダーにどんな影響を与え、顧客はどのくらい復旧を待ってくれるのでしょうか。ここでは、許容範囲内の目標復旧時間を考えてみましょう

まず、中核事業に必要な経営資源を洗い出します。業務フローを「誰が、何を受け入れて、どんな設備を使って、どんな処理をして、誰に渡すのか」という経営資源に分解。さらに、受注から納品まで、業務に応じた流れを加えて、図で表すと良いでしょう。

あくまでも、関与する人たちがわかりやすいように、業務請負の粒度を細かくしておくことが重要です。

その上で、どの業務がいつまでに復旧しないといけないのか、目標復旧時間を設定します。たとえば下記のような流れが想定されます。

災害の種類と規模例
・本社オフィスにて、工場を含む地域で震度6弱以上の地震
・本社の物流システムに壊滅的な被害あり、操業停止ボトルネック資源例
・電気(物流システムの確認ができなくなるため、など)

目標復旧時間例
【1日】…全社員の安否確認、被災状況の確認
【3日】…顧客状況の確認
【7日】…中核事業の再開(取引先のA社の意向確認済み)

このように、顧客を優先して、業務ごとに復旧目標を割り出して設定するといいでしょう。

また、下記の復旧時間の制約内容についても参考にしてみてください。

(出典:中小企業BCP策定運用指針 資料06 復旧時間の制約要因

【POINT】目標復旧時間の「よくない」設定方法
過去の地震の経験や他社の事例を参考にして復旧にどれくらいかかりそうか見積もり、その数値をそのまま目標復旧時間に据えるケースがありますが、それでは、目標復旧時間の意義がみえなくなります。あくまでもビジネスの影響度が高いものが何かを考えなければなりません。ステークホルダーの視点に立ち、「どれくらいの期間なら事業の回復を待ってもらえるか」を考えると良いでしょう。

■ステップ4 目標復旧時間が適切かどうか評価する

最後に、今までの想定をシミュレーションしてみましょう。災害が発生したとき、各事業に割り振った目標が、目標復旧時間内に復旧できるかどうかを考えます。

まず、ステップ2で洗い出したボトルネック資源に対する影響度が高い場合から、3つにわけて影響度を評価します。

【ボトルネック資源が目標復旧時間に対する影響度】
①災害を想定したとき、ボトルネック資源が目標復旧時間の復旧に間に合わないくらい影響を受ける。または、目標復旧時間内の復旧に間に合わない程度の時間、影響を受けると考えられる
②想定した災害により、ボトルネック資源がある程度影響を受けるが、目標復旧時間内には復旧できる
③想定した災害からは、ほとんど影響を受けない

たとえば、あなたの中核事業にとって「水資源」は無くてはならないボトルネック資源であるとします。

その場合、もし会社の近くで「震度6強の地震」が発生したら、水資源にはどれだけ影響があるでしょうか。このとき、水資源への影響が①の程度だとすると、震度6強の地震が発生したら目標復旧時間内に復旧はできないという結論が導かれます。

加えて、それぞれの場合において、適切な対策が取れているのかどうか、最悪人手による操業ができるのかなども想定します。要は、以下の2つのポイントで評価します。

【目標復旧時間が適切かどうかを評価する2つのポイント】
・各業務フローに割り当てられた目標復旧時間内に復旧はできるのか?
・各業務フローの経営資源に脆弱性はあるか?

もし、どちらの場合もダメージが大きい場合は、目標復旧時間を確保するために障害となる重要な要素(ボトルネック)とみなされ、対応策を練る必要があります。

目標復旧時間における、考慮すべき3つの条件


最後に、目標復旧時間を考えるときに外せない「納期遅延対策」「財務要件」について、3つの条件を確認しておきましょう。

①【納期遅延対策:ペナルティ】前もって調整、確認ができるようにしよう
納期遅延等による違約金を契約で交わしている場合は、その期限に間に合うように目標復旧時間を設定する必要があります。

取引先の経営者や幹部従業員との直接的なコミュニケーションを通じ、前もって調整・確認ができるようにしておきましょう。実際に被災した場合、取引先に対して、目標設定時間よりも事業復旧が遅れることに関する理解を求めることが必要になるかもしれません。

たとえば、東日本大震災のように、大規模な自然災害によって道路やライフライン等が大きな被害を受けた場合や、最優先の人命救助に力を入れることで事業の早期復旧に着手できない場合には、取引先からの許容の度合いが変わることがあります。

②【納期遅延対策:信頼関係】休業期間の仕入先との信頼関係を喪失しないために

製造業などでは、部品を担当するメーカーの納品が滞ることで、自動車製品の生産そのものに影響が及ぶことがあります。
2007年の中越沖地震で、国内のピストンリングの5割のシェアを持つ部品メーカーが被災し、全自動車工場の生産に操業停止などの影響が生じたことがありました。長年の取引の上に築かれていた信頼関係の喪失にもつながりかねません。地震などの自然災害は、誰が責任を負うべきという問題ではありませんが、目標復旧時間を設定し、それまでに何をやるかを事前に明確に設けておくことが事業の早期復旧につながるのです。

③【財務要件】会社の体力を見極める

中核事業が全面停止すれば、操業に必要な収入が途絶えます。したがって自社の財務要件と照らし合わせ、会社の資金が耐えられる限界の期間を見積もっておかなければなりません。

具体的には、事業停止中の従業員の賃金、災害対応のための臨時人員の賃金、事業所や設備機器が被災した場合の修繕や新規調達費用等が発生することが予想されます。それらの費用負担に対して、どれだけの期間耐えられる資金が会社にあるかを見極めることも重要なポイントとなります。

まとめ

目標復旧時間の設定にあたっては、顧客・市場の視点と財務からの視点が欠かせません。

最も重要なのは、中小企業庁も指摘しているとおり(注:P22)経営者の直感や判断であり、それを裏付けしサポートする総務の存在です。資金繰りについて、会社の経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)を俯瞰的に知っている総務の的確な判断が不可欠なのです。

目標復旧時間はBCPの要(かなめ)ともいうべき大事な要素。正確な設定に加え、常に見直しを怠らないよう心がけたいものです。

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