配送中に災害が発生…大阪北部震災から考える物流業のBCP策定

配送中に災害が発生…大阪北部震災から考える物流業のBCP策定

地震や洪水などの災害発生時、大きな被害が懸念される対象の一つが物流です。

2018年6月18日に起きた大阪北部地震では、直後に主要高速道路が通行止めとなり、一般道でも交通渋滞が発生。商品管理システムの欠陥の影響で一時的に配送に遅れが出たり、緊急物資輸送をめぐり自治体とトラック協会間の連携にちぐはぐが生じたりと、非常時対策の不備が浮き彫りとなりました。

大阪北部地震が流通部門にもたらした混乱は軽微でした。しかし、東日本大震災で物流の経路が寸断し、地域によっては深刻な物資の不足が起こり、国民生活に大きな支障が生じたことはまだ記憶に新しいところです。

今後発生しうる災害に備える意味でも、大阪北部地震は改めて物流事業でのBCPの重要性を認識させるものだったといえます。

今回は、同地震の事例を手がかりとして、物流分野のBCP策定に役立つポイントをご紹介します。

大阪北部地震の際、物流分野では何が起きていたのか


大阪北部地震を振り返ると、流通部門では以下のような問題が明らかになりました。

配送の遅れ、出荷停止
大阪府枚方市のコフジ物流では、本社倉庫で荷物の一部が落下したほか、渋滞の激しかった北大阪地域で配送や集荷の遅れ、被災地の荷主からの出荷停止が起きた。
ドライバーや取引先との連絡の不通
全国ネットの長距離輸送を手掛けている大信物流輸送では、地震の発生直後から電話が極端につながりにくくなり、対応に追われた。また、一部の便に配送の遅れが生じた。
出荷の遅れと緊急対応
滋賀県守山市のワコール流通では、物流センターのエレベーターが止まり、多層階からの出荷が午前中一杯ストップした。そのため、通常は京都府の物流センターに納品する商品を、店舗に直接納品する対応に切り替えたが、新たに店舗用のコードや送り状の発行が必要となり、対応の完了には時間がかかった。
緊急輸送をめぐる連携ミス
京都府はブルーシート千枚を配送するため、京都府トラック協会に依頼。たちばな運輸のグループ会社の4トン車1台が出動し、府庁舎から八幡市役所まで届けた。

一方、大阪府トラック協会は、府からの緊急輸送出動準備の要請で多数社の協力を取り付けた。その後被害状況の判明に伴い、5台を手配したが最終的には出動取りやめの連絡を受けた。府・市・協会の密接な打合せが必要との指摘がされた。
物流センター内での破損事故
センコーグループホールディングスは近畿エリアに物流センター及び事業所などを約170ヵ所配置しているが、数力所の物流センターで、荷物の落下による破損事故が発生。また、交通渋滞などで配送に遅れが生じた。
荷崩れと出荷業務の滞り
岡山県貨物運送では、取引先のラック倉庫の荷崩れなどから出荷業務が一時的に滞った。急きょ出荷場所を関西から首都圏センターに切り替え、ドライバーや集配車を手配するなど応援体制を整えた。

参考URL:大阪北部地震、物流への影響軽微 緊急輸送体制に課題 京卜協ブルーシート配送

物流分野のBCP策定のコツ


これらの事例から見えてくるのは、物流ルートや市民生活を守るため、物流事業者が事前に災害時の対応を決めて共有しておくことの重要さです。

物流業界は、多くの社員が変則的に働くため、一斉に社員の統率を取る難しさがあるのは事実です。だからこそ、いざという時の行動の指針が重要な役割を果たします。

ここからは、国土交通省「荷主と物流事業者が連携したBCP策定のためのガイドライン」をベースとした、「BCP策定にあたっての物流業特有のポイント」を説明します。

1.事前の体制整備


災害が発生すると、物流施設やトラックが通常の施設機能や輸送力を確保できなくなると予想されるため、サプライチェーン維持のため以下の対応策をとっておく必要があります。

施設内での災害対策

荷崩れ対策(保管棚への制震装置、貨物落下防止装置など)
施設本体の強化(免震補強など)
自家発電などの非常用電源設備
非常用通信設備(衛星電話、MCA無線、IP無線機など)
燃料の確保(インタンクの設置など)

代替輸送の仕組みづくり

災害時は、通常と異なる輸送手段や輸送ルートの使用が想定されます。そのため代替輸送の連携体制を整備し、緊急時の輸送ルートを決め、共有しておくとよいでしょう。

また、他の業種の物流事業者と、発災時のサプライチェーン維持について連携を強化しておくことも重要です。

例:鉄道貨物運送事業者とトラック事業者

代替施設による対策

倉庫や物流センター等が被災することもありえます。そのため、代替施設において貨物を搬入・搬出できる体制を築いておく必要があります。

代替作業による対策(物流施設内作業)

倉庫や物流センター等が被災し、施設機能の低下や電源喪失、マテハン機器の故障などにより、手作業による対応が必要となることも想定されます。

そのため、紙ベースの入出荷指示体制を構築しておくこと、マテハン機器を使用しなくても作業できる拠点を確保しておくこと、フォークリフトやパレット等を
緊急にレンタルできる店舗との連携体制を構築しておくとよいでしょう。

荷主と輸送業者の連携体制の整備

荷主と物流事業者は、事前に災害時の担当者・通信手段・確認事項をリスト化しておくと、発災時はそのリストに基づき速やかに対応できます。

リストの項目としては、たとえば、

・施設の被災状況
・トラックの確保状況
・従業員やドライバーの確保状況
・目標復旧時間
・配送の最優先商品

などが挙げられます。

燃料の確保

インタンクを設置したり、複数の燃料供給会社と契約するなど、事前の準備が重要です。また、災害時には燃料を共有する体制の整備や、燃料の確保情報の共有体制を整備しておくことも求められます。

2.災害発生時の情報収集


国土交通省が実施したアンケートによれば、荷主が物流事業者にBCP策定を求める内容として、「情報に関する項目」が上位を占めました。

一例として、輸送中の車両の位置情報の共有、道路など交通インフラの情報収集、輸送中のドライバーとの連絡手段の確保などが挙げられました。

インフラの復旧状況や輸送中の車両・貨物の位置情報などは、発災時に代替ルートを検討し、効率的な入出庫作業を行う上で不可欠です。ドライバーも含めて情報共有できる仕組みづくりを進めていくことが必要となります。

交通インフラ情報の収集と共有

交通インフラの状況把握は物流業界にとって生命線ともいえます。

そのため、道路などの被災・復旧状況に関する情報を、行政、業界団体、関係事業者等から収集・共有できる体制を構築しておくべきです。国土交通省のホームページは、道路の復旧状況、鉄道各社の運行状況はじめ地震・津波情報等(http://www.mlit.go.jp/saigai/)。を集約して公開しているため、その活用も考えられます

貨物の位置情報の収集と共有

発災時においては、速やかな代替ルートの検討や、従業員の配置を含めた効率的な入出庫作業が必要となります。

そのため、リアルタイムで貨物位置情報を得られる体制が求められます。仮にその体制構築が無理であっても、「○月○日○時に出荷した」といった倉庫や物流センター等への入出庫情報など、最低限の情報共有が重要です。

3.発災後の措置

人的被害の確認

従業員とその家族の安全確認は災害時に企業が行う最優先事項です。

物流業の場合、事務所や倉庫での業務従事者など決まったエリア内に勤務している社員と、ドライバーのように外部で従事している社員がいます。

特に災害時には、外部で従事する社員と、休日で出勤していない社員の安否確認が難しい状況になると想定されます。

これには安否確認システムを導入し、事前に社員の連絡先を登録させておくことで解決できます。

サイボウズスタートアップスの安否確認サービスであれば、気象庁の災害情報に連動して夜間や休日に関わらず、安否確認メールを自動送信できます。

荷主と物流事業者の連絡

荷主と物流事業者は、事前に決めた体制に従って、非常用通信設備(衛星電話、MCA無線等)を活用し、相互の被害状況等の確認を行うことが重要です。

参考URL:荷主と物流業者が提携したBCP策定のためのガイドライン

まとめ

物流業は、社員が多くの地域に散らばることが多く一元的な管理が難しい業種。だからこそ、いざという時に全社をあげて配送体制をフォローすることが大切です。

代替輸送や緊急時の安否確認カードの利用については、定期的に訓練を行っておくと災害時に落ち着いて対応できるでしょう。

自社だけでなく、他社との緊急時の連携体制も構築し、災害に強い物流企業を目指してください。

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