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BCP(事業継続計画)とは?チェックリストに沿って策定の手順をご説明します!

「非常時に備えて、BCP策定よろしく」
「そろそろBCPについて考えた方がいいんじゃない?」

そんな言葉を耳にして「BCPって何だ?」と思われた方がいらっしゃるかもしれません。
本記事では、そんな皆様の「BCPとは?」を解決し、策定の手順をチェックリストに沿ってご説明します。

BCP(事業継続計画)とは?

BCPとは「Business Continuity Plan」の略で、日本語では「事業継続計画」と呼ばれます。

より詳しく説明すると、企業が「緊急事態」に直面した場合、損害を最小限に食い止めつつ、中核となる事業を継続もしくは早期に復旧させるため、緊急時における事業継続のための方法などを取り決めておく計画のことです。

事業継続計画(BCP)のイメージ図


参照:内閣府「事業継続ガイドライン」

上記のように、緊急事態の発生後に一定以上のレベルで事業を継続させて、許容時間内に事業復旧を目指すこと。これこそが、BCP(事業継続計画)に与えられた役割です。
なお、この場合の「緊急事態」にはさまざまな状況があります。最もわかりやすいのが地震や台風といった自然災害。また、新型インフルエンザによるパンデミックなども該当します。
停電、原子力事故、テロといった外的リスクに加え、食中毒や個人情報の流出など組織の内的リスクも対象となります。

このような「緊急事態」に素早く対応するため、BCP(事業継続計画)の策定は欠かせません。

BCPの策定を怠るリスク・影響とは?

BCP(事業継続計画)未策定の影響が表面化した事例として、平成23年に発生した東日本大震災の関連倒産が挙げられます。

TSRの記事「「東日本大震災」関連倒産」によれば、東日本大震災を原因とした倒産は累計1,933件。震災発生から105ヶ月もの期間連続して、倒産が相次いでいます。
このことは、大災害を想定したBCP(事業継続計画)が未策定であった、もしくはBCP(事業継続計画)が機能する体制作りができていなかったことを示していると言えます。

BCP策定のアンケート調査

しかし、こうした過去があっても、なおBCPの重要性は完全には認知されていません。平成31年3月に公開されたNTTDATAの調査によれば、BCP(事業継続計画)を策定済みだと返答した企業は半数以下でした。

2016年4月14日に発生した熊本地震。この災害は九州に大きな被害をもたらしましたが、東日本大震災の教訓からBCP(事業継続計画)を策定・強化していた現地企業は、地震直後の復旧がとても早かったそうです。しかも、BCPを策定したことにより、人材確保や他企業からの信頼も厚くなるなど、企業価値が向上したという企業もありました。

各企業は、対策を怠った先に「倒産」が待っているのだと再認識し、一層警戒心を高めてBCP(事業継続計画)策定に励まなければならない局面だといえるでしょう。

しかしながら、そもそも「企業防災」とは何なのか。
BCPを策定するには何から始めたらいいのか。新年度を迎え新たに防災担当となった方の中には、悩んでいる方も多いはず。

そこで本ページでは、BCP(事業継続計画)策定の基本的な手順と方法について、わかりやすく解説します。
最後に策定後のチェックリストも紹介していますので、企業防災の第一歩を進めましょう。

BCPとBCMの違いとは?

事業継続について語られる場面では、BCPと同時に「BCM」という概念が登場します。

事業継続計画を指すBCPに対し、BCMは「事業継続マネジメント」を指す用語です。一般的には、以下のように経営レベルの活動として実施される、事業継続のための包括的な取り組みをBCMと呼びます。

BCPとBCPの違いについてまとめた図です

内閣府が公表する事業継続ガイドラインによれば、BCM(事業継続マネジメント)」には次の要件が含まれています。

  • BCP(事業継続計画)策定
  • BCP(事業継続計画)を実現するための予算・資源の確保
  • BCP(事業継続計画)を浸透させるための教育・訓練の実施
  • 前述した諸制度の点検・継続的な改善

BCMは、BCPを始めとする「非常時の取り決め」を適切に運用する際に欠かせないものの、日本における認知はそれほど進んでいません。BCPという用語が広く知られている一方で、いまだBCMはそれほど重要視されていないのです。

しかし、事業継続ガイドラインにも記述がある通り、BCPは策定後に単体で機能するものではなく、あくまでBCMの一部分。そのため、BCP策定後は自社のBCMが機能しているのか、改めて確認することを推奨します。

BCPと防災の違いとは?

BCP(事業継続計画)を「防災」と同義のものだと捉えるケースは少なくありません。しかし、BCP(事業継続計画)と防災は全く異なるものです。

 BCP防災
目的非常時に事業を継続する人命・自社の財産を守る
適用対象業務を停止させる全要因自然災害・伝染病による被害
策定効果事後対策として機能する事前対策として機能する

BCP(事業継続計画)は非常時に「事業を継続させる計画」であり、あくまで「緊急事態の発生直後」に機能する施策です。

緊急事態の回避を目的としているわけではなく、いかにして非常時に重要業務を停止させないか。業務停止を招いた場合には、どのように早期復旧するのかといった点を重視しています。

一方、防災の主な策定効果は「緊急事態による被害の回避」です。つまり、そもそも緊急事態が起こった直後に機能するBCPとは、効果を発揮するタイミングが異なるのです。

BCPを策定するための手順

BCP(事業継続計画)を1から策定することは労力・時間の面で負担が大きく、またコンサルティング会社等に依頼する場合はコストもかかります。効率的なのは手順に沿ってテンプレート等を上手に活用すること。本章では、企業経営者や担当者が独力で策定できるよう、BCP策定の手順を解説します。

下に目次がありますが、はじめの一歩は「更にハードルを下げたい!」という方はこちらの記事がおすすめです。

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1.基本方針を作成する

・自社のBCP基本方針を定める
・BCPで想定する緊急事態を絞り込む

想定されるあらゆる天然災害やリスクをリストアップした上で、発生時の自社への影響度や発生する可能性などを考え、自社のBCP(事業継続計画)が対象とする災害・事故を絞りこみます。

帝国データバンクが2016年に実施した「BCPに対する企業の意識調査*」によれば、最も「地震」を意識している企業は回答数の51.8%を占め、火災・水害などを併せて全体的に「自然災害」との答えが8割超に上りました。

・社内でのBCPの推進体制を決定する

BCP(事業継続計画)の内容が企業の多くの部門に関係することから、プロジェクトチームを編成して進める場合が多いです。また、プロジェクトチームの各作業を調整するために事務局を設置する場合があり、多くの企業では総務部が担当しています。

2.中核事業、復旧優先事業を選定する

緊急の状況下で、優先的に復旧すべき重要事業を選定します。

この際「会社の売上げに最も寄与している事業」「作業の延滞が会社に及ぼす影響を考え、損害が最も大きい事業(商品の納期等)」「市場シェアや会社の評判を維持するために重要な事業」などが判断基準です。

その上で、人・モノ・サービス・情報・カネといった要素から、業務継続に不可欠な経営資源を選び出します。中小企業庁のテンプレートでは、これを「ボトルネック資源」と呼んでいます。

3.重要な業務を特定する(ビジネス影響度分析)

緊急の状況下で、事業がどのような影響を受けるかを試算します。そのうえで、組織の活動(業務)を復旧の優先順位に応じて分類し、重要な業務を特定します。これを「ビジネスインパクト分析(BIA:Business Impact Analysis)」といいます。

ビジネスインパクト分析を実施する、主な目的は3つ。

ビジネスインパクト分析を行う3つの目的
事業継続のために必要な業務・リソースの把握
災害時に早期復旧を目指す業務の優先順位付け
各業務における目標復旧時間(RTO)の算出

具体的な手順としては、事業を構成する各業務を分解して、それぞれの業務を継続するための必要リソースをピックアップ。
業務が停止した場合、事業にどれほどの影響を与えるのか洗い出し、業務停止が許されるタイムリミットとして「目標復旧時間(RTO)」を設定します。

事業継続計画策定ガイドラインの作成

左部分は各業務を細分化したもので、右部分は業務停止による影響度と復旧優先度を示しています。上図では、復旧優先度の高い項目ほど、目標復旧時間(RTO)を短く設定している様子が見て取れます。

4.事前対策の検討

・事業継続のための代替策を検討する

中核事業の継続に必要な資源が、被災して利用できなくなってしまった場合のため、臨時従業員、資金、情報のバックアップなど資源の代替を確保する手段を検討しておきます。

・事前対策を検討・実施する

これまでの分析で得られた結果から、目標時間内に事業を復旧できるようにするための事前対策を検討します。施設の耐震化、従業員の連絡手段の確保や指示系統の確立など、ハード・ソフト両面から行いましょう。

5.BCPの策定

・ BCP発動基準を明確にする

中核事業に甚大な影響を与える可能性のある災害とその規模にもとづいて、BCP(事業継続計画)の発動基準を定めることが望ましいとされます。

・事業継続に関連する情報の整理と文書化をする

緊急事態発生時の事業継続において必要となる情報を事前に整理し、各テンプレート付属の帳票フォーマットに記入することにより、BCP(事業継続計画)の文書化を実施します。大きく分けて次の2種類の文書が完成します。

・BCPの発動フロー
事業継続に必要な各種情報の帳票類

なお中小企業庁が用意しているテンプレートは、入門、基本、中級、上級の4種類あります。このうち入門コースの利用者を対象とした解説記事があるので、そちらも参考にしてみてください。

BCP策定に漏れはない?チェックリストで自己診断

BCP(事業継続計画)は「策定ができたらそれで終わり」ではありません。会社の状況に応じて最新の情報・状態に維持しておく必要があります。定期的にチェックし、見直すべき改善点の洗い出しを怠らないように努めましょう。

民間のBCPコンサルティング会社でもそれぞれ独自の診断を行っていますが、ここでは自分で簡単にできるBCPチェックリストをご紹介します。

BCP策定・運用状況の自己診断チェック(中小企業庁)

中小企業庁が公表する「BCP取組状況チェック」は、策定したBCP(事業継続計画)の有効性を判断するためのチェックシートです。BCP(事業継続計画)策定後など、自社の防災意識を判断するときに活用してください。

人的資源緊急事態発生時に、支援が到着するまでの従業員の安全や健康を確保するための災害対応計画を作成していますか?
災害が勤務時間中に起こった場合、勤務時間外に起こった場合、あなたの会社は従業員と連絡を取り合うことができますか?
緊急時に必要な従業員が出社できない場合に、代行できる従業員を育成していますか?
定期的に避難訓練や初期救急、心肺蘇生法の訓練を実施していますか?
物的資源

 

(モノ)

あなたの会社のビルや工場は地震や風水害に耐えることができますか? そして、ビル内や工場内にある設備は地震や風水害から保護されますか?
あなたの会社周辺の地震や風水害の被害に関する危険性を把握していますか?
あなたの会社の設備の流動を管理し、目録を更新していますか?
あなたの会社の工場が操業できなくなる、仕入先からの原材料の納品がストップする等の場合に備えて、代替で生産や調達する手段を準備していますか?
物的資源

 

(金)

1週間又は1ヵ月程度、事業を中断した際の損失を把握していますか?
あなたは、災害後に事業を再開させる上で現在の保険の損害補償範囲が適切であるかどうかを決定するために保険の専門家と相談しましたか?
事前の災害対策や被災時復旧を目的とした融資制度を把握していますか?
1ヵ月分程度の事業運転資金に相当する額のキャッシュフローを確保していますか?
物的資源

 

(情報)

情報のコピーまたはバックアップをとっていますか?
あなたの会社のオフィス以外の場所に情報のコピーまたはバックアップを保管していますか?
主要顧客や各種公共機関の連絡先リストを作成する等、緊急時に情報を発信・収集する手段を準備していますか?
操業に不可欠なIT機器システムが故障等で使用できない場合の代替方法がありますか?
体制等あなたの会社が自然災害や人的災害に遭遇した場合、 会社の事業活動がどうなりそうかを考えたことがありますか?
緊急事態に遭遇した場合、あなたの会社のどの事業を優先的に継続・復旧すべきであり、そのためには何をすべきか考え、実際に何らかの対策を打っていますか?
社長などの責任者が出張中だったり、負傷したりした場合、 代わりの者が指揮をとる体制が整っていますか?
取引先及び同業者等と災害発生時の相互支援について取り決めていますか?
診断結果の確認方法
「はい」が3個以下緊急事態の発生時、廃業のリスクが大きいため、早急にBCPの策定を進める必要性がある
「はい」が15個以下改善の余地があるため、「中小企業BCP策定運用指針」をもとにしたBCP見直しが推奨される
「はい」が16個以上すでに防災意識は高いため、「中小企業BCP策定運用指針」をもとにBCPの強化を進める局面にある

本記事の前半部分で解説したように、いまだBCP(事業継続計画)を策定していない企業は多いため、「はい」が3個以下にカテゴリーされるケースは非常に多いはずです。
しかし、大災害はいつ起こるか分かりません。具体的なアクションを先延ばしにすることなく、今日明日にでもBCP(事業継続計画)の策定を始めてください。

BCP訓練の重要性

どんなに完成度の高いBCP(事業継続計画)でも、資料としてファイルボックスに収納しておくだけでは意味がありません。

つまり「策定して保存して安心」ではなく、訓練・演習によってブラッシュアップし、成熟度を上げていくことが求められます。そのためにも、身近な道具を用いて手軽に実施できる「机上訓練」の機会を設けましょう。なぜなら、防災担当者のみならず社内全体の危機意識を高め、非常事態に備えることが可能となるからです。

「机上訓練」では、BCP(事業継続計画)で検証したい、あるテーマをもとに災害発生のシナリオを作成します。そのシナリオに対してどのように対処するか、参加者が一室に集まってシミュレーションする訓練のことです。

また、より本格的な訓練として次の2つの方法があります。

  1. 災害が発生した際、どう行動するか、マニュアル手順などを確認する「計画・手順確認訓練:ウォークスルー訓練」
  2. 実際に災害が発生したシナリオの中で対応を実践する「総合演習:フルスケールエクササイズ」

また担当者だけでなく従業員全員が指示系統を把握しておくことも重要です。次のページでも解説しますが、災害時は普段当たり前に利用している連絡手段が途絶える危険性も考える必要があるため、いざという時に備えて対策を練り、報告訓練なども行うとよいでしょう。

トヨクモの「安否確認サービス2」はコミュニケーションツールが充実しています。社員の安否確認だけでなく、その後の指示まで一気通貫して対策可能です。

まとめ

はじめてBCP(事業継続計画)の策定に取り組む担当者でもわかりやすいよう、BCP(事業継続計画)の概念から策定・運用・見直しまでの一連の流れを追って解説しました。

調査*によると、BCP(事業継続計画)の策定により、顧客の信用や市場関係者からの高い評価が得られ、企業価値の向上につながるといった効果を実感している企業も多くあります。たとえば以下のような効果を実感できているようです。

【人材育成・雇用改善】
中核となる事業の検討過程で把握された業務上の問題点を改善する
【環境整備・業務改善】
会社全体で整理整頓を習慣付ける
【売上高・取引先増】
取引先などに自社の BCP への取り組みをアピールする
【資金繰り改善】
商品や業務を事業展開していくための経営資源を再配分する
【取引先の信頼向上】
被害の程度に応じた中核となる事業の事業継続対応を検討し、日常の経営の変化に活用する

BCP策定済みの中小企業の経営者もしくはBCP担当事務局を対象にWebアンケート調査を実施(回答数173社)。そのうち50社に対して追加でヒアリング調査を実施した。
企業活動を続けていく上で、メリットの多いBCP(事業継続計画)策定。前向きにBCP(事業継続計画)策定を検討し、万が一の事態に備えるとともに、企業価値も上げていきましょう。

次のページでは、BCP(事業継続計画)を策定する上で留意したい事項を、東日本大震災時の情報を基に解説します。

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