災害にもさまざまな種類があり、自然災害以外に人為災害や特殊災害なども該当します。
この記事では、災害の種類や特殊災害への対策方法について解説します。
目次
特殊災害とは
災害は全部で3種類あり、特殊災害・自然災害・人為災害が挙げられます。
自然災害とは、自然現象を起因とする災害です。たとえば水害、地震、感染症によるパンデミックなどが挙げられます。
また、人為災害は人為的な要因によって発生した災害で、交通事故や都市の大規模火災などが挙げられるでしょう。
対して特殊災害とは、原子力発電所事故、航空機事故などのように、自然災害でも人為災害でもない災害を指します。
特殊災害の種類
特殊災害は、大きく分けて化学物質(Chemical)、生物(Biological)、放射性物質(Radiological)、核(Nuclear)、爆発物(Explosive)の5つに分類されます。
これらの、頭文字をとってCBRNE(シーバーン)災害とも呼ぶこともあるため、混乱しないよう注意してください。
それぞれの特殊災害について解説します。
化学系(Chemical)
化学系の特殊災害は、化学兵器を使用したテロや、有害物質の漏洩などが該当します。
例として1995年に発生した地下鉄サリン事件が挙げられるでしょう。これは、テロリストが毒性のある化学物質を兵器として用いた事件でした。
また、悪意のない災害もあります。ビルの解体工事で発生した亜鉛中毒、アセチレンガスを用いた作業中の出火や爆発、有機溶剤を用いた作業で防毒マスクが破過したことによる急性メタノール中毒なども、化学系の特殊災害と言えるでしょう。
生物兵器(Biological)
生物兵器による災害とは、人体に有害な病原体やウイルスによって発生する災害です。
日本でも事例があります。1993年の亀戸異臭事件では、炭疽菌を使用したテロ未遂が起きました。
また、アメリカでは2001年に炭疽菌を使用したバイオテロが起き、アメリカ同時多発テロ直後の同国に衝撃を与えました。
生物兵器の使用は1925年のジュネーブ議定書において国際的に禁止されているため、これらのテロは到底認められません。
放射性物質(Radiological)
放射性物質による災害とは、原子力事故によって放射性物質が漏洩する災害です。
放射性物質は人体へ及ぼす影響が強く、被ばく被害を引き起こします。被ばくした場合、数日から数週間で白血球が減少したり、消化障害が発生したりし、癌や白内障を引き起こす危険性があります。
放射性物質による災害として、1986年にソ連でチェルノブイリ原発事故が、2011年に福島県で福島第一原子力発電所事故が発生しました。
核(Nuclear)
核による災害とは、水素爆弾や原子爆弾などの核兵器を用いた災害です。
この災害の特徴は、放射性物質による被ばくで、人体を苦しめるということです。たとえ外傷がなく無傷であっても、月日が経過し、突如として死亡する例もあります。そして、爆発後も長期間にわたり残留放射線が地上に残るため、救護活動を目的として爆発現場付近に留まる人もまた、同様にさまざまな被害を受ける危険性があるでしょう。
この災害の例として、1945年、第二次世界大戦で広島と長崎に落とされた原子爆弾が挙げられます。爆弾が投下された二都市では、爆心地のみならず広範囲にわたって死傷者が出ました。
爆発系(Exprosive)
爆発系の災害とは、人為的なテロ行為、または化学物質による事故などを原因とし、爆発が発生する災害です。
高校生程度の知識であっても、致死力のある爆発物を製造することは可能です。爆発は広範囲に被害が及びやすく、死傷者が多数出る危険性もあります。
日本では、1983年につま恋ガス爆発事件が発生し、死者14人という大きな被害をもたらしました。また、イギリスでも、死者56人を出したロンドン同時爆破事件が2005年に発生しています。
特殊災害への対策方法
特殊災害は、テロや事故によって発生するため、自然災害や人為災害と同様にあらかじめ避けることは困難です。そのため、日頃から災害に対して意識を高めて、備えることが大切です。
ここからは、特殊災害への具体的な対策方法を解説します。
定期的な訓練の実施
自然災害に対する避難訓練は、企業や学校などで定期的に実施されているでしょう。しかし、特殊災害を想定した避難訓練はあまり実施されていません。
特殊災害への意識を高めるためにも、定期的な訓練に特殊災害対策を追加しましょう。
また、事故につながりやすい化学物質を扱う企業は、特殊災害が発生した場合のマニュアル作成、および社内での共有が重要です。
特殊災害に迅速かつ適切な対応ができるよう、対策を怠らないでください。
従業員への教育
特殊災害の対策として、従業員への教育は欠かせません。とくに、工場で起こる特殊災害の原因は、従業員への教育不足によるものが多いと言われています。特殊災害のリスクを減らすためにも、定期的な研修や教育、ベテランから新人へのスキルや知識の引き継ぎが重要です。
経営者による安全文化の醸成
経営者は、利益ばかりを優先した思考に囚われず、企業の特殊災害対策を講じる必要があります。ベテラン人材の確保や育成、設備投資は、費用はかかるものの、労働者の環境改善や災害発生リスク低下につながります。
社内の災害対策マニュアルを見直し、安全確保を優先して経営しましょう。また、経営者自らが特殊災害に対する意識を向上させると、組織全体の防災意識に好影響を与えます。
個人でできる対応や応急手当の取得
個人でできる特殊災害への対策として、特殊災害に関する知識の取得が挙げられます。災害ごとの特徴を知り、対応や応急処置の方法を学びましょう。
たとえば、日本赤十字社や医療機関などで応急手当講習を受けられます。応急処置を行うと、痛みの緩和、急激な症状悪化の防止、治癒の促進につながります。
知識があると、災害時に自分や家族だけでなく、その場に居合わせた人へも適切な処置を施せるでしょう。
防災マニュアル・BCPの策定
災害時や緊急事態発生時に備えるためにも、防災マニュアルとBCPの策定は大切です。
また、BCPとはBusiness Continuity Planningの略称で、日本語では事業継続計画と訳されます。事業継続計画とは、緊急事態発生時に企業の事業を継続させるために策定する計画のことです。
防災マニュアルとBCPの策定により、災害直後の行動が明確に定まり、従業員や来訪者の安全と安心を確保できます。
補助金・助成金制度を活用
不測の事態に備え、BCPを策定した企業に対して、公的な補助金や助成金制度が用意されています。これらを活用すれば、企業は特殊災害への対策を充実させられるでしょう。
ただし、補助金や助成金の受給条件は自治体によって異なります。活用を検討している場合は、支給要件を事前に確認してください。
特殊災害のリスクを知り、企業の防災対策を行おう
特殊災害は、化学物質、生物兵器、放射性物質などによる災害です。一般人には対処の難しいものが多いため、企業による防災対策が求められます。
また、特殊災害に関する知識をつけると、慌てず対処できるでしょう。企業はマニュアル作成やBCP策定で災害に備え、臨機応変に対応できる組織体制を整えてください。