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災害救助法とは?適用基準や支援内容を詳しく解説

災害救助法とは?適用基準や支援内容を詳しく解説

災害救助法は、被災者を迅速に救助・保護・支援するための法律です。また、生活再建に向けてのさまざまな活動や被災者への給付についても定めています。災害大国である日本ではこの法律に基づき、これまでにも数多くの支援が行われてきました。

本記事では、災害救助法の詳しい解説を踏まえて、万が一のときに役立つ情報をお伝えします。

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編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。

災害救助法とは

災害救助法は、災害が起きた際、被災者へ迅速な応急救助と保護を行うための法律です。災害直後から、避難所の開設、物資や情報の提供、復興への救済などで、被災者の生活を守るために定められました。また、社会の秩序を保つために重要な役割を担っています。

ここでは災害救助法について、詳しくご紹介します。

災害救助法の概要

災害救助法は、災害直後から応急救助を行うことを目的とする法律です。

災害救助法が施行されたのは、いまからおよそ80年前です。1946年に起きた南海地震によって国の救助内容が見直され、1947年に内閣府が現在の災害救助法を制定しました。

また、1959年には計画的な防災行政や整備の推進を図るために、災害対策基本法が内閣府によって制定されました。

災害対策基本法は予防、準備、緊急対応、復旧の4つに分類されます。

(参考:内閣府政策統括官 災害救助法の概要

(参考:内閣府 災害対策基本法

災害救助法の目的と5つの基本原則

災害救助法は災害時に住民の応急救助と保護を行う仕組みです。国と都道府県知事が救助要請を発し、それを受けた市町村長が補助するという流れで行われます。

災害救助法には、以下5つの基本原則があります。

  • 平等の原則:事情や経済面を問わず、平等に救助の手を差し伸べること。
  • 必要即応の原則:必要に応じて臨機応変に救助すること。
  • 現物給付の原則:衣食住の救援に関しては現物をもって行うこと。
  • 現在地救助の原則:住民のみならず、現地にいる被災者は全員救助の対象であること。
  • 職権救助の原則:被災者の申請有無にかかわらず、都道府県知事の要請に応じて迅速に救助すること。

災害救助法の適用基準

災害救助法が適用されるケースは、以下のとおりです。

  • 住家や建物への被害が生じた場合
  • 生命や身体への危険がある、または発生した場合

この2つを踏まえ、市町村と都道府県による情報収集や、被災者からの申請によって、国による判断のもと災害救助法が適用されます。

これまでに災害救助法が適用された災害

日本では、毎年のように災害に見舞われています。自然災害から二次災害につながるケースも多く、その被害数は膨大です。これまでに数々の地域が災害救助法で支援を受けてきましたが、その反面、課題もあります。

そのため、これまでの教訓も生かし、災害救助法は現在も議論と改良が重ねられています。

2023年は11件に適用

災害救助法は、2023年だけでも11件の災害に適用されました。

地震だけでなく、地震に伴う土砂崩れや、停電による救助にも災害救助法が適用されたのです。ほかにも大雪、雪崩、台風による被害にも、内閣府において適用されています。

2023年は自然災害のなかでも記録的な大雨による被害が多く、人的被害に加え、家屋の半壊や全壊も多く発生しました。多くの被災者が災害救助法によって支援を受けることとなり、現在も再建への歩みを進めています。

(参考:独立行政法人日本学生支援機構 1年以内の災害救助法適用地域

2023年梅雨前線による雨と台風第2号

2023年6月2日に、台風2号に伴う線状降水帯の影響で大雨が発生しました。

この大雨で身体や住家に危険の生じるおそれがあり、継続的な支援が必要と判断されたため、茨城県・埼玉県・和歌山県・静岡県の5市1町に災害救助法が適用されたのです。

なかでも茨城県取手市と和歌山県海南市では大雨による影響が大きく、床上・床下浸水による膨大な被害がありました。さらに、土砂災害の発生で農業にも大きな損失があったと言われています。

東日本大震災

2011年3月11日に発生した東日本大震災では広域で膨大な被害が相次ぎ、消防庁によると死者数は1万8131人にのぼり、行方不明者は2829人と言われています。

この震災で16都県の259市区町村に、内閣府によって災害救助法が適用されましたが、広域で避難者が発生するケースや、被害が長期化するケースを想定していませんでした。

これに応じて法体系への見直しが課題となり、2018年6月に災害救助法の改正法が成立し、公布されました。

(参考:総務省消防庁 東日本大震災関連情報 災害の概要

(参考:内閣府 災害救助法の適用状況

能登半島地震

2024年1月1日に発生した能登半島地震では、新潟県・富山県・石川県・福井県の35市11町1村に災害救助法が適用されました。内閣府によると、石川県内だけでも死者数は241人にのぼり、避難者数は1万2000人以上と言われています。また、ライフラインの復旧に時間がかかっており、震災から2ヶ月近く断水が続いているのです。(いずれも2024年2月22日時点)

指定された場所ではない場所に避難している人も多く、現在も多数の被災者がさまざまな場所で避難生活を送っています。

災害救助法の適用により、被災者の負担は緩和されている一方、膨大な被害を受けた地域ではなお再建に時間がかかっています。

(参考:能登半島地震非常災害対策本部 令和6年能登半島地震に係る被害状況等について

災害救助法で受けられる支援

災害救助法で受けられる支援は10項目以上あり、これに伴う公的支援や各種保険の請求をする場合には「り災証明書」が必要です。り災証明書とは、災害による住家への被害を証明するもので、賃貸住宅に住んでいる人も対象です。

り災証明書を地域の税制課へ提出することで、支援金の給付や、公共料金の免除を受けられます。家屋に被害が発生した場合は、速やかに発行してもらい、税制課に提出しましょう。

また、り災証明書のほかに、世帯主の身分証と被害状況の分かる写真を提出する必要があります。

写真はカメラで撮影したもののほか、スマートフォンで撮ったものでも提出できます。このとき、家の外と中、被害にあった箇所をそれぞれ撮っておきましょう。

避難所・福祉避難所

避難所は避難生活の重要な拠点であり、災害直後から設置されます。また、生活に必要な物資の配布や、ライフライン復旧の見通しなど、生活の再建に向けた情報が提供される場所でもあるのです。

避難生活に配慮を必要とする高齢者・障がい者・妊婦・乳児とその家族には、安心して過ごせる体制を整備した福祉避難所が設けられます。福祉避難所では、高齢者と乳児用の紙おむつ、粉ミルク、液体ミルク、離乳食、車椅子、補聴器の配布と貸与もしており、これらもすべて災害救助法の救助項目です。

また、ホテルや旅館を借り上げて避難所として活用する場合もあります。

食品や飲料水の供給

避難所では炊き出し、給水車による飲料水の提供、生活に必要な物資の供給を行っています。避難所で過ごしている被災者はもちろん、自宅で避難生活を送る被災者にも平等に提供されるのです。

これらの提供は家屋の被害に関係なく、災害で飲料水や食品の調達が厳しくなってしまった被災者全員を対象としています。内閣府によって、1人あたり1日1230円以内で用意するよう決められています。

応急仮設住宅

家屋の全壊、全焼、津波による流失、大規模半壊などによって、自らの資力では住宅を得られない場合、災害救助法に基づき応急仮設住宅へ入居することが可能です。長期にわたって避難指示の出ている地域に家屋がある人も対象です。

応急仮設住宅には賃貸型、建設型、その他適切な方法の3つに分類され、家賃や手数料は災害救助法により国庫から負担されます。ただし、光熱費は入居者の負担になる場合がほとんどです。

住宅被害の拡大を防ぐ緊急修理

災害に見舞われ家屋が半壊した場合、応急修理に用いる資材を自治体から受け取れます。窓ガラスの破損や、外壁の剥落に伴う被害も対象です。

これらを受給するには、被害状況の分かる写真を提出する必要があります。万が一被災した場合は、家屋の被害状況を箇所ごとに撮影しておきましょう。

日常生活に必要な最小限度の部分の修理

日常生活に必要なトイレや台所が災害で被害を受けた場合、各自治体が契約した修理業者から必要最低限の応急修理を受けられます。この場合にも、被害状況の分かる写真を提出する必要があります。家屋が被害を受けたら、必ず撮影をしておきましょう。

また、修理に必要な書類は以下のとおりです。

  • 応急修理申込書
  • り災証明書
  • 住家の被害が分かる写真
  • 修理見積書
  • 資力に関する申請書

生活必需品の支給・貸与

家屋の全壊、流失、床上浸水などによる被害で、日常生活を営むことが困難になってしまった場合、災害救助法に基づき生活必需品の支給や貸与が受けられます。主にタオルケット、寝具、衣類、衛生用品、食器、調理器具などが対象です。

乳児や高齢者のための紙おむつも支給されるため、必要な場合は速やかに自治体へ申請しましょう。

その他の支援

前述したもの以外にも、災害救助法による救助項目は多数あり、すべて災害救助法により国庫から負担されます。

  • 被災者の捜索や救出
  • 医療や助産の提供
  • 自力で除去できない障害物の除去
  • 学用品の支給
  • 遺体の捜索
  • 埋葬

災害復旧・復興に関するその他の法律

復旧や復興に関する支援も、災害救助法によって受けられます。災害や被害の大きさは世帯によって異なるため、受けられる支援も世帯状況で異なることに注意してください。

万が一被災した場合に備えて、必要な知識を事前に身につけておきましょう。

激甚災害制度

激甚災害制度とは、大災害で被災者への支援がとくに必要であると判断された場合、指定される制度のことです。

これにより、救済や復旧に必要な国庫補助の特別支援措置などが設立されるため、地方財政の負担を緩和し、被災者への特別な支援が可能となります。

内閣府によると、過去5年間で25の大災害が激甚災害に指定されました。(2024年1月時点)

(参考:内閣府 過去5年の激甚災害の指定状況一覧

被災者生活再建支援制度

被災者生活再建支援制度とは、災害で家屋や家財に重大な被害を受けた世帯へ、被災者生活再建支援金を支給するものです。金額は家屋の被害状況、世帯収入、世帯人数、年齢によって異なりますが、最大およそ300万円の支援金が支給されます。

内閣府によると1998年11月に施行されて以来、これまでにおよそ130億円の支援金が支給されました。

また、家電や寝具などの生活用品には最大100万円が支給されます。ほかにも、住居の移転に必要な交通費や、災害によって負傷した場合の医療費も、支給の対象です。

(参考:内閣府 被災者生活再建支援法の適用状況について

災害救助法を理解して災害時に家族や社員を守ろう

災害が発生した場合、災害救助法は救助・保護・支援により、被災者の負担を緩和します。そのため、災害の多い日本にとって重要な法律です。

災害はいつ、どこで起こるのかが誰にも分からないからこそ、万が一被災してしまった場合を想定し、必要な知識を事前に身につけて備える必要があります。

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編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。