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防災訓練とは?企業における必要性や主な種類・準備事項について解説

防災訓練とは?企業における必要性や主な種類・準備事項について解説

自然災害が起こりやすい日本では、災害を想定した防災訓練が必要不可欠です。防災訓練を実施することにより、従業員の人命を守れて、さらには事業を継続させることにもつながります。

この記事では、防災訓練の必要性や主な種類、防災訓練で準備しておくことについて、BCP関連のセミナーに多く登壇し、BCPの啓蒙・策定サポートを行うトヨクモ株式会社 防災士の坂田が、わかりやすく解説します。

なお、トヨクモの「防災訓練マニュアル」では、防災訓練の目的・計画立案・訓練メニューなど、企業が防災訓練を実施する際の重要なポイントについて、詳しく解説しています。防災訓練のシナリオシートの作成例や訓練実施結果報告書の作成例も紹介していますので、ぜひお役立てください。

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トヨクモの「防災訓練マニュアル」で、効果的に防災訓練を実施しましょう。

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編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。

防災訓練とは

防災訓練は、災害時に適切な行動ができるよう、災害を想定して行う事前訓練のことです。パニック時に冷静な対処ができるという、命を守るうえで重要な判断力を身に付ける効果があります。

内閣府の「令和元年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」によると、被害を受けた際に防災訓練が役に立ったと回答した大企業の割合は42.1%でした。また、61.9%もの大企業が防災訓練の開始・見直しを検討しており、多くの企業で防災訓練に注目が集まっています。

(参考:内閣府|令和元年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査

防災訓練は会社の義務

企業には、社員・顧客の生命を最優先する社会的な義務があります。労働契約法第5条では、「安全配慮義務」として「労働者の安全への配慮」が法令で定められています。

(労働者の安全への配慮)第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

(引用:労働契約法第5条

過去には、安全配慮を怠ったとして従業員になんらかの怪我や死亡例が出た場合に、損害賠償を請求されるケースもありました。

また、消防法第36条では、年に1回以上の防災訓練が義務付けられており、「特定防火対象物」の建物の場合は年2回以上の防災訓練を求められます。

(参考:平成十九年法律第百二十八号労働契約法
(参考:日本消防設備安全センター|防災管理定期点検報告(消防法第36条)

企業における防災訓練の必要性

防災訓練が必要な理由について、法令で定められた義務であること以外にどのようなものがあるでしょうか。以下の観点からも、企業の防災訓練は必須です。

  • 従業員や顧客などの人命を守るため
  • 事業を継続させるため
  • 顧客からの信頼を得るため

従業員や顧客などの人命を守るため

企業には、従業員・顧客の命を守る責務があります。非常事態を想定した対応訓練は、従業員にとっても災害時にすぐ行動できるようになるための大切な準備です。

2021年、駅構内にて心肺停止状態で突然倒れた傷病者に対して、迅速かつ適切な救護処置を行い人命救助に貢献したとして、JFEシステムズの従業員3名が東京消防庁より感謝状を授与されています。

具体的には、従業員が速やかに駅員へ連絡し、AEDの準備や119番通報、気道確保・脈の確認などを実施しました。JFEシステムズは全事業所にAEDを配置しており、講習会や社内報でその使い方を周知し、救急対応の一連の流れを学んできたため、瞬時に行動に移すことができたのです。

(参考:JFEシステムズ株式会社|東京消防庁より、当社従業員が人命救助に対する感謝状を授与

日頃からさまざまな災害を想定して行う訓練を行うことにより、災害が起こったときに咄嗟の判断ができるようになるでしょう。

事業を継続させるため

企業にとっては、災害が起こったあとの事業継続も重要な視点です。従業員や顧客の命を守ることに加えて、BCP(事業継続計画)を策定しておきましょう。BCPとは、災害などの緊急事態が発生した際に被害を最小限にとどめて、事業を継続あるいは早期に復旧するための計画のことです。

災害が起こった際には、これまで通り事業を継続することは難しい状況になります。とくに、複数の事業を展開している企業では、事業の優先順位をつけることも重要です。


被害を最小限に抑え早期復旧を目指すために、平常時から防災訓練などで、優先すべき事業やそのための対策について検討しておきましょう。

顧客からの信頼を得るため

災害時、顧客やクライアントへ迅速に適切な対応をすることで、顧客の損害を回避し企業としての信頼を得られます。

災害が起こり、これまで通り事業が継続できない場合、「納期に間に合わない」「サービスの提供ができない」などが原因で顧客に損害が及ぶ可能性もあります。

そのような事態が起こらないように、防災訓練で災害時の顧客対応を検討しておくことにより、顧客からの信頼を得られるでしょう。緊急時において、顧客やクライアントへ提供できるサービスレベルをあらかじめ話し合っておく方法もおすすめします。

防災訓練を計画する流れ

防災訓練は、以下の流れで計画します。

手順概要
Step1.リスクアセスメントとニーズの特定組織が存在する地域で発生しうる災害などのリスクを評価する
Step2.目的の明確化防災訓練の具体的な目標を明確にする
Step3.訓練プログラムの設計災害時の対応手順や避難ルート、安全な集合場所など、訓練プログラムを設計する
Step4.資源の確保防災訓練の場所や資料、設備など、防災訓練に必要な資源を確保する
Step5.コミュニケーション計画災害発生時の効果的なコミュニケーション手段を検討する
Step6.訓練の実施防災訓練の実施する日程やタイミングを決定する
Step7.評価と改善防災訓練を実施したあとは、従業員からのフィードバックを収集し、評価する
Step8.ドキュメンテーション防災訓練の実施状況は評価結果を文章にまとめる

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企業でできる防災訓練の種類

防災訓練は、訓練の目的によって内容が異なります。ここでは、企業でできる防災訓練を6つ挙げて紹介します。

シェイクアウト訓練

▲出典:トヨクモ株式会社|防災訓練マニュアル

シェイクアウト訓練は、市町村が主体となって行うアメリカ式の防災訓練。ホームページや自治体を通じて登録し、決められた日時に合図とともに以下の動作を行うものです。

シェイクアウト訓練で行われる安全確保の動作
1.Drop(姿勢を低く)その場で姿勢を低くして、飛来物の衝突を避けます
2.Cover(頭と首を守る)落下物から身を守るため、机やカバンで頭を保護
3.Hold on(動かない)姿勢を低くして災害が収まるまで身を隠します

シェイクアウト訓練のあとに、SNSで反省や感想を発信するまでがワンセットとなっており、SNSを通じて周囲の防災意識を高める役割も担っています。

初期消火訓練

▲出典:トヨクモ株式会社|防災訓練マニュアル

初期消火訓練は、火災が発生して間もない段階の消火訓練です。消火器の使用を始めとする火災発生時の対処法を学びます。

火災が発生した際、消火器を使って消火できるのは2〜3分程度といわれています。

被害を最小限に抑えるため、通報から消防隊の到着まで、従業員自身が安全確保と可能ならば消火にあたる必要があります。

初期消火訓練では、短い時間のなかで消火器など設備の設置場所や設置状況、機器の使用方法を確認しましょう。

使ったことがないものを、いきなり本番で使うことは困難です。実際に使用できる機器があれば、事前に一度使ってみて、使用方法を確認しておきましょう。

避難誘導訓練

▲出典:トヨクモ株式会社|防災訓練マニュアル

避難訓練は、建物内にいる際に災害が起こった状況を想定し、安全を確保しつつ被害の及ばない場所まで避難する訓練です。スムーズに避難経路から脱出する、地震時に机の下へ隠れるなどのプログラムは避難訓練に該当します。

応急救命訓練

▲出典:トヨクモ株式会社|防災訓練マニュアル

応急救命訓練は、応急手当と救命について学ぶ訓練です。心肺蘇生法、AED(自動体外式除細動器)の使い方、止血の方法などを学びます。

災害時は道路が渋滞・寸断されたり、多数の救急対応のために、救急車が到着しなかったりすることも十分考えられます。そのような状況下では、簡単ではあれ従業員が応急手当てや救命行動を実施することにより、一人でも多くの人を救えることにつながります。

救命講習は消防署で定期的に実施されており、講習だけの入門コースや実技を伴う講習会、e-ラーニングを使用した座学などがあり、申し込んで受講できます。

また、消防署によっては出張講習などを請け負っているところもあるので、会社の防災訓練の一環に実施することも効果的です。

救助訓練

▲出典:トヨクモ株式会社|防災訓練マニュアル

救助訓練は建物内やエレベーターに閉じ込められたり、損壊した建物や什器・商品等で下敷きになるような事態を想定し、救助のための資機材や身近な道具を利用して負傷者を救出し搬送する訓練です。

会社にあるキャビネットなどの什器は、一般の家具より大きくて重く、一人の力では救助作業が困難な場合があります。その際、身の回りにあるものを使うことや周囲にいる人々と協力することで、救助作業が可能になることもあります。

救助のための資機材は日常では触れることがないものも多いため、訓練を機会に取り扱い方法をしっかりと学んでおきましょう。

また、通常4~6時間ほどの長時間において、がれきなどの重いものに体が圧迫されると、血流、循環障害によって死に至ることもある「クラッシュ症候群(圧挫症候群)」にも注意が必要です。この場合には、消防・救急、医療の専門職に任せる必要があります。

防災図上訓練

▲出典:トヨクモ株式会社|防災訓練マニュアル

実技による訓練が難しい場合には、座学によるグループワークやシミュレーション訓練で行動するイメージをつかみましょう。

災害の発生を想定して避難経路や危険個所、災害時に役立つ施設などを図上で確認する訓練、つまり図上訓練を実施することも効果的です。

グループでハザードマップなどの地図を囲み、想定される被害や対応方法を学ぶ「災害図上訓練DIG」は、座学でありながら実践的で行動がイメージしやすい訓練と言えるでしょう。

(参考:総務省消防庁|災害図上訓練DIG

トヨクモの「防災訓練マニュアル」では、防災訓練の目的・計画立案・訓練メニューなど、企業が防災訓練を実施する上での重要なポイントを詳しく解説しています。防災訓練のシナリオシートの作成例や訓練実施結果報告書の作成例も紹介していますので、ぜひお役立てください。

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防災訓練で事前に準備しておくこと

防災訓練をスムーズに行うためには、災害時の計画・マニュアル作成・共有や、備蓄品の準備などの事前準備が必要です。

とくに、以下の準備を行い社員全体の防災訓練を実施しましょう。

  • BCP(事業継続計画)を策定する
  • 訓練の目的を明確にする
  • 具体的な災害状況(シナリオ)を設定する
  • 防災備蓄品を管理する
  • リモートワーク環境を整備する
  • 安否確認システムの導入を検討する

BCP(事業継続計画)を策定する

BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)とは、緊急時における被害を最小限にして、事業の早期復旧や継続をするための計画のことです。災害時の対応や平時の備えなど、企業が事業を継続するための手段をすべて記載します。

自社が被災した場合だけでなくクライアントや仕入れ先が被災した場合の代替案も記載しましょう。BCPを策定することにより、顧客やクライアントからの信頼も得られます。

トヨクモでは、安価でBCPを策定できる「BCP策定支援サービス(ライト)」を提供しています。一般的なコンサルティングサービスは数十万〜数百万円で提供しており、BCP策定支援サービス(ライト)を利用すれば大幅に費用を削減できます。

また、BCPの策定に加えて、折り曲げて持ち運べるポケットサイズのBCPも作成しており、緊急時に活用しやすい点が魅力です。興味がある方はぜひお問い合わせください。

BCP策定支援サービス(ライト版)の資料をダウンロードする
BCP策定支援サービス(ライト版)は株式会社大塚商会が代理店として販売しています。

訓練の目的を明確にする

防災訓練を行う際には、訓練の目的を明確にする必要があります。

その訓練で何を学んでもらいたいかという「学習目標」を設定しましょう。訓練によって得られた知識・技術・判断が、どのような事態に役立つかを明確にしてから訓練を実施しましょう。

訓練に参加する社員が他人事ではない「わがこと意識」を持って取り組めるように工夫しましょう。

具体的な災害状況(シナリオ)を設定する

訓練を実施する際には、具体的な災害状況(シナリオ)を設定しましょう。具体的な災害状況を想定できれば、訓練にもリアリティが生まれます。

災害発生の日時や場所、発生規模、被害想定、ライフラインや交通機関への影響等を事前に告知することにより、社員のわがこと意識も高まるでしょう。

また、事前に告知をすると、訓練前に身構えたり模範解答を作ってきてしまうので、訓練の日時だけを知らせて、訓練開始後に災害状況を伝えたりする「抜き打ち訓練」もよく行われています。

過去にあった対応事例などを参考にして盛り込むとさらにリアリティが生まれます。なお、訓練を行う時には、マニュアルに沿って行動し、マニュアルの効果を検証し、見直すべきものは加筆・修正をしましょう。

防災備蓄品を管理する

会社内に従業員がいる状況で災害が起こった場合、従業員が帰宅できない可能性もあります。そのような事態に備えて会社の防災備蓄品を確認しておきましょう。

  • 飲料水(1人あたり9L:3L×3日分)
  • 主食(1人当たり9食:3食×3日分)
  • 毛布・保温シート(1人あたり1枚)
  • 乾電池・非常用電源
  • 懐中電灯
  • 携帯ラジオ
  • 衛生用品
  • 救急医療薬品類
  • 簡易トイレ

会社の立地や従業員数によって適切な量は異なるため、企業規模に合わせた備蓄を準備しましょう。必要な備蓄品はリストにまとめて管理し、食料や医薬品は賞味期限・消費期限を定期的にチェックします。

リモートワーク環境を整備する

被災後、損壊した会社に出社できない可能性もあるためリモート環境の整備も進めましょう。災害によって長期にわたり出社が困難になる可能性もあります。そのような事態に備えて、普段の業務からリモートワークに対応できるようにDX化やペーパーレス化を進めましょう。災害が起こってからではリモートワークの環境整備が間に合いません。

企業ごとにリモートワークできる業務は異なるため、自社内でどの業務が移行できるか事前に検討しましょう。

安否確認システムの導入を検討する

災害発生時は、電話やメールなどの通信手段を使えなくなるケースがあります。また、従業員が会社内だけでなくさまざまな場所に出勤・勤務している場合、従業員の安否確認にも時間を要するでしょう。

そのような事態に備えて、リアルタイムで従業員の安否を確認したり、情報を収集したりするための安否確認手段を考えておきましょう。

たとえば安否確認システムを使えば、複数の連絡手段を使って従業員の安否確認や所在に関する情報を集められます。怪我の有無や出社可能かどうかなどさまざまな情報を共有できるシステムについて検討しましょう。

トヨクモの「安否確認サービス2」がおすすめ

トヨクモの『安否確認サービス2』は、自社の防災意識を自動で分析できる安否確認システムです。全国一斉訓練を実施しており、訓練後にはレポートが送付されます。レポートには、社内の回答率の時間推移訓練全体の平均回答時間などがまとめられており全体の結果と比較することにより、自社の防災力をチェックすることが可能です。

初期費用と解約費用はかからず、さらに最低契約期間が設定されていないことにより、無理なく始められます。初めて安否確認システムを導入する方は、ぜひ検討してみてください。

初期費用・解約費用(税込)0円
月額費用(税込)ライト:7,480円プレミア:9,680円ファミリー:11,880円エンタープライズ:16,280円
最低利用期間なし
主な機能外部システム連携/通知条件の設定/予行練習/自動一斉送信/回答結果の自動集計/家族の安否確認/災害以外のお知らせ送信ほか
無料トライアルあり(30日間の無料お試し)

災害対応のマニュアルの作成も防災対策に効果的

災害対応のマニュアルとは、災害が発生した際の社員の行動指針を定めたものです。災害発生時の総責任者や各部署への情報連絡係、救護係などの役割分担を明記します。またどのような災害対応が必要かについて、各対応の手順について記載します。

他にも、以下の内容を記載しておくことにより、災害時にも従業員が慌てずに行動できます。

  • 従業員の安否確認手段
  • 緊急連絡網
  • 従業員の避難場所
  • 備蓄リスト

マニュアルは作成するだけでなく社員が把握できるように情報の共有を行い、平時からのポスター掲示などでも周知しましょう。

防災訓練のマニュアルの作成手順

防災訓練のマニュアルは、次の手順で作成することが一般的です。

  • 訓練の目的を明確化する
  • 役割を明確化する
  • 計画・マニュアルのどの部分に相当するかを明確化する
  • 事前に準備するものを明確化する

避難訓練や防災訓練のマニュアルを作っておくことにより、災害時に備えた効果的な訓練を行えます。

①訓練の目的を明確化する

マニュアルの作成に取り掛かる前に、訓練の目的を明確化します。

訓練の目的を明確化するとは、「訓練によって参加者に何を学んでほしいか」「訓練によって自社のどのような能力を向上させるのか」という、学習目標や達成目標を設定することです。

単に「避難訓練をする」ということではなく、「参加者に、避難をするタイミングと適切な避難経路を確認してもらう」「訓練によって、自社の避難マニュアルの記述の適切さと過不足がないかを確認する」などのかたちで、訓練によって何を学習・達成したいのかを明確化させましょう。

企業において、災害対応でもっとも優先することは「人命救助」です。従業員や家族の命が守られることにより、事業の復旧や継続も検討できるようになります。

②役割を明確化する

訓練においては、訓練で実施する各災害対応について「誰が」「何を」するかといった役割を明確化して臨みましょう。

避難誘導/初期消火/応急救護/情報収集など、自社の規模や社員の人数、さらには様々な災害の状況によるシナリオに応じて役割分担を明確化した上で訓練をすると、従業員同士で組織的に対応することができるようになります。

③計画・マニュアルのどの部分に相当するかを明確化する

防災訓練を行う際は、災害対応マニュアルやBCP(事業継続計画)のどの部分に相当するところを今回の訓練で実施するかを明確化しておきます。災害時に自社業務のすべてを即座に復旧することは難しいといえます。

1つずつ災害対応を積み上げていきながら、まずは人命救助や安否確認をして、重要業務に焦点をあてて事業継続をして、施設・設備の復旧などをしながら、最終的な事業継続を目指していくことがあります。今回の訓練では、それらの対応業務のなかのどの部分を訓練するのかを明確にしておくことが必要になります。

防災訓練を繰り返すなかで、対象となる災害対応業務を広げていき、最終的に災害対応マニュアルやBCPに記載されているすべての対応業務について、見直しを行っていくとよいでしょう。

また、例えば安否確認システムなど、災害時に特化したシステムを導入している場合には、これらのシステムの稼働訓練も同時に行うと、効果的です。

④事前に準備するものを明確化する

防災訓練を行う際は、以下のような事前準備が必要です。

  • 訓練運営の役割分担の決定
  • 訓練による学習目標達成目標の設定
  • 訓練概要シナリオの設定
  • 訓練の必要物品資機材等の設定(例:ハザードマップ、緊急連絡網、救助・救出資機材、安否確認システム、備蓄等)など

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防災訓練のマニュアルに記載する項目例

ここからは、防災訓練の参考になるマニュアル例をそれぞれ紹介します。

ここでは、必ず実施しなければならない火災時を想定した避難訓練の項目例と、総合的な防災訓練の項目例を紹介します。これらの項目をベースに自社に必要な対応を盛り込むことにより、防災訓練の効果的な実施が期待できます。

火災時を想定した避難訓練のマニュアル項目例

ここでは、火災時を想定した避難訓練のマニュアル項目例を紹介します。

0段階目訓練開始(日時や場所を事前に周知しない方法も検討)
1段階目火災発生
2段階目火災発見・情報伝達
3段階目通報:110番・119番通報初期消火:消化器・消火栓で初期消火避難誘導:出火場所から離れた場所へ避難誘導
4段階目情報伝達:建物内の人へ避難伝達、消防・救急・警察への説明、責任者への連絡区画の形成・人員確保:残っている人がいないか確認し、防火扉などを閉める搬送:自力で避難できない人(負傷者、高齢者等)の避難支援・介助・搬送
5段階目避難場所に集合:負傷者や逃げ遅れている人の確認
6段階目避難人員の確認:避難の対応に当たった人が全員無事か確認する
7段階目消防隊への情報提供:現場の状況(出火場所)と出火状況/避難情報の提供
8段階目訓練終了:参加者への訓練企画説明や講評、防災知識の提供
訓練の振り返り(達成目標・学習目標の達成度合い、訓練運営の課題、災害対応マニュアル・BCPの改訂の必要性、今後の訓練に向けての改善点などを検討)

火災は出火場所や時刻、周辺の状況などによって、避難ルートが大きく異なります。

そのため、さまざまなシナリオを想定した、複数回の訓練が必要です。

総合的な防災訓練でマニュアルに記載する項目例

ここでは、総合的な防災訓練でのマニュアルの記載項目例を紹介します。

0段階目訓練開始
1段階目命を守るための行動訓練
2段階目避難・避難誘導訓練
3段階目救急・救命訓練
4段階目救助・救出訓練
5段階目搬送訓練
6段階目災害対策本部立ち上げ・運営訓練
7段階目情報伝達・安否確認訓練
8段階目被害箇所確認訓練
9段階目防災資機材の使用訓練
10段階目宿泊等を想定した訓練
11段階目リモートワークなどを想定した訓練
12段階目事業復旧・継続に向けての訓練
13段階目災害に対する意識や知識を高めるための研修
訓練の振り返り(達成目標・学習目標の達成度合い、訓練運営の課題、災害対応マニュアル・BCPの改訂の必要性、今後の訓練に向けての改善点などを検討)

(参考:東海村防災原子力 東海村防災原子力安全課|防災訓練マニュアル

防災訓練の訓練内容は、企業の業種や規模によって違います。このマニュアルの項目例を参考に、自社の災害対応マニュアルやBCPに記載されている内容に沿って、訓練を計画してみてください。

防災訓練の重要性を知り「もしも」の対策を始めよう!

企業における防災訓練の重要性や防災訓練の種類、防災訓練を実施するうえで準備することについて解説しました。

災害はいつ起こるか分かりません。万が一の事態に、社員全員が同じ意識を持って行動できるように事前準備や防災訓練を行いましょう。

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編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。