地震の防災対策で企業が取り組むべき10の対策|備品や体制作りについて防災士が解説

坂田 健太(さかた けんた)
能登半島地震などの大きな地震のニュースをきっかけに、自社の防災対策が十分にできているか気になったという方もいるのではないでしょうか。
政府の地震調査委員会によると、南海トラフでは今後30年以内に震度6弱以上の大地震が70%~80%の確率で発生するともいわれています。大規模な地震が発生したときに従業員の安全を守り、経営への影響を最小限に抑えるためには、事前の準備が大切です。
そこでこの記事では、地震に対する防災対策に取り組みたい方に向けて、企業が備えるべき10の防災対策をご紹介します。BPC関連のセミナーに多く登壇し、BCPの啓蒙や策定のサポートを行うトヨクモ株式会社 防災士の坂田が監修しているため、理解しやすい内容となっています。
ぜひ、自社の状況と照らし合わせながら読み進め、企業の安全確保にお役立てください。
目次
地震の防災対策 1.オフィス家具や什器の固定

東京消防庁「家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック」によると、近年発生した地震でのけがの原因を調べると、実に約30〜50%もの人が、家具類の転倒・落下・移動によるものという結果が出ています。
とくに複合機や社員用のロッカーなどのオフィスならではの什器は、大規模な地震の発生時には恐ろしい凶器になり得ます。壁面への固定やキャスターの調整など、オフィス環境に合わせた対応が必要です。
(参考:東京消防庁|家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック)
地震の防災対策 2.避難経路の確認
避難経路の確認では実際に通るルートを歩いて確認することが大切です。建物の中では廊下や階段の踊り場など、避難経路として活用すべき通路が荷物でふさがれてしまっていて、緊急時に使用できないといった例がよく見られます。
建物の外では危険なブロック塀がないか、地震の揺れによって大きな看板が倒れて来ないか、などといった点を中心に確認しておく必要があります。
地震の防災対策 3.役割分担の明確化
中規模から大規模の組織では、災害時における各人の役割分担が重要になります。大規模な地震が発生した際に必要となる役割は以下のとおりです。
防災対策本部(責任者) | 緊急事態の対応策の最終的な意思決定、現場での指揮、各担当者間の調整 |
総務担当 | 災害対策本部の立ち上げ・運営、各担当との調整、本部長のサポート |
情報連絡担当 | 被災情報の収集、通信手段の確保、緊急連絡対応、広報活動 |
避難・誘導担当 | 避難ルート・避難場所の確認、誘導 |
消火担当 | 初期消火 |
救出・救護担当 | 救出、応急手当、負傷者の運搬 |
設備・復旧担当 | 設備の緊急停止、被害状況の調査、建築物の緊急点検、補強、危険物漏洩の緊急措置など |
社長救護担当 | 安否確認、帰宅計画の実行、支援物資の備蓄・調達・配布、被災社員の生活支援など |
ここで重要なのは、「誰が何をするか」を明確にすることです。つまり、具体的な指示を出す「リーダー(責任者)」の選出とその権限の設定、そして情報伝達のためのルートと方法を明確にすることが不可欠です。
地震の防災対策 4.重要なデータのバックアップ
情報資産の損失は企業に多大な損害を与えます。定期的かつ頻繁なバックアップはもちろんのこと、異なる拠点間によるシステムの二重化や企業によってはデータセンターの利用なども有効な手段です。
事業内容や規模、予算も踏まえ、バックアップすべきデータの優先度や使用するツール、サービスの使い分けを検討しましょう。
地震の防災対策 5.防災教育・訓練の実施
災害時には誰もが普段とは異なる心理状況に立たされます。そのため、防災に関する知識の取得や行動基準の理解など、“頭”で理解する防災教育はもちろんのこと、消火器の使い方やけが人の発生を想定した応急手当など、“体”で覚える防災訓練も重要になります。
防災訓練は日頃から定期的に開催するとともに、可能な限り具体的な被害状況を想定し、それに基づいた人員の配置、物資の準備を行うことで、緊張感の欠如を防ぎます。
防災教育を実施する際は、避難場所や避難ルートなどの情報を周知徹底しましょう。オフィスがある地域の避難場所や避難ルートは、自治体のWebサイトやハザードマップポータルサイトで調べることが可能です。
地震の防災対策 6.緊急時の連絡手段の確保・安否確認
大規模な災害の直後は各種インフラ網が打撃を受け、情報の収集、通信が困難になる可能性があります。その際に重要なのは、社員が慣れ親しんだ共通の通信手段を確保すること、そして複数の連絡手段を準備しておくことです。
いざ活用すべきときに手間取らないよう、普段から日常的に活用しておくことも大切です。
また、安否情報の際に大切なのは、単に無事か否かといった生存の確認に終始するのではなく、被災した社員の被害の大きさを把握し、場合によっては救援の要請など次のステップへ繋げることが大切です。
安否確認システム
複数の連絡先登録ができたり、災害情報と連動して自動で一斉送信を行なったり、そのあとの対策指示まで一貫して行える次世代型システムも登場しています。
安否確認システムの導入をご検討の方には、トヨクモの『安否確認サービス2』がおすすめです。簡単な操作で、だれでも直感的に使うことができます。また、災害時を想定した契約全社一斉訓練や、データセンターの国際分散などにより、確実に機能する信頼性の高さも特長です。
また、専門システムの他にも、さまざまな対策方法があります。
- 各種SNS(LINE、Facebook、Twitter)
- 災害用伝言ダイヤル「171」
- 災害用伝言板
- J-anpi
- スマートフォンアプリ(ネットラジオアプリ、地震情報アプリなど)
- 公衆電話
このような対策方法の中から自社に合った方法で、確実に連絡手段を確保することが必要です。
地震の防災対策 7.非常用品(非常食)の準備
地震発生後はすぐに必要な物資の確保ができるとも限りません。そういった事態に備え、企業としても個人としても、非常用品の準備が必要になります。
以下に準備すべき非常用品の一例を記載します。
食料品・飲料水 | お米、水、乾パン、缶詰、カップ麺など |
救援・救助資機材 | 衣料品、包帯、担架、懐中電灯、工具、ロープ、はしごなど |
防災資機材 | 防水シート、トランシーバー、携帯電話、ラジオ、メガホンなど |
保護用具 | 軍手、ヘルメット、長靴、マスク、作業服など |
暖房用品・暖房器具・その他 | 燃料、電池、洗面用具、排せつ関連用品など |
地震の防災対策 8.周辺地域との協力体制の構築
災害時の対策は以下の3つに分類されます。
- 公助 行政機関における支援
- 共助 地域住民・企業による相互支援
- 自助 個々人・企業単位での努力
このなかでも大地震などの大規模な災害時には、「自分たちの地域は自分たちで守る」という「共助」の活動が大きな役割を担います。また、企業としても周辺地域の安全性を確保し、事業をいち早く正常な状態に戻す点でも重要です。
そのため、緊急時に連携することはもちろん、日ごろから「自助」にあたる社内の防災対策に加え、「共助」にあたる地域支援としての活動に対しても積極的に関わりを持つことが大切です。
地震の防災対策 9.防災マニュアルの作成
防災マニュアルは、従業員の行動基準として緊急時に大きな効果を発揮します。マニュアルの作成にあたっては、自社の状況に適した内容になるよう心がけましょう。
あくまでも、防災マニュアルは従業員が必要な場面で正しく活用されることが目的であるため、コンパクトなカード形式で配布するなどの工夫も大切です。
また、記載の内容については、誰が読んでもわかりやすいように記載することが前提で、具体的には以下の点が必要になります。
- いつ、何を行うべきかが明確である
- 責任者、行動者の氏名が明確である
- 想定され得るケースが網羅されている
- 二次災害の防止を促す
地震の防災対策10.BCPの策定
BCP(Business Continuity Plan)とは事業継続計画と呼ばれ、大規模な地震の発生時など企業が緊急事態に陥った際に、いかにして被害を最小限にとどめ中核となる事業の継続を図るか、またはそのための手段を決めておく計画のことを指します。
とくに中小企業の場合、地震の発生により事業の一時停止や縮小、最悪の場合には廃業にまで追い込まれてしまう可能性があります。
災害対策としてはもちろんのこと、企業としての責任を果たす上でもBCPの策定、適切な運用が欠かせません。
企業で地震による被害を最小限に食い止めるには、普段から従業員一人ひとりが防災に対する意識を強く持ち、対策を講じることが重要です。
今回ご紹介した内容を踏まえ、いま一度社内における地震の対策状況について目を向けて、具体的なアクションを取られることをおすすめします。
BCPの策定ならBCPコンサルタントへご相談を!
BCPを策定する際は、基本方針や運用体制を決定した上で、中核事業や復旧目標の設定、財務診断、事前対策の実施といった手順を踏むことが一般的です。そのため、BCPの策定には膨大な時間がかかります。
そこで役立つのがBCPコンサルタントによるBCP策定支援サービスです。貴社の状況に合わせた適切なBCPマニュアルの作成を実績豊富なコンサルタントが支援します。