火災時の死因で多いものは?火災の情報・火災対策も紹介

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遠藤 香大(えんどう こうだい)

火災から身を守るには、火災を未然に防ぐことや、発生時の行動について知ることが重要です。

この記事では、火災が発生したときの死因、ならびに火災から身を守る方法を解説します。もしもの事態に命を守れるよう、対策をしましょう。

火災の主な死因とは

火災発生時の主な死因として挙げられるのは、炎・煙・熱の3つです。

火災における死因でもっとも多いのは火傷(焼死)、次いで一酸化炭素中毒や窒息です。

そもそも、火災の原因は煙草がもっとも多く、ストーブや電気器具が続きます。また、火災が発生しやすい時間帯は夜間から早朝にかけてで、全時間帯平均の約1.5倍もの頻度で発生しています。

火災発生時の死因としてまず、炎が挙げられます。火災時の死因でもっとも多いのは火傷(焼死)です。

人間の体が炎に包まれると、体組織が焼損し、激しい痛みによって焼死する前にショック死します。ただし、瞬間的な爆炎が発生した場合は即死するでしょう。

煙・一酸化炭素

火災時の死因で2番目に多いものは、窒息や一酸化炭素中毒です。

火災の煙には水蒸気のほかに、煤・塵・有毒ガスなどが含まれます。水蒸気それ自体に毒性はありませんが、火災時の煙における水蒸気は、不純物を多く含んでいるため、非常に危険です。

煤や塵といった不純物は、肺を詰まらせ、呼吸困難を招きます。有毒ガスの代表例は、一酸化炭素です。一酸化炭素は無色かつ無臭であり、気づかないまま中毒に陥るケースがあります。

また、初期消火に失敗する原因のほとんどは、煙が影響しています。

火災時の死因としては、熱も少なくありません。

熱には大きく分けて、放射熱(輻射熱)と熱気流の2種類があります。放射熱は光と同じく直進する熱で、遮蔽物によって和らぐ特性があります。それに対して熱気流は遮蔽物を回り込んで到達するため、有効な手立てがありません。

熱気流が発生すると、オーブンのように、大量の熱風が降りかかります。火災では、熱風によって身体の気道や肺部分が焼け、呼吸がままならず窒息死するケースもあるのです。

なお、熱による被害の程度は、温度ではなく総熱量によって決定されます。1000℃の火があったとしても、肌の一部分に10秒触れただけでは、死ぬことはありません。しかし、同じ10秒間であっても、熱風を全身に浴びると、死に至るのです。

データから見える火災で起きる死者の状況

2023年、火災による死者数は1,452人、負傷者数は5,750人でした。1日あたりの火災による死者数は、平均して4.0人です。

2023年に発生した火災のデータを詳しく見ると、火災による死者の約半数は、逃げ遅れたことが原因だとされています。次いで着衣着火や再侵入も多いと言えるでしょう。

また、住宅火災における着火物別の死者数を見ると、寝具への着火による死者がもっとも多く、衣類や屑類が続いています。

建物火災による死者が80.8%と最多で、さらに、そのうち90.8%が住宅での被害です。

例年高齢者の死者数が多い傾向にあり、年齢別で見ると、死者の約75%を65歳以上の高齢者が占めています。

(参考:総務省消防庁|消防白書

京都アニメーションで起きた放火殺人事件について

2019年7月に発生した「京都アニメーション放火殺人事件」では36人が死亡しました。これは甚大な被害です。

死因としてもっとも多かったのは焼死で、次いで窒息死や一酸化炭素中毒も見られました。この事件では1階にガソリンが撒かれてから放火され、迅速に炎が広がり、わずか数分でビル全体が炎に包まれました。

火元が1階だったこともあり、上の階にいる人が脱出できず、被害が広がったと言われています。階段で屋上へ逃げようとした人も、一酸化炭素中毒によって辿り着けず、階段の途中で焼死または窒息死していました。

この事件で助かったのは、2階のベランダから飛び降りて建物の外に出た人です。

火災から命を守る方法

前述したように、火災による死者の多くは逃げ遅れが原因とされます。そのため、火災が発生した際には、一刻も早く建物から避難することが重要です。

炎の勢いが強くないように見えても、建物内には一酸化炭素といった有毒ガスが充満しています。一酸化炭素は色や臭いがないため、中毒に気づくのが困難です。中毒になってしまうと動けず、逃げ遅れてしまいます。

また、直接炎に焼かれなくても、長時間全身に高温が触れると危険です。

ここからは、火災が発生した際、命を守るための行動を解説します。もしもの事態に命を守れるよう、適切な行動を覚えておきましょう。

できる限り早く避難する

火災現場から避難するときは、服装や持ち物にこだわらず、すぐ避難しましょう。逃げ遅れると煙に巻き込まれ、一酸化炭素中毒に至る確率が増加します。

避難時には階段を利用し、上階ではなく、建物外や下階に避難してください。エレベーターは止まる可能性があるため、避難時に使ってはいけません。とくに高層ビルでは、非常階段の位置を確認する必要があるでしょう。

一度避難を開始したら、置き忘れたものがあっても、取りに戻ってはいけません。避難に時間がかかると、一酸化炭素中毒の可能性が高まったり、道がふさがれたりして危険です。火災現場からの避難を最優先に行動しましょう。

煙を吸わない

火災現場から避難する際は、煙を吸わないように行動することが重要です。口や鼻を布で覆い、できるだけ低い姿勢を保って、床を這うようにして逃げましょう。布に関しては、近くにあればどんなものでもかまいません。衣服やタオルを利用しましょう。

煙や有毒ガスは、時間が経てば経つほど、建物内に充満していきます。

煙が垂直方向に広がる速さは毎秒0.2m〜0.5m、水平方向に広がる速さは毎秒3m〜5mです。これは人間の移動速度よりも速いため、煙の広がる前に逃げることが重要です。

逃げ遅れた場合の対応

逃げ遅れてしまった場合は、火災の発生、ならびに自分の存在を伝えましょう。目につきやすいものを窓から振り、助けを求めます。

助けが来るまでは、煙が来ないよう隙間に衣類を詰め、救助を待ちます。火の勢いが強い場合、2階程度の高さであれば飛び降りることも可能です。ただし、高層階にいる場合は、無理に飛び降りることは避け、その場で救助を待ちましょう。

その場に留まると命が危ないと感じたときは、多少無理してでも避難を試みます。別の誰かが逃げ遅れた際も、無理に戻らず、消防隊の救助を待ちましょう。

火元からすぐに離れない

火災による死傷を防ぐには当然、火災を発生させないことが大切です。

煙草や暖房器具以外で注意したいものが、コンロの火でしょう。常に火元から離れないよう注意してください。また、火元から離れるときには、火が消えているかどうかをしっかりと確認しなくてはなりません。

火が周囲のものに燃え移ると、大きな火災につながりかねません。強火で調理したり油を置いていたりする際は、とくに注意しましょう。

また、冬場に長袖の衣服やセーターなどを着て調理すると、着衣に着火する危険性が高まります。調理の際には、防炎品のエプロンやアームカバーなどを身に着けましょう。

企業ができる火災を未然に防ぐ方法・対策

調理設備のないオフィスであっても、電化製品を原因とした火災や放火のリスクは存在します。ここからは、企業ができる火災防止の取り組みについて紹介します。火災を未然に防ぎ、オフィスを守りましょう。

配線周りを整理・掃除する

たとえ火を使う設備がなくても、オフィスから出火する可能性はあります。

オフィスから出火する原因としては、電化製品やコンセントが考えられるでしょう。

コンセントと電源プラグの間に埃が溜まると、トラッキング現象と呼ばれる発火が発生します。コンセントの周辺に埃を溜めないよう、定期的に掃除することが大切です。また、防炎品のプラグカバーを取り付けることも効果的でしょう。

また、電化製品を接続しすぎることで、許容量を超えて火災が発生することもあります。タコ足配線は避けたほうがいいでしょう。

放火されない環境を作る

オフィスで火災が発生する原因として、無視できないものに、放火があります。放火は火災原因として煙草、たき火、コンロに次いで多いのです。放火されにくい環境作りは極めて重要と言えるでしょう。

放火されにくい環境を作るためには、古紙やダンボールなどの可燃物を屋外に放置しない、指定された日以外にごみを出さないなど、さまざまな取り組みが大切です。人目のつかない場所は放火犯に狙われやすいため、照明や人感センサーを設置するといいでしょう。

また、車庫に侵入されて放火されるケースもあります。車のカバーを防炎品に変えたり、車庫を整理して燃えやすいものを捨てたりしましょう。

防火設備をそろえておく

火災が発生した場合に備え、防火設備を充実させておきましょう。防火設備があると、火が大きくなる前に消火できるため、被害の拡大を防げます。

火災警報器は定期的に点検し、10年を目処に買い替えましょう。消火器は粉末噴射タイプと強化液タイプの2種類があります。調理器具に関しては、安全装置の搭載されたものに買い替えておくと、火災発生のリスクを減らせるでしょう。

地震による火災を防止するためには、感震ブレーカーを設置しておくといいでしょう。カーテンについても、火が燃え広がりにくい材質のもの(防炎品)に買い替えておくと有効です。

避難訓練を定期的に行う

火災発生時に適切な行動を取るために、避難方法を正しく認識する必要があります。定期的に避難訓練を行い、火災時の行動を従業員に周知しましょう。

避難訓練では火災発生時の流れを実演します。火災発生・通報・避難指示・避難・集合場所への合流といった流れを、従業員に意識させましょう。また、避難経路の確認だけでなく、初期消火、応急処置、怪我人や呼吸困難者の搬送方法についても練習することが大切です。

なお、避難訓練を実施するだけではなく、従業員に対する重要性の周知、シナリオの作成、振り返りなども重要です。避難行動は適切に行われていたか、指示は的確に伝わっていたかなど、いくつかの項目に分けて振り返りましょう。改善点があれば、次の訓練に活かします。

BCPの策定、安否確認システムの導入

企業には事業や従業員を守る責任があります。万が一火災が発生しても、事業を継続したり早期に復旧させたりするには、BCPを策定しておくといいでしょう。

BCPは事業継続計画のことで、緊急事態発生時における行動指針を示したものです。BCPを策定しておくと、優先的に復旧させるべき事業が分かり、迅速な対応を期待できます。火災や災害に備えて、BCPを策定しておきましょう。

また、避難をスムーズにするには、安否確認システムの導入がおすすめです。安否確認システムを利用すると、従業員との連絡が取りやすくなり、安否確認の手間を省けるでしょう。

自社の火災対策はできてますか?入念な対策と計画を行いましょう!

火災が発生した際には、煙に巻き込まれないよう、早急に避難しましょう。死因の多くは逃げ遅れによるものです。また、適切な避難方法や予防策を知ることも重要です。

企業が火災から事業を守るために、BCPの策定をおすすめします。また、避難後の従業員と連絡を取るために、安否確認システムの導入も検討しましょう。

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