防災公園とは?定義や設備、種類を一挙紹介

遠藤 香大(えんどう こうだい)
防災公園について、見聞きされたことはあるでしょうか。現在さまざまな地域で防災構造の強化を目的に、新たに整備された防災公園と呼ばれる都市公園が設けられています。
本記事では、防災公園の定義や重要性、設備や種類について紹介します。BCPに活用する方法も紹介しているため、防災対策を考える企業の方はぜひ参考にしてみてください。
目次
防災公園とは
防災公園とは、どのようなものかご存じでしょうか。
防災公園とは災害発生時に活動拠点となる公園のことを指しますが、具体的にどのような定義が定められているのか、なぜ防災公園が重要なのかを以下で解説します。
防災公園の定義
防災公園とは、災害発生時に地域の人々の命を守るために防災拠点としての役割を担う公園のことです。都市部の防災構造を強化する目的で整備された公園で、平時では都市公園やレクリエーションの場として、地域住民に親しまれています。
防災公園には災害時に使用する設備や必需品が備えられており、耐震性がある、不燃性が高い、場所が高台であるなど、災害に強い設計でなくてはなりません。
大規模火災発生時の避難場所や、避難路としても位置づけられています。
防災公園の重要性
防災公園が重要であることの理由に、都市部は災害発生時の危険性が高いことが挙げられます。
都市部では建物が密集していて人口も多く、避難者を収容するためにはできるだけ広大なスペースが必要です。避難者が多ければ多いほど救援物資の数も増えるため、一般的な公園では抱えきれない場合があります。敷地の広さや安全面でも、避難する場所として防災公園のほうが適しているのです。
災害時の利用だけではなく平常時でも誰もが気軽に立ち寄って活用でき、防災施設が整備されている防災公園の存在は都市部の防災性を向上させるために重要とされています。
防災公園の設備
防災公園は一般的な公園とは異なり、災害発生時に役立つさまざまな設備が備えられています。
ここでは、どのような設備が用意されていて、それぞれどのような機能があるのかを詳しく紹介します。
防災収納ベンチ
防災公園に設置されているベンチは、下部分が収納スペースになっている防災収納ベンチです。非常用のトイレやパーゴラテント、土嚢や工具など、災害発生時に使用するものが収納してあります。もしものときには取り出してすぐに使用でき便利です。
普段はベンチとして利用できて防災グッズを収納できる防災収納ベンチは、防災公園ならではの設備といえます。
かまどベンチ
かまどベンチも、普段は通常のベンチとして利用されています。災害時には上部の座面部分を外し、炊き出し用のかまどとして利用できる設備です。料理をするだけではなく、寒い時期には暖をとるために利用したり、お湯を沸かして煮沸消毒にも活用できます。
断水で清潔な水が手に入らないときでも応急手当てができるため、かまどベンチは災害時にとても重要です。
貯水槽
災害発生時には断水や物流の停止が予想されるため、水の確保が欠かせません。飲料水だけではなく、トイレやお風呂に使用する生活用水も必要です。そんな災害時に重要な水も、防災公園には備えられています。
多くの場合は、公園の地下に貯水槽が備えられています。この貯水槽があることで、災害時に断水してしまっても水を確保できます。また、貯水槽は耐震性が高いため地震発生時も安心して利用できるでしょう。
揚水ポンプ
揚水ポンプとは、水源に設置して緊急時に必要な給水を行える水道ポンプです。電源がなくても手動で近くの川や池、貯水槽などの水源から水を汲み上げることができます。トイレやお風呂などに使用する生活用水を確保するためのものです。
大規模災害発生時の断水は長引くこともあるため、揚水ポンプを利用した生活用水確保は必要不可欠となるでしょう。とくに、地下に貯水槽を備えている防災公園では非常に有効な設備です。
マンホールトイレ
災害時に欠かせない設備のひとつが、トイレです。防災公園に設置されているトイレは、断水時でも使用できるように工夫されています。さまざまなタイプがありますが、なかでもマンホールトイレは下水道管路にあるマンホールの上に簡易的なトイレを設置するもので、水を流す必要がないため断水時でも問題なく衛生的に利用できます。
災害発生時には目隠しテントで囲って仮設トイレにするため、プライバシー面でも安心して利用できます。
防災パーゴラ
藤棚としてよく見かけるパーゴラは、平常時は主に公園の休息場所として利用されています。パーゴラとは木材で組んだ棚であり、災害時にはその骨格を利用して屋根にテントやビニールシートを張って使用できるのです。
救護室として利用したり、雨風を凌ぐために利用されます。
防災あずまや
あずまやとは、公園内に設置されている壁がないタイプの小屋です。主に休憩や眺望のために設置されています。
防災あずまやは、災害時にはあずまやの側面にシートを張ることで部屋としての使用が可能です。テントシートはあらかじめ軒下やベンチなどに収納されていて、下ろして固定するだけで壁になる造りのものもあります。災害時に雨風を凌ぐのに最適です。
備蓄倉庫
災害時には、備蓄品がいかに準備できているかが重要です。生きるために必要な食料品や水をはじめ、けが人が発生した際、救出したり応急手当を行うための救助、救護用品や、毛布、衛生用品などさまざまなものが必要になります。防災公園には、こうした生活用品を収納しておく備蓄倉庫が設置されているのです。一時的に避難場所として利用される防災公園にこうした備蓄品があれば、安心して利用できるでしょう。
倉庫は防火や防水耐性を備えているものが多く、災害発生時でも問題なく使用できます。
ソーラー発電
大規模災害発生時には、同時に停電が起こることも多くあります。停電した場合を想定して、防災公園にはソーラー発電と蓄電池が備えられているのです。
ソーラー発電は太陽光エネルギーを電気に変換し、灯りがあるという安心感を与えてくれます。停電時だけではなく悪天候のときでも周囲を照らせるうえに、コンセントも利用できるため電気が使える安心感もあるでしょう。
ヘリポート
震災の影響で、陸上の交通手段が困難になることがあります。そうした場合に活躍するのがヘリコプターです。けが人の救助や手当て、物資の輸送や自衛隊派遣などで大きな役割を果たします。敷地の広い防災公園では、ヘリコプターが臨時で離着陸をするためのヘリポートが設置されているのです。
このように、防災公園には外部からの救援を受け入れるための設備も整っています。
防災公園の種類
一口に防災公園といっても、じつはいくつかの種類があります。種類によってそれぞれ役割も異なるため、お近くの防災公園がどのようなものかを確認しておくとよいでしょう。
ここからは防災公園の種類と、それぞれの役割について解説します。
広域防災拠点
広域防災拠点は、種別を「広域公園等」に分類されます。
都道府県など各自治体の管轄区域を超える大規模な災害が発生した際に、自衛隊や警察、消防など広域支援のベースキャンプや物資の配給基地などに活用される場所のことです。都道府県ごとの管轄区域内に1〜数か所設置されています。災害対策本部、災害医療の支援、海外からの救援受け入れなどの機能を活用し、復興に向けた活動拠点となるのです。
さまざまな広域的災害に対応するため、おおむね50ha以上の面積が必要とされています。
地域防災拠点
地域防災拠点は種別を「都市基幹公園等」に分類され、地方自治体の活動拠点の中心となる場所のことを指します。災害時の情報収集、避難や救援、復興のための活動を行うための拠点です。
おおむね10ha以上の面積が必要とされており、駐車場や広場が拠点として活用されます。
広域避難地
広域避難地は、種別を「都市基幹公園・広域公園等」に分類されます。地震や台風などの災害発生後に火災が起きて延焼が広がり、地域全体が危険にさらされたときに避難者の命を守るため整備された場所のことです。
広域避難地はあくまでも一時的な避難を目的とした場所で、大人数を収容できる広さが必要なため、10ha以上の面積が必要とされています。
一時避難地
一時避難地は、種別を「近隣公園・地区公園等」に分類されます。災害発生時、広域避難地など別の安全な場所へ避難するまでの中継地点として機能する場所です。2ha以上の面積が必要とされています。
広域避難地、一時避難地はどちらも地域によって発生しやすいと想定される災害に応じて、自治体ごとに避難場所を変えている場合があります。津波の被害が想定される地区、風水害が想定される地区など対象地域によって避難場所が異なるため、自宅や会社がある自治体の情報を確認しておきましょう。
避難路
避難路は、種別を「緑道」に分類されます。災害発生時、広域避難地や一時避難地など安全な場所へ避難する際に通る道路、または緑道のことです。10m以上の幅が必要とされています。
公園に付随する緑道を、避難路として使用する場合が多いでしょう。
防災公園を企業BCPに活用する方法
企業BCPでは、人命保護を最優先する初動対応計画が非常に重要です。初動対応計画に必要な従業員の安全確保や安否確認、応急手当を行うためには防災公園を有効に活用できるでしょう。具体的にどのように活用すればよいのかを、以下で解説します。
近場の防災公園を避難先にする
初動対応計画で重要な安全確保の面で、防災公園を有効活用できます。
災害の種類や状況によっては、屋外への避難が必要な場合があります。そうした際に従業員や顧客を避難誘導し、安全確保ができるようにしておかなければなりません。事業所の付近にある防災公園を把握し、避難先に指定しておくとよいでしょう。
防災公園までの避難経路や公園の特性を、従業員に周知しておくことも大切です。
公園の防災訓練を自社訓練に活用
防災活動拠点としての機能を効果的にするために、一部の施設では定期的に防災訓練が行われています。設備の使い方に関する訓練や、消防、警察などと連携して消火活動訓練、人命救助訓練など、災害時を想定したさまざまな訓練を実施しているのです。
このように防災公園で実施されている防災訓練を、自社の訓練に活用するのもおすすめです。公園の機能や設備を実際に見て確認しておくことで、いざというときに冷静で的確な行動がとれるでしょう。地元の区や町内会など地域が一丸となって実施している訓練も多いため、地域住民とのコミュニケーションにもつながります。
さらに協賛の形で訓練に参加すると、企業のイメージアップ効果も期待できます。
災害時の避難で活用できる防災公園を知っておこう!
災害発生時、防災公園の存在は非常に重要です。さまざまな設備が備えられているため、安全な避難先として利用できるでしょう。
防災公園は一時的な避難先として指定できるため、BCPの初動対応計画に組み込むことが可能です。トヨクモが提供する『安否確認サービス2』なら、その際に必要となる避難指示や安否確認も同時に担えます。
災害時の避難で活用できる防災公園について把握しておき、BCPに役立ててみてはいかがでしょうか。