さまざまな施設や建物で見られるピクトグラムをご存じでしょうか。防災関連のサインに用いられている防災ピクトグラムでは、種類ごとにさまざまな意味があります。
この記事では、防災ピクトグラムの種類を紹介いたしますので、災害対策にぜひお役立てください。
目次
ピクトグラムとは
ピクトグラムは絵記号や絵単語とも呼ばれる、情報や注意を示すための視覚記号です。1964年に開催された東京オリンピックの際、訪日した外国人とのコミュニケーションを円滑に行うために導入されました。視覚的な図や記号を用いることで、国籍や言語の違いを克服し、正確に情報を伝達できます。その効果もあって、今では世界的に広く普及したのです。
代表例として、トイレや非常口のマークが挙げられます。
災害ピクトグラムの規格
災害を表す防災ピクトグラムは、JIS規格(日本産業規格)によって標準化されています。災害種別によって避難場所が異なるため、どの避難場所がどのような災害に対応しているか分かるように、JIS規格が制定されているのです。
防災用のピクトグラムには「JISZ8210」や「JISZ9098」などの種類があり、日本全国どこでも同じ表示になるよう、災害種別避難誘導標識システムが制定されています。
災害ピクトグラムの種類
災害用のピクトグラムには種類がいくつかあります。防災に関する情報を伝えるためのもの、行動や注意を促すためのもの、災害の種別を表すものなどが挙げられます。
ここからは、混同してしまいがちなピクトグラムの種類について解説します。
一般図記号と注意を促すピクトグラム
避難誘導標識に記載される、災害種別ごとの一般図記号には5つの種類があります。四角い黒枠で災害の種別を表していて、どのような災害に対応した避難所や避難場所なのかを示すのです。
注意を促すためのピクトグラムは3種類あります。これは一般図記号とは異なり、黒色と黄色の三角形で表されます。このピクトグラムは、災害発生時に危険なエリアを示すためのものです。避難場所案内標識やハザードマップなどに記載されます。
非常口のピクトグラム
防災ピクトグラムのなかでも、非常口のピクトグラムは馴染みが深いのではないでしょうか。非常口のピクトグラムには、避難口誘導灯と通路誘導灯の2種類があります。
白地に緑のものが、通路誘導灯です。避難口までの経路に設置されており、誘導灯を辿っていけば避難口まで辿り着けます。
緑地に白のものが、避難口誘導灯です。これは非常口そのものを示していて、非常用出口や避難階段口などに設置されています。
建物内で大規模災害が発生した際は、この表示を探すといいでしょう。
避難所のピクトグラム
避難所を表すピクトグラムは、次の4種類です。
- 広域避難場所
- 避難所
- 津波避難場所
- 津波避難ビル
広域避難場所とは、地震によって火災が発生した場合、避難する場所のことです。10ヘクタール以上の広さがある公園やグラウンドなどが指定されます。
避難所とは災害発生時に避難する建物のことで、体育館や公民館などが一般的です。
白地に緑のマークが避難場所を示しており、緑地に白のマークが避難所を示しています。
避難場所と避難所の違いについての詳細は、以下の記事をご覧ください。
津波避難場所とは、津波から避難できる安全な場所を指します。高台や丘などが多いです。
津波避難ビルは、近くに高台や丘がない場合に、一時的に津波から避難するための建物です。
災害種別ごとのピクトグラム
地震、洪水、土砂災害など、災害にもさまざまな種類があります。災害の種類によっては避難先として適していない避難所もあるため、災害種別ごとに分けられているのです。
どのような災害に対応した避難所や避難場所であるかは、それぞれ以下のピクトグラムで表示されています。
洪水・内水氾濫
洪水は河川の氾濫を指す災害の一種です。堤防の決壊が主な原因で、外水または外水氾濫とも呼ばれます。
対して内水氾濫は、市街地内を流れるマンホールや側溝の雨水が溢れ出す浸水被害です。気象庁では浸水害とも呼ばれています。
これらの災害を示すピクトグラムが、洪水・内水氾濫の表示です。ハザードマップを確認して浸水被害の危険がある場合は、このピクトグラムが表示されている避難所や避難場所を探しておきましょう。
津波・高潮
津波は、地震の発生によって引き起こされる自然災害で、海底の急激な地形変化により海面が盛り上がる現象です。
高潮とは、台風や低気圧によって波浪が発生し、海面が吸い上げられて上昇する現象のことを指します。
これらの情報を示すピクトグラムは2種類です。津波・高潮を示す一般図記号のピクトグラムと、津波が襲来しかねない地域であることを示す注意喚起のピクトグラムがあります。
土石流
土石流は、大雨の影響で斜面が流れるように崩れる現象です。速さは規模によって異なりますが、時速20km〜40kmという非常に速い速度で流れてくるため、警戒情報が発表されたら直ちに避難しなくてはなりません。
土石流に関するピクトグラムも2種類あります。一般図記号のピクトグラムと、土石流が発生しかねない地域であることを示す注意喚起のピクトグラムです。
がけ崩れ・地すべり
がけ崩れは、大雨や地震などの影響により、緩んだ地盤が急激に崩れ落ちる現象です。対して地すべりとは、斜面の一部、あるいは全部がゆっくりと下方向にすべり落ちる現象を指します。
地面にひび割れができる、小石がパラパラと落ちてくる、湧水が増えたり濁ったりするなどが前兆現象です。どちらも起こりやすい危険地域が指定されており、これらの情報を示す一般図記号のピクトグラムと、がけ崩れや地すべりが起こりうる場所であることを示す注意喚起のピクトグラムがあります。
大規模な火災
火災に関するピクトグラムは、大規模な火災が発生しやすい地域を示すものではありません。その避難所や避難場所が、大規模火災に対応しているかを示すものです。
木造住宅が密集している地域では、火災が延焼、拡大してしまいます。その際は、このピクトグラムが表示されている避難場所や避難所へ逃げましょう。
津波避難誘導標識システム
避難誘導のピクトグラムは厳密に定められてきたものの、避難場所に辿り着くための情報としては不十分だという指摘もありました。そのことから新たに制定されたJIS規格が、津波避難誘導標識システムです。
津波による犠牲者を減らす目的で2014年9月に制定されました。ここには避難場所までの道順や距離、海抜などの情報が明記されています。
防災に関する補助金事業の活用
企業防災では、自家発電装置の設置、安否確認、データのバックアップサービスの導入、備蓄品の購入などで補助金や助成金を利用できるケースがあります。
自然災害発生時、企業は従業員や顧客の安全を守り、事業を継続させなければなりません。そのためには被害を最小限に抑え、早期復旧を図ることが大切です。したがって防災対策は非常に重要で、相当の予算も必要です。国や自治体から受けられる補助金や助成金を利用し、防災対策をしっかりと行いましょう。
(参考:国土交通省|防災・省エネまちづくり緊急促進事業 – 市街地整備)
ピクトグラムの意味を知って災害対策に役立てよう!
災害を表す防災用ピクトグラムには、災害の種別ごとにいくつかの種類があります。それぞれの意味を正しく知っておくことで、いざというときに冷静な避難行動がとれるでしょう。
そのほかにも災害対策として、ハザードマップの確認、備蓄品の管理、安否確認方法の確認などを日頃から行っておくことが大切です。スムーズに安否確認をするために、『安否確認サービス2』の利用も検討してみてはいかがでしょうか。