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【防災士が解説】防災と減災の違いは?減災を取り入れて企業活動に活かそう

【防災士が解説】防災と減災の違いは?減災を取り入れて企業活動に活かそう

2024年1月には、能登半島を震源とする大きな地震が起こり、多くの企業工場での生産や会社の運営をストップしました。発生から15日が経過しても主要企業の4割が能登での生産「再開未定」としているとの声もあり、地震の影響の大きさがよく分かります。企業が防災や減災について考えることは、安定した事業継続の観点で非常に重要です。

そこで今回は、BPC関連のセミナーに多く登壇し、BPCの啓蒙・策定サポートを行うトヨクモ株式会社 防災士の坂田が、防災と減災の違いとともに実際の取り組み事例や、減災に取り組む企業に対する税制優遇策について防災士が、わかりやすく解説します。

万が一の際に備えたい、安定した事業継続をしたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

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編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。

減災と防災の違い

減災と防災は似た言葉だが、根本的な考え方が異なります。ここでは、減災と防災の違いについて詳しく見ていきましょう。

減災とは

減災とは、災害による被害をできるだけ小さくするための取り組みです。災害は完全に防ぐことは難しいため、減災によって被害を最小限に抑えることが大切です。減災は災害の発生を前提とした上で、被害を最小限に「減らす」ことを目的としています。

減災の例としては、対応マニュアルの徹底や耐震化建築物の建設、非常時の連絡手段の用意などが挙げられます。また、防災訓練の実施や防災意識の向上も減災の1つです。

防災とは

防災とは、災害による被害を未然に防いだり、災害が発生した場合における被害の拡大を防いだりすることを指します。また、災害の復旧を図ることも防災の1つです。

減災との大きな違いは、防災は災害の発生を「防ぐ」ことを目的としているのに対し、減災は災害の発生を前提とした上で、被害を「減らす」ことを目的としている点です。どちらも企業の事業継続には欠かせないものですが、近年では防災から減災へと考え方が変化してきています。

縮災とは

近年では、減災や防災に加えて「縮災」と呼ばれる言葉が出てきています。縮災は、災害が起きた場合に早い段階で日常生活を取り戻すことを目的とした取り組みです。企業においては、通常業務を早く再開することが縮災とされています。

災害が起きた際の対応、災害後の取り組みなどを事前に考えておけば、縮災につなげることができるでしょう。

災害への対応策は「防災」から「減災」へ

令和に入ってからは、コロナウイルスの蔓延や能登半島を震源とする地震など、日本は数多くの災害に見舞われました。大災害と呼ばれる大きな被害が、いくつも発生しています。また、ここ数年では「100年に一度」や「想定外の」などと報じられる集中豪雨などの被害もあります。

1995年に起きた阪神・淡路大震災以降、それまでの「防災」という考えに対し、「減災」という考え方が浸透し、さまざまな取り組みが行われるようになりました。

「減災」で大切なのは、自分の身は自分で守る「自助」、ほかの人たちと協力して助け合う「共助」の2つです。普段から災害時に「自分にできること」「ほかの人たちと協力してできること」を考えておくのが減災の第一歩といえるでしょう。

もちろん防災対策も重要です。「防災」と「減災」の2つを組み合わせた対策をとることで、災害による被害を最小限にとどめることが可能になります。

(参考:内閣府|減災のてびき

防災」「減災」における課題

防災や減災には、いくつかの課題があります。例えば、現段階では防災や減災に関する備えができていない企業が多いことが挙げられるでしょう。防災や減災に関する意識はあっても、実際の備えがなければ万が一の際に対応できません。

また、社内に浸透しておかなければ、いざという時に会社全体で行動することはできないでしょう。防災や減災についての取り組みを考える際は、社内への浸透までを視野に入れることが非常に大切です。

帝国データバンクのデータでは、企業の約 95%が「企業防災」の大切さを改めて実感しているとの結果が出ていました。多くの経営者は災害を目の当たりにして、ようやく防災意識を高めているのが現実なのです。更に能登半島地震を機に事業継続計画(BCP)の見直しを行いたいとの回答は2割ほどで、迅速な事業の復旧を行うことへの意識が浸透しているとは言えません。

(参考:帝国データバンク|能登半島地震の影響と防災に関する企業アンケート

減災の取り組み事例を紹介

ここでは、実際に企業が行っている減災に関する取り組みや事例を紹介します。

株式会社ローソン「地域社会のインフラとして」

コンビニエンスストア大手のローソンは、全国に展開する店舗ネットワークとフランチャイズチェーンのメリットを活かしてさまざまな公共サービスを取り扱い、社会インフラのひとつとなっています。災害の発生時も、可能な限り店舗の営業活動を維持して地域住民の生活基盤を支えることで、人々の「安全・安心」の拠点となることを目的とした活動を展開しています。

主な「減災」への取り組みは、以下の通りです。

  • 毎年1月と9月に「安否確認」「情報伝達」「救援物資の輸送」「災害対策本部の設置」などをテーマとして、継続的に訓練を実施
  • さまざまな災害を想定し、「初動対応」「緊急時対応」「復旧行動基準」「緊急物資の定期点検」などに関する災害対応マニュアルを作成、状況に応じて定期的に見直しを図る
  • 大規模な災害が発生した際の救援活動のために、地方自治体などと「災害時物資調達協定」を締結し、物資を供給
  • 同じく「災害時帰宅困難者支援協定」を締結し、交通機関がストップした場合、帰宅者の支援を実施。店舗では、水の提供やトイレ使用、地図などによる道路情報およびラジオなどによる通行可能な道路の情報を提供

能登半島を震源とする地震の際には、いち早く店舗を再開させて住民に安心感を与えられるよう、社長自ら被災地に駆けつけました。各店舗のオーナーや店長の元に向かい、実際に必要なサポートを聞いて周りながら対応しています。

(参考:ローソン|災害への備えとマチの復興支援

しげる工業

しげる工業は、太田市の自動車部品メーカーです。従業員約600人のうち、350~360人が参加する避難訓練を毎年行うなど、以下のような取り組みを行っています。

  • 防災訓練の実施
  • 取引先 自動車メーカー等)も避難訓練に参加
  • 避難ルート、避難場所を明確化
  • 災害時には自社の敷地を地域住民の避難場所として開放

自社の社員だけでなく、取引先も含めて訓練を行うことで、受発注先との関係強化にもつなげています。また、災害が起こった際には自社の敷地を地域住民に開放し、避難場所として使用しています。

(参考:内閣官房|国土強靭化民間の取組事例

株式会社ケーヒン

株式会社ケーヒンは、自動車用燃料供給・制御システム等の製造を手掛けている企業です。防災や減災については、以下のような取り組みを行っています。

  • 徹底した転倒防止対策 12,000ヵ所を実施
  • 防災規定や対応マニュアル等の見直しと全社防災委員会の組織化
  • 1 回/年の定期的な防災点検の実施
  • BCP エキスパートの育成
  • BCP 訓練を毎年実施

備品・棚・ボンベなどの転倒防止、定期的な防災点検の実施など基本的な対策をはじめ、BCPエキスパートと呼ばれる事業継続計画のプロの育成やBCP訓練などを行っています。また、東日本大震災時の経験を踏まえ、マニュアルの見直しや全社防災委員会の組織化も行いました。

(参考:内閣官房|国土強靭化民間の取組事例

日本生活協同組合連合会「コープぼうさい塾/わがまち減災・Mapシミュレーション」

地域住民の方々が参加する事例もご紹介します。日本生活協同組合連合会(生協)では、地域の参加者とともに、地元の地図を活用したMapシミュレーション(模擬体験訓練)を実施。参加者の気づきを促すことや、震災を身近な問題として捉えてもらう活動を展開しています。

内容と手順は以下の通りです。

  • 生協の職員や災害体験者が推進役となって、図上訓練を指導。参加者をいくつかのグループに分け、協働作業を行う。
  • 震災を具体的にイメージするために阪神淡路大震災のビデオを観る。
  • 該当する居住地の大型地図によってMapシミュレーションを開始。
  • 地域のハザードマップを参照し、地図に避難所、消防署、病院など防災関連の諸施設を記入することで、周辺の防災設備や防災体制を把握する。
  • さらに、地域の一人暮らしの高齢者や障害者、妊婦や乳幼児、外国人など災害弱者となる可能性のある家庭もチェックし、マークする。

このプログラムは参加者が震災に対する備えや近隣の協力が大切なことを学び、地域コミュニティの活性化にもつながると評価され、学校の課外授業などにも採用されています。

(参考:内閣府|企業・職場(場面)減災への取組

中小企業防災・減災投資促進税制について

「減災」への取り組みをさらに普及拡大させるため、「減災」に取り組む中小企業に対して、税制上の優遇制度が整備されています。2019年度の税制改正では、中小企業が災害への事前対策強化のために自家発電機、制震・免震装置などの防災・減災設備を取得した際、特別償却を可能とする新たな制度が設けられました。

対象となるのは、防災・減災設備導入計画を立案して認定を受けた青色申告書を提出する中小企業者等です。導入に際しては、災害に対する事前対策の強化のために取得する防災・減災設備が対象とされています。

具体的な適用例としては、水害からの早期復旧を目指すための止水板、排水ポンプなどの設備導入や、地震発生時のサーバダウンを防ぐための制震ラック、非常用発電機の導入などが挙げられます。

対象設備の取得価額は以下の通りで、20%の特別償却が適用可能です。

  • 機械および装置(100万円以上):自家発電機、排水ポンプ等
  • 器具および備品(30万円以上):制震・免震ラック、衛星電話等
  • 建物附属設備(60万円以上):止水板、防火シャッター、排煙設備等

「器具及び備品」については、自然災害又は感染症に関するものに適用されます。感染症に関するものでは、サーモグラフィ装置などが挙げられます。

(参考:中小企業庁|中小企業防災・減災投資促進税制のポイント

防災・減災を取り入れて災害時も事業の継続を

「減災」とは企業や個人が自らの身を守るための「自助」を行うことはもちろん、地域社会や人々と連携して「共助」を行うことで、社会が一体となって災害による被害を最小限に食い止める取り組みです。

トヨクモでは、減災の1つとして活用できる『安否確認サービス2』を展開しています。安否確認サービス2を導入すると、迅速に従業員全員の安否確認を把握でき、出社できる従業員数などもすぐに把握できます。誰でも直感的に使いやすい作りになっていることから、従業員が簡単に操作できます。

また、減災に必要なBCP策定には、トヨクモの『BCP策定支援サービス(ライト)』を活用できます。実績のあるBCPコンサルタントがカウンセリングを実施し、顧客に合わせたBCPを策定します。BCPマニュアルだけではなく、従業員が緊急時や災害時に実際に活用できるポケットBCPを提供している点も特徴です。折り曲げて持ち運べるサイズなので、緊急時に活用しやすいです。

この機会にぜひ、導入を検討してみてください。

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編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。