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農業気象災害とは?被害を最小限にする対策についても解説

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自然災害の多くは農業にも被害を及ぼします。今回の記事では、農業災害の種類とそれによってもたらされる被害額、被害を減らすための方法などを紹介します。
農業災害に備え、被害を最小限にできるようにしましょう。

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監修者:木村 玲欧(きむら れお)

兵庫県立大学 環境人間学部・大学院環境人間学研究科 教授

早稲田大学卒業、京都大学大学院修了 博士(情報学)(京都大学)。名古屋大学大学院環境学研究科助手・助教等を経て現職。主な研究として、災害時の人間心理・行動、復旧・復興過程、歴史災害教訓、効果的な被災者支援、防災教育・地域防災力向上手法など「安全・安心な社会環境を実現するための心理・行動、社会システム研究」を行っている。
著書に『災害・防災の心理学-教訓を未来につなぐ防災教育の最前線』(北樹出版)、『超巨大地震がやってきた スマトラ沖地震津波に学べ』(時事通信社)、『戦争に隠された「震度7」-1944東南海地震・1945三河地震』(吉川弘文館)などがある。

農業気象災害の種類

農業気象災害の例として、以下の8つが挙げられます。

①台風
日本では平均して、一年間に20個以上の台風が上陸します。強い雨や風をもたらし、農作物に被害を与えます。

②大雨
豪雨や長雨が続くと田畑が冠水し、収穫に大きな影響が出ます。2022年には11県で合計8億円以上の被害が発生しました。

③地震・津波
地震やそれに伴う津波でも、農業に被害が出ます。施設が壊れたり流されたりして生じる被害も深刻です。
また、地震によって田畑にひびが入り、収穫に影響が出ることもあります。

④低温・降雪
ハウス内では病害が発生しやすく、低温が続くと栽培作物の生育障害や枯死、果樹の凍害などが起こります。また、低温は稲作にも影響を及ぼします。

⑤火山噴火
火山噴火が起こると、火山灰により農業への被害が起こります。また、農機具の故障や作物への被害なども発生します。

⑥山火事・森林火災
山火事や森林火災が起きると、炎による直接の被害がなくても、煙によって作物に影響が及ぶことがあります。

⑦風害
農業への風害は、風で農作物が倒される、潮で植物の色が変色するといったものが挙げられます。

⑧塩害
海水の塩分を含んだ暴風が原因で、農地や農作物の状態が悪くなることがあります。

農業気象災害の被害額

災害が発生すると、農作物そのものだけでなく、農業用設備に影響が出たり、農地への被害などでその後の収穫量が減少したりします。これらによる損失の総額は一体いくらなのでしょうか。

被害額について一例を挙げると、東日本大震災では9643億円の被害が発生しました。また、2022年には地震や大雨、台風などによって、年間を通して農林水産関係に2401億円の被害が発生しています。

近年は日本各地で大規模な自然災害が毎年のように発生しており、農作物や農地、農業用施設などへの被害が甚大です。

参考:農林水産省:災害からの復旧・復興や防災・減災、国土強靱化等

災害に強い品種を取り入れる

育てる作物に環境対応性のある品種を取り入れると、異常気象に対応できやすくなります。たとえば、コメは温度変化の影響が大きい作物のひとつですが、近年は高温に強い品種が作られています。

自然災害に強い品種を採用することで恩恵を受けるのは、生産者だけではありません。新品種によって安定的な供給ができれば流通時の値上がりが軽減され、消費者にとっても食糧を購入しやすくなります。

気象情報をこまめに確認する

自然災害による被害を最小限にするには、事前対策を怠らないことが重要です。気象情報をやすくなります確認し、被害を受ける前に行動しておきましょう。

たとえば台風の接近が予想される際には、風雨で飛ばされそうなものを固定したり屋内に避難させたりする、収穫できる作物は早めに収穫しておくなどの対策が可能です。

まだ収穫できない作物に関しては、損傷や倒伏を減らすため、支柱やネットによる固定や土寄せなどの対応を徹底させましょう。

農業保険に加入する

近年、想定を超えるような自然災害が毎年のように発生しており、農業への被害は全国的に増加傾向にあります。これまで自然災害が少なかった地域においても、今後は自然災害による被害に注意する必要があります。

農業経営を守るためには、保険加入によって補償を受けられるようにしておくことが重要です。園芸施設共済に加入しておけば、ハウス本体の被害のほか、附帯施設や損害を受けた施設の撤去も補償の対象です。

また、農作物への被害については、収入保険に加入しましょう。

農業従事者の安全を確保する

農業を継続するためには、従業員の安全を確実に確保することが重要です。従業員が安全に避難しているのか、大雨のなかで川や田畑のようすを見に行っていないか、安否を早急に確認できる体制を整えておきましょう。

現在は、国土交通省や地方自治体は、大きな河川を中心にカメラを設置し、河川の状況をライブで公開しています。また、田んぼや農地などの私的な土地であっても、安価にカメラを取り付けて、自宅で監視することもできます。

手動の水門や用水路の開閉については、監視カメラを付けるとともに、水害時には遠隔操作で自動的に開閉ができる「水門や用水路の自動化」の技術が進んでいます。大きな水門についてはまだまだ高価ですが、用水路の自動給水栓などは安価になってきました。自治体によっては補助金が出るところもありますので、一度、相談してみるのはいかがでしょうか。

農業を継続するために今からでもBCP対策を

大規模な地震や台風、大雨などの災害が発生し、長期にわたって業務ができない状態が続くと、最悪の場合倒産する恐れがあります。そのためにも、緊急事態が発生してもすぐに農業を復旧できるように、BCP対策を講じておく必要があります。

災害に強い品種の採用、保険の加入、ICT化、従業員の緊急連絡体制整備など、できることから対策して、災害時に被害を最小に抑えられるBCPを整えてしておきましょう。

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監修者:木村 玲欧(きむら れお)

兵庫県立大学 環境人間学部・大学院環境人間学研究科 教授

早稲田大学卒業、京都大学大学院修了 博士(情報学)(京都大学)。名古屋大学大学院環境学研究科助手・助教等を経て現職。主な研究として、災害時の人間心理・行動、復旧・復興過程、歴史災害教訓、効果的な被災者支援、防災教育・地域防災力向上手法など「安全・安心な社会環境を実現するための心理・行動、社会システム研究」を行っている。
著書に『災害・防災の心理学-教訓を未来につなぐ防災教育の最前線』(北樹出版)、『超巨大地震がやってきた スマトラ沖地震津波に学べ』(時事通信社)、『戦争に隠された「震度7」-1944東南海地震・1945三河地震』(吉川弘文館)などがある。

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編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。