大学にBCPは必要か?BCPの概要や実例を紹介
みんなのBCP編集部
近年、一般企業においてBCPは重要な案件になっています。いざという時にしっかり対策を打つために、きちんとマニュアルを作ったり対策委員会を立ち上げたりと、真剣に取り組んでいる企業も多く見受けられます。
しかし、教育機関である大学は、BCPについてあまり考えられていないところも多いのが現状です。大学においても、学生の安全確保など、BCPを考えておくことは重要です。今回は大学でのBCPについて概要や実例を紹介します。
目次
なぜ大学のBCPが必要か
BCPが必要となる理由は、通常、会社などが日常的にどのような業務を行っているかによって異なります。たとえば、製造業であれば今後の製造を続けていくために必要、ということになります。また、サービス施設などにおいてのBCPは、その施設を訪れるお客様や従業員の安全を確保したり、施設の設備を維持したりするために必要となるでしょう。 大学とは教育や研究を行う機関です。また、地域社会での知的・文化的拠点として中心的な役割を担っており、これからも地域や社会、経済、文化などに貢献していくことが期待されています。大学は地域活性化の重要な要素のひとつであり、実現には大学生という若い人的資源の確保も大切です。大学におけるBCPは、こういった大切な役割を担っている機関を守るために必要となります。 大学は、企業のように、構成員のトラブルや経営上の失敗などから事業停止に陥ることはあまりありません。通常業務を行えなくなる原因は、地震などの自然災害によることがほとんどです。もちろん企業に対してもいえることですが、特に大学におけるBCPは以下2つの側面からの策定が重要です。 ひとつは、たとえば豪雨や豪雪、洪水、地震、津波、噴火、その他の異常な自然現象により生ずる自然災害発生時に必要となってくるものです。 そしてもうひとつは、人為的災害です。たとえば航空事故、海難事故、交通事故、大規模な火災、爆発事故、石油流出、化学物質汚染、原子力事故、テロ(テロ災害)、戦争などがこれにあたります。これらは決してあってはならないことですが、BCPを策定する上では考慮すべき項目です。 大学のBCPは、安心できる教育機関として、在籍する学生の安全を確保し公設避難所を設けたり、破損した備品や、研究のための危険物などを管理したりするなどの対応が必要となってきます。 また近年、地域や社会に貢献する施設であることが大学には求められるようになってきています。このような背景を受けて、災害発生時に近隣住民の避難所となることができるような対応も求められています。 学生が安心して教育を受けられる・研究ができる施設であることや、地域や社会にどの程度貢献できるかといったことは、大学の評価にもつながってきます。学生や地域から支持される大学としてあり続け、大学経営をしっかりと行っていくためにも、大学のBCPは企業に劣らないくらいに必要だといえるでしょう。 参考: 月刊総務オンライン 事業継続計画(BCP)の必要性とそのメリット リスク対策.com 第15回 大学の事業継続(1) 早稲田大学文化構想学部現代人間論系 岡部ゼミ・ゼミ論文/卒業研究 現代日本社会にとっての大学の役割とは何か? 文部科学省 公立大学の役割 文部科学省 私立大学の役割 株式会社エイチ・ユー教育事業部 地域に期待される「大学の役割」とは何かー「地域志向教育」のあり様をめぐってー大学のBCPとはどのようなものか
では、具体的に大学のBCPとはどのようなものなのでしょうか。企業のBCPの場合は、その企業が最低限やらなければいけないことを盛り込みます。 たとえば、民間の一般企業なら社員の安否を確認し、取引先との連絡手段を確保して企業の中核事業を絶やさずに行うために策定するのがBCPとなります。 また、動物園や遊園地といったアミューズメント施設においては、お客様の安全確保や避難といったことが何よりも重要なこととなり、これがBCPとなります。加えて、動物園なら危険動物の管理や動物たちのエサの確保などもBCPに含むべきです。 大学の場合は、「学生の安全確保と、地域との連携や協力」が何よりも重要な業務ですから、この両者を遂行できるようにすることがBCPとなります。災害が発生する前に、消防や警察、町内会などと連絡を取り合って防災活動を行ったり、非常時に学生がすぐ対応できるよう、避難訓練や消火活動を行ったりしておくこともBCPのひとつです。 さらに、災害時には危機管理本部を立ち上げて、指示を各部局に伝達できるようにしたり、建物の倒壊や人の流れなどを勘案して避難所や集合場所を作ったりすることなどが挙げられます。また、学生や教職員の安否確認・安全確保も重要なBCPとなるでしょう。負傷者を救出したり、帰宅困難の学生の食事や飲料水を配給したりといった対応を行います。 そして、研究施設の中には、危険物や高圧ガス、化学物質などを取り扱っているところもあります。これらの薬品やガスによる二次災害を防ぐために、化学物質安全管理委員を立ち上げて、安全な取り扱いや処理を行うことも大学のBCPにあたるといえるでしょう。 加えて、学生や教職員だけでなく、地域住民を受け入れる避難所として機能したり、他大学との連携を図ったりすることも大学ならではのBCPです。仮に他大学が被災していれば、その大学の学生を受け入れ、学生が研究できる環境を確保するなどの必要も出てきます。 教育機関として、いつから授業が開始できるのか、卒業や入学はどうなるのか、といったことを明確に提示するのも大学のBCPです。教育機関としての使命を果たし、近隣住民に貢献していく業務が大学のBCPなのだといえるでしょう。 参考: 神奈川県 中小企業のためのBCP(事業継続計画)作成のススメ 防災テック BCP(事業継続計画)とは何かゴリラでも分かるように解説して見た!大学のBCPの実例
では、実際の大学におけるBCPの実例とはどのようなものがあるのでしょうか。実は、BCPを導入できている大学はそれほど多くはありません。日本大学危機管理学部の福田充教授らの調査によると、BCPを策定済みの大学は全体の9.4%しかないそうです。 BCPを策定済みの大学で行われている実例を見ていくと、大きく以下の4点を目標にしてBCPが行われているのがわかります。- 学生や教職員の安全を確保し、近隣住民への支援なども行う
- 学生への教育を継続して行えるようにする
- 入学や卒業式といった行事を行えるようにする
- 研究や学業環境の復旧