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労働安全衛生規則とは?2023年に改正された規則をご紹介

労働安全衛生規則とは?2023年に改正された規則をご紹介

労働安全衛生規則とは、労働安全衛生法に則って項目を定めた規則(省令)です。労働者の安全や健康を確保し、快適な環境を形成することが目的です。また、労働者の状況に対応するため、2023年に改正がされました。この記事では改正された内容について解説します。

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編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。

労働安全衛生規則(労働安全衛生法)とは

労働安全衛生法とは、事業者が労働者を使用する際、事業者の労働者に対する安全配慮義務を定めた法律です。1972年に可決成立した法案が、現在の労働安全衛生法に至りました。労働安全衛生法(労働安全衛生規則)の目的や概要を解説します。

労働安全衛生規則(労働安全衛生法)の目的

労働安全衛生規則の目的は、労働者の安全や健康の確保に向けて、快適な職場環境を形成することです。

労働者の安全と健康の確保は義務であり、労働安全衛生法では労働災害を防止する基準が定められています。ただし、第2条の2や第105条によって労働安全衛生法には対象除外者が定められており、同居親族の事業、国会職員、裁判所職員は対象ではありません。

労働安全衛生規則(労働安全衛生法)の概要

労働安全衛生規則には、事業場の安全衛生管理体制を確立させるために必要な措置が定められています。

事業者は労働災害を防止するための基準に忠実でなければなりません。労働災害を減少させるために重点的に取り組む事項は、労働災害防止計画によって制定されています。2023年には「第14次労働災害防止計画」が公示されました。

(参考:厚生労働省 「労働災害防止計画について」

労働基準法との違い

労働安全衛生法は、かつて労働基準法の一部でした。しかし、高度経済成長期に労災死亡事故が急増します。この問題に対処するため、労働基準法の労働安全衛生に関する条文から独立したのです。

労働基準法と労働安全衛生法は保護対象、内容、目的などが異なります。労働安全衛生法は、現状に合わせるために、新たな制度の創設や頻繁な改正がなされています。

対象の事業者

労働安全衛生法における対象の事業者とは、事業で労働者を使用するものです。つまり、従業員と雇用契約を結ぶ企業のほとんどが対象です。

法人や個人企業においては事業経営者が事業主であり、労働安全衛生法の定める措置を講じる必要があります。ただし、ひとり親方や個人事業主は例外です。

また、事業者は労働安全衛生法を守る義務主体であり、法律に違反すると罰則を受けなければなりません。

事業者に求められること

事業者には、管理者や管理組織の設置が求められます。たとえば、安全衛生管理体制の整備です。

安全衛生管理体制とは、労働者の安全と健康を守るために、企業が組織的かつ自主的に労働災害防止へ取り組む体制です。安全衛生管理体制を整備する場合、管理者を選任する必要があります。

なお、労働者数が50人以上の事業場では、安全管理者や衛生管理者の選任が義務付けられています。

2023年に改正された労働安全衛生規則(労働安全衛生法)

労働安全衛生法は、労働者の状況に対応するため頻繁に改正されています。最近では2023年、化学物質によって生じる労働災害の防止を目指して改正されました。2023年に改正された労働安全衛生法の内容を解説します。

足場からの墜落防止措置の強化

本改正では、足場からの墜落防止措置を強化しています。これにより、一側足場の使用範囲を明確化するよう義務づけられました。

従来、本足場に比べて費用の低い一側足場を選択するケースがありました。しかしこの改正で、本足場を使用できる幅があるときは、本足場の選択が義務づけられたのです。

また、足場点検者の事前指名も義務となりました。そして、足場点検後には点検者の氏名を記入し、記録を保存しなければなりません。点検者が不備を見落とした場合、点検者の責任が問われます。

危険有害な作業を行う事業者の保護措置の義務

本改正によって、危険で有害な作業をする事業者は、作業を請け負う下請業者や他社の労働者に対して、自社と同等の保護を図るよう義務づけられました。危険かつ有害な作業は、労働安全衛生法第22条に定められている健康障害防止の保護措置を実施しなければなりません。

つまり、従来は自社の労働者に限定していた措置を、同じ作業場の下請業者や他社の労働者にも実施する義務が生まれたのです。

トラックの荷役作業の安全対策の強化

労働安全規則の改正によって、貨物自動車の荷役作業における安全対策が強化されました。

従来、5トン以上の貨物自動車には、昇降設備の設置義務や保護帽の着用義務がありました。今回の改正において、2トン以上の貨物自動車にも同じ義務が適用されます。

また、保護帽は国家検定に合格した、墜落時保護用の製品を用いる必要があります。

化学物質規制|化学物質管理体系の強化

厚生労働省によると、化学物質を原因とした労働災害は年間で450件発生しているとのことです。

このような状況を踏まえ、新たな化学物質規制が2023年4月より実施されました。ばく露を最小限度にし、濃度基準値を順守させなければなりません。

ばく露低減に対する具体的な措置として、有効な保護具への切り替えや代替物質の使用が挙げられます。そして、リスクアセスメント結果について記録を作成し、最低3年保存することが義務となりました。ばく露低減措置やばく露状況についてはその記録を3年間、がん原生物質については30年間保存する必要があるのです。

化学物質規制|実施体制の強化

新しく職務につく職長には、安全衛生教育が必要です。改正によって教育が求められる業種が拡大されました。なお、ここでの職長とは現場で業務の指揮・命令をする人を指します。

本改正で食料品製造業、新聞業、出版業、印刷物加工業、製本業の事業者にも、上記の義務が適用されました。職長教育は12時間と定められていて、事業者は事前に計画や準備をしなければなりません。

化学物質規制|情報伝達の強化

情報伝達の強化に向けて、SDSの人体に及ぼす作用について、定期的な確認および更新が義務づけられました。SDSとは、化学物質の名称や取り扱い方法が記載された文書です。

結果を確認する際、変更があれば更新する必要があり、内容の通知も求められます。また、ラベル表示や文書の交付によって、内容物の情報を詳しく伝達することも義務づけられました。

化学物質規制|管理水準良好事業場の特別規則等適用除外

所轄都道府県の労働局による要件を満たし、化学物質管理の水準が一定以上であると認定されれば、特別規則の個別規制を除外できます。

適用除外の対象となる特別規則は特定化学物質障、有機溶剤中毒予防規則、障害予防規則、鉛中毒予防規則、粉じん障害防止規則です。

本改正の目的でもある「自律的なリスクアセスメントの管理・実施体制を確立すること」が可能です。ただし、健康診断や保護具の使用規定は適用除外となりません。

化学物質規制|特殊健康診断の実施頻度の緩和

本改正によって、特殊健康診断の実施頻度は緩和が認められました。緩和の対象となる特殊健康診断は有機溶剤健康診断、特定化学物質健康診断、鉛健康診断、四アルキル鉛健康診断です。

具体的には、直近に実施された健康診断で3回連続新たな異常初見が認められない場合、健康診断の実施は1年に1回だけでも構いません。

ただし、直近の健康診断後に作業方法が変更されていない、作業環境測定結果が第1管理区分に区分されているなどの要件を満たす必要があります。

労働安全衛生規則(労働安全衛生法)に違反したときの罰則

労働者の安全と健康を守るために、労働安全衛生法において、さまざまな規制が定められています。また、労働安全衛生法に違反すれば両罰規定となっており、違反した行為者だけでなく事業主体も罰則を受けます。違反した場合の罰則を例とともに解説します。

50万円以下の罰金

下記のケースにおいては、50万円以下の罰金が科されます。

  • 安全管理者、衛生管理者、産業医といった選任すべき事業者を選任していない場合
  • 機械に関する設置届の未提出
  • 健康診断の未実施
  • 安全衛生教育の未実施

そのほかの違反例として、4日以上の休業を要する労働災害が発生したにも関わらず、労働基準監督署に報告しなかったケースがあります。これは労働安全衛生法第100条1項や労働安全衛生規則第96条〜97条に違反します。労災隠しをした場合は、労災報告義務違反にあたり、50万円以下の罰金が科せられます。

6か月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金

下記のケースでは、6か月以下の懲役もしくは、50万円以下の罰金が科されます。

  • 健康診断に関する秘密漏洩違反
  • 作業行動から生じる労働災害防止措置違反
  • 有害危険物の表示違反
  • 危険有害業務前の特別教育実施違反

新型コロナウイルス感染症のような、伝染病と定められている感染症にかかっている労働者を、強制的に就業させたケースも該当します。このケースでの罰則は、労働安全衛生法第119条が適用され6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金です。

また、他の労働者に対しての安全配慮義務違反にも該当する場合があります。

1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金

1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金には、各種免許試験において、指定試験機関の役員や免許試験員が試験に関する情報を漏洩したケースや、労働安全や労働衛生コンサルタントが業務に関する内容を漏洩したケースが挙げられます。

また、特定の化学物質や機械を無許可で製造し、使用停止が命じられた機械を用いた場合も、この罰則に該当します。

3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金

労働安全衛生法で最も重い刑罰は、3年以下の懲役もしくは300万以下の罰金です。法令で輸入、製造、提供などが制限されているものを使用し、労働者に健康被害を与えた場合が該当します。

また、労働者に大きな健康障害を与える行為も当てはまります。たとえば、労働者の意思に反して強制的に就業させ、精神障害や自殺といった重大な健康被害を与えたケースです。

改正された労働安全衛生規則を確認しよう

労働安全衛生規則とは、事業者が労働者の安全や健康を守るための大切な規則です。

時代の流れとともに働き方も多様化しています。改正された規則を認識して、最新の状況に合わせた対処が大切です。違反をすると罰則を受ける可能性があります。

労働安全衛生規則を守り、自社の労働者にとって快適な労働環境を提供しましょう。

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編集者:坂田健太(さかた けんた)

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2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。