「危機管理のさしすせそ」とは?対応への活かし方も解説
遠藤 香大(えんどう こうだい)
「危機管理のさしすせそ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。保育園や小学校などの教育現場で、危機管理の際に気をつける5つのことを指す言葉です。
この記事では、「さしすせそ」がそれぞれ何を指すのか、いじめや事故の対応にどう活かされるのかを解説します。
目次
危機管理の「さしすせそ」とは
危機管理の「さしすせそ」は、緊急事態が発生したときに活用できる5つの行動指針です。以下に挙げるそれぞれの頭文字を取り、「さしすせそ」と表します。
- 「さ」最悪の事態を想定して
- 「し」慎重に
- 「す」素早く
- 「せ」誠意を持って
- 「そ」組織で対応する
「さ」・・・最悪の事態に発展するケースを想定し、それにあわせた対応策を取ると、危機管理が後手に回るリスクの軽減が可能です。適切で迅速な対応によって、事態が想定よりも悪化する可能性を抑えられます。
「し」「す」・・・慎重な行動と素早い行動は矛盾するように見えますが、教育現場では慎重さと素早さを両立する対応が重要です。危機管理の対応で保護者と連絡を取る際に、慎重さが欠けると混乱を招くおそれがあり、連絡が遅れることで保護者との関係が悪化するケースも考えられます。
「せ」「そ」・・・誠意ある対応を組織的に実行できると、緊急事態からの迅速な復旧や信頼回復が可能です。被害を受けた人への配慮を忘れず、関係者の間で連携を取って問題の解決を目指すことが大切です。
さしすせそに基づく危機管理の例
「さしすせそ」に準じた危機管理の行動について、ここで3つの具体例で紹介します。いずれも教育現場で発生するおそれがあり、対応策を事前に用意することが大切です。
いじめ
学校内では、いじめが大きなトラブルに発展するリスクがあります。とくに、いじめの被害者である生徒とその家族にとっては、生活が揺らぐ重大な問題です。
「さ」・・・最悪の事態として、いじめを受けた生徒の命にかかわるケースが想定されます。カウンセラーや学校医など専門家の協力を仰ぎ、生徒に適切なケアを施すことが重要です。
「し」「す」「せ」・・・また、被害生徒の保護者に経緯を説明する際は慎重な対応が求められます。生徒のプライバシーに配慮し、学校側が責任を逃れていると疑われないために、素早く誠実な対応が大切です。
「そ」・・・問題の解決を図るときは、PTAや教育委員会などを含めた組織的な対応が有効です。問題を学校内にとどめず、経緯や今後の対応などの情報を公開すると、組織としての透明性が保てます。ただし、いじめは被害者のプライバシーにかかわる事案であるため、公開する情報の範囲には配慮する必要があります。
事故
学校内での事故は、生徒の安全にかかわる問題です。生徒同士の遊びがエスカレートする例や、設備に不具合があった例など、事故にはさまざまな原因があります。いずれのケースも、「さしすせそ」を取り入れた柔軟な危機管理が大切です。
「さ」・・・事故が最悪の事態につながることを想定し、怪我をした生徒には迅速な措置を施します。状況に応じて、応急措置や救急車の手配をします。
「し」「す」・・・慎重で素早い連絡は、事故の発生時にも重要です。間違った情報の共有や誤解を避けるために、伝える情報を整理したうえで保護者に連絡を取ることが大切です。
「せ」「そ」・・・事故からの復旧対応では、再発防止を目指すべく、組織的に誠意ある対応を実行する必要があります。事故を検証し、原因の特定と解決策の提案を、報告書やマニュアルにまとめて学校内で情報共有することで、同様の事故を繰り返さない組織づくりが可能です。
災害
災害はいつ発生するのかが分からず、学校に生徒が滞在する時間帯に発生するおそれもあります。生徒の安全を守るために、いち早く全員の安否を確認して保護者に連絡する行動が重要です。
災害時に「さしすせそ」を意識すると、最悪のケースとして、電話の回線がパンクして緊急連絡網で安否を確認できなくなる例が想定されます。そのため、素早い安否確認を組織的に実行できる体制づくりが大切です。
企業向けの安否確認システムを導入すると、災害時の安否確認がスムーズに実行できます。安否確認システムとは、災害時にメッセージを対象者に自動で送信し、安否の回答を集計するツールです。教育現場では、教職員だけでなく、生徒や保護者を対象とした安否確認でも活用できます。
安否確認システムの特徴やサービスは、以下の記事を参考にしてください。
災害時の危機管理には安否確認サービス2が活用できる
安否確認システムを導入する際は、トヨクモの『安否確認サービス2』がおすすめです。
海外のサーバーを利用しているため、災害時に国内の電話回線が集中する環境下においてもスムーズに稼働することができます。また、安否確認を行う際も自動でメッセージの送信、回答の集計を行えるため、管理者と回答者に負担をかけずに安否確認を進めることができます。
以下は、安否確認サービス2が教育現場で活用されている実例です。
駒込学園
学校法人駒込学園は、1,600人以上の生徒が通う中高一貫校です。緊急時に保護者と連絡を取るツールとして、安否確認サービス2を導入しています。
▲出典:学校法人駒込学園 公式HP
従来は電話やメールで連絡が取れる連絡網システムを導入していたものの、緊急時にはアクセスが集中してサーバーがダウンする課題を抱えていました。「機能がシンプルで誰でも扱える」「海外にサーバーを設置するなど『システム稼働の安定性』を追及している」点などが決め手となり、2023年度から『安否確認サービス2』を導入しています。
安否確認サービス2の導入後は、平常時、非常時ともに、保護者への一斉連絡をする際に有効活用できています。天候不良による全校生徒への休校案内や感染症に伴う学級閉鎖に関する連絡、日常のアンケートなどに活用しています。
また、様々な種類の『管理者権限』を活用し、担任教師が保護者からの回答を確認できる体制を整えています。
(参考:学校法人 駒込学園|決め手は、稼働の安定性。学校での導入が進む、安否確認サービス2だから安心して活用できる)
双葉学園
児童養護施設二葉学園は、グループホーム形式で子どもたちの健全な生活を支援する児童養護施設です。子どもと職員の安全を守るために安否確認サービス2を導入しています。導入の背景には、2011年の東日本大震災で連絡が取れず安否を確認できなかった経験があります。
▲出典:社会福祉法人 二葉保育園 児童養護施設 二葉学園 公式HP
従来は、関係者の被災状況を把握するまでに2時間、回答の集計に1時間以上、合計で3時間以上もの所要時間を要しました。安否確認サービス2の導入によって、メッセージの発信と回答の集計をすべて自動化できるため、安否確認連絡と回答集計を担当する職員の作業時間をほぼゼロにすることができました。
(参考:社会福祉法人 二葉保育園 児童養護施設 二葉学園|安否確認サービス2の活用で 被災情報の収集を4時間短縮)
「さしすせそ」を意識して、効果的な危機管理を実現しよう
今回は、危機管理における「さしすせそ」の理念を紹介しました。教育現場で緊急事態が発生したときは、「さしすせそ」で示した5つのポイントを押さえた行動が大切です。とくに、災害時は素早い安否確認ができることで、生徒と教師の安全を守れます。
執筆者:遠藤 香大(えんどう こうだい)
トヨクモ株式会社 マーケティング本部に所属。RMCA認定BCPアドバイザー。2024年、トヨクモ株式会社に入社。『kintone連携サービス』のサポート業務を経て、現在はトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営メンバーとして編集・校正業務に携わる。海外での資源開発による災害・健康リスクや、企業のレピュテーションリスクに関する研究経験がある。本メディアでは労働安全衛生法の記事を中心に、BCPに関するさまざまな分野を担当。