新型コロナウイルスの感染拡大や地震の頻発化により、企業におけるBCP(事業継続計画)策定の重要性が高まっています。幼稚園や保育園も例外ではなく、BCPを策定し、対策を講じることが重要です。2023年4月1日からは児童福祉施設等でのBCP策定が努力義務化されています。
この記事では、幼稚園・保育園におけるBCPの必要性やメリットについて解説します。BCP対策として安否確認システムを導入した保育園の事例も紹介するため、BCP対策に興味がある方はぜひ参考にしてください。
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目次
幼稚園・保育園におけるBCPの必要性
児童福祉法などの一部が改正されたことにより、2023年4月から幼稚園や保育園などの児童福祉施設は、BCPの策定、研修、訓練が努力義務化されました。BCP(事業継続計画)とは、パンデミックや自然災害などの緊急事態が発生した際、被害を最小限に抑えて、事業を早急に復旧するための計画のことです。
努力義務規定に法的拘束力はなく罰則が課されることもありませんが、努力義務違反は損害賠償請求などのリスクが伴います。
幼稚園や保育園は、児童の安全を確保するために、以下に関する事項を策定する必要があります。
- 保育所などの設備の安全点検の実施に関すること
- 職員、児童などに対する施設外での活動
- 児童福祉施設での生活その他の日常生活における安全
- 職員の研修及び訓練その他児童福祉施設における安全
ここでいう「職員、児童などに対する施設外での活動」には、散歩や送迎バスの運行などが該当します。
(安全計画の策定等)
第六条の三 児童福祉施設(助産施設、児童遊園、児童家庭支援センター及び里親支援センターを除く。以下この条及び次条において同じ。)は、児童の安全の確保を図るため、当該児童福祉施設の設備の安全点検、職員、児童等に対する施設外での活動、取組等を含めた児童福祉施設での生活その他の日常生活における安全に関する指導、職員の研修及び訓練その他児童福祉施設における安全に関する事項についての計画(以下この条において「安全計画」という。)を策定し、当該安全計画に従い必要な措置を講じなければならない。
(引用:児童福祉施設の設備及び運営に関する基準)
幼稚園・保育園がBCPを策定するメリット
幼稚園や保育園におけるBCPの策定は義務ではありませんが、BCPを策定している幼稚園や保育園は存在します。その理由は、以下のメリットを享受できるからです。
- 緊急事態における対応力を高められる
- 児童の安全を確保できる
- 保護者からの信頼を確保できる
これより、それぞれのメリットについて説明していきます。
緊急事態における対応力を高められる
パンデミックや自然災害などの緊急事態が発生すると、混乱が生じやすく、平常時のような冷静な判断を下すことが難しくなります。しかし、BCPを策定し、緊急時に「誰がどのように行動するのか」という対応を明確にしておけば、スムーズかつ適切に行動を取りやすくなるのです。これにより、緊急事態下でも園の運営を継続できます。
児童の安全を確保できる
幼稚園や保育園では、児童を預かっているときに緊急事態が発生した場合、保護者が迎えに来るまで児童の安全を守る責任があります。特に保育園では、自分の身を守ることができない乳児の安全を確保する必要があります。
ライフラインが寸断されるような大規模な災害が発生した際、多くの児童を保育し続けることは非常に困難です。しかし、BCPを策定し、非常食や防災グッズを用意しておけば、そのような環境でも児童の安全を確保しやすくなります。
保護者からの信頼を確保できる
BCPで緊急時の対応を決めておくことにより、保護者の不安を軽減し、園に対する信頼を高められます。近年、子育て中の保護者は園選びの際、防災対策が行われているかどうかという点も重視するようになってきました。BCPを導入している園は、保護者からの信頼を獲得しやすく、園児の確保につながるでしょう。
パンデミックに備えた幼稚園・保育園のBCP対策の事例
自然災害に備えたBCPの対策例には、施設の確認や非常食・防災グッズの用意、避難訓練時の実施などが挙げられます。しかし、パンデミックは自然災害と異なる対策が必要であるため、「どのように対策すればよい?」と気になっている方もいるでしょう。
そこで、パンデミックに備えて安否確認システムを導入した保育園の事例を紹介します。今回、保育事業を展開するポピンズホールディングスの副社長の井上様、システム担当の野中様、保育園担当の宮田様にお話を伺いました。
命を預かる企業としての、「BCP」の考え方
みんなのBCPを運営するトヨクモです!今日はよろしくお願いします。
ポピンズさんには、トヨクモの安否確認サービス2を「従業員向け」と「保育園の利用者向け」それぞれに展開してご利用いただいていますよね。
かなりBCPに注力されている印象なのですが、BCPの考え方について教えてください。
ポピンズは、保育所・ベビーシッター・介護・教育と大きく4部門ありますが、メイン事業は保育と介護です。いわゆる“か弱い命”を安心安全にお守りするというのが重要な責務だと考えています。
水や食料の備蓄はもちろんですし、避難訓練も定期的に実施しています。BCPも定期的なバージョンアップを重ね、いざという時にきちんと機能する体制を整えています。
東日本大震災時は、丸の内の保育園を開放し、帰宅難民の受入れなども行いました。安心して預けていただくために、BCPは非常に重視しています。
なるほど、日頃からBCPの意識が根付いているんですね!
そんなポピンズさんですが、今回のコロナウイルスは想定外の事態だったのではないでしょうか。
初動対応などに混乱はありませんでしたか?
確かに、新型コロナウイルスは未曾有の事態で、BCPでも想定はしていませんでした。
ただ、最重要事項は健康管理の徹底。
明確だったため混乱はなかったです。
徹底した「健康管理」はどのような方法で?
とにかく、感染の疑いがある人を早期に把握するという点を重視したというポピンズ さん。
厚生労働省が、当初37.5度という基準を掲げていたので、従業員も保護者も、関わる全ての人に検温を徹底したんだそう。
とはいえ、5000名を超える従業員と、それ以上の数の利用者の健康管理は簡単には行えません。
一体どんな方法を使ったのでしょうか。
従業員は、現在(6月23日)も土日を含めて毎日安否確認サービス2で体調について一斉送信を行い、回答してもらっています。少しでも体調が悪ければ休んでもらい、発熱があれば2週間は自宅待機してもらっています。
保護者の方へは、送迎時のマスク着用はもちろん、少しでも体調が優れなければ送り迎えを別の人に依頼してもらったり、園の中に入らず外で受け渡しを行なったりと、ご協力をいただいています。
更に、現在は非接触型の体温計を導入し、送迎時の検温・消毒も徹底しています。
安否確認サービス2の一斉送信+アンケート機能では、メールやスマホアプリに情報を届けられるだけでなく、自由に設問を作ってアンケートを収集することが可能です。 回答された内容は自動集計されるので、管理者の手間も最小限で状況が確認できます。 今回、日々ご利用いただいている健康チェックの送信内容を見せていただきました!
<日々の健康チェックのメール内容>
<日々の健康チェックのアンケート内容>
緊急事態宣言後の対応について
宣言中は登園が全体の2〜3割になっていたので、出社不要の従業員は、在宅で事務作業などを行なっていました。
登園や欠席については、保育園専用のシステムを構築していて、そちらで管理しています。緊急事態宣言が出て3日後には、オンライン保育を開始しました。
登園を取りやめた園児たちの日々の健康や生活リズムなどを少しでも支えることができればと思っての施策です。250箇所、2500名に展開して、好評をいただいています。内容についてはアンケートをとり、日々改善を重ねているところです。
また、オンライン育児相談もスタートしました。小さなお子さんは非常に敏感です。自粛を受け、トイレトレーニングが進んでいたのに…や、集団の中ではきちんと食事ができていたのに…など、日常生活に支障が出てしまうケースは少なくありません。保護者の方々の不安を、対面でなくてもサポートできればと思ってスタートしました。
オンライン保育をたった3日で!
新型コロナウイルスの影響で、トヨクモでもセミナーや商談のオンライン化が大きく進みましたが、すごいスピード感ですね。
ハードルの高さはありませんでしたか?
実はコロナとは関係なく、グローバル化やIT化を進めていこうという経緯があり、1月にデジタルトランスフォーメーション(DX)部を新設していました。
緊急事態宣言は勿論想定外の事態でしたが、通常通りの受け入れが難しくなった状況でも、オンラインでの取り組みはスムーズで、新しい可能性を発見したとも感じています。
2009年から毎年、国際乳幼児教育学シンポジウムを東京大学の福武ホールで開催していました。約200名に参加いただいていたのですが、今年は初めてオンラインで開催し、米国・英国含む世界3カ国から、例年を大きく上回る5000名に参加いただきました!時差や国境を超えて集うことができる点は、オンラインの大きな強みだと実感しました。
今後はオンラインとオフラインを融合させたハイブリッド型保育を展開したいと考えています!
安否確認システムの活用について
シンポジウムのご案内にも、日常利用が習慣となった安否確認サービス2を活用したというポピンズさん。
システムの運用方法や、ポイントについて伺いました。
日々の回答を継続してもらう工夫は、どのようにされていますか?
5000名超える従業員に毎日送信しています。回答を継続いただける工夫として、本社で毎日の回答結果をCSVダウンロード分析して要注意者をピックアップして施設長に連絡を入れて状況確認をしています。
保育園(部署)単位で管理ができて権限設定が柔軟にできますので、施設長が自主的にメンバー管理したり回答状況を確認する動機付けとなっています。
通知先は、各自でプライベート端末を連携してもらっています。連絡先の変更がないか、システムで自動的に確認する機能があるのでメンテナンスも便利です。
幸運にも導入から大規模災害には見舞われておらず、ここまで大々的に運用するのは今回が初めてでしたが、難しい操作もないので混乱もなく使えています。
安否確認サービス2では、管理者の数はなんと無制限!部門長を「部門マネージャー」にして部下の状況を直接把握させるのが回答率アップのポイントだそう。 直属の上司から指示される方が、確かに回答できそうですよね! 従業員の入退社は全体のシステム管理者が、保育園は園ごとに施設長が「部門システム管理者」となり、独立してユーザー登録などを担っているそうです!
プライベートな連絡先を集めたり保管するのはとても大変な作業です。 安否確認サービス2は、プライベートな連絡先はユーザー自身が登録し、更に詳細はどんな管理者でも閲覧できないのでプライバシーも安心です!でも、「メールアドレスが変わっていて、いざという時に役に立たなかった」となっては意味がありません。システムが定期的にメンテナンス通知を配信し、エラー状況を確認する機能が搭載されています。
コロナウイルス以外での活用例があれば教えてください
設問フォームを自由に作成できるので、何か回答や集計が必要な際はなにかと安否確認サービスを活用しています。 保育園では、別のシステムをメインで使っていて、欠席連絡などは基本的にそこで管理ができる仕組みがあります。ただ、セキュリティを考慮して、従業員は社内ネットワークからしか情報にアクセスできない仕組みになっているので、社外にいると使えないんです。 台風発生時など、従業員が自宅からに保護者の皆様に一斉連絡を行う際は安否確認サービスを活用しています。
<2019年9月 台風接近時、ある保育園での活用例>
施設長に権限を付与することで、必要に応じて施設長が自分の担当する保護者に対して一斉送信も行っています。 全国に拠点をもつポピンズ さんにとって、施設単位で運用できるのは大きなメリット。 運用のポイントは、「誰にどの権限を与えるか」「共通ルールの作成」の2点だそうです。
運用ルールの作成には試行錯誤が必要ですが、安否確認サービス2は30日間の無料トライアルに何度でも申し込めるので安心です。
安否確認システム導入の経緯
東日本大震災を経験し、固定電話や携帯電話は、通話が殺到してつながらなかったため、確実に安否確認するためには、他の方法も用意し複数ラインで現場状況を確認できるようにしておく必要性を感じ、震災直後に安否確認サービスを導入しました。 震災時にメールは機能しており利用できましたが、すべての保護者や従業員がメールアカウントを持っているわけではありませんので、災害時に保護者も従業員も全員が使えるツールとして、携帯アプリも使用可能な現在の安否確認サービス2は、大切な緊急連絡手段として大変役立っています。
なるほど! 災害時は電話回線やメールサーバーが輻輳するので、インターネットでのやりとりが推奨されますね!既存のシステムをそのまま使うことは考えなかったんですか?
東日本大震災からもうじき10年になります。 当時保育園で使っていたシステムはガラケーが主流の時代のもので、通知の受け取りがメールでしか行えないませんでした。いざという時のシステムなので、スマートフォンのアプリに対応しているなど、様々な端末で使いやすいシステムが理想でした。
確かに、時代に合ったシステムというのは重要ですね。 みんなのBCPでは、人気の安否確認システム14製品を比較しています。 どのシステムも強みがあると思いますが、最終的な選定のポイントはなんでしたか?
他システムとも比較した中で、機能と費用のバランスが一番マッチしていた点です。 トライアルを利用して、一通りの機能を触りました。災害時を考えると機能不足では意味がないし、かといって予算も無視出来ないので、コストパフォーマンスは重要でした。 定期的なバージョンアップもされているので、今後、より一層活用出来るシステムになることを期待しています。
安否確認サービス2の基本情報
トヨクモの『安否確認サービス2』では、定期的に全国一斉訓練を実施しています。システムが安定して稼働するかどうかを平常時から確認しており、システムへのアクセスが急増する緊急時の安定稼働を期待できます。
また、初期費用がかからず、導入ハードルが低い点もおすすめのポイントです。最低利用期間は設定されておらず、解約費用もかからないことから、自社に不要と判断した際にはすぐに解約できます。
さらに、30日間の無料お試し期間が用意されており、すべての機能を利用することが可能です。自動で課金が発生しないため、少しでも興味がある場合には、ぜひ一度お試しを利用してみることがおすすめです。
初期費用(税別) | 0円 |
月額費用(税別) | ライト:6,800円プレミア:8,800円ファミリー:10,800円エンタープライズ:14,800円 |
最低利用期間 | なし |
主な機能 | 外部システム連携/通知条件の設定/予行練習/自動一斉送信/回答結果の自動集計/家族の安否確認/災害以外のお知らせ送信ほか |
対応言語 | 日本語、英語 |
稼働実績 | 能登半島地震、熊本地震など |
無料トライアル | あり(30日間の無料お試し) |
児童の安全を守るために幼稚園・保育園でもBCP対策は必須
児童福祉法などの一部が改正されたことにより、2023年4月から幼稚園・保育園におけるBCP策定は努力義務化されました。法的拘束力はないものの、児童の安全を守るためにBCP対策は講じておきましょう。
BCPを策定し、実行する場合、多くの労力や時間が必要となります。しかし、緊急事態における対応力が向上したり、保護者からの信頼を確保できたりするため、幼稚園・保育園にとってBCP策定には多くのメリットがあるのです。ぜひ本記事の内容を参考に、BCP対策を始めてみてください。
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