直下型地震は、範囲は狭いものの、直上の地域に甚大な被害をもたらす地震です。近年では、阪神淡路大震災も直下型地震と言えます。
この記事では、直下型地震の特徴、発生メカニズム、対策についてご紹介します。
目次
直下型地震とは
直下型地震は、プレート内の活断層がずれることによって発生する地震です。内陸型地震と呼ばれることもあります。
ただ、学問の世界では、直下型地震の明確な定義はありません。プレート内地震や活断層性地震が都市部の直下で発生した際、直下型地震と呼称するのです。
特筆すべき点として、マグニチュードは比較的小さいものの、都市部の直下で発生するため、甚大な被害をもたらすということが挙げられます。
日本国内では、1995年に発生した阪神淡路大震災が直下型地震の典型例です。阪神淡路大震災では主に建物の倒壊による被害が多発し、死因の多くが倒壊による圧迫でした。二次災害として火災も散見されましたが、火災による死者数は全体の1割弱であったと言われています。
直下型地震のような突発的な災害が発生した際、従業員の安否を確かめることは企業の事業継続に重要です。「安否確認サービス2」は気象庁の情報と連動した自動一斉送信機能があるため、迅速な安否確認が可能です。
直下型地震の特徴
直下型地震の特徴として、突然大きな揺れが襲ってくること、建物が倒壊しやすいことなどが挙げられます。直下型地震の特徴を把握しておくことで、防災準備や緊急時の対処に役立つでしょう。
揺れが大きい
直下型地震も含めた活断層型の地震は、プレート型地震に比べると、地震の規模を示すマグニチュードは小さいと言えます。しかし震源が浅く、エネルギーが減衰しないまま地表に伝わるため、揺れは非常に大きいのです。
また、被害範囲は狭いものの、人口密集地で発生した場合には甚大な被害をもたらすでしょう。
日本の国土はユーラシアプレート、北米プレート、太平洋プレート、フィリピン海プレートという4つのプレートが重なる場所に位置しています。活断層はプレート内で生まれるため、日本には活断層が非常に多く、判明しているだけでも約2000の活断層が存在します。
さらに、発見されていない活断層も考慮すると、日本全国どこでも直下型地震は起こりうるのです。
建物が倒壊しやすい
直下型地震の特徴として、建物の倒壊による被害が多いことも挙げられます。直下型地震における死因の多くは、建物の倒壊や、家具の転倒による圧迫です。直下型地震は震度が大きいため、大型の家電や箪笥など重い家具も転倒してしまうのです。
なお、直下型地震である阪神淡路大震災では、建物の倒壊による被害が甚大であったため、耐震基準を見直すきっかけとなりました。
突然大きく揺れる
直下型地震は予兆を感じることが難しく、突然大きく揺れるのです。
通常、緊急地震速報は地震の初期微動(P波)を検出し、警報を発します。しかし直下型地震では、初期微動と主要動(S波)の時間差がほとんどなく、緊急地震速報が発せられた時には既に激しく揺れていることでしょう。
また、直下型地震による揺れは、縦に突き上げるような揺れが特徴的です。横揺れと比較して動くことが難しく、揺れに対処するのは困難といえます。家具を固定したり、寝室に重い家具を置かなかったりすることで、直下型地震への対策を強めましょう。
海溝型地震との違い
海溝型地震とは、大陸プレートと海洋プレートの境界を震源とする地震です。日本の近くでは、ユーラシアプレートや北米プレートは大陸プレートに、フィリピン海プレートや太平洋プレートは海洋プレートに分類されます。
震源は海洋付近であるケースが多いです。マグニチュードが大きく、広範囲に揺れが発生するのが特徴と言えます。
海溝型地震とは
大陸プレートと海洋プレートがぶつかり、地殻がマントル層に降下して行く場所が海溝です。巨大なプレートが互いにぶつかり合いながら動くため、大きなエネルギーが蓄積され、このエネルギーが大地震の原因となります。
海溝型地震には、引きこまれた大陸プレートが跳ね上がるように動くことで発生するプレート境界地震と、海洋プレートの破断を原因としてエネルギーが解放されるスラブ内地震やアウターライズ地震があります。
スラブ内地震は、海溝の奥深くにて海洋プレートが破断することで発生します。アウターライズ地震は、海溝付近でプレートが破断したり、岩石が崩壊したりすることで発生する地震です。
海溝型地震の特徴
海溝型地震は地震の規模を示すマグニチュードが大きく、広い範囲を揺らす点が特徴です。震源が陸地から遠く、かつ深い部分で発生するため、揺れはある程度抑制されます。しかし、地震波の伝播によって、震源から離れた地点であっても局所的に大きな揺れが発生する可能性があります。
また、震源までの距離が離れているため、初期微動の到達から主要動到達までに時間差があります。したがって、緊急地震速報を受けてから揺れが始まるまでに、ある程度時間の余裕はあるでしょう。
震源は海洋側であることが多いため、津波が発生しやすいという特徴もあります。東日本大震災が典型的な事例ですが、揺れによる被害よりもむしろ、津波による被害が甚大となりやすいです。
直下型地震と海溝型地震の比較
直下型地震と海溝型地震の違いを比較してみます。
直下型地震 | 海溝型地震 | |
---|---|---|
規模 | 比較的小さい。 | 比較的大きい。 |
範囲 | 狭い範囲で発生する。 | 大きな揺れが広い範囲で発生する。 |
震源 | 陸地が多い。比較的浅い。 | 海側の震源地が多い。震源は深くなる傾向がある。 |
時間 | 揺れの時間が短い。 | 揺れの時間が長いり |
揺れ | 突然大きく、突き上げるような揺れが発生する。 | 小さな揺れのあと大きな揺れが発生する。周期が長い横揺れが起こる。 |
被害 | 建物が倒壊したり炎上したりする。 | 倒壊や火災の被害よりも、しばしば津波による被害が甚大となる。 |
警報 | 緊急地震速報から揺れまでが短く、対処する時間がない。 | 緊急地震速報を受けてから揺れるまでにある程度の時間がある。津波警報にも留意する必要がある。 |
直下型地震の原因・活断層とは
直下型地震の原因は、大陸プレートに発生する活断層です。地殻変動で大陸プレートに亀裂やひび割れが生じ、活断層が生まれます。
既存の活断層がプレートから力を受けることで、活断層がずれ、直下型地震は発生するのです。
活断層の4つのタイプ
活断層は、断層のずれ、変位の様相から3つのタイプに分類されます。
正断層は、断層に対し引っ張るような力がかかり、境界面から上の地殻が下方にずり下がることで発生します。
逆断層は、断層に対し圧迫するような力がかかり、境界面から上の地殻が上方にずり上がるというメカニズムです。
また、正断層と逆断層は地殻のずれが上下方向であるため、まとめて縦ずれ断層と呼ばれています。
一方で、横ずれ断層というものもあります。断層のずれに対して、水平面で斜めの力がかかり、断層が水平方向にずれるという機構です。
活断層の活動と地震
断層面をはさむ両側の岩盤に力が蓄積されると、やがて限界に達し、断層が互いにずれてしまいます。これが、活断層を原因として地震が発生するメカニズムです。
断層面はもともと地震によって地殻に生じたひび割れですが、それがさらに、地殻変動による応力でずれ動くイメージです。
日本付近には数多くの断層が発見されています。応力やひずみを測定することで、これら活断層のずれを予知しようとする試みも行われていますが、正確な予知は難しいのが現状です。
また、まだ発見されていない活断層も多く存在すると予想されています。
すぐにできる地震対策のポイント
直下型地震は、いつ発生してもおかしくありません。
頻繁に話題となる首都直下地震は、南関東地域のどこかを震源としています。規模はマグニチュード7、発生確率は30年以内に70%と言われています。
そのためにも、日頃からの備えが大切です。
倒れやすいものを固定しておく
直下型地震では、揺れによる直接的な被害が大きくなります。ものが倒れたり落下したりしやすいため、家具や建物の倒壊によって、多くの死傷者が発生するのです。
日頃からできる備えとしては、家具や重いものを固定することや、机・布団・ベッド周りに倒れやすいものを置かないことなどが挙げられます。家具を固定するための用具は、ホームセンターや家具店などで販売されています。摩擦の大きいシートを重い家具の下に敷いておくことも有効です。
このような対策に加えて、寝室やリビングにはできるだけ重い家具を置かないようにしましょう。
備蓄品を確認しておく
非常時のための備蓄品を確認しておきましょう。水や食料は2日〜3日分を常備しておくと理想的です。被災時には火を使った調理が難しくなるため、常温で保存でき、加熱なしで食べられる缶詰やレトルト食品が便利です。
また、被災直後は通信インフラが麻痺することも予想されます。ラジオや電池を準備しておくと、災害の情報を得られ、適切に避難できるでしょう。
直下型地震では余震が繰り返し発生するため、ヘルメットのような身を守る装備も必要です。瓦礫やガラスが散乱する中を移動する可能性もあるため、靴も用意しておきましょう。
新聞紙は身体に巻くことで手軽に暖を取れます。他にも活用できる範囲が広いため、備蓄品に加えておくと役立つでしょう。
建物の耐震性を確認しておく
直下型地震は揺れが大きいため、建物の倒壊による被害が多発します。自宅の耐震性を事前に確認しておき、不安な場合は対処しておくことが大切です。
阪神淡路大震災の教訓をきっかけとし、日本の建物における耐震基準は改正されています。しかしながら、古い建物はそれ以前の基準で建てられているため、耐震性が不十分なのです。
建物の耐震性は、耐震等級を調べることで分かります。耐震等級とは建物の耐震性能を表す指標です。2000年4月施行の「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づいた評価項目です。
活断層の位置を知っておく
日本国内でおよそ2000の活断層が既に発見されています。活断層の位置については、文部科学省と気象庁が共同で作成したパンフレットによって確認できます。近所に活断層があるかを把握しておきましょう。
産業技術総合研究所の作成した活断層データベースでは、既知の活断層と、近年発生した地震のデータを同時に見られます。ぜひ参考にしてください。
ただし、活断層には発見されていないものも多く、近隣に活断層がなくても、直下型地震が発生しない保証はありません。地震に対するリスクは、どのような土地にもあるということを認識してください。
安否確認の手段を確保する
地震が発生した際、家族や関係者の安否確認が非常に重要です。緊急事態における安否確認の方法を、家族間で事前に決めておきましょう。
また、避難所の位置、避難経路の確認、非常時の集合場所などをあらかじめ決めておくことで、災害による被害を抑えられるでしょう。
企業においては、従業員の安否確認が不可欠です。さらに、安否確認は事業継続のための施策、いわゆるBCPの実行においても必須条件です。
安否確認システムはNTTの災害用伝言ダイヤルや、携帯キャリアによる安否確認サービスなどがあります。また、企業向けに従業員の安否確認サービスも多数リリースされているため、災害に備えて導入しておくことをおすすめします。
大型地震に備えて企業の防災対策を始めよう
日本は言うまでもなく地震大国です。地震への備えは、国民すべてが等しく意識しておくべきことでしょう。
また、企業や団体には、災害が発生した際に企業活動を可能な限り継続することで、地域の復興を支援する義務があります。適切なBCPの策定によって防災対策を導入しましょう。防災対策の第一歩として、従業員の安否確認サービスを導入すると、非常時に安否確認、情報収集、指示連絡を行えます。