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会社が防災意識を高めるには?災害ごとの対策や知識も紹介

会社が防災意識を高めるには?災害ごとの対策や知識も紹介

毎年のように大地震や台風などの自然災害が発生し、企業の防災意識の向上が求められています。

この記事では、経営者・防災担当者が会社全体で防災意識を高めるための方法、災害ごとの対策や基本的な防災知識について解説します。従業員の安全を守りつつ事業継続に役立つ知識を身に付けましょう。

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編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。

企業の防災意識を高める方法とは

防災意識を高めるといっても、掛け声だけではなかなか従業員に浸透しにくいものです。訓練を通した具体的な行動や、知識を伴った準備が必要です。

防災訓練やBCPの策定など、いざというときに役に立つ実践を伴った取り組みが求められています。

以下で企業の防災意識を高める方法について詳しく解説します。

防災訓練

企業の防災訓練は、繰り返し定期的に行うことが重要です

消火訓練や避難訓練、救出訓練などを通じて、従業員は災害時に求められるスキルを向上させます。1度の実施では知識やスキルは十分に身に付きにくいため、繰り返しての実施が重要です。

定期的に防災訓練を実施することで、安全な職場環境を確保しようと、組織全体の危機管理能力が向上して被災時の心構えにもつながります。

社内外の協力体制を築き、迅速な対応をするためにも、防災訓練は必須です。

防災訓練については、以下の記事でも紹介しています。興味のある方は、是非参考にしてください。

リスクの周知

従業員に災害リスクを理解してもらうため、わかりやすい資料を配布したり、リスクをまとめたポスターを設置したりすることが効果的です。図表や具体例を使って災害のリスクを示すと、防災に対する理解が深まります。

リスクの周知は、従業員に災害の影響をあらかじめ把握させることにつながります。これによって、防災行動の見直し時に従業員から意見が出やすくなることも期待できます。

備蓄の確認

自然災害に備えた備蓄品は、定期的に確認しておくことをおすすめします。

備蓄品には、非常用食料や飲料のほか医薬品や救急用具、懐中電灯や毛布などが含まれます。どこに何があるか、賞味期限や耐用年数に問題がないかなど、定期的に確認しておきましょう。

特に食料の備蓄をするときには、ローリングストック法を使うことがおすすめです。ローリングストック法とは、備蓄品を定期的に使用、補充しながら一定の数を保つ方法です。

こうすることで、備蓄物資が劣化することなく、常に新しい状態を維持できます。

ローリングストック法を採用することで、備蓄の管理が効率よく行えます。同時にローリングストック法に基づいた備蓄品情報を、従業員全体で共有しましょう。共有することで、災害発生時に迅速で適切な備蓄品の提供ができ、平時においても防災意識の向上に役立ちます。

ローリングストック法の詳細については、以下の記事でも紹介しています。

地域との連携

地域との連携も極めて重要です。地域との協力体制を構築することで、災害時でも、円滑な対応が可能になります。

企業と地域の自治体や関連機関との協力を確立するためには、防災協定の締結が有益です。この協定には、情報や資源の相互提供、連携した対策の実施などが含まれます。地域とのパートナーシップを築くことで、災害発生時において迅速で効果の高い協力が期待できるでしょう。

地域からの協力だけでなく、避難場所の提供や備蓄品の放出など、企業が地域に貢献する役割を果たすことも重要です。例として、防災訓練や講習、セミナーの開催をすることで地域全体の防災意識を高められます。

企業と地域の住民や関係機関が共通の防災知識や手順を習得し、一体となって対応できるようになれば、災害時にも迅速に対応できるでしょう。

実際のシナリオを想定した訓練や知識の共有は、災害時にも的確で協力的な行動を促進します。

BCP計画の策定

BCP(Business Continuity Plan)の策定も進めましょう。

BCPは、自然災害や緊急事態が発生した際に事業継続をするための計画のことです。会社の従業員や資産などを守るために行われ、同時にステークホルダーが受ける影響を最小限に抑えることにも役立ちます。

BCPを策定しておくことで、業務プロセスの中断リスクを最小限にし、企業の収益損失を最小限に抑えられます。リスクを事前に評価し、対策を講じることで資産や機密情報を保護できるのです。

企業にとって最大の財産は従業員です。BCPにおいては避難手順や安否確認方法の明確化など、従業員の安全確保が重要なポイントといえます。

基準を決めておくことで事業継続できるか否かを効率よく判断できます。そのため顧客へのスムーズな対応が可能となり、顧客満足度を維持することにもつながるでしょう。

以下の記事では、BCPについて詳細に解説しています。

社内の取り組みを公開

企業の防災への取り組みは、従業員に定期的に公開しましょう。年1回の避難訓練や1度きりの研修を実施しても、時間の経過とともに従業員の防災意識は薄れます。

たとえば、ローリングストック法で賞味期限の迫った食品を定期的に従業員へ提供することで、備蓄に対する意識の向上が可能です。

また、定期的に訓練や研修の振り返りを実施すれば、災害時の情報共有にもつながります。組織全体が一丸となって安全対策を推進する原動力にもなるでしょう。

人材の育成

企業内における防災に関する人材育成も重要です。

主に求められる人材は2種類で、防災対策を立案できる人材と、災害時の復興を指揮できる人材です。

前者は災害に関する専門知識と危機管理能力の強化をおすすめします。トレーニングやセミナーなどを通じて、従業員の専門性を向上させましょう。

後者に関しては、プロジェクトマネジメントスキルの向上を目指すことがおすすめです。災害からの復興は大規模で複雑なプロジェクトです。通常のプロジェクトマネジメントのように、リーダーシップと調整能力が求められます。

各人材には、災害復興時に各方面のステークホルダーとの連携が求められます。そのため、コミュニケーションと連携能力の強化も重要です。

このような人材は中長期的な視野での育成が大切です。防災や復興に関する対策は日々進化しています。最新情報やベストプラクティスにアクセスできるようなトレーニングを実施しましょう。

防災対策がなぜ必要なのか

防災対策は、なぜ企業に必要なのでしょうか。それには、大きく分けて4つの理由があります。

1つ目は従業員の命を救うためです。

従業員は企業の重要な資産であり、災害時にはその命を最優先で守る必要があります。

適切な防災対策があれば、家族を含めた従業員の安全を確保し、応急手当や適切な避難が可能です。

2つ目は事業継続のためです。

防災対策は事業継続性を確保し、災害発生時にも生産性を維持するための基盤を提供します。BCPを策定していれば、事業の中断を最小限に食い止められ、収益損失を最小化できます。

3つ目は効果的な災害対策のためです。

計画と訓練をベースとした的確な対策を実施すれば、災害の被害を最小限に食い止め、事態をコントロールできます。

4つ目が地域への貢献のためです。

地域全体が災害に備え、迅速な対応ができるよう、企業が積極的に取り組むことは社会的責任の一環となるでしょう。

防災意識が低下してしまう原因

災害に備えて、備蓄品を揃えたり防災訓練をしたりしても、防災意識が低下してしまうことは起こり得ます。

その理由としては、3つのケースが考えられます。

1つ目が、防災教育が不十分なケースです。従業員が十分な教育を受けていないため、知識や理解の不足で重要性が理解されず、対応力が低下する可能性があります。

災害時に適切な行動が整理されていなければ、迅速で効果のある対応は難しくなります。

2つ目は、防災への取り組みが見える化されていないケースです。防災対策の成果や成功事例が適切に共有されていなければ、従業員がその取り組みの意義や効果を把握することは難しいでしょう。

見える化が不足すると、防災への動機付けが低下します。

そのほか、防災訓練の形骸化も問題です。防災訓練が単なる形だけのプロセスとなり、毎回同じ内容が繰り返されると、従業員は訓練に対する興味を失い、参加意欲が低下します。

各災害ごとの対策例とは

ひと口に災害といっても、さまざまなものがあり、起こりうる被害や取るべき対応が異なります。

ここでは、地震・洪水・台風の3つの災害に分け、どのような対策を取るとよいかについて紹介します。

地震

地震に対する企業の災害対策としては、建物の耐震性の確認が挙げられます。建物の耐震性は定期的に評価し、必要に応じて補強工事を実施しましょう。

建物の耐震性が高ければ、地震が発生した際の損傷が軽減されます。非構造部分の対策としては、オフィス家具の転倒を予防しておくことがおすすめです。

オフィス内の家具や機器は転倒防止器具を使って固定します。そうすることで、災害時に転倒するリスクが減少し、従業員の安全が確保されます。

避難場所や避難経路の確認も必要です。オフィス内の非常口や避難経路の表示をはっきりさせ、緊急時に迅速に移動できるよう整備します。屋外避難に備えて、広域避難場所や避難場所までの避難経路の確認をしておきましょう。

以下では、地震への対策について詳しく解説しています。

洪水

洪水への対策としては、建物や設備を水から守るために防水シートを準備しておくとよいでしょう。建物内の重要な機器、書類、貴重品を水から守り、被害を最小限に食い止められます。

洪水に限らず、非常用持ち出し袋の確認も大切です。非常用持ち出し袋には避難の際に必要な物品(食料や水、薬品、懐中電灯など)が入っています。従業員はこれらの袋を事前に確認し、必要なものを迅速に持ち出せるようにしましょう。

危険地域を把握するためには、ハザードマップを確認します。ハザードマップは情報が適宜更新されます。企業は定期的に情報を更新し、従業員に共有するようにしましょう。

ハザードマップから得られる情報をベースに、避難経路の確認も行います。担当者は定期的に経路に障害物がないかチェックし、従業員の避難訓練を実施します。

その他水害への対策に関しては、以下の記事も参考にしてください。

台風

台風の場合は、オフィス内で避難する場所を確保します。窓のない場所や構造が頑丈なエリアを選ぶとよいでしょう。

台風発生時は猛烈な風が吹き、窓ガラスやガラス製品は風圧や風、飛来物によって飛散する危険性があります。可能なら、安全ガラスや飛散防止フィルムを利用し、飛散を防げる状態にしておくことが望ましいといえます。

屋外に置かれたものへの対応も必要です。外に置かれた傘や椅子などの移動可能なものは適切に固定し、飛ばされないようにしましょう。

また、台風に伴う豪雨は浸水の原因となります。事前に排水溝や側溝を定期的に清掃し、水の滞留を防ぐことが重要です。

以下の記事では、台風への対策について解説しています。

防災のための知識

被災時の被害を少しでも低減させるために、防災の基礎知識を身につけておきましょう。

避難先や避難方法について把握しておく、危険箇所や救助方法を学んでおくことで、減災・免災につなげられます。

避難先・避難方法

どのルートで避難すればよいかを確かめましょう。避難経路の確認や非常階段や非常口の位置確認をし、災害発生時に迅速な行動が取れるようにします。避難経路はどこにあるかだけでなく、最短で安全な経路を把握しておくことが重要です。

夜間や雨天時などは、避難のタイミングを考慮しましょう。視界が悪くなるため、照明や懐中電灯を利用して避難します。とくに雨天時は地面が滑りやすくなるので足元にも気を配りましょう。避難のタイミングは早めに判断し、適切な対応を心がけます。

避難時は動きやすく目立つ服装を身につけましょう。反射材を使った服装だと暗闇でよく目立ちます。反射材がなければ、できるだけ明るい色の服を身につけることがおすすめです。

このほか、避難経路は一度歩いてみることが重要です。ルートや障害物などを事前に把握しておくと、避難の効率化につながります。

危険箇所・救助方法

災害発生時の危険箇所について把握しておきましょう。建物内や作業場などで、災害時に閉じ込めや下敷きになるリスクが高い場所をマッピングします。これには非常階段や非常口、避難所などが含まれます。

新たな危険箇所が見つかったら、避難計画の見直しも検討しましょう。オフィス内の設備の耐震性を確認し、非常口と避難経路の整備も定期的に点検することで、安全を確保します。

そのほか、万が一の際の救助方法についても従業員への周知徹底が重要です。

災害時に利用できる救助用具(救助ロープ、消火器、救急箱など)が配置されていれば、その場所や使い方について従業員に周知します。定期的な救助訓練を実施し、実際の状況でも的確な判断・行動ができるように備えておきましょう。

避難経路の設定方法

従業員の安全を守るために、どのように避難経路を設定すればよいか考えることが重要です。

オフィスや工場など企業の建物内における安全の確保以外にも、建物から脱出するための経路、企業の敷地内から公的な避難場所までの避難経路など、設定する箇所は多岐にわたります。

ここでは、避難経路の設定方法について紹介します。

建物の構造の確認

建物には日常使用する出口や階段があります。これらの位置や階段の数を確認し、災害時の避難を安全で迅速なものにできるかを検討しましょう。

通常の出口や階段が使用できないときは、非常口や非常階段を使用します。これらの位置や使用方法を確認し、適切な避難経路としての使用を妨げる障害物がないかの定期的なチェックが重要です。

火災が発生している、あるいは建物に損壊がある場合には、使用できる出口や階段が変わります。そのため、さまざまなケースを想定して、より安全に外に出られるルートを考えておきましょう。

災害リスクの評価

災害リスクの評価は、災害の種類ごとに変動します。災害リスクを評価するにあたっては、ハザードマップを確認しましょう。

ハザードマップは地域ごとに異なる自然災害のリスクを示しています。これを確認し、企業や住居がどのような災害リスクにさらされているかを理解しましょう。

また、ハザードマップには避難経路や安全な場所も示されています。これを利用して、適切な避難計画を策定したのち、従業員への周知が重要です。避難については、ひとつの避難経路だけに依存すると、災害の状況によっては通行不能になる可能性があります。

複数の避難経路を確保し、異なる状況にも対応できるよう準備しましょう。地域の気象条件や地形を考慮することも大切です。

気象条件の影響、地形や地質の調査、洪水リスクの評価などを行い、オフィスや工場が置かれている条件下での災害リスクを正しく評価します。

経路の特定

避難経路の選定は大前提として、最短のルートではなく安全に避難できるルートを選びます。危険な地域や建物は避け、通行可能かつ安全なエリアを優先しましょう。ルートを選定したら、実際に歩いて確かめることも大切です。

避難経路は定期的な避難訓練や実地確認を通じて評価します。担当者だけでなく従業員もいっしょに歩き、避難の際の状況や課題を把握しましょう。

避難経路に障害物が発生したり、経路が変更されたりした際には、速やかに修正を行うことが重要です。常に正確な最新情報へ更新することは、従業員の命を守るために役立ちます。ただし、道順が細かすぎるルートは避難には不適切です。避難時に混乱を招かず、道に迷うことなく進めるルートを選定しましょう。

情報の公示

従業員が迷いなく避難行動を取れるよう、適切なサインや案内板を設置しましょう。これにより、従業員が災害時に安全な場所へ確実に避難できます。

危険なエリアや物品の近くには注意喚起のサインを設置します。災害のリスクを周知し、事前に対策を講じましょう。

このほか、防災パンフレットやポスターなどを掲示し、従業員に周知することも有効です。それに合わせて、防災パンフレットやポスターの内容を理解し災害時にどのように行動するかを理解するために、定期的な防災トレーニングや説明会を実施します。

防災情報は変動する可能性があるため、情報は適宜アップデートし、変更があれば速やかに反映しましょう。

会社として防災意識を高める取り組みに着手しよう!

企業が防災意識を高めるためには、継続した計画的な取り組みが不可欠です。

適切な防災訓練を定期的に実施し、消火訓練や避難訓練、救出訓練などを通じて従業員が災害に対する適切な対応を身につけることが大切です。手始めとしてBCPを策定し、従業員の安全を最優先に、事業継続につながる避難計画を構築してみましょう。

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編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。