災害大国である日本において、国や自治体はもちろん、企業や個人のレベルでも災害への備えは必要不可欠です。企業は緊急時に備えて事業への損害を最小限に抑えるためのBCP(事業継続計画)の策定や、物資の備蓄などが挙げられます。
BCPの策定の際に知っておきたい法律の1つが、「災害対策基本法」です。本記事は災害対策基本法が制定された意図や法の内容、近年の改正内容について分かりやすく解説します。
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目次
災害対策基本法とは
災害対策基本法は1961年(昭和36年)に制定された防災に関する法律です。この法律に基づいて作られた国の防災計画を「防災基本計画」といい、これを基にして指定公共機関の「防災業務計画」や、地方自治体の「地域防災計画」が作成されています。
災害対策基本法が制定されたきっかけは、1959年9月に日本へ上陸した伊勢湾台風です。死者・行方不明者5,000人以上、負傷者は4万人近くにのぼり、経済的被害は全国に及ぶ莫大なものになりました。こうした災害での被害を少しでも抑えるため、災害基本法の条文では国、都道府県、市町村、そして住民等それぞれの立場で防災への取り組みを行うことが義務づけられています。
なかでも以下の機関は公共性が高いとされ、「指定公共機関」に位置づけられています。
- 電力、ガス、水道、通信など社会のインフラを担う機関
- 鉄道、石油など交通インフラに関わる機関
- 食料や薬などの生命維持に必要な物資の流通に関わる機関
- 社会の安全のとりでとなる研究機関
指定公共機関となった組織には、防災業務計画の作成と修正や災害予防の実施、災害発生時の災害応急対策の実施など、いくつかの責務が与えられています。
防災対策基本法の3つの柱
防災対策基本法では、次の3つが災害対策の柱として考えられています。
予防 | 台風の位置情報の把握や警報の発令など、災害を予防するための取り組み |
応急措置 | 避難命令や人命救助、情報収集など、災害発生直後の取り組み |
復旧 | 損壊した道路や建物の修復など、被害からの回復と防災性向上のための取り組み |
これらの課題に対応するため、現在も定期的に防災対策基本法の内容が見直されています。
災害対策基本法が定める「防災業務計画」について
災害対策基本法の第36条第1項では、指定行政機関の長や指定公共機関が「防災業務計画」を作成するよう規定しています。防災業務計画はそれぞれの機関に則した内容となっているものの、多くの指定公共機関の計画に共通で盛り込まれている内容として、災害予防対策や災害応急対策、災害復旧に関わる内容などが挙げられます。
(参考:e-Gov法令検索「災害対策基本法」)
災害予防対策
災害予防対策とは、災害に備えて平常時から行うべき対策を計画したものです。災害時に慌てることなく適切な対応を行うためには、災害を意識した準備や訓練を行うことが大切です。
多くの指定公共機関は職員教育、防災訓練、避難対策や設備の確認など、災害時の適切かつ迅速な対応を目的とした計画を策定し、自社のWebサイトなどで公表しています。
たとえば、指定公共機関として防災情報の正確で迅速な伝達が求められている日本放送協会(NHK)の防災業務計画には、視聴者の災害意識を高める目的で、平常時から災害に関する番組を積極的に編成し放送する方針をとることが記載されています。
(参考:NHK「防災業務計画(要旨)」)
災害応急対策
災害応急対策とは、災害が発生した直後に実際にとるべき対策です。災害は発生したあとも時間の経過とともに被害の拡大など状況が刻一刻と変化するため、各指定公共機関にはそれに即して対応することが求められます。
KDDIやNTTドコモなどの通信会社のBCPには、災害応急対策として臨時回線を設定したり、非常通話や緊急通話を一般通話より優先させるように利用制限をかけたりといった、救援活動や生命を護るために必要な重要通信の確保を図ることが定められています。
(参考:KDDI「防災業務計画」)
(参考:NTTドコモ「防災業務計画」)
災害復旧に関わる内容
人的要因が引き起こす災害の予防や災害発生時の応急対策に加えて、いろいろな災害状況を想定したうえで、復旧に向けた手順や計画をあらかじめ規定しておくことも防災業務計画では重要なポイントです。通信、交通など社会インフラや、医療機関などの機能がいち早く復旧すれば、被害の増大を食い止めることにつながります。
各電力会社は水力発電設備や火力発電設備、原子力発電設備、送電設備などのなかで、復旧させるべき設備や送電ラインの優先順位をあらかじめ定めています。もちろんその順位はあくまで原則であり、状況に応じて判断し、効果の大きいものから復旧を行いましょう。
(参考:内閣府「北陸電力株式会社 防災業務計画」)
(参考:内閣府「中部電力株式会社 防災業務計画」)
(参考:内閣府「関西電力株式会社 防災業務計画」)
(参考:内閣府「九州電力株式会社 防災業務計画」)
(参考:内閣府「沖縄電力株式会社 防災業務計画」)
災害防災業務計画を定めるべき機関
災害対策基本法では、防災業務計画を策定する機関として、指定行政機関や指定公共機関、指定地方公共機関などが規定されています。各機関の概要は次の通りです。
指定行政機関
指定行政機関は、法律に基づいて内閣総理大臣が指定する国の行政機関です。災害時の司令塔となる内閣府をはじめ警察庁、国土交通省など各省庁や国家公安委員会、原子力規制委員会など24機関が2012年に指定され、防災業務計画を公表しています。
(参考:内閣府「防災情報のページ 防災業務計画」)
指定公共機関と指定地方公共機関
指定公共機関には公益的事業を営む法人のうち、電気、ガス、電話などの生活インフラを担う組織、高速道路や鉄道、空港など交通インフラを担う組織、赤十字社や医師会など医療に関係する組織、専門的な知識を提供できる各種研究所などが指定されています。2017年6月の改正では、店舗のネットワークを活かした食料品や日用品の安定供給ができるように、セブン-イレブン、ローソン、ファミリーマート、イトーヨーカ堂などコンビニエンスストアやスーパー7法人が新たに追加されています。
指定公共機関以外でも、都道府県知事によって地域の基幹病院などが指定地方公共機関として指定されている場合もあります。
(参考:内閣府「防災情報のページ 防災業務計画」)
近年における災害対策基本法の改正内容
災害対策基本法は変化を続ける実情に合わせるため、毎年少しずつ見直しと改定が行われています。日本国内でも地震や台風などの災害がしばしば起こりますが、そこで得たさまざまな教訓をいち早く法に反映することにより、平常時の意識を高め、非常時に素早く適切な対応をとって被害をより少なくすることが狙いです。
近年では2011年の東日本大震災や2019年の台風19号など被害が甚大であった災害の際に、大きな改正が行われました。
ここでは、主な改正内容を紹介します。。
プッシュ型支援の導入(2012年)
2012年の改正までは、災害時の救援活動は原則各自治体が行うものとされており、国は被災した自治体からの要請を受けて支援を行う流れとなっていました。
しかし、東日本大震災では市役所庁舎ごと津波に飲まれた陸前高田市など、自治体そのものの機能が麻痺する事態に陥り、初動の遅れにつながりました。これを受けて2012年の改正では「プッシュ型支援」という新たな支援の流れを構築しています。
プッシュ型支援では、被災した自治体からの要請を待たずに国が物資を調達し、自治体への緊急輸送を行います。災害が起こってから3日間は自治体の備蓄などで対応し、4~7日目は国が主導して自治体へ物資を送るプッシュ型支援、それ以降は自治体が必要に応じて国に要請するプル型支援に切り替え、物資不足を防ぐという支援の流れです。
このプッシュ型支援が実現したことにより、2014年の熊本地震では熊本県からの要請を待つことなく約263万食の食料を被災地に供給することが可能になりました。
(参考:内閣府「物資支援の計画概要について」)
(参考:内閣府「防災情報のページ プッシュ型支援について」)
住民等の円滑かつ安全な避難の確保(2013年、2021年)
2013年の改正では、市区町村長に向けて住民等の避難に関する内容が新たに定められました。被災者が一定の期間生活するための避難所として指定されている学校などに加え、災害発生時の一時的な緊急避難のための避難場所をあらかじめ指定しておくというものです。選定される施設は津波を想定した場合の海抜など、安全性で一定の基準を満たす必要があります。
そのほか、避難の時に配慮が必要な高齢者や障害者の名簿を作成するために個人情報利用を許可したり、非常時に消防団や民生委員などへ情報を提供したりすることを可能にする旨なども盛り込まれています。
さらに2021年の改正では、避難勧告と避難指示が一本化され、従来の勧告の段階から避難指示が出されるようになりました。この改正の背景には、勧告と指示の違いが正しく理解されていないというアンケート結果や、逃げ遅れてしまうケースが発生していたことが挙げられます。勧告が出た時点ですみやかに避難行動が取れるように、勧告と指示が一本化されました。
(参考:内閣府「防災情報のページ 災害対策基本法等の一部を改正する法律の概要」)
(参考:内閣府「災害対策基本法等の一部を改正する法律の概要」)
放置車両への対策(2014年、2016年)
これまで大きな災害のたびに、道路に乗り捨てられた車が物資輸送の大きな障害になっていましたが、放置車両を強制移動させる法的根拠がないことが問題視されてきました。
そこで2014年の改正では、道路管理者の権限を強化する形で、放置車両の強制移動が認められました。また、移動させる時に放置車両に損害を与えた場合でも、損害の一部が補償されるとしています。
2016年にはこれをさらに強化する形で、港湾管理者や漁港管理者にも放置車両移動の権限が拡大される改正がなされました。これらの改正で救援物資の輸送がよりスムーズに行えるようになり、災害救援の質の向上につながっています。
(参考:内閣府地方分権改革推進室「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案(第6次地方分権一括法案)の概要」)
緊急通行車両の事前確認(2023年)
2023年の改正では、災害時の対応をより円滑に実施できるようにするため、緊急通行車両に関する改正が行われました。
緊急通行車両とは、人や物資の輸送といった災害時の対応を行うための車両として道路交通法に定められているものです。災害発生時には、道路の区間を指定し、緊急通行車両以外の通行を禁止するといった制限が行われる場合があります。
従来は、緊急通行車両に該当するかの確認は災害発生時のみ行うこととされていましたが、2023年からは災害が発生する前の時点から確認できるように改正されました。この改正により、緊急通行車両による災害対策をよりスムーズに実施できるようになっています。
(参考:内閣府「災害対策基本法施行令等の一部を改正する政令について(概要)」)
企業の災害対策としてBCPを策定しよう
災害が発生すると事業に大きな影響が生じます。事業と従業員を守るために、企業も災害対策をしておく必要があるでしょう。企業の災害対策には、災害対策基本法の内容を踏まえたBCPの策定が効果的です。
BCPとは、災害などの緊急時に備えて企業が作成する事業継続計画のことです。BCPを策定する際は、自社の中核事業や想定されるリスクを洗い出した上で、具体的な対策を決める必要があります。
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災害対策基本法はBCP策定の基となる法律
今回は災害対策基本法とそれを基にした防災業務計画、近年の改正内容について説明しました。業務を継続できることは、災害時に企業が行える最大の社会貢献でもあります。災害時のトラブルを予測しつつ、素早い連絡体制で被害を最小限にとどめられるように、安否確認サービスを前もって導入しておくのもBCPの一環として有効です。災害対策基本法とその改訂内容をもう一度確認して、BCPの見直しや更新をしてみてはいかがでしょうか。
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