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災害時は感染症にも注意!企業が事前にできる対策を紹介

災害時は感染症にも注意!企業が事前にできる対策を紹介

地震・豪雨などの災害は人命・企業の設備を脅かすものです。それだけでなく、災害後に被災地で流行する感染症も、事業の継続を阻む大きな障害となります。


この記事では災害時に注意すべき感染症とその原因、そして企業が取るべき具体的な対策を紹介します。従業員の安全を確保するための実践的な知識を身につけましょう。

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編集者:遠藤香大(えんどう こうだい)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部に所属。2024年、トヨクモ株式会社に入社。『kintone連携サービス』のサポート業務を経て、現在はトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営メンバーとして編集・校正業務に携わる。海外での資源開発による災害・健康リスクや、企業のレピュテーションリスクに関する研究経験がある。本メディアでは労働安全衛生法の記事を中心に、BCPに関するさまざまな分野を担当。

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企業に災害時の感染症対策が必要な理由

事業活動を支える「人」を、企業は最大限に守る必要があります。

従業員の多くが感染すると、事業の継続に支障が生じます。従業員の健康を守り安全を確保することは、事業の継続にとって極めて重要です。事業活動に支障が生じると、事業に依存している多くの顧客や取引先にとっても大きな問題となるでしょう。

災害時は電気・ガス・水道などのインフラに支障が生じます。道路や鉄道などの交通が制限され、物資が滞ることもあります。被災している期間が長引けば栄養の摂取や衛生管理が十分に行われず、感染症がまん延する危険性が高くなるのです。

災害時の感染症で企業活動に支障が生じた顕著な例は報告されていませんが、令和6年能登半島地震では、避難所やボランティア活動における感染症の発生が警告されました。

事業所に対する被害のみであれば、異なる場所で事業継続できる可能性がありますが、従業員が勤務できない状況は避けなければなりません。

災害時の感染症の原因

感染症が蔓延する環境的、身体的な原因と、対策方法について紹介します。

徳島県保健福祉部が作成した「避難所における感染症対策の取り組みについて」によると、感染症が流行る原因と対策は以下の通りだと考えられています。

環境的な要因具体的な対策
・狭い面積
・密集した生活環境
・不慣れな環境
・排水・トイレ環境の整備
・調理環境の不備
・気候
・適度な居住空間の確保
・適切な換気
・適度な温度・湿度
・調理時の対応
・トイレの整備
・上水・排水設備
身体的な原因具体的な個人の対策
・体力の低下
・精神的な疲労
・手洗い
・マスク(咳エチケット)
・十分な睡眠・休息
・適切な栄養管理

▲出典:医療とくしま

表の左側にある「環境的な原因」「身体的な原因」を見ると、狭い面積や密集した生活環境で普段と異なる慣れない生活が体調を崩す原因であることが分かります。

右側の「具体的な対策」の内容をすべて達成できることが理想ですが、避難所によっては実現が難しい場合があります。個人で手洗い、マスク、睡眠、休息、適切な栄養管理などを徹底することが重要です。

発生する感染症

ここでは災害時に発生する感染症の種類を、「災害初期」と「数週間後」の段階に分けて解説します。

災害初期の脅威

初期の段階では、以下のような感染症が脅威となります。

  • インフルエンザ
  • 消化器感染症(ノロウイルス)
  • 呼吸器疾患(粉じんによる喘息などの呼吸器疾患の悪化)
  • ケガ、転倒などによる感染症(破傷風、レジオネラ症など)

インフルエンザやノロウイルスは、冬に発生しやすい感染症です。
ノロウイルスは感染者の吐しゃ物(嘔吐や下痢など)を介して二次感染するため、汚物の処理や消毒、除菌を徹底します。

呼吸器疾患を引き起こす原因には、以下のものが挙げられます。

  • 寝具のほこり
  • たばこの煙
  • たき火
  • 動物
  • がれき撤去で発生する粉じん

咳が出やすくなり、喘息発作が起きる場合があります。

破傷風は危険性が高く、国立感染症研究所のWebサイトによると全症例の80%を占める全身性破傷風の死亡率は10%~20%です。
誤って物を踏んだときに足に傷を負ったり、動物に噛まれてケガを負ったりしたときなどに、傷口に菌が入り込んで感染します。毒素を通してさまざまな神経に作用し、亡くなることもあるため非常に危険です。

数週間後の脅威

災害から数週間が経過した段階では、以下のような感染症が脅威となります。

  • 蚊の繁殖による日本脳炎(夏期)
  • ハエやネズミの繁殖によるレプトスピラ症・ハンタ腎出血性症候群

水溜りは蚊が繁殖しやすく、放置された食料品やゴミ、がれきがあるとハエやネズミの発生につながります。

能登半島で警告された感染症

令和6年能登半島地震の際のリスクアセスメントにおいて、次に挙げる感染症はとくに高いリスクが警告されました。

  1. 急性呼吸器感染症(インフルエンザ・COVID-19を含む)
  2. 破傷風
  3. 創傷関連皮膚・軟部組織感染症
  4. 麻疹(はしか)

インフルエンザや新型コロナウイルス感染症(COVID-19)については、避難所やボランティア活動での手指衛生、マスク着用などの咳エチケットの実践が求められています。

破傷風・創傷関連皮膚・軟部組織感染症については、がれき撤去の作業にあたる際に軍手・長袖・長ズボンを着用し、ケガをしないよう注意が促されました。

麻疹(はしか)については、避難所に乳幼児やワクチン未接種者などが居住する場合に感染が警戒されます。

症状が認められる患者が出た場合は、いずれの感染症においても速やかな隔離が必要とされています。

(参考:国立感染症研究所「令和6年能登半島地震による石川県における被害・感染症に関するリスクアセスメント表」)

災害時にできる対策

ここでは災害時に発生する感染症と原因への対策を含め、災害時にできる感染症対策についてまとめます。個人でできる対策も含まれるため、被災時に実行できるようにきちんと理解しておきましょう。

(参考:厚生労働省「災害時における避難所での感染症対策」)

手洗い・手指消毒の徹底

作業時や食事、トイレの際などの、こまめな手洗いを心がけましょう。
厚生労働省は、正しい手の洗い方として以下の6ステップを挙げています。

  1. 流水でよく手を濡らしたあと、石けんをつけ、手のひらをよくこする
  2. 手の甲を伸ばすようにこする
  3. 指先、爪の間を念入りにこする
  4. 指の間を洗う
  5. 親指と手のひらをねじり洗いする
  6. 手首を洗う

洗ったあとは、十分に水で流して清潔なタオルでよく拭き取って乾かします。

なお、流水で手洗いができない場合は、アルコールを含んだ「手指消毒薬」を使用しましょう。手順は、厚生労働省「流水で手洗いできない場合の手指消毒について」が参考になります。

咳エチケットとマスクの着用

避難所や病院などの人が集まるところでは「咳エチケット」「マスクの着用」を実践しましょう。

厚生労働省が奨励する咳エチケットは、以下の3つです。

  1. マスクを着用する(口・鼻を覆う)
  2. ティッシュ・ハンカチで口・鼻を覆う
  3. 袖で口・鼻を覆う

マスクは、以下の手順で着用します。

  1. 鼻と口の両方を確実に覆う
  2. ゴムひもを耳にかける
  3. 隙間がないよう鼻まで覆う

何もせずに咳やくしゃみをしたり、咳やくしゃみを手で押さえることがないように気をつけましょう。

従業員の体調管理

感染症が流行している際には、社員に朝の体温測定を義務付け、体調に関するアンケートを実施することが有効です。感染の疑いがある社員に対しては出社を控えるよう指導することで、感染拡大を防ぐのに役立ちます。

また、アンケートは平時に準備をしておくことで、いざというと時にスムーズに情報を収集することができます。緊急連絡をサポートする専用システム、安否確認システムを使えば、アンケートの一斉送信や集計の負担を最小限に抑えることができます。また、災害が発生した時にはアンケート付きの通知を自動的に行い、集計まで自動化するシステムもあるので、感染症対策だけでなく、自然災害対策という広い視点からシステムを選定すると良いでしょう。

こちらの記事では、保育園や幼稚園を運営するグループ企業が、新型コロナウイルスの流行時に従業員の体調管理のため、安否確認システム『安否確認サービス2』を活用した事例を紹介しています。

避難所の衛生管理

避難所やその周辺で感染が拡大しないために、以下のような対策をして衛生管理を行います。

  • 汚物の処理や消毒、除菌を行う
  • 粉じんの発生を抑える、粉じんを吸い込まない
  • 換気をよくする
  • 作業をする際の長袖・長ズボンの着用(ケガをしにくい服装)

トイレの衛生管理については、以下のことを徹底しましょう。

  • 居住区域は土足厳禁
  • 手洗い場とトイレはなるべく近くに設置
  • 流水またはアルコールを含んだ手指消毒薬を使用する

下痢や嘔吐、発熱など、体調の悪い人がいないかを常に注意を払います。

その他、袋入りの食べ物は手でちぎったりせず直接食べることや、おにぎりを握るときに使い捨ての手袋やラップを使用することなど、飲食時にできる感染症対策もあります。

適切な栄養管理

食事が偏ると、栄養不良による体力低下が懸念されます。

避難所での被災者の食事は、おにぎりや菓子パンなどに偏る傾向があります。災害が発生してから時間が経過するほど、栄養の偏りのため体力・健康の維持が困難です。

肉・魚・乳製品・野菜などもバランスよく摂取できるよう、適切な栄養管理を実施する必要があるでしょう。

水分を摂って、適度な運動をすることも大切です。

企業の担当者ができる事前対策

ここでは災害時の感染症対策について、企業の担当者ができる事前の対策、備えについて解説します。

BCPを策定する

BCP(事業継続計画)とは、企業が災害を含む緊急事態に直面した場合でも、事業の継続や早期復旧が行えるよう、対策や手段を講じる計画を事前に立案することです。

このような計画は、災害時に感染症が発生した場合にも有効に作用します。
企業は事業活動を継続することが第一のため、災害が発生しても未然に感染を防ぐことが重要です。

BCPの取り組みのポイントを紹介します。

平時の取り組み

BCPの平時の取り組みとして、とくに重要なことは以下のような行動指針および備蓄です。

  • 体制の整備・担当者の決定
  • 連絡先の整理
  • 研修・訓練
  • 備蓄

災害時には、指示系統や情報の集約先が明確である必要があります。非常時に誰がどの役割を請け負うのか、誰の指示を優先するかは企業内で共有しておきましょう。また人の異動に伴い、定期的に更新することも重要です。

指示系統や緊急連絡システムが十分に機能するために、連絡先の名簿は定期的に整理しましょう。

企業や担当者が十分な備えをしていても、従業員がシステムの利用方法を知らなかったり備蓄の保存場所が分からなかったりでは活かせません。研修や訓練を行い、災害時に対応できる基盤を作りましょう。

感染発生時の対応

感染が疑われた場合の対応では、以下がポイントとなります。

  • 情報共有・発信
  • 従業員の確保
  • 業務の優先順位の整理
  • 労務管理

まずは、感染状況の把握と発信が重要です。発症した従業員と発症時期が分かれば、感染が疑われる従業員が、病院に行く、検査キットを使用するなどの対応が取れます。

次に、出社か在宅かを切り替える基準や、他社への訪問やお客の来訪の禁止、勤怠管理など労務に関するルールの変更を行います。さらに感染症による人員不足が懸念される場合は、業務の優先順位の整理を行い、シフトの変更やテレワークの導入で従業員を確保しましょう。

BCPは計画だけでなく、実施のための訓練や設備のメンテナンスを含め、実効性が保てるよう普段からシミュレーションしておきます。

(参考:厚生労働省「介護施設・事業所における感染症発生時の業務継続ガイドライン」)

BCPの策定にはトヨクモが提供する『BCP策定支援サービス(ライト版)』がおすすめです。実績あるコンサルタントにより、それぞれの企業に合ったBCPを策定可能です。最短1カ月で策定でき、費用も1カ月15万円(税抜)からと利用しやすい設定になっています。

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BCPによる事前準備には、以下も含まれます。

  • ワクチン接種の推進
  • 十分な備蓄

それぞれ具体的な内容を見ていきましょう。

ワクチン接種を推進する

前述の能登半島地震の際のリスクアセスメントでは、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症、破傷風や麻疹(はしか)などのリスクが顕著でした。また風疹もこれらに次ぐリスクが示されています。

風疹は若い世代に抗体が少なく、妊婦が感染すると障害を持つ子どもが生まれる可能性が指摘されています。被災地にはボランティアとして派遣される若者も多く、自身が感染したり媒介となることも考えられるでしょう。

企業では、避難所で過ごす従業員や家族、業務やボランティアで被災地を訪れる従業員に、ワクチン接種を推進することが重要な対策の1つです。

十分な備蓄

災害時の感染症対策として、水や食料の備蓄は欠かせません。感染の予防はもとより、感染が報告された場合の早期回復など、事業継続の観点からも重要です。

オフィスで必要な備品・備蓄の例は、以下のとおりです。

  • 水:1人あたり1日3L
  • 主食:1人あたり1日3食
  • 緊急用の薬:胃腸薬・解熱剤・持病の処方薬
  • 毛布・保温シート・ビニルシート
  • 簡易トイレ・衛生用品
  • 携帯ラジオ・懐中電灯・乾電池
  • 救急セット
  • マスク・歯ブラシ・生理用ナプキン
  • 工具類
  • 調理器具
  • 照明器具
  • ヘルメット・手袋など作業用品
  • その他

備蓄の目安は、災害発生後3日間に従業員や来社中の取引先・顧客が困らない程度の量が基本です。

オフィスが物理的な被害を受けた場合は、PCや複合機などオフィス機器が使えなくなることも想定されます。
これらの設備が揃ったバックアップオフィスを別の拠点に設けることも検討が必要です。

(関連記事:「【防災備蓄】企業防災の備品・備蓄は何が必要?非常食のメンテナンス方法も紹介」)

安否確認システムは従業員の健康管理にも利用可能

災害時の感染症防止には、日頃からの健康管理と感染防止目的の知識を共有しておくことが重要です。安否確認システムの中には、被災時の安否確認以外に従業員を対象にした情報の共有や、平常時のアンケートにも利用できます。

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事前に準備を重ね、災害・感染症でも従業員の健康を守れる企業へ

地域が災害に見舞われ、多くの従業員や家族が避難所での生活を余儀なくされても、企業は事業を継続しなければなりません。従業員の安全を確保するとともに、感染症の発生を防ぎ、健康を守ることによって事業の継続が可能です。

事前の準備を重ね、対策を徹底して感染者を出さないことがもっとも重要です。
万が一感染が発生した場合は、早期の復旧によって感染を最小限に抑えることが求められます。

安否確認サービス2の製品サイトに遷移します。
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編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。