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労働基準法第33条(災害時の時間外労働等)とは|手続きや罰則を解説

労働基準法第33条(災害時の時間外労働等)とは|手続きや罰則を解説

労働基準法では、従業員の健康と安全を守るために、労働時間や休日に関するさまざまな規定が設けられています。この労働基準法で、法定労働時間は1日8時間、1週間で40時間以内と定められています。36協定を締結した場合でも、時間外労働が月45時間、年360時間を超えてはなりません。

しかし、災害などの緊急事態が発生した場合、これらの規定の適用が除外される場合があります。これは、労働基準法第33条の適用によるものです。

この記事では、労働基準法第33条についてわかりやすく解説します。適用される要件や必要な手続き、違反した場合の企業への罰則を説明するため、自然災害が発生した際の対応について検討している企業の経営層や防災担当の方は参考にしてください。

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編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。

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労働基準法第33条(災害時の時間外労働等)とは

労働基準法第33条は、臨時の必要がある場合に、労働者を使用する立場にある人(使用者)は行政官庁の許可を受けて、時間外労働や休日労働を行わせられると定めた法律です。災害やそのほかの避けることのできない事由がある際に適用され、36協定で定める延長時間とは別に、必要な時間外・休日労働を行うことが認められます。

労働基準法第33条「災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等」は以下のとおりです。

(災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等)

第三十三条災害その他避けることのできない事由によつて、臨時の必要がある場合においては、使用者は、行政官庁の許可を受けて、その必要の限度において第三十二条から前条まで若しくは第四十条の労働時間を延長し、又は第三十五条の休日に労働させることができる。ただし、事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合においては、事後に遅滞なく届け出なければならない。

(引用:e-GOV法令検索|労働基準法

時間外労働・休日労働の上限規制について

労働基準法では定められている法定労働時間は、1日8時間、1週間で40時間以内です。また、少なくとも毎週1回、もしくは4週間で4日は休日を与えなければならないと定められています。

法定労働時間を超えて従業員に時間外労働をさせる場合や、法定休日に労働させる場合には、36協定を結び、所轄の労働基準監督署長へ届出をする必要があります。36協定を結んだ場合の時間外労働の上限は、原則として月45時間、年360時間です。

ただし、臨時的な特別の事情によって36協定を結ぶ場合には、上記の上限を超えて労働させられます。その場合でも、以下の条件を満たす必要があります。

  • 時間外労働が年720時間以内である
  • 時間外労働と休⽇労働の合計が⽉100時間未満である
  • 時間外労働と休⽇労働の合計について、2〜6ヶ月の平均がすべて1月あたり80時間以内となっている
  • ⽉45時間を超えて時間外労働をする月数を、年6ヶ月までに抑える

労働基準法第33条の「災害その他避けることのできない事由」に該当するもの

労働基準法第33条の条文には「災害その他避けることのできない事由」という文言が使用されています。労働基準法を違反してしまう事態を防ぐために、どのようなケースが該当するのか理解しておきましょう。

自然災害が発生した場合

厚労労働省の「災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等に係る許可基準の一部改正について」では、該当する自然災害として以下のものを挙げています。

  • 地震
  • 津波
  • 風水害
  • 雪害
  • 爆発
  • 火災

たとえば、地震が発生し、ライフラインを早期に復旧させるための対応やリコール対応は、労働基準法第33条の「災害その他避けることのできない事由」に該当します。

なお、感染症への対策については労働の緊急性・必要性などを勘案し、個別に判断されるため、一概に該当するとは言えません。新型コロナウイルスは指定感染症に定められており、急病への対応は人命・公益の保護の観点から急務であるため、「災害その他避けることのできない事由」に該当するものと考えられています。

突発的な機械・設備の故障によって事業の運営が困難となる場合

労働基準法第33条の「災害その他避けることのできない事由」に該当するものは、自然災害だけではありません。厚労労働省の「災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等に係る許可基準の一部改正について」では、事業の運営を不可能とするような突発的な機械・設備の故障の修理なども、該当するとしています。

たとえば、サーバー攻撃によってシステムがダウンした際、システムを復旧させるための対応は「災害その他避けることのできない事由」に該当します。

労働基準法第33条を適用するための手続き

基本的には、所轄の労働基準監督署長の許可を事前に得たうえで、従業員に時間外労働をさせます。

ただし、緊急の事態で許可を受ける時間的余裕がない場合には、事前の許可は必要ありません。そのような場合でも、事後すみやかに所轄の労働基準監督署長に届出を提出することが義務付けられています。

事前に許可を得る手続き

事前に許可を得る場合には、様式第6号「非常災害等の理由による労働時間延長・休日労働許可申請書」のほか、「災害その他避けることのできない事由」に該当するかを判断できる資料がある場合には、あわせて提出する必要があります。

「非常災害等の理由による労働時間延長・休日労働許可申請書」は、厚生労働省の主要様式ダウンロードコーナーにて、Word形式でダウンロードできます。記入項目は、以下のとおりです。

  • 事業の種類
  • 事業の名称
  • 事業の所在地
  • 時間延長を必要とする事由
  • 時間延長を行う期間および延長時間
  • 時間を延長する労働者数
  • 休日労働を必要とする事由
  • 休日労働を行う年月日
  • 休日労働を行う労働者数

事後に届け出る手続き

事後に届け出る場合も、様式第6号「非常災害等の理由による労働時間延長・休日労働届」のほか、「災害その他避けることのできない事由」に該当するかを判断できる資料がある場合には、あわせて提出します。「非常災害等の理由による労働時間延長・休日労働届」は、厚生労働省の主要様式ダウンロードコーナーから、Word形式でダウンロードできます。

事前に許可を得る場合には「非常災害等の理由による労働時間延長・休日労働許可申請書」を提出しますが、事後に届け出る場合には「非常災害等の理由による労働時間延長・休日労働届」を提出します。申請書と届けという点で、書類の名称は異なるものの、記入する項目は同じです。

なお、各労働局の公式サイトにて、記載例が紹介されています。どのように記入するかわからない場合には、参考にしてみるとよいでしょう。

労働基準法第33条に違反した場合の罰則

労働基準法第120条1項に、労働基準法第33条に違反した場合の罰則が定められています。従業員に時間外労働させたにもかかわらず、適切に届出を提出しなかった場合には、30万円以下の罰金が科されます。

労働基準法に違反して送検された場合、企業名が公表されることがあります。企業名が公表されれば、社会からブラック企業として認知され、採用活動や事業活動に大きな影響を及ぼすこととなります。

そのため、従業員に時間外労働をさせる場合には、適切に手続きを行いましょう。

従業員に時間外労働を行わせる場合の注意点

従業員に時間外労働を行わせる場合の注意点を紹介します。

割増賃金を支払う

従業員に時間外労働を行わせる場合、割増賃金を支払う必要があります。これは労働基準法第33条を適用した場合も例外ではありません。

以下に割増賃金の種類と割増率についてまとめました。

種類割増率支払う条件
時間外手当25%以上法定労働時間を超えた場合時間外労働が1か月45時間、1年で360時間を超えた場合
時間外手当50%以上時間外労働が1か月60時間を超えた場合
休日手当35%以上法定休日に勤務させた場合
深夜手当25%以上22時から5時までに勤務させた場合

(参考:東京労働局|しっかりマスター 割増賃金編

従業員の健康管理を徹底して行う

時間外労働は、従業員の心身に負担を与えるものです。疲労やストレスが溜まると、脳や心臓の疾患を引き起こすリスクが高くなります。従業員が健康を損ねないように、時間外労働を行わせる場合には、健康管理を徹底しましょう。

従業員の健康を管理するための具体的な措置は、以下のとおりです。

  • 適切に産業医と衛生管理者を専任する
  • 産業医に労働者の健康管理に必要な情報を提供する
  • 産業医に健康相談できる体制を整備する
  • 衛生委員会を設置する
  • 健康診断を1年に1回以上実施する
  • 健康診断で異常の初見があった場合には、適切に事後措置を講じる

従業員の安全の確保には安否確認システムの導入も有効

従業員の健康を守るためには、適切な労働時間管理が重要です。しかし、災害発生時の従業員の安全確保対策を講じていなければ、従業員の安全対策としては不十分でしょう。

近年、災害が頻発しており、地震や豪雨などの災害はいつ起こってもおかしくありません。災害発生時に従業員の命を守れるよう、オフィス家具の固定や避難経路の共有など、従業員を守るための対策を事前に講じておく必要があります。

また、安否確認システムの導入も、従業員の安全確保に有効な方法のひとつです。安否確認システムとは、災害発生時に自動的に従業員に安否確認メッセージを送信するシステムのことです。短時間で従業員の安否を確認できるため、救助が必要な従業員を把握し、安全確保のために適切な指示が行えます。

さらに、緊急対応可能な従業員も把握することが可能です。迅速に次のアクションに移ることにより、事業の早期復旧にもつながります。まだ安否確認システムを導入していない企業は、この機会に導入を検討してみてください。

時間外労働を行わせる場合には適切な手続きが必要

労働基準法第33条は、災害その他避けることのできない事由によって臨時の必要がある場合に、時間外労働や休日労働を行わせることを認めた例外規定です。ただし、この規定を適用するには、所轄の労働基準監督署長への許可申請や届出が必要であり、手続きを適切に行わなければ罰則の対象となります。

また、従業員に時間外労働を行わせる場合には、割増賃金の支払いや健康管理の徹底など、労働者の権利や健康に配慮することが重要となります。

事業を継続するうえで、従業員の安全と健康は欠かせません。自然災害が発生した際の対策も検討し、従業員の安全確保と事業継続を図りましょう。

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編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。