【企業の対応チェック表】南海トラフ地震臨時情報に企業はどう動くべきか?想定される影響と対応策を解説

遠藤 香大(えんどう こうだい)
近年、南海トラフ地震臨時情報の発表が続き、多くの企業が対応に追われまています。「巨大地震注意」や「巨大地震警戒」が発表された場合、どの程度のリスクが想定され、自社の業務にどのような影響が出るのでしょうか?
この記事では、南海トラフ地震臨時情報による企業への影響を整理し、企業が取るべき対応策について分かりやすく解説します。交通機関の遅延や浸水リスクといったリスクへの備えをはじめ、「リモートワークの緩和」や「代替拠点の整備」といった具体的な対策を紹介します。自社の防災計画を再確認し、事業継続について考えるきっかけにしてください。
目次
南海トラフ地震臨時情報とは?
南海トラフ地震臨時情報とは、南海トラフ沿いで異常な現象が観測された際に、気象庁が発表する情報です。この情報は、地震発生のリスクが平常時と比べて高まった場合に、国民や企業に警戒を促すことを目的としています。
たとえば、プレートの動きが活発になったり、通常とは異なる地震の発生パターンが見られた場合に発表されます。この臨時情報には「巨大地震注意」や「巨大地震警戒」といった段階があり、それぞれの段階で想定されるリスクや必要な対応が異なります。
南海トラフ地震臨時情報の種類
南海トラフ地震臨時情報は、情報名の後にキーワードを付記して発表されます。
キーワード | 発表の条件 | 措置 |
---|---|---|
調査中 | 南海トラフ沿いで異常な現象が観測され、その現象が南海トラフ地震との関連性の検討が必要と認められた場合。 | |
巨大地震注意 | 南海トラフ想定震源域内で以下のいずれかが発生した場合 ・マグニチュード7.0以上8.0未満の地震 ・通常とは異なるゆっくりすべりの観測。 | ・国から国民に対し1週間、後発地震に備える旨が発表される。 |
巨大地震警戒 | 南海トラフ想定震源域内でマグニチュード8.0以上の地震が発生した場合。 | ・事前対象地域では、地震発生後の避難では間に合わない可能性のある住民は1週間の事前避難 ・避難解除後も、国から国民に対し1週間、後発地震に備える旨が発表される。 |
調査終了 | 調査の結果、(巨大地震注意)(巨大地震警戒)のどちらにも当たらないと判断された場合。 |
特に注意すべきなのが、「巨大地震警戒」です。すでにマグニチュード8.0以上の地震が発生しているため、企業活動にも影響が及んでいる可能性があります。例えば、自社や取引先の被災、従業員の出社困難といった状況が想定されます。こうした影響を踏まえ、臨時情報が発表された際の対応を事前に検討しておくことが重要です。
また、リスクの高い約140市町村が事前避難対象地域に設定されています。これらの地域は、地域全体で避難が求められる区域と、高齢者など要配慮者が優先的に避難する区域に分かれています。自社の事業所や従業員の住む地域、取引先が該当していないか、あらかじめ確認しておくことが重要です。
臨時情報発表時の企業活動について、内閣府のガイドラインでは以下のように記載されています。
地震発生時期等の確度の高い予測は困難であり、完全に安全な防災対応を実施することは現実的に困難であることを踏まえ、日頃からの地震への備えを再確認する等警戒レベルを上げることを基本に、個々の状況に応じて適切な防災対応を実施したうえで、できる限り事業を継続することが望ましい
引用:内閣府「南海トラフ地震の多様な発生形態に備えた防災対応検討ガイドライン【第1版】」
しかし、情報が発表される段階では、リスクが高い地域に所在する企業の活動に多かれ少なかれ影響が出るのは避けられません。それでは、具体的にどのようなリスクが考えられるのでしょうか?
【表で解説】企業のリスク・求められる対応は?
臨時情報による企業のリスク表
内閣府ガイドラインや2024年に発表された「巨大地震注意」で発生した事象などを参考に、臨時情報が企業活動に与えるリスクと影響を整理しました。
臨時情報の種類 | リスク・影響 | 詳細 |
---|---|---|
巨大地震注意 | 交通機関の遅延 | 新幹線や在来線の速度低下や停車駅の増加により、従業員の通勤時間などが長引く可能性。 |
浸水想定区域の事業所縮小・閉鎖 | 必要に応じて事業所を閉鎖、もしくは一部機能を縮小する可能性。 | |
消費活動の委縮 | 2024年8月の発表時では、贈答品の買い控えや観光地での宿泊キャンセルが発生。 | |
巨大地震警戒 | 交通機関の運休・遅延 | 東海道新幹線の一部区間運休や在来線の運休、高速道路の速度制限などが想定される。 |
事前避難対象地域の事業所縮小・閉鎖 | 事前避難対象地域に位置し、通常通りの企業活動をした場合に生命に危険が及ぶ場合、従業員も退避が必要。 | |
長期的な避難対応 | 事前避難対象地域の自社・取引先の従業員が長期不在となり、業務継続に支障。 |
巨大地震注意の場合、基本的な社会活動が継続されます。多くの企業にとっては交通機関の遅延や消費活動の萎縮がメインのリスクとなります。地元交通機関や自治体の対応状況をあらかじめ調査しておくことが重要です。
一方巨大地震警戒の場合、マグニチュード8.0以上の地震が発生した後に発令されるため、企業活動への影響は非常に大きくなりえます。特に、事前避難対象地域では住民の避難が必要となり、対応の長期化も想定されます。事業所の縮小や閉鎖、従業員の不在などを見越した業務計画を事前に準備しておくことが求められます。
臨時情報による企業の対応チェック表
以下に、リスクごとに対応策の例を整理しました。
種類 | 影響 | 対応策例 |
---|---|---|
巨大地震注意 | 交通機関の遅延 | ・出勤時間の調整 ・フレックスタイム、在宅勤務を一時的に導入 |
事業所の機能縮小・閉鎖 | ・浸水区域の従業員リスト作成 ・避難計画を再度周知 | |
消費活動の委縮 | ・キャンセル対応の整備 ・自施設の危険性や安全性について、顧客へ説明 ・オンライン販売への案内 | |
巨大地震警戒 | 交通の混乱 | ・物流計画の調整 ・代替輸送手段の確保 ・在庫の積み増し |
事業所閉鎖 | ・リモートワークの整備(重要書類・PC持ち帰り指示) ・代替拠点を整備、対象従業員を移動 | |
従業員の長期避難 | ・避難対象者に飲料水や簡易食料を提供 ・安否確認システムで状況を追跡し、代替人員を配置 |
特に「巨大地震警戒」が発表された場合、交通や物流の混乱に加え、本社や自治体からの要請で事業所の縮小や閉鎖が求められる可能性があります。また、一部の地域では警報解除後も避難が長期化し、事業所の再開が遅れることも考えられます。
内閣府のガイドラインでは、「一時的に企業活動が低下しても、後発地震が発生した場合にトータルとして事業軽減・早期復旧できる、普段以上に警戒する措置を推奨 」としています。企業としても、事業活動を一時的に抑える判断を含め、事前の対策とBCP(事業継続計画)の強化を進めることが求められます。
情報発表前後に「必ずやるべき」行動リスト
1.BCPの確認
南海トラフ地震臨時情報の発表後、たとえ実際に地震が発生しなかった場合でも、高リスク地域では数週間にわたり、自社や取引先の事業に長期間影響が及ぶ可能性があります。こうしたリスクに備えるためには、南海トラフ地震を想定したBCPを強化する形で、臨時情報への対応を盛り込むことを強くお勧めします。
まだBCPを策定していない場合は、こちらの記事で紹介しているBCPテンプレートを活用し、策定してみてください。
2.安否確認方法の確認
従業員の安否確認方法の見直しは最優先事項の一つです。内閣府の資料でも、「巨大地震警戒」の発表時には「日頃からの地震への備えの再確認」を行うことが推奨されており、その中でも真っ先に挙げられています。
ただ、電話やチャットツールなどで安否を確認し、それを手作業で集計する従来の手法では、多くの時間がかかり、担当者の負担も大きくなります。また、南海トラフ地震のように大規模な被害が予想される場合には、通信回線の混乱やサーバーへの影響にも耐えうる確実な手段が求められます。
災害時に担当者の負担を軽減しながら、確実に安否確認を行う方法として、トヨクモの安否確認サービス2を導入する企業や自治体が増えています。このサービスでは、気象庁の警報を受けて安否確認通知を自動で送信し、回答も自動で集計できます。さらに、サーバーを海外に分散することで、安定した稼働を追求している点も大きな特徴です。
下記のように、東海地域の企業・自治体でも多数導入されています。
浜松市役所

浜松市役所では、災害時に電話を使った安否確認を行っていました。しかし、回線が混雑することで繋がりにくくなったり、繰り返しの電話連絡で携帯バッテリーが消耗してしまうといった課題を抱えていました。これらを解決するため、安定稼働への信頼性と自由に編集できる設問フォームが決め手となり、トヨクモの安否確認サービス2を導入しました。
導入後は、地震時の安否確認に限らず、コロナ禍では病院ごとの重症度別入院状況の報告など、幅広い用途で活用されています。
(参考:安否確認サービス2導入事例 浜松市役所様)
ヤクルト東海

ヤクルト東海では、以前はグループウェアのアンケート機能を使って安否確認訓練を実施していましたが、ログイン手続きの手間や従業員からの問い合わせが多く、効率的な運用を模索していました。自動で安否確認通知を送信し、集計ができる安否確認サービス2を導入したことで、以前より担当者の負担が大幅に軽減されています。
南海トラフ地震臨時情報や、それに先立つ地震が発生した場合、現場が混乱することが予想されます。こうした状況下で、確実に安否確認を行い、担当者の負担を軽減できるツールとして、トヨクモの安否確認サービス2は強くお勧めできます。
(参考:安否確認サービス2導入事例 浜松市役所様)
3.日頃からの備えの強化
災害時に備えた対策が十分に機能するか、日頃から広く確認しておくことが重要です。まず、備蓄品の点検を行い、飲料水や非常食、医薬品などの不足がないかチェックしましょう。また、ハザードマップを活用して、浸水想定区域や避難場所を把握することも欠かせません。
さらに、地元の公共交通機関の運行状況が、災害時や臨時情報発表時にどのように変化するかを調査しておくと、従業員の通勤や物流計画を立てやすくなります。
4.従業員周知
南海トラフ地震臨時情報が発表されると、「事業所を閉鎖する」「顧客から多数の問い合わせを受ける」「在宅勤務の従業員が急増する」など、通常とは異なるイレギュラーな対応が求められる場合があります。さらに、地震が既に発生して被害が出ている中で情報が発表されるケースもあるため、混乱を避けるための準備が重要です。
事前に対応方針をまとめ、全従業員に周知しておくことで、緊急時の混乱を最小限に抑えられます。また、安否確認システムなどの連絡機能を活用することで、必要な行動指示や最新情報を即座に共有できます。
備えを進めることでリスクを軽減しよう
南海トラフ地震臨時情報、特に「巨大地震警戒」の発表時には、企業に通常とは異なるイレギュラーな対応が求められます。交通機関の混乱や従業員の避難の長期化といったリスクに備えるためにも、事前の準備が何より重要です。
災害時の安否確認を確実に行いながら、担当者の業務負担を軽減するには、専用の安否確認システムの導入がおすすめです。トヨクモの安否確認サービス2は、安定稼働を追求した設計で、東海地域をはじめ全国の企業や自治体で広く導入されています。
さらに、今なら30日間無料のお試しが可能です。この機会にぜひ試してみて、災害時にも安心して対応できる体制を整えてください。
執筆者:遠藤 香大(えんどう こうだい)
トヨクモ株式会社 マーケティング本部に所属。RMCA認定BCPアドバイザー。2024年、トヨクモ株式会社に入社。『kintone連携サービス』のサポート業務を経て、現在はトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営メンバーとして編集・校正業務に携わる。海外での資源開発による災害・健康リスクや、企業のレピュテーションリスクに関する研究経験がある。本メディアでは労働安全衛生法の記事を中心に、BCPに関するさまざまな分野を担当。