災害救助法とは?企業への支援措置や具体的な対応策を解説
福岡 幸二(ふくおか こうじ)
近年、地震や豪雨などの自然災害が多発しており、災害発生直後における対応の重要性が見直されています。災害発生後の72時間が人命救助のタイムリミットとも言われているため、応急期における対応策は必須です。そのため、災害後、国は災害救助法にもとづいた迅速な救助を行っています。
この記事では、災害救助法の概要を紹介します。企業への支援措置や対応策も紹介しているので、あわせて参考にしてください。
目次
災害救助法とは
災害救助法とは、自然災害発生直後の応急期における救助に対する法律です。
日本の災害対策法制は、災害予防・災害直後の応急期対応・災害からの復旧や復興の3つを網羅的にカバーする「災害対策基本法」で成り立っています。各ステージは災害類型に応じて対応する仕組みになっており、応急救助は災害救助法でカバーされています。
災害救助法の目的は、災害に対して国が地方公共団体や日本赤十字社、そのほかの団体、国民の協力のもと、応急的かつ必要な援助を実施することです。その結果、被災者の保護と社会秩序の保全を図ることが目的です。
つまり、法にもとづく援助は都道府県知事が今救助を必要としている方に対して行います。具体的な救助の内容は、以下のとおりです。
- 避難所の設置
- 被災者の救助
- 応急仮設住宅の供与
- 住宅の応急修理
- 炊き出し、そのほかによる食品の給与
- 飲料水の供給
- 学用品の給与
- 被服や寝具、そのほかの生活必需品の給与・貸与
- 医療・助産
- 埋葬
- 死体の捜索・処理
- 障害物の除去
なお、災害救助法は5つの基本原則や適用基準が定められおり、それに沿って運用されています。それぞれについて解説します。
(参照:災害救助法の概要 (令和2年度))
5つの基本原則
災害救助法は、以下の5つの基本原則で成り立っています。
平等の原則 | 今、現在救助を必要としている方に対して、事情や経済的な要件などを問わずに等しく手を差し伸べなければいけない。 |
必要即応の原則 | 応急救助は被災者への見舞い制度ではない。被災者ごとに、どのような救助がどの程度必要なのかを判断して実行する。必要以上の救助は不要である。 |
現物給付の原則 | 法による救助は確実に行われるべきであり、物資や食事、住まいなど現物支給する。 |
現在地救助の原則 | 応急期は円滑かつ迅速に救助を行う必要があるため、被災者の現在地で行う。旅行者や訪問客などは、その現在地を所轄する都道府県知事が救助する。 |
職権救助の原則 | 応急期の性質上、被災者の申請がなくとも救助を実行する。 |
適用基準
災害救助法は、以下の適用基準が設けられています。
- 災害により市町村などの人口に応じた一定数以上の住宅の滅失(全壊)がある場合
- 多数の方が生命または体に危害を受け、もしくは受ける恐れがある場合に、避難して継続的な救助を必要とする場合
つまり、災害が起きたからといって必ずしも災害救助法が適用されるわけではありません。条件に該当する場合のみ、都道府県知事が定めて実行されます。
災害救助法が適用された場合の企業支援
上記のとおり、災害救助法は応急期における法律であり、すぐに救助が必要な方に適用されます。これは国民に対してのみ適用されるものではなく、必要に応じて企業向けの支援措置も実行されます。
たとえば、経済産業省は2024年の台風10号によって被災した神奈川県や岐阜県、静岡県、愛知県、福岡県、大分県、宮崎県および鹿児島県の188市町村に災害救助法が適用されたことを受け、被災中小企業・小規模事業者支援措置を行いました。具体的には、以下の5つです。
- 特別相談窓口の設置
- 災害復旧貸付の実施
- セーフティネット保証4号の適用
- 既往債務の返済条件緩和などの対応
- 小規模企業共済災害時貸付の適用
このように災害救助法が適用されると、企業として受けられる支援措置が用意されるケースは珍しくありません。そのため、自社が災害救助法の適用地域に該当した場合は、このような支援措置が行われるかどうかをよく確認しておきましょう。
(参考:令和6年台風第10号に伴う災害に関して被災中小企業・小規模事業者支援措置を行います【第3報】 (METI/経済産業省))
ここでは、2024年の台風10号の被災地に対して行われた支援措置の概要を解説します。
特別相談窓口の設置
日本政策金融公庫や商工組合中央金庫、信用保証協会、商工会議所、商工会連合会などに特別相談窓口を設置しました。
特別相談窓口では、自然災害などの不測の事態によって売上の急減や設備の稼働ができないなど、一時的に経営が不安定になっている中小企業をサポートしています。想定以上の被害が生じたり、今後の経営に不安を感じたりする場合は特別相談窓口を活用するといいでしょう。
災害復旧貸付の実施
台風の被害を受けた中小企業・小規模事業者を対象に、日本政策金融公庫と商工組合中央金庫が運転資金や設備資金を融資する災害復旧貸付を実施しました。融資限度額は国民生活事業で3,000万円、中小企業事業で1億5,000万円です。貸付期間が5年の場合の金利は1.45~1.50%で、災害後の事業立て直しに活かせるでしょう。
セーフティネット保証4号の適用
災害救助法が適用された地域において、台風の影響により売上などが減少している中小企業・小規模事業者を対象にセーフティネット保証4号を適用しました。
セーフティネット保証4号とは、自然災害を理由に売上などが減少した中小企業を支援する制度です。指定地域で1年以上事業継続しているなどの条件があるものの、該当すれば信用保証協会の一般保証とは別枠の限度額で融資額100%を保証を受けられます。
(参考:セーフティネット保証4号の概要)
既往債務の返済条件緩和などの対応
国は日本政策金融公庫や商工組合中央金庫、信用保証協会に対して、台風により被害を受けた中小企業・小規模事業者の実情に応じて対応するようにと要請しています。
たとえば、返済猶予といった既往債務の条件変更や貸出手続きの迅速化、担保徴求の弾力化などです。状況に合わせた対応をしてもらえると、災害の影響を抑えながら事業の復旧を目指せるでしょう。
小規模企業共済災害時貸付の適用
災害救助法が適用された地域において、被害を受けた小規模企業共済契約者に対して即日で低利で融資を行う災害時貸付を適用しました。貸付限度額は原則として、納付済掛金の合計額に掛金納付月数に応じて7~9割を乗じて得た額(50万円以上で5万円の倍数となる額)と1,000万円のいずれか少ない額です。
被災を証明できる書類や実印などを用意できれば、原則、即日貸付が可能です。そのため、迅速に資金を準備しなければいけない場合にも活用しやすいでしょう。
(参考:小規模企業共済災害時貸付の概要)
企業が災害を乗り越えるための具体的な対応策
災害救助法が適用された場合は、支援措置が期待できるからといって安心できるわけではありません。災害はいつ発生するかわからず、その被災状況も予測できないからです。そのため、企業として災害への備えは必須であり、災害が起きても事業を継続し続けられる対策は不可欠です。具体的には、以下の対策を実行してください。
- 災害への備えを十分に行う
- 災害発生直後に迅速な行動を起こせる体制を構築する
- 早期の事業復旧に向けての対策を行う
それぞれについて解説します。
1.災害への備えを十分に行う
まず、いつ災害が起こってもいいように企業ができる備えを実施しましょう。企業自身が災害を乗り越えなければ、従業員や地域住民を守ることはできません。具体的には、防災グッズの備えもその一環です。業務中に災害が発生して自社内で待機する場合、必要最低限の備えがなければ従業員の安全を確保するのは難しいでしょう。そのため、従業員数を把握したうえで必要量を備えておくのがおすすめです。
また、企業として事業を早期復旧させるには、BCPの策定も欠かせません。BCP(事業継続計画)とは、災害やテロなどの緊急時が発生したときに被害を最小限に抑えつつ、事業を継続する計画です。あらかじめBCPを策定しておくと次の一手を出しやすくなり、企業としての損失を抑えやすくなります。すると緊急時の混乱状況下であっても、迅速な行動を起こしやすいでしょう。
BCPの策定には、トヨクモが提供している『BCP策定支援サービス(ライト版)』の活用がおすすめです。一般的にBCPコンサルティングは数十〜数百万円ほどしますが、BCP策定支援サービス(ライト版)であれば1ヵ月15万円(税抜)で策定できます。最短1ヵ月で策定できるため、費用を抑えながら迅速に災害への備えができるのが魅力です。BCPの策定をお考えの方は、ぜひ利用してください。
2.災害発生直後に迅速な行動を起こせる体制を構築する
災害が発生したときは迅速な行動が欠かせません。そのため、いつ災害が発生しても迅速な行動を起こせるように、必要な体制を構築すべきです。
たとえば、災害発生時は迅速に従業員の安否確認を実施し、被害状況を把握することが大切です。「従業員は安全か」「何人の従業員が緊急対応できるか」「自社での業務遂行は可能か」などを迅速に把握できる体制を構築しておくと、事業の早期復旧を目指しやすくなります。また、被害状況を把握できると、企業としてできる支援も明確になりやすいでしょう。
3.早期の事業復旧に向けて対策を考える
災害が起きたときは、早急に事業復旧できるように必要な対策を講じなければいけません。初動が遅れるほど事業復旧までに時間がかかってしまうため、BCPを活用しながら今すべき対策を考えていきましょう。
災害時の備えにはトヨクモの『安否確認サービス2』がおすすめ
災害時の備えには、トヨクモの『安否確認サービス2』の活用がおすすめです。安否確認サービス2とは、気象庁の情報と連動して従業員の安否確認を自動で行えるシステムです。従業員からの回答結果も自動で集計・分析を行えるため、安否確認をしながら迅速に被害状況を把握できるでしょう。つまり、災害時の迅速な行動を起こすには欠かせないシステムです。
安否確認サービス2には多くの魅力があるものの、とくに以下の2つがおすすめです。
- BCPに必須の機能が搭載されている
- 年に1回全国一斉訓練を実施している
それぞれについて解説します。
BCPに必須の機能が搭載されている
安否確認サービス2には、BCPに必須の機能が搭載されています。
たとえば、すべての従業員が閲覧できる掲示板機能を活用すると、情報をスムーズに共有できます。メッセージ機能は指定したユーザーのみが情報を閲覧できるため、今後の対策を協議する際にも利用できるでしょう。このように、安否確認サービス2を導入すると従業員を守りながら、今後の事業復旧に向けて迅速に行動できます。
(参考:安否確認サービス2|選ばれる理由|BCPに必須な機能を搭載)
年に1回全国一斉訓練を実施している
安否確認サービス2では、毎年9月1日に全国一斉訓練を実施しています。実施日と時間帯のみを公開しているため、実際の災害時と同じような状態で訓練できるのがポイントです。そのため、策定したBCPが有効であるかを確認する際にも役立てられるでしょう。
(参考:安否確認サービス2|選ばれる理由|自社の防災意識を自動で分析)
災害救助法における企業への支援措置を把握しよう
災害救助法は、災害発生時の応急期における救助に関する法律です。今救助が必要な方を対象に、応急的な救助を行い、被災者の保護と社会秩序の保全を目的としています。災害救助法が適用された地域の企業に対しては、支援措置が取られるケースも珍しくありません。従業員を守るためにも、これらの支援措置を活用しつつ、 事前にできる準備を万全にしておきましょう。
災害への備えには、トヨクモの『安否確認サービス2』がおすすめです。大規模災害時でもシステムの安定稼働が見込めるため、従業員の安否確認を迅速に行えるでしょう。
また、安否確認サービス2は初期費用不要で、30日間のトライアル期間を設けているのも魅力です。災害時への備えとして、ぜひ無料体験を試してください。