近年自然災害が頻発するなかで、災害レジリエンス(防災レジリエンス)が注目されています。
しかし「言葉の定義が分からない」「災害レジリエンスを高めるために何をすればよいか分からない」という方も多いのではないでしょうか。
この記事では、災害レジリエンスの定義、構成する3つの要素について解説するとともに、災害レジリエンスを高めるためにできることや事例についても紹介します。
自社の災害時の被害を最小限に抑えて迅速な復旧を目指すため、ぜひ参考にしてください。
目次
災害(防災)レジリエンスとは
国連国際防災戦略(ISDR)では、災害におけるレジリエンスを以下のように定義しています。
ハザードに曝されたシステム、コミュニティあるいは社会が、基本的な機構及び機能を保持・回復することなどを通じて、ハザードからの悪影響に対し、適切なタイミングで、効果的な方法で抵抗し、それを吸収・受容し、またそこから復興する能力
(引用:国連国際防災戦略(ISDR)|p.11)
また、地域生活研究所の論文『災害対応力「レジリエンス」の概念と構造』のなかで、法政大学の田中充氏はレジリエンスの意味を次のように説明しています。
- 外から加えられたリスクやストレス(外力)に対応しうる能力
- 災害外力による人的・経済的・社会的被害を最小化しうる能力
さらに、田中氏は災害(防災)レジリエンスを「災害対応力」とも要約でき、「予防力」「順応力」「転換力」の3要素に分解できると言及しています。それぞれの解説は以下のとおりです。
災害への「予防力」
災害レジリエンスの1つめの要素は「予防力」です。
地域が直面する災害外力を防御し、被害を未然に防止する対応のことを「予防力」と呼びます。
予防の状態では、地域社会システムは大きな影響を受けずに通常レベルの活動を維持できます。
人的被害や物的被害は、それぞれの災害に応じた対策を講じることで抑止可能です。
たとえば既存の建物に耐震工事を施す対策は、地震による倒壊被害の予防につながります。また、建物に不燃材料を活用すると、火災の被害を予防できるでしょう。
災害への「順応力」
災害レジリエンスの2つめの要素は「順応力」です。
想定を超える規模の災害に対して、影響を低く抑えながら適応する臨機応変な対応のことを「順応力」と呼びます。
とくに避難行動や安否確認の場面では、高い順応力を発揮することが不可欠です。道路の状況に応じて適切な避難ルートを選択したり、オフィスにいない従業員の安否を効率よく確認したりすることで、被害の拡大を防ぎましょう。
災害への順応力を高めるには、現状を的確に把握する力が必要です。
災害からの「転換力」
災害レジリエンスの3つめの要素は「転換力」です。
防ぎきれない規模の被害が発生した場合、新たな方針へ素早く舵を切る対応のことを「転換力」と呼びます。
たとえば既存のオフィスが被災し、復旧不可能なほどの損害が生じた際、事業拠点を移転させて業務の再開を図りましょう。
災害による重大な被害を乗り越え、新たな施策を取り続ける姿勢は、災害(防災)レジリエンスを象徴するものです。
災害(防災)レジリエンスを高めるために必要な施策
ここで、災害(防災)レジリエンスを向上させるために効果的な施策を4つ紹介します。
いつ発生するか分からない災害に対しては、事前の準備が不可欠です。緊急事態を意識した実践的な施策で、防災意識を高めましょう。
BCPの策定
BCP(事業継続計画)とは、災害のような緊急事態が発生した際に企業が事業を継続するためのリスク管理の計画です。
BCPを策定する目的は、損害を最小限に留めることや、事業の継続及び早期復旧を可能にすることです。BCPを策定することで、災害レジリエンスの3要素における「順応力」や「転換力」を強化することができるでしょう。
BCPの策定については関連記事を参考にしてください。
ハザードマップの確認
ハザードマップをあらかじめ確認しておくことも、災害レジリエンスを高める有効な方法です。
ハザードマップは、災害の発生規模や範囲を予測し、地図上に示したものです。地域の避難場所や防災施設を確認しましょう。
事業所の所在地域で予想される災害リスクも把握できます。
避難を想定した防災マニュアルと組み合わせることで、より効果が上がるでしょう。
防災訓練の実施
防災訓練は、災害をあらかじめ想定して策定した防災マニュアルに則って、避難行動や情報伝達を実施する訓練です。
訓練結果の振り返りと防災計画へのフィードバックを実施すれば、企業内の災害レジリエンスを高められるでしょう。
避難に要した時間の短縮や、より効率的な避難経路の発見につながります。
防災用品の確保
防災用品の確保も欠かせません。
災害発生時にはライフラインが途絶え、物資の供給が滞るでしょう。生活用品や食料など、必要な物資をあらかじめ確保しておくことが重要です。
内閣府のガイドラインでは、3日分の備蓄を企業に求めています。
都道府県や市町村の条例でも基準が示されています。事業所のある自治体で発令されている条例を参考にしてください。
災害(防災)レジリエンスの事例
災害レジリエンスを向上できる具体的な取り組みにはどのようなものがあるのでしょうか。
ここからは、政府や都道府県から企業や個人単位まで、それぞれの立場で実践している施策の例を紹介します。無理なく実施できるものから取り組みましょう。
【国】災害(防災)レジリエンス強化の取り組み
国が実施しているインフラ設備の機能維持を目的とした活動を紹介します。
国土強靭化を推進する目的で、「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化基本法」が制定されています。国土強靭化とは、災害が発生しても機能し続ける経済社会の確立を目指す指針であり、国が推進する災害レジリエンス施策です。
国や地方自治体は、水道や電力など生活に不可欠な公共インフラの強化に加え、河川工事や公共施設の耐震化を進めることで、大規模な災害の発生にも動じない環境を整備しています。
【自治体】災害(防災)レジリエンス強化の取り組み
国土強靭化の指針を踏まえ、都道府県や市町村など地域単位でも独自の取り組みが存在します。
ここでは群馬県と福井県敦賀市の例を紹介します。
群馬県
▲出典:群馬県「吾妻川圏域河川整備計画」
群馬県は「災害レジリエンスNo.1」を掲げ、次のような取り組みを実施しています。
重点水害アクション | ・社会経済の壊滅的な被害を回避するための施策 ・河川整備、異常堆積した土砂の除去 ・災害時におけるリアルタイム情報発信のための監視強化 |
防災インフラの整備 | ・水害や土砂災害のリスクを軽減させる施策 ・防災インフラの整備 ・強靭な道路ネットワークの構築 ・農業への被害を軽減するための用水路・ため池の補強 |
避難のサポート | ・災害時の「逃げ遅れゼロ」を目指した施策 ・住民一人ひとりの避難行動を時系列で整理した「マイ・タイムライン」の作成支援 |
災害医療の強化 | ・地震や津波などの災害発生時に県内外の医療を支援する施策 ・患者をヘリコプターから県内の医療機関に搬送する車両の導入支援 ・災害派遣チーム(DMAT)に対する資材・機材の導入支援 |
▲出典:群馬県「ぐんま広報 2023年6月 No.409」
敦賀市
▲出典:福井県敦賀市役所ホームページ
敦賀市は災害時の安否確認を効率化するため、安否確認システムの導入を実施しました。
従来の電話での安否確認では時間も手間もかかり、休日や夜間はつながりにくいという課題がありました。
そこで、多くの自治体で活用されているトヨクモの安否確認サービス2を導入し、災害発生時に自動で安否確認が実施されるように設定しています。
また、同サービスのスマートフォンアプリを周知徹底し、迅速に安否が確認できる体制を構築しました。
これらの施策によって職員の手間が大幅に軽減され、スムーズな安否確認が実施できます。
関連記事:安否確認サービス2「事例一覧 敦賀市役所」
【企業】災害(防災)レジリエンス強化の取り組み
ソフトバンク株式会社
▲出典:ソフトバンク公式ホームページ
ソフトバンクはサステナビリティの一環として、気象災害による被災リスクを低減させることを目的とし、次のような項目に取り組んでいます。
- 基地局への長時間バッテリーの設置
- 基地局への非常用LPガス発電機の設置
- 災害ドローンの配備
- 災害対策点検の強化
- 成層圏通信システムサービスの商用化
非常用LPガス発電機は停電発生時に72時間以上の稼働が可能です。
また伊藤忠エネクスとの協業により、停電時でもLPガスを基地局に供給する体制を構築しました。
成層圏通信システムは山岳部、離島、発展途上国などの通信ネットワークが整っていない地域に安定したインターネット接続を提供するものです。
このシステムにより、大規模な自然災害発生が発生した際にも、救助や復旧作業に大きく貢献できます。
JR北海道株式会社
▲出典:JR北海道株式会社ホームページ
JR北海道(北海道旅客鉄道株式会社)では、大規模災害に備えて安否確認システムの導入を検討していました。
その最中の2018年9月に北海道胆振(いぶり)東部地震が発生し、社員全員の安否確認に多くの時間を費やしたことから安否確認の重要性を再認識。2021年4月にトヨクモの安否確認サービス2を導入しました。
決め手となったのは安否確認の送信エリアの設定を細かくできる点です。
北海道の面積は広大なため、北海道全土を1つの送信エリアと設定するとまったく問題の無いエリアにいる従業員にも送信されてしまいます。この点でトヨクモの安否確認サービス2は、業務に影響のあるエリアに絞ってメール送信ができるため非常に魅力に感じていただいています。
導入直後の5月に発生した宮城県沖の地震の際に行った安否確認では、対象者へのメール送信に対して速やかな返信があり、サービスの確実な作動が確認されました。
安否確認が迅速にできることによって、「順応力」の強化につながることが期待できます。
災害時の安否確認にはトヨクモの『安否確認サービス2』がおすすめ
災害時は、経営者や人事、総務担当者も被災者であり、災害発生直後は身の安全を確保したうえで従業員の安否確認を行いましょう。企業として防災レジリエンスを高めるには、BCPの策定や防災訓練の実施、防災用品の確保など事前準備が必要です。
また、事前準備の一環としてトヨクモが提供している『安否確認サービス2』がおすすめです。
『安否確認サービス2』は、気象庁の災害情報と連動して、自動で従業員への安否を確認するメッセージを送付する安否確認システムです。メールの送付だけでなく、スタッフから集まった回答結果を自動で分析するため、安否確認にかかるコストを大幅に減少できます。
また、安否確認サービスはBCPに必須の機能が搭載されていることも魅力です。たとえば、掲示板機能を利用すれば、災害後の事業継続についての話し合いも可能です。
安否確認システムは、トヨクモの安否確認サービス2がおすすめ!
災害時、自動で送信される安否確認通知に対して、
従業員はアプリ・メールだけでなく、LINEからも回答することができます。
下記のリンクから30日間無料お試し(自動課金一切ナシ、何度でもご利用可能)をお申し込みいただけます。
⇨安否確認サービス2を30日間無料でお試し
必要な対策を取り、災害(防災)レジリエンスを強化しよう
災害(防災)レジリエンスを強化するためには、予防力/順応力/転換力の3つの要素をそれぞれ強化する必要があります。
具体的には、BCPの策定やハザードマップの確認、防災訓練の実施や防災用品の確保が重要です。
また、レジリエンスの3要素のうち「順応力」と「転換力」を高めるために、安否確認の効率化が有用です。トヨクモの安否確認サービス2はその期待に十分応えられるでしょう。
安否確認サービス2はすべての契約企業を対象に、毎年9月1日(防災の日)に全国一斉訓練を実施しています。災害時に近い負荷をシステムに加えることで、システムが安定して稼働できるかを確認しています。
訓練終了後、参加企業には「訓練レポート」を送付し、安否の回答状況を客観的に把握できるようサポートしています。