災害時のデマ・誤情報に惑わされないために:事例と仕組みを理解しよう

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遠藤 香大(えんどう こうだい)

大規模災害が発生すると、真偽不明の情報が飛び交い、企業の対応に大きな支障をきたすことがあります。あなたの企業は、デマ情報に対してどのように対処しているでしょうか。

この記事では、災害時に広がるデマの具体例とその影響を紹介し、デマを見極めるための対策と信頼できる情報源の見分け方を解説します。

信頼できる情報源を見極め、迅速かつ的確に対応するための知識を身につけましょう。

デマ・誤情報の例

過去の災害時には、デマや誤情報の拡散がなされてきました。

以下の表で、過去に起きた災害と誤情報、社会に与えた影響の事例を紹介します。誤情報の拡散で業務妨害や風評被害が生まれると、企業活動に悪影響を及ぼすおそれがあります。

災害名誤情報の内容その後
熊本地震(2016年)「近くの動物園からライオンが逃げた」という投稿がTwitterになされたそのような事実はなく、投稿により熊本市動植物園の業務を妨害した疑いで男性が逮捕された
東日本大震災(2011年)コスモ石油千葉製油所で発生した爆発事故の影響で、有害物質が降るとの誤情報が拡散された風評被害が発生し、コスモ石油や厚生労働省が訂正情報の発信に追われた
東日本大震災(2011年)工場の事故や原発関連のデマ、恐怖をあおる内容のチェーンメールが不特定多数に拡散された日本データ通信協会の迷惑メール相談センターが、サンプル文章を掲載して注意喚起をした
能登半島地震(2024年)石川県珠洲市の住所を付した無関係の動画が投稿され、虚偽の救助要請が拡散された報道機関や救助機関に混乱が生じ、少なくとも2件消防が出動する事態を招いた
能登半島地震(2024年)被災地に救援物資を運んだ山崎製パンに対して、「添加物で人口削減を図っている」と誤情報が流れた山崎製パンは国が指定する安全基準に沿っているにもかかわらず、風評被害が生じた

(参考:野村総合研究所|災害時における真偽判別の難しい情報の伝搬傾向と期待される各ステークホルダーの対応・対策

拡散するメカニズム

デマや誤情報は、なぜ拡散されてしまうのでしょうか。そのメカニズムとして、3つの原因を紹介します。災害時は情報が不足するため広まりやすいといえます。SNSを通じた収益もひとつの原因です。

流言の公式(Rumor Formula)

デマが広がる仕組みを説明した理論として、流言の公式が挙げられます。社会心理学者のオルポート(Gordon W. Allport)とポストマン(Leo Postman)によって、この公式が提唱されました。

流言の公式は、デマの拡散度合いを測るためのものです。災害時のデマ拡散を説明する際にも利用が可能です。以下の式で表されます。

R(流言)=i(重要性)×a(曖昧性)

(引用:デマの心理学

デマ(流言、Rumor)が流布される量は、その情報の重要性(importance)と曖昧性(ambiguity)に比例することを示しています。

災害時の情報(避難場所、被害状況など)は人々の生死や安全に直結するため、極めて重要性の高い情報です。また、災害の発生直後は情報が錯綜するため、情報の真偽を判断することが困難で、曖昧性が高まります。

つまり、重要な情報が曖昧な状態で広まりやすい災害の現場では、デマが拡散されやすい状態にあります。

情報・コミュニケーションの不足

災害時ならではの情報量不足、コミュニケーションの不足はデマの拡散を促進させる原因です。

災害が起こると、復旧作業や安否確認の作業に追われ、必要な情報をリアルタイムで発信できない事態が起こり得ます。災害情報を求める需要に対して、公的機関や報道機関による情報の供給が少なければ、信ぴょう性の低い情報でも拡散されてしまう危険性があります。

デマを否定する情報も発信しづらい状況下では、一度拡散されたデマの収束は困難です。

コミュニケーションの不足は、SNSでのデマ拡散を引き起こします。周囲の人々と連絡が取れず、インターネット上でしか情報を集められない状況では、通常であれば信じないようなデマでも信じてしまうおそれがあります。

承認欲求・収益を狙うデマも

デマの発信者は、承認欲求を満たすことや収益の獲得を目指しているケースがあります。

近年の災害時に拡散されたデマの多くは、SNSから発信されています。SNSで注目を集めると心理的、金銭的に利益を得られることが原因のひとつです。

たとえば、YouTubeX(旧Twitter)などのプラットフォームでは、コンテンツの視聴回数や表示回数に応じて発信者が収益を得られるシステムが設けられています。デマの情報であっても、注目を集められると収益を得られるのです。

また、単に承認欲求を満たすために、いたずら感覚で投稿されているデマも存在します。企業の活動に影響を及ぼすような内容のデマは悪質な犯罪行為であり、偽計業務妨害の罪を問われるおそれがあります。

デマ・誤情報に惑わされないために

災害が起きたときは、デマや誤情報に惑わされず正しい情報に基づいた行動を取る必要があります。ここでは、デマを拡散しないため、また正しい情報を発信するために重要なポイントを紹介します。災害時には、信頼できる情報源を利用しましょう。

情報を拡散する前にチェックするべきこと

流れてきた情報を拡散する前に、一度内容を精査すると、自身がデマの拡散に加担することを避けられます。以下5つのポイントを確認してください。

  • 情報を「拡散したい」と思ったときに、一度立ち止まる
  • 信頼できる情報源かどうかを確認する(「⚪︎⚪︎で言ってた」を根拠とすることはNG)
  • 知り合いから得た情報であっても真偽を確認する
  • 添付されている画像や動画の信ぴょう性を確かめる
  • 各団体やメディアのファクトチェック結果を参考にする

情報が発信された時期や場所、発信した人物の信頼性など、ひとつの情報をチェックする際はさまざまな角度からの検証が可能です。また、無関係の画像や動画が利用されているケースもよくあります。真偽の判断が難しいときは、ファクトチェックを参考にしましょう。

(参考:政府広報オンライン

企業・自治体:必要に応じて事実情報の発信を

企業や自治体は、一般的には災害時に情報を発信する立場です。一方で過去の災害とデマの事例で挙げたように、一般企業がデマの標的となるケースも存在します。

デマの拡散を抑えられなければ、風評被害が広がり企業活動の継続が困難に陥るおそれがあります。平時から情報発信の手段を整備しておくと、いざ災害が発生し、混乱している状況であっても情報発信に役立つでしょう。

とくに、自社の事業に支障をきたす情報が拡散されたときは、デマの否定と事実の発信を冷静に実施し、自治体と連携を取れる体制が必要です。

災害の発生に備えて、情報発信手順の確認やマニュアルの整備をおすすめします。

情報源リスト

災害が発生したときは、信用できる情報源から発信された情報のみを扱うことが重要です。具体的には、どの情報源を利用すればよいのでしょうか。

以下で紹介するWebサイトや SNSの利用をおすすめします。

  • 総務省消防庁
  • 気象庁
  • 国土交通省
  • 内閣府防災情報
  • 自治体の公式Webサイト
  • 首相官邸(災害・危機管理情報)@Kantei_Saigai
  • NHKニュース・防災アプリ
  • Yahoo!防災速報

災害情報を取得するには、行政機関の公式Webサイトや公式SNSアカウントの発信情報を参考にすることがおすすめです。情報に速報性を求めたいときは、防災速報を発信する各種アプリの利用が有効です。お住まいの地域や、企業所在地の自治体がWebサイトから発信する情報も取り入れましょう。

災害時の安否確認にはトヨクモの『安否確認サービス2』がおすすめ

災害時には不確かな情報が流れやすいことに加え、通信制限がかかることでアプリやメールなどが使用できなくなるおそれがあります。このような災害に対応できるのが安否確認システムです。

トヨクモが提供する『安否確認サービス2』は、災害が発生したときに従業員の安否確認をスムーズに実施できるシステムです。

各エリアにおける被災状況の報告や共有、それに対する対策方法などを発信できます。また、災害が起きた際の災害マニュアルを掲載することも可能です。

他にもメールの一斉送信機能による被災状況の確認や、自宅待機などの指示を行うこともできます。従業員が誤った判断をしないよう、正しい情報を共有することを可能にします。

正しい情報を素早く収集し、事業継続に繋げよう

この記事では、災害のときに発生するデマ、誤情報への対処方法について解説しました。災害が起こると情報が錯綜するため、真偽不明の情報や、いたずらのデマが拡散される傾向にあります。とくに、企業の活動に関するデマは、事業の継続に影響を与える問題です。

デマに対処するには、災害のときに正確な情報を収集して事業継続につなげることが重要です。なかでも、従業員の安否確認や、自社設備の状況の把握はいち早く実施する必要があります。従業員や会社の資産が無事であることを確認できれば、事業のスムーズな再開に踏み出せるでしょう。

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