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「ボランティア元年」から27年、社会に根付く災害ボランティア活動

被災地でのボランティア活動に興味はあるけれど、どうしたら良いのかわからない…」と思っている方は多いのではないでしょうか。

大規模な災害が発生したときに報酬を求めず、自発的に行う支援活動が、災害ボランティア活動です。
被災地が1日も早く復旧・復興するお手伝いをすることを目的としており、力仕事から事務作業、心身のケアまでさまざまな災害ボランティア活動があります。

災害の規模が大きくなると、被災地の力だけでは対応が難しくなります。このようなときには、被災地外からの災害ボランティアの支援が必要になります。また、被災地の状況は時間と共に変化します。災害ボランティア活動はそのときの状況にあわせて行うことが重要になります。

今回は、災害ボランティアとして被災地支援活動をしたいと思ったとき、どのようにして活動を始めればよいのかをご紹介します。

はじめに:「ボランティア元年」と「防災とボランティアの日」及び「防災とボランティア週間」

1月17日は「防災とボランティアの日」です。
ご存じない方のために、この記念日ができたきっかけをご説明します。

1995年1月17日に起きた、阪神淡路大震災。震度7度の地震が兵庫県南部を襲い、6434人が命を落としました。この震災をきっかけに、ある言葉が世の中に広く認知されました。

ボランティア」です。

阪神淡路大震災後、全国各地から延べ180万人(1997年12月末までの推定)が兵庫県に駆けつけ、被災地復興に貢献しました。以降、爆発的にボランティアの認知度は高まり、災害時には被災地に駆けつけるボランティアの姿が定着しました。
このことから、この年は「ボランティア元年」と呼ばれています。

また、災害ボランティア活動の重要性が認識されるようになり
内閣府は次のような趣旨で平成7年12月15日に「防災とボランティアの日」と「防災とボランティア週間」を創設しました。

「政府、地方公共団体等防災関係諸機関を始め、広く国民が、災害時におけるボランティア活動及び自主的な防災活動についての認識を深めるとともに、災害への備えの充実強化を図ることを目的として、『防災とボランティアの日』及び『防災とボランティア週間』を設ける。」

参考:内閣府防災情報ページ

毎年この時期には、地方公共団体や関係団体が連携して、全国各地で講演会や展示会等の災害ボランティア活動に関するさまざまな普及啓発活動が行われています。

■埼玉県警察防災展2022 in 大宮駅
■NTT東日本”防災とボランティア週間”における災害用安否確認サービス

1•17で表面化した課題

阪神淡路大震災では、想定外の人数のボランティアが被災地に駆けつけ、受け入れ体制が問題となりました。

「提供写真:神戸市」

駆けつけた多くの災害救援ボランティアのフットワークを”ボランティア登録システム”が止めたのです。
1月18日には神戸市が、そして19日には西宮市が災害復興ボランティアの登録受付を始めたのですが、最もボランティアの力が必要だった災害直後の数日で数千人のボランティア志願者が集まってパニック状態になり、多くの登録ボランティアを指示待ち状態にしたのです。

しかし、「登録」という「お膳立て」を求めずに、ともかく現地に飛び出して活躍したボランティアもいました。その多くが20歳前後の若者でした。

自分が本当に役に立てるかどうか確証もないまま被災地に向うこの行為は慎重さに欠ける「腰の軽い」行為であるとも言えます。ところが、最初の72時間が鍵だと言われる災害救援では、状況のよく分からない震災直後に現地に飛び出した人たちが大きな役割を果たしました。「腰の軽さ」は「フットワークの良さ」になったのです。

災害ボランティアをしよう! あなたの支援が被災地の復旧・復興に繋がる

地震や台風などの自然災害が発生した際に、被災地でさまざまな活動を担う災害ボランティア。これまで多くの被災地で、災害ボランティアが地域の復旧・復興のために大きな役割を果たしてきました。では、どのようにして災害ボランティア活動を始めればよいのかをご紹介します。

災害ボランティアって何をするの?

大規模な災害が発生したときに報酬を求めず、自発的に行う支援活動が災害ボランティア活動です。被災地が1日でも早く復旧・復興するお手伝いをすることを目的としており、力仕事から事務作業、心身のケアまでさまざまな災害ボランティア活動があります。

【災害ボランティアの活動例】
・瓦礫(がれき)の撤去・分別
・泥だし
・室内清掃
・引っ越しの手伝い
・物資の仕分け
・炊き出し
・災害ボランティアセンター運営の手伝い
・心のケアのお手伝い
・イベント活動の支援etc…

平成23年の東日本大震災では、震災直後は瓦礫(がれき)の撤去や分別、泥出しなどの力仕事が中心でした。その後時間が経つにつれて、災害ボランティアセンター運営の手伝い、イベント活動の支援など、人との繋がりを大切にした活動に変化していきました。

被災地に行くために準備をしよう!

被災地の情報収集・準備

被災地での災害ボランティア活動に参加する際は、必ず事前に現地の最新状況を確認しましょう。災害規模や二次災害の危険性を調べることで、命を守る適切な行動を取ることができます。また、災害発生後に被災地の支援ニーズが見えてくると、被災自治体の社会福祉協議会が災害ボランティアセンターを開設し、インターネット(WEBサイト、SNSなど)でボランティア募集などの情報発信を行います。
ボランティアの受け入れは、自治体によっては事前登録が必要な場合や募集範囲を限定している場合もあるため、注意が必要です。

災害ボランティアをご検討中の方は被災自治体などに直接電話することは避けて、情報収集はインターネットを中心に行いましょう!

【心得】
なによりも被災地に負担をかけないことが大切です。何も準備せずに被災地に行くと、かえって被災地に迷惑をかけることになるため、しっかり準備をしましょう。

 

【服装や持ち物チェックリスト】
帽子
ヘルメット
軍手
ゴム手袋
長袖
長ズボン
軽食
飲み物
マスク
タオル
着替え
雨具
常備薬etc…

宿泊先の選定、往復の交通手段の確保

ボランティアは「自己完結」が基本です。被災地での宿泊先や交通手段、食事など、全て自分で確保する必要があります。まずは、宿泊先を決めましょう。被災地に近い宿泊施設は被災者が利用する可能性もあるため、近すぎず活動場所に通える範囲のエリアで宿泊施設を探すのがよいでしょう。

次に、交通手段です。被災地では道路の寸断や公共交通機関の不通なども考えられるので、事前に調べておきましょう。車で向かう場合は「ボランティア車両証明」を申請することで、高速道路の料金が無料になる場合もあります。

ボランティア活動保険への加入

ボランティア活動中の事故やケガ、他者への損害に備えるボランティア活動保険があります。保険は年度内有効で、保険料は350~710円です。保険加入には社会福祉協議会への登録が必要ですので、お住まいの地域の社会福祉協議会へ問い合わせましょう。お住まいの地域で事前に手続きを行うことで、自宅から活動場所までの往復の道のりも補償対象となります。

被災地で活動するために

災害ボランティアセンターで受付を手続きをする

活動したい地域の災害ボランティアセンターで、ボランティア登録用紙に住所や氏名などを記入。また、ボランティア活動保険に未加入の場合はここで加入します。

出発前の説明を受ける

災害ボランティア活動は、複数人で行うことになります。班分けが行われるので班長を決めます。災害ボランティアセンターのスタッフからボランティアの目的や内容、そして注意点などの説明を受けて、徒歩や車両で被災地の活動場所に移動します。

被災地でボランティア活動

活動中は、安全第一で無理をしないことが大切です。適度に休憩をとりましょう。

まとめ

被災地の復旧・復興は簡単にはいきません。現地に住む人々は多方面からの協力を得て、被災前のような暮らしを長い年月をかけて取り戻します。その協力の輪の中に災害ボランティアはおり、今もどこかで被災地のために活動を行っています。
被災した人や地域に、思いやりの気持ちを届けましょう!

コラム

 近年の災害ボランティア活動の状況

今日まで災害ボランティアは、被災者の救援や被災地の復興に大きな力を発揮してきました。
阪神淡路大震災をきっかけに、ボランティア活動は発展し、災害時には個人のボランティアやNPOなどのボランティア団体、医療などの専門ボランティアなどの多様なボランティアが被災地に駆けつけ、支援活動を行う文化が根付いてきました。

「ボランティア元年以降」の主要な災害とボランティア
発生年 名称 ボランティアの参加人数
平成7年 阪神・淡路大震災(ボランティア元年) 約137,7万人
平成9年 ナホトカ号海難事故 約2.7万人
平成16年 台風23号 約5.6万人
平成16年 新潟県中越地震 約9.5万人
平成19年 能登半島地震 約1.5万人
平成19年 中越沖地震 約2.7万人
平成21年 台風9号 約2.2万人
平成23年 東日本大震災 約150万人
平成26年 広島豪雨災害 約4.3万人
平成27年 関東・東北豪雨被害 約4.7万人
平成28年 熊本地震 約11.8万人
平成30年 平成30年7月豪雨 約26.3万人
令和元年 台風19号 約19.7万人
令和2年 令和2年7月豪雨 約4.8万人

<出典:研究報告、厚生労働省資料、全国社会福祉協議会資料等より内閣府作成>
※災害ボランティアセンターを経由せずに活動した人を含めると、推定で合計約550万人。

 

 観光も大切な被災地支援

観光は、被災地の復旧・復興において大きな役割を果たすことが期待されています。
実際に被災地を訪れるにあたっては、被災した方々の生活や心情に配慮すること、被災地のニーズや受け入れ環境を考慮することが不可欠ですが、多くの人が被災地を訪れ、さまざまな消費行動を通じて被災地を継続的に支援していくことは、被災地の復旧・復興を早めることでしょう。

■巡るたび、出会う旅。東北
https://dc.tohokukanko.jp/dc-feature/special/features-20/

■熊本県観光サイト もっと、もーっと!くまもっと。
https://kumamoto.guide/

 SDGsと災害ボランティア

企業はただ利益を追求するだけでなく、社会や地域住民などに貢献する社会的責任があります。企業における社会貢献は注目を増しており、東洋経済ONLINEの記事によると、64社もの企業が社会貢献活動に年間10億円以上を支出しています。

この背景としては、国連で採択されたSDGsが大きく影響しています。SDGsとは「持続可能な開発目標(Sustainable DevelopmentGoals)」の略称で、2015年9月に国連で開かれたサミットの中で定められた世界共通の目標です。貧困や環境問題など、地球全体の問題を2030年までに解消するために、17の目標が掲げられています。

企業の社会貢献活動は、一般社団法人 日本経済団体連合会による調査結果によると、以下の3つに分けられます。

・資金的支援
・寄付やボランティア活動の推進
・自主プログラム(企業が独自またはNPOと共同で企画・運営する社会貢献プログラム)

上記を見てわかる通り、ボランティアは主な活動のひとつです。社会貢献の一環として、被災地の災害ボランティアに取り組んでいきましょう。