保育園で子どもたちの安全を確保することは、保育士の義務と言ってもいいでしょう。災害が発生した際に、迷わず子どもたちを先導して避難できるよう、日頃から訓練しておきましょう。
この記事では火災を想定した避難訓練についてのポイントを解説します。
目次
保育園での避難訓練の必要性とは
災害が発生した際にどのような避難をすべきかは、ただ教えてもらうだけでは想像することが難しいでしょう。とくに子どもの場合、施設についての理解が乏しいため、体で覚えることが大切です。
保育園での避難訓練の必要性を保育士、子ども、保護者の3者の視点で考えてみましょう。
保育士視点での必要性
保育士は、子どもたちを先導する立場です。災害に対して冷静に対処しなければなりません。驚いたり慌てたりする子どもたちを落ち着かせ、保育士の指示に従うよう仕向ける必要があります。避難訓練を通じて、適切な指示と誘導ができるようにしましょう。
また、避難した際に起きた問題を把握し、保育士同士で共有することも大切です。問題の原因についてお互いに考え、改善策を次回の訓練に反映させましょう。
子ども視点での必要性
災害が発生すると、子どもは冷静ではいられないでしょう。恐ろしい光景を初めて目の当たりにし、パニックに陥ることは十分予想できます。
避難訓練は、模擬体験によって緊急時の対応を会得し、災害発生時の不安を軽減する効果があります。子どもが冷静に保育士の指示を受け止めるためには、避難訓練を活用し、教育を行うことが重要です。
保護者視点での必要性
災害時に子どもが保育園で過ごしている場合、保護者にとっては、保育園にどのように連絡して子どもを保護するかがポイントとなります。
保育園のみならず、保護者も被害に遭う可能性があります。緊急事態発生時、保育園と保護者の情報共有手段については、お互い認識を共有しましょう。保育園から保護者への連絡手段の確認、避難場所の位置、子どもを引き渡す場所など、大切な情報を確認することが大切です。
避難訓練の準備
保育園で避難訓練を行う際に、準備するものについて解説します。
「備えあれば憂いなし」と言われます。避難訓練の実施方法を決めたり、防災用品を確保したりなど、想定される問題に対処できるよう準備を整えましょう。
避難計画書の作成
避難計画は、どのような災害を想定して作成するかが重要です。また、とくに火災訓練では、どこでどのような火災が発生するか、複数のケースが考えられるでしょう。
- どのような想定・内容で訓練を実施するか
- いつ実施するか
- どのような用品を用意すべきか
これらを保育士間で話し合って決め、計画書にまとめましょう。避難訓練までに必要な用品を揃えておき、必要に応じて災害時の行動マニュアルも作っておきましょう。
訓練当日は、計画書やマニュアルに沿って行動することを心がけます。
防災グッズの準備
防災グッズといった訓練に必要な用品を揃えましょう。
持ち運びやすいリュックサックに分散して収納し、重くなりすぎないようにしておきます。災害時でもすぐ取り出せる場所に保管し、各保育士が保管場所を把握することが大切です。
食品や薬品は保管期限を確認し、定期的に取り替える必要があります。おむつや哺乳瓶など、小さな子ども特有のケア用品もあるため、防災グッズのリストを作成して日頃から管理しましょう。
火災発生を想定した訓練
火災を想定した避難訓練について、避難の手順や保育士が行うべき対応について解説します。
保育園内において、火災の発生が考えられる場所がいくつかあるでしょう。そこからの火災を想定して訓練することが一般的です。
訓練の流れ
訓練においては、次のような流れで避難を実施します。
- 子どもを集める
- 火元確認・避難経路を確保する
- 濡れたハンカチやタオルで口を覆う
- 姿勢を低くして避難する
火災がどこから発生しているかを最初に確認し、どの経路を経由して避難するか判断します。
実際には、子どもを集める段階で人数が合わないケースもあるでしょう。その際どのように行動すべきかも、訓練によって課題として発見しましょう。発見した課題を念頭に置き、マニュアルを策定することが重要です。
保育士が行うべき対応
避難する際に保育士が行う確認事項を、以下に列挙します。
- 避難する子どもの人数確認
- 火元確認
- 煙を吸わない避難経路の確保
- 窓の施錠
- 通報
- 保護者への連絡と引き渡し
- 必要に応じて消火器を使った消火の実施
災害時のどの時点で何をすべきか、これを理解し、各段階では集中して確認作業を行いましょう。火災が発生した場所からの距離によって、判断が変わる場合もあります。
想定された状況で最適な判断ができるように、訓練や話し合いによって改善を図ります。
保育園で避難訓練を行うポイント
ここでは、保育園で避難訓練を実施するポイントについてまとめます。
避難手順も大切です。しかしそれ以上に、子どもや保育士とのコミュニケーションをしっかり行うことが、安全確保につながります。
保育士同士で連携する
避難する際にそれぞれの保育士が受け持つ役割を確認し、避難経路や必要な行動について共通認識を持つようにしましょう。
作成したマニュアルは、誰もがすぐに参照できる状態で保管します。お互いの連絡方法を確認し、すぐに連絡できる体制を日頃から作っておくのです。
避難訓練のあとは結果について話し合い、問題点や課題を明らかにしましょう。そして、今後の避難行動に役立てることが重要です。
人数確認
保育士の使命は、子どもの安全を確保することです。一人として逃げ遅れることのないよう、人数確認は不可欠と言えます。
人数だけでなく、名簿と子どもの顔の双方を確認し、全員が揃っていることを確かめましょう。
他の保育士が担当する子どもに関して連絡することや、子どもたち自身が友達の有無を確認することも、確認ミスの防止に役立ちます。親しい友達がいるかどうかを、子どもに尋ねることも効果的です。
ほかのクラスと協力する
乳幼児のクラスには自力で避難できない子どもがいるため、保育士の負担はさらに大きくなります。他のクラスで早く避難できた保育士は、避難完了後の安全確認を終え次第、すぐに他のクラスを救援しましょう。
子どもに分かりやすく伝える
避難する際のルールを子どもに分かりやすく伝えることも大切です。その方法として「おかしもち」があります。
おかしもちとは頭文字を連ねた言葉で、それぞれの言葉は次のとおりです。
- お:押さない
- か:駆けない
- し:しゃべらない
- も:戻らない
- ち:近づかない
また、防災の絵本や紙芝居を用いて、物語を読み聞かせる方法もあります。おかしもちの意味や絵本の内容について、クイズを出したり感想を言ってもらったりすることで、子どもの理解も深まるでしょう。
訓練後の振り返り
避難訓練は、訓練後の振り返りが大切です。訓練で生じた問題について、保育士間で認識を共有しましょう。
- 子どもの理解
- 保育士の役割分担
- 保護者への連絡
- 地域との連携
これらが達成されているかを確認し、今後の避難行動を改善しましょう。
災害時に子どもがあわてず行動できることが何よりも重要です。体験を通じて、行動を理解してもらえるように努めましょう。
保育園の緊急事態は連携が大切!もしもに備えた避難訓練を実施しよう!
災害から子どもたちを守るために、避難訓練を活用しましょう。避難の手順を確認するだけでなく、保育士同士や保護者との連携、子どもへの理解の促進など、コミュニケーションの訓練としても捉えることが大切です。また、BCP(事業継続計画)を作成すれば、保育園の持続的な運営にも有効でしょう。
安否確認システムといった災害対応ツールを活用することもまた、保育園経営のDXとして有効です。避難計画を作成する際には、ぜひご検討ください。