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夜間を想定した避難訓練とは?意識しておくべきポイントを紹介

夜間を想定した避難訓練は、多くの店舗や会社で実施をおすすめします。本記事は、夜間を想定した避難訓練の内容、重要性、手順について紹介します。

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監修者:木村 玲欧(きむら れお)

兵庫県立大学 環境人間学部・大学院環境人間学研究科 教授

早稲田大学卒業、京都大学大学院修了 博士(情報学)(京都大学)。名古屋大学大学院環境学研究科助手・助教等を経て現職。主な研究として、災害時の人間心理・行動、復旧・復興過程、歴史災害教訓、効果的な被災者支援、防災教育・地域防災力向上手法など「安全・安心な社会環境を実現するための心理・行動、社会システム研究」を行っている。
著書に『災害・防災の心理学-教訓を未来につなぐ防災教育の最前線』(北樹出版)、『超巨大地震がやってきた スマトラ沖地震津波に学べ』(時事通信社)、『戦争に隠された「震度7」-1944東南海地震・1945三河地震』(吉川弘文館)などがある。

夜間を想定した防災訓練とは

夜間を想定した防災訓練が必要な場所は、ネットワークセキュリティのあるオフィス、夜間も稼働している工場や介護施設、24時間稼働している場所(火元のある環境下)などです。また、ここでの避難訓練は、いずれも火災による避難を前提にしています。

この記事では、夜間に備えた避難訓練が重要な理由、必要な業種、昼間の訓練との違いについて解説します。

夜間の避難訓練が重要な理由

夜間に備えた避難訓練が必要な理由は、夜間に配置される人数の少なさと、夜間における暗さのためです。

夜間は、出勤する職員が少なくなります。施設では多くの方が就寝しているため、夜間に災害が起きると、スムーズな避難が困難です。また、暗闇での避難は、障害物に躓いたり避難ができない人を見落としたりしやすい状況です。そのため、夜間は避難が難しいといえます。

守る命が多い施設や24時間稼働している工場などでは、夜間を想定した避難訓練が求められます。とくに、介護施設や夜間サービスを提供している業務は、夜間に備えた医療が厚生労働省により義務付けられています。

夜間の避難訓練が必要な業種

夜間の避難訓練が必要な業種を以下に示します。

  • オフィス
  • 高齢者施設
  • 社会福祉移設
  • 病院
  • 介護施設
  • 工場や物流施設
  • ショッピングモール
  • 飲食店
  • スーパーマーケット
  • そのほか、夜間まで営業している店舗や24時間サービスの店舗・工場

これらは、いずれも夜遅くまでの営業が多い業種です。そのため、夜間の避難訓練が求められます。

通常の避難訓練との違い

通常の避難訓練と夜間に備えた避難訓練には違いがあります。具体的には次の3点です。

  • 従業員が少ない
  • 暗い環境
  • 近隣住民との協力

夜間に備えた避難訓練は、従業員が少ない状況で実施します。また、夜間に災害が起きたと仮定するため、電気は使用せず、暗い環境で実施する点も特徴です。

また、介護施設をはじめとする施設では、数人の従業員だけで利用者を避難させることが難しく、近隣住民との協力が不可欠です。

夜間の避難訓練のシナリオ・流れ

夜間に備えた避難訓練の流れは以下のとおりです。

  • 訓練状況の設定
  • 火災発生時の初期対応
  • 出火場所の確認
  • 初期消火
  • 避難誘導

ここからは、それぞれの段階で気をつけたいポイントや詳しい内容を紹介します。

訓練状況の設定

夜間に備えた避難訓練を開始する前に、状況を細かく設定しましょう。

状況としては、地震、火災、噴火、竜巻などが挙げられます。避難ルートや訓練内容は、状況によって大きく変わるでしょう。

また、訓練前には施設の設備も確認します。防火扉、消火器、AEDなどの防災設備に関しては、種類・使い方・設置位置などを把握しましょう。

訓練での役割も事前に決めてください。救助者役と入居者役に分かれて訓練をすると、それぞれの視点から問題点を確認できます。救助者役の人数を夜間に働いている従業員の人数と揃えれば、より実践的な訓練ができます。

火災発生時の初期対応

火災発生時は迅速な初期対応が重要です。初期対応にあたる行動は、次の2つです。

  • 消防への通報
  • 責任者や職員への連絡

ただし、火災報知器設備の有無や火災の発見状況によって、対応の順序が変わる可能性があります。想定されるパターンを訓練前に洗い出し、それぞれについて対応を考えましょう。

発見時に火の勢いが強く、初期消火が困難な状況であれば、初期対応はせず避難を開始してください。

出火場所の確認

自動火災報知設備の受信機や副受信機で火事を確認したら、責任者に報告をし、火災現場へ向かいます。消火器を持ち、火災報知器は鳴らしたままの状態で向かいましょう。ただし、火の勢いが強い場合は、無理をせずに避難をします。

火事を確認したら「火事だー!」と2回以上叫び、火事を知らせましょう。火災の発生場所に施設利用者や従業員がいるときは、「〇〇に避難してください!」と大声で伝えてください。

初期消火

火の勢いが弱ければ、初期消火をします。

消火器は以下の手順で使用します。ただし、訓練では使い方をシミュレーションするだけで、実際には使用しません。

  • 安全ピンを抜く
  • ホースの先端を火に向けて構える
  • レバーを引いて噴射する

火が天井まで届いている場合、消火は不可能です。ただちに避難しましょう。

避難誘導

利用者や他の従業員をスムーズに避難させるためには、避難誘導が欠かせません。避難誘導は次の手順で行いましょう。

  • 火災発生の連絡と指示を受ける
  • 利用者に避難経路を繰り返し伝える
  • 自力での避難が困難な利用者の介助をする
  • 避難経路のポイントごとに避難員を設置して誘導する
  • 逃げ遅れた人がいないかを確認しながら、防火扉を順次閉める

屋外や地上のできるだけ離れた場所へ誘導します。災害や火災発生時は、冷静な思考や判断が難しいものです。避難経路のアナウンスを繰り返し、要所ごとに誘導員を設置して、避難口までの経路を分かりやすく示しましょう。

また、声かけでは、エレベーターを使用しないことや、身体をかがめて移動することも伝えると効果的です。

夜間の避難訓練を成功させるポイント

夜間を想定した避難訓練で注意すべきポイントに関して解説します。

夜間を想定した避難訓練は、昼間の訓練よりも難易度が高いと言えます。少しでも多くの利用者を安全に避難させるために、ポイントを把握しておくことが大切です。

各プロセスにかかる時間を把握する

各プロセスにかかる時間を知り、より短時間での避難ができるような避難マニュアルを作成します。火災からの避難は時間との勝負です。避難にかかる時間こそが、利用者や従業員の命を左右します。

避難訓練では、段階ごとにかかった時間を計測しましょう。そのうえで、課題点や避難方法を訓練後に洗い出し、ブラッシュアップします。

2回目以降の訓練では、従業員全体で段階ごとの時間を把握することが重要です。前回よりも短い時間での避難を目指しましょう。

施設が抱える問題点を把握する

施設が抱える問題点を把握しましょう。問題なく対応できたこともあれば、十分に対応できなかったこともあるでしょう。それらを訓練後に共有し、把握してください。

課題には、訓練を繰り返すことで改善するものと、根本的な解決が必要なものの二種類があります。たとえば、機材や資材の使い方に難があった場合、慣れるまで繰り返し訓練すると改善が見込めます。

根本的な解決が必要な課題のうち、従業員数を原因とするものに関しては、夜間に配置する人数を見直すことで解決が可能です。

無理せず避難を優先する

火災が発生すると、わずか3分間で火が天井まで達すると言われています。こうなるともう、初期消火は不可能です。

火が強いときは、初期消火を諦めて避難を優先しましょう。出火場所から離れて避難誘導に合流するほうが、結果的に多くの人を救えます。

つまり、従業員の命を守るには、臨機応変な避難が欠かせないのです。

必要な防災設備の把握、故障の有無

施設の防災対策に必要な防災設備や機材は、定期的に点検をすることが大切です。主に、次のような設備が該当します。

  • 消火器
  • 屋内用消火栓
  • スプリンクラー
  • 防火扉
  • シャッター
  • 火災探知機
  • 避難経路表示灯
  • ガス探知機
  • 避難はしご
  • AED

故障しているものがあれば、放置せず、取り替えや修理をします。いつでも使用できる状態にしておきましょう。

夜間に備えた避難訓練・防災訓練を実施しよう

今回は、夜間を想定した防災訓練について解説しました。夜間に活動する場所では、夜間に備えた避難訓練を実施しなければなりません。

夜間の避難訓練は難易度が高く、多くの課題点が出る可能性もあります。この際、出てきた課題を見直すことが大切です。災害時に一人でも多くの命を守るために、避難訓練を有効活用してください。

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監修者:木村 玲欧(きむら れお)

兵庫県立大学 環境人間学部・大学院環境人間学研究科 教授

早稲田大学卒業、京都大学大学院修了 博士(情報学)(京都大学)。名古屋大学大学院環境学研究科助手・助教等を経て現職。主な研究として、災害時の人間心理・行動、復旧・復興過程、歴史災害教訓、効果的な被災者支援、防災教育・地域防災力向上手法など「安全・安心な社会環境を実現するための心理・行動、社会システム研究」を行っている。
著書に『災害・防災の心理学-教訓を未来につなぐ防災教育の最前線』(北樹出版)、『超巨大地震がやってきた スマトラ沖地震津波に学べ』(時事通信社)、『戦争に隠された「震度7」-1944東南海地震・1945三河地震』(吉川弘文館)などがある。

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編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。